賢く生きるより 辛抱強いバカになれ (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618962

感想・レビュー・書評

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  • 京セラ、KDDIの経営、経営破綻したJALの再建に尽力した稲盛和夫とヒトIPS細胞の作成に成功しノーベル賞を受賞した山中伸弥の2人の対談を紹介した一冊。

    私自身、仕事で上司の言うことに納得出来なかったり、頑張ってはいるけれど思うような成果が中々出せない中で悶々とする日を送っていました。
    輝かしい実績を残している2人でも、自分と同じ様に上手くいかない時に悩んだりした経験があったのか、またどのような考え方でそのピンチを乗り超えてきたのか、学んでみたいと思って手にこの本を手に取りました。

    山中先生は動脈硬化の研究をしているところから、癌細胞の研究に転換しさらにES細胞と次々とその時の発見に身を任せる様にテーマが変わっていき、最後にようやくIPS細胞に辿り着いたとの話しがありました。あんなに頭のいい人でも、全て見通しの通りに人生を歩んでいる訳ではなくて、意外性を追いかけて、その場その場で全力を尽くす事が成果に繋がったそうです。

    稲盛氏は78歳でJALの再建を託される訳ですが、当時のJALの幹部に中々受け入れられず非常に苦労したしたようです。事業別の独立採算性と京セラフィロソフィーを取り入れて、徹底的なコスト管理と社員の精神的な成熟を促していったそうです。利益を出し続ける事で、乗客の安全を担保する為の投資が出来、従業員が物心両面で満足の行く仕事ができるとの考え方を浸透させていった事がJALの再建に繋がったとの事でした。

    この本を読んで、2人が歩んで来た道のりは決して順風満帆ではなかった事がよく分かりました。
    2人とも沢山の苦労をしながら、自分の適正を考えた上で技術を磨き続け、人間的な成長を追求してきた事が成果に繋がったんだと思います。
    すごく勇気をもらったと同時に今後、経営の勉強をもっとしていきたいと思いました。
    特にお金の話しはやっぱり避けては通れないので、少しずつ勉強していこうと思います。
     

  • 覚えておきたい3つのこと

    ①ビジョンを持つ。明確で、長期的かつ高い目標を。

    ②地道な努力の積み重ね。結果は、仕事に没頭することにより自然とついてくるもの。

    ②能力や技術だけでない「人間性」が大切。(謙虚、善行・利他行、私心なかりしか)


  • 研究や経営において重要なのは、利益よりも人間力だと感じた。特に、内なる純粋な動機に耳を傾け、エンドレスに熱中•努力する行動は、課題を達成する精神力の柱として心に持ちたい。また、賢さ以上に、自己の成長や大善を真面目に継続することが、結果だけでなく支持する周囲の人間に恵まれる大切さも述べられていた。タイトル通り、人生における狡猾さよりも精神的深化を説いた本であった。

  • トップクラスの人物の対談。判りやすく例え話を交えてから説明する技術。課題の本質とか、解決のポイントに対して無駄のない適切な質問。それに当然のように回答できる現場力と専門性の高さ。それらを支える熱意と行動力。目標のおき方、意思決定の哲学。その背景にある経験や周りの人との相互関係の築き方。会話の端々に現れるキーワードを通じて、自分の生き方に対する色んな気付きを与えて貰えます。

  • 学ぶことがたくさんありました。

  • 心を高める。感謝。 自分の毎日を見つめ直す。

  • 「技術者」の二人が、自分の人生と生き方について語っています。
    理系だし、どう考えても「天才技術者」レベルのお二人ですが、展開される話しは完全に、哲学そのもの。

    天国と地獄の話し、その光景をみて、自分ならどう関わるかを考えてショックを受ける話し、小さい善行が、本当は悪に繋がってしまうかもと悩む話し、どれも取ってもまさに哲学です。

  • 対談である
    稲盛さんは、もう、80歳をとっくに越えている。

    〇稲盛さん
    よく稲盛さんが、叱りとばした話が出てくる。
    ただ、人格については、怒らなかったとのこと。ソシテ必ず、最後に、ガンバれよ。とニコッと笑う。

    〇山中さん
    怒るのは大変なこと。でも、皆に同じように、同じことで、怒らないといけないと、井村きみ江さんという、シンクロのコーチが言っていたという
    〇稲盛さん
    利多の気持ちがあるなら、怒るべきだということ。だって怒るのは、大変なこと。相手のためだもの。

    〇山中さんが、怒るのは、
    1、意味のない実験をするな。実験のための実験してる人を怒るべきだということ。
    2、コントロールのない実験をするな
    3、実験の記録など、後片付けをしない実験をするな。
    という、三点。
    〇稲盛さん
    ips細胞で、人間を長生きさせても、淘汰が、進まず、自然を壊して、
    小さな善が、大きな悪になってしまうかもしれない。
    科学の発展と、人間の精神的深化のバランスがとれて初めて安定したものとなると思う。京都賞もその事を考えています。

    〇山中さん
    科学の進歩って、遅いようで、突然、ビュンと進んでしまう。
    寿命がのびて、今の世代はよかったらかもしれないけど、次の世代その次の世代にとんでもない負担を負わしてしまうかもしれない。
    〇山中さん
    人間の真理を少しでも明らかにしたいと、してきたけど、
    真理は1割もわかってないし、脳なんて、99.9%わかっていない。人間については、本当に、わからないことだらけ。科学者は、ついつい不遜になって、私達はこんなに理解してると、やってしまう。私達は、1割もわかってないとこで、医学とか医療とかしていることを忘れてはいけない。
    〇山中さん
    ips細胞って!
    皮膚の細胞に 4つの遺伝子しおりを導入することで、ips細胞という本人由来の万能細胞を作ることができました。
    全ての細胞は、一個の受精卵からスタートしますから、受精卵のなかには、全ての設計図が揃っています。
    細胞にとっての設計図とは、遺伝子です
    遺伝子は三万種類。
    設計図は全23巻。30億字もあるボウダイなもの。
    じつは、それぞの細胞で、しおりのような働きをするたんぱく質がまず作られる。
    そのしおりが、30億字ある分厚い本の、あるページだけにピピっと入る。
    それによって各細胞はそのページだけを開けて読む ということがわかっています。
    つまりもってる設計図は同じなんですが、読むページが細胞によって違うので、違った細胞になっていく。

    〇山中さんと稲盛さん
    ノーベル賞をとるってこと。結果をだすこと。
    実験は、些細なことの積み重ねである。
    その時の気温や天気時間全てが影響しているはずである。
    なかなか再現できなかった実験結果が、1度再現できるとあとはも簡単にできるようになる、そして誰でもできるようになる、
    実験ノートに精神状態まで些細なことまで書いておくと、なぜてきたのかそしてなぜて来なかったのかがわかってきて気づくことができる、

    〇稲盛さん
    京都賞作ったという理由は
    人類の未来は科学の発展と人間の精神的深化のバランスがとれて初めて安定したものになる
    と確信しているから。
    物事にはインとヨウ明と暗とのように必ずプラスとマイナスという2面的な世界が広がっています。
    この両面がバランスよく解明され発展してこそトータルな発展が果たせるはずです。
    〇稲盛さん
    確かに対し会社経営というのは真面目に一生懸命働けばうまくいくかというと必ずそうではない難しさがある。
    でも私が1度も赤字も出したこともなく無借金経営を信条としてきたのは父の影響です。
    敗戦後はとにかく何もないんですからあるのはなんとしてでも生きようというバイタリティーだけです。
    値決めは経営というのが京セラ哲学にあります。
    値決めの目標はお客様が喜んで買ってくださる最高の価格を見いだすことなんです。
    仲間もまとめグループの求心力を維持するにはどうすればいいのか

    やっぱりそこでリーダーの心根立ち居振る舞いが大事になってくるんです。
    〇山中さん
    臨床医学の世界はきちんとしたマニュアルがあってその通りにやらないといけないんですね。
    特に手術は1つ1つ教科書通りに進めていく。
    ところが基礎研究は教科書を信じてはいけないという世界なんです。
    真っ白なカンバスに何を書いてもいい。自分でテーマを選び仮説を立て実験で確かめる。実験が手順を失敗したおかげでノーベル賞につながったりして予想外なことが起きてもそれが新しい発見につながるかもしれない。
    研修医時代に整形外科の医者をしていた2年間。指導医が非常に厳しい先生で2年間ずっとジヤマナカと呼ばれていました
    。お前はホンマに邪魔やからジヤマナカやと言われて。
    上手い人なら20分で終わる簡単な手術に2時間もかかってしまうんです。
    臨床から基礎研究に移ってこんなに楽しい世界があるかと思いました。
    〇山中さん
    アメリカから帰国してまた鬱になり研究者をやめる手前まで来ました。
    アメリカの研究所は分業化が進んでいて実験用のネズミの世話も専門のスタッフがしてくれてサポート体制が万全です。
    ところが日本に帰ってきてからはネズミの世話も全部自分でしないといけなくなり研究しているのか、ネズミの世話をしているのかわからない毎日になってしまいました。
    またたった1人でES細胞の研究をしていたので相談する相手もおらず、むしろ「その研究が面白いと思うけどもちょっと医学の役に立つことしたほうがいいのではないか」というアドバイスを受けたこともありました。
    その当時はマウスES細胞しか樹立されておらず医学の役に立つかどうかがわかっていない。自分がしている研究は本当に人の役に立つんだろうかとだんだん気持ちが落ち込んでいき、そのうち朝になっても布団から起きれなくなってきて、もう研究をやめようとする直前まで行きました。
    ところが研究辞める直前にそのタイミングで人間のES細胞が作られたという、ニュースが飛び込んできたんです。
    〇稲盛さん
    私もファインセラミックスの研究に成功するまではツキに見放されたような人生だったからです。
    〇山中さん
    研究者として人間として必要なのはVW。
    ビジョンとワークハードだと教えられて、米国の研究所では他の研究者の3倍実験していました。
    〇稲盛さー
    私はやると決めたら悩まないんです一旦やると決めたらうまくいくだろうか不安だなという気持ちは、かけらほどもない
    それは1984年の第二電電現KDDI設立の時も
    2010年のJALの会長を引き受けした時もそうです
    重大な責任は感じますが迷いや不安は一切ありませんでした
    動機善なりか
    私心なかりしか
    自分の名誉やお金儲けのためにやりたいのではないか
    本当に世のため人のためになるのかという社会的な利益です
    人生と仕事の結果というのは
    考え方✖️熱意✖️能力という方程式です
    1番大事なのはその人が持っている人生や仕事に対する考え方であり次に熱意、能力は3番目になります。
    京セラの幹部連中を見渡してみても辛抱強い馬鹿ばっか残ったなと皆で冗談いってます
    澄んだ心で見なければ見えないものがあるんです。

  • 2017.4.10読了
    前半は稲盛和夫メインの話、後半で山中先生の研究の話。

著者プロフィール

1932年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長に就任。84年、第二電電(現KDDI)を設立し、会長に就任。2001年より最高顧問、2010年には日本航空会長に就任する。代表取締役会長、名誉会長を経て、15年より名誉顧問となる。84年、稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。2022年8月逝去。その他著書に、『稲盛和夫の実学』『アメーバ経営』『稲盛和夫のガキの自叙伝』『高収益企業のつくり方』『人を生かす』『従業員をやる気にさせる7つのカギ』『成功への情熱』『生き方』等がある。

稲盛和夫の作品

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