選書912 巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630124

作品紹介・あらすじ

【自然科学/地学】巨大地震はなぜ起こるのか。どんな種類があり、どこで被害をもたらすのか。予知、予測は可能なのか。世界中の巨大地震の波の解析で見えてきたその正体とは。地震学の到達点と防災への活用方法を語る。泰斗による初の地震学入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99573862

  • 「地震学の神様」と呼ばれる人物が、日本の全国紙記者に語った内容をまとめた一冊。

    現代の「地震学(Seismology)」の造り主が地震学を語る一冊でして、その内容についてとやかくいういとまがない。
    アスペリティモデルの提唱者として、それをあまりに厳格に理解し解析しようとしすぎたことが、日本(特に東北大学閥)の地震学者の勇み足だったのではないか、という指摘は非常に興味深く。この指摘を世界中でこの人以上に鋭く行うことができる人はいないと思う。

    地震について何も知識がない人には少々敷居の高い一冊。しかし、少しでも知っている人には高次元の地震学知識をなぜか平易に理解させてくれる一冊でもある。

    この本が話題にならないことが日本の地学リテラシーの低さを象徴するし、曲がりなりにも地学教育を受けたことのある人間がこの本の存在を刊行後5年以上経ってから知ったという屈辱も甘んじて受けるべきであろうと思う。

    なお、地震学に興味がない人でも、機会があれば「あとがきにかえて」は一読することをお勧めしたい。「何をやってもそれなりにできるエリート」こそが研究者になっていた時代を、非常に端的に理解させてくれる一文として仕上がっています。

  • 453||Ka

  • 地震を研究するアプローチが、研究者によって違うことがわかった。第7章が、とくに面白かった。

  • 巨大地震はなぜ起こるのか。どんな種類があり、どこで被害をもたらすのか。予知、予測は可能なのか。世界中の巨大地震の波の解析で見えてきたその正体とは。地震学の到達点と防災への活用方法を語る地震学入門書。

  •  地震がなぜ起きるのか、そもそも地震とはなにかといったところから、多くの人が期待する予知について非常に分かりやすく説明している。 地震の発生原因については今だ謎が多く、単にプレートテクトニクスが原因であるとはいえないところが興味深い。また、予知の精度が上がりつつあるが、むしろそれが混乱をもたらしていることも見逃せない。
     特に驚いたのは過去の地震も最新の技術を使って調べることができ、さらに新たな事実がいくつも発見されているという点である。これを実現可能にしているのは記録された波形を世界規模で保管されているからである。この波形を世界中の研究者で共有することで地震のメカニズムが一つずつ解明されているのである。
     さて、予知の精度による混乱はアスペリティの問題に尽きるだろう。プレートを構成する材質の違いや密度などによって引っ掛かりができ、それがひずみをもたらして地震が起きるという考え方であるが、金森博士はあくまでも地震発生メカニズムの一要因として捉えていたのに対し、日本の研究者はこれが根本原因であるかのように捉えていたらしい。 なぜそうなったかといえばアスペリティによって釜石沖地震の予知に成功してしまったからである。これにより多くの研究者がアスペリティ研究にのめり込み、結果として宮城沖では地震が起きないという誤った予知がなされてしまった。しかし現実には宮城沖を震源とする地震、つまり311の地震が発生した。つまりアスペリティ研究により見逃されてしまったのである。これは地震の予知に成功してしまったことによる不幸な出来事といえるだろう。
     さらに固有地震という考え方にも疑問を投げかけている。1万年のオーダーで見れば特定地域に地震が起きることは間違いないだろうが、100年そこらにそれを持ち込むことに無理がある。しかも何を固有地震とするかが曖昧であり、さらに予測しやすいものを選択したきらいがあるというのである。そしてこれによってやはり311の地震が見逃されてしまった可能性があるという。ここまでくれば人災と言っても言い過ぎではないように思えてくる。
     最近の研究者に対して期待するとともに、波形の解析をコンピュータ任せにしていることに対して苦言を呈している。コンピュータはある決められたパターンを解析することは得意だが、新しい発見をすることは出来ない。あたり前のことであるが、地震波を丹念に読み解くことで地震研究の黎明期から現在に至るまでリードし続けている金森博士だからこその重みのある苦言である。

     余談:研究人生を振り返る中で大学紛争の折り、活動家の乱入によって研究を続けることができなくなり、米国に拠点を移すことになった事を述べている。この出来事により日本の地震研究がいくらか遅れてしまった可能性は否定出来ない。多くの科学技術の予算を削減し、さらに311の震災においてその対応の不味さが批判された菅直人元首相も元は活動家だったそうである。311の地震の被害は活動家によってもたらされたものであるというのは極論に過ぎるだろうか。

  • 日本にいない日本人の視野の広さがまぶしい

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