- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022620040
感想・レビュー・書評
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日本の数学者である、、岡潔さんのエッセー集。
情緒、独創、教育について、独自の視点で語りかけてくれる。
今時の言葉で言えば、センスを磨く哲学のように感じる。
技術だけではなく、センスを磨くことで秀でた知性に昇華するのだろう。
何度も読み返したい一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み終わったけど、読み切れた自信がない、というか読み切れていない。
岡潔は、頭…脳の使い方で論理か、言語か、感情かといった論を展開するのだが、いつもこの手の話に面を食らう。一方で、仏法や俳句、囲碁将棋で人生や数学を語るとは面白く、この本にしかこんな話は出てこない。棋譜は追っていないけれど、いずれ時間をかけてゆっくり読むことにする。 -
実はいい年になるまで岡潔さんのこと知らなかったです(恥)
事前にレビューなど読んでいたら、これこそが教養、とのレビュー多く、かなり期待して取り寄せました。
本当に…同世代の中では少しはものを知っている方だと思っていたけど、なるほど、教養、読み進めるのが難しい部分もあり(自分が追いついていけない)、もっと賢くなってからまた来ます。
奈良にこんなすごい人がいたなんて。素晴らしいです -
2021/1/3 読了
情緒を軸に数学、将棋、俳句、絵画、彫刻、教育などなど幅広く。岡潔は(10万年かけて築き上げてきたものだとしている)日本の情緒が失いつつある現代を憂いている。ギリシャ時代を情緒を解した昼の時代、ローマ時代をそれを解さない夜の時代と分類し、昨今の日本は後者にあると強調する。
江戸の鎖国体制を岡潔は敬愛する芭蕉を生んだ時代として評価しているが、芭蕉を解する心が明治維新以降我々から離れていったのではないかと常に問われているような気がした。僕も芭蕉の俳句を解す心は残念ながらないが、岡潔の例示を手引きにちょっとだけ分かったような。この感覚が情緒なのだろうか。
また本書は道徳的な側面もある。岡潔は祖父の「他人を先きにし、自分を後にせよ」という言葉を何度も引いている。これは本当の自分である真我を見出すために自我を抑制せよ、という文脈で用いられる。この真我こそ目指すべきものであり、(フロムの言うhaveの生き方である)自我を自分だと思い違いするから迷いが生じる、と。
芸術制作および芸術体験は忘我によって成立するものだと思っているが、本書に則してみれば「自我を断ち、真我を見つける所に芸術がある」のかな?
ただ正直、終始語られる情緒を構成する「知 情 意」についてよく分からなかった。来たるべき時に再読してみよう。 -
「日本のよさが失われるということがどんなに恐ろしいことか。歴史的情操というもの、懐かしむ同じ昔をもっているということがどんなにありがたいことか。〜略〜古都の秋の日射しのわからないものに、真善美といってみてもチンプンカンプンである。真とは嘘でない、間違っていないということではなく、善とはよいということではなく、美とは美しいということでは決してない。人が追い求めてやまないもの、知らないはずだのに知っているような気のするもの、懐かしい気のするもの、である。それがわからねば、いにしえの斑鳩の里に来て、秋の日射しでも見ることだ。」