彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄 (朝日文庫 か 30-1)
- 朝日新聞出版 (2002年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022642967
感想・レビュー・書評
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『小春日和』の10年後の続編。学生だった桃子と花子もいまや三十路。相変わらず紅梅荘に住み続けて定職を持たずバイト生活の桃子と、いったんは紅梅荘を出て、ちゃんと編集者として働いてはいるけれどまた出戻ってきた花子。さらに隣の部屋に住む岡崎さんという元愛人のおばさん(変な人だけど良い人)と、お馴染み作家の目白のおばさん、桃子のバイト先の塾の新入り小林くんなどが一緒にお酒を飲みつつうだうだと喋っているだけの相変わらずの日常。
大きな事件といえば、桃子の弟の結婚(この相手の藤巻さんという女性もなかなか癖が強い)、桃子の母の再婚くらいで、桃子や花子自身にはとくに何も起こらず。三十路になっても一種のモラトリアムというか、あまり成長の見られない桃子は、結局なんやかんやで本当の意味での金銭的苦労も知らないプチブルだし(バイト生活で家賃7万はけして安くないはずだし、誕生日には父も母もそれぞれ現金を振り込んでくれる)タラレバ娘たちのように結婚、恋愛、良い男!と騒がない代わりに読書や映画の趣味にしか興味がなく、そういう部分は他人事ではないけれど、ちょっとは成長しなよーとも思う(苦笑)
とはいえとくに生産性のない、でもたまに哲学的な彼女たちの果てしない雑談を聞いているのはとても楽しい。最後にちょこっとだけアレクが出てきたのも懐かしくて嬉しかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『小春日和』の十年後、相も変わらず目白の紅梅荘に住む桃子と、花子と小説家のおばさんの日常を綴ったものだが、表題からも明らかなように彼らの会話と関心の端々にはゴダールなんかも鏤められ、あるいはフローベールでも『ボヴァリー夫人』ではなくて、ちょっとネエチャン騙しの『感情教育』だったりと、彼らに言わせれば「プチブル教養主義」的な、いたって「閉じられた」小説世界が展開する。彼らの周辺を含めた世間話につきあっているようでもあるのだが、これが何とも面白くて、時々は釣り込まれて笑ってしまったりもするのだった。
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【読み途中】以前に開いたときには、文体になじめなくて、読み進められなかったのだけど、今回はなぜか、笑いながらたのしく読んでいる。本はこういうことがあるから面白いなぁ。
読み終わりたくないような、読み終わって、このシリーズや、著者の他の本にも早く移りたいような。 -
三十で、定職につかず、ぶらぶら、本読んで、映画みて、酒飲んで、という生活。
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金井さんは、改行がほとんどない特徴のある文体なのだけど、テンポが良くて文体が好きな作家の一人。
だけどあまりの余白のなさに(最近の本と比べると)、読み始めるにはチョイと勇気もいる。
特に大事件が起きるわけでもないのだが、言葉の言い回しとか映画や本からの引用や流行りが散りばめられていたりするところがいいのかな。
紅梅荘での生活はなかなか魅力的だったりする。 -
恐ろしく知的で饒舌
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続編とはいえ同時進行的だと思わされる流麗さ、というよりも一貫性のある独特の文章術にあてられてしまいそうな毒気。
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小春日和の続編。フェイク人生論的な、このたまらないいい加減な世界を表出してしまう著者のスタイルにはただ打ちのめされる。
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金井さんの小説で、これが一番お気に入り。テンポよく、痛快。センテンスがきれいなのはいつもどおり。そして知識に脱帽。