あたりまえのこと (朝日文庫 く 21-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643414

感想・レビュー・書評

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  • 1970年代に書かれた「小説論ノート」と、90年代に書かれた「小説を楽しむための小説読本」の二本立てエッセイ。本当にタイトル通り「あたりまえのこと」しか書かれていないのだけれど、これが目からウロコな反面、辛辣というか鋭すぎるというか、解説にも一種の「悪口芸」なんて評されてましたが、痛快すぎて心配になるくらい色々滅多切りにされてます(笑)。でもそれがとにかく的を得ていて「なるほど」と納得させられるようなことばかり。

    うっすらとわかってはいたのだけれど、言葉にまとめるのは難しい何かもやもやしたものを、倉橋由美子くらい頭が良くて文章の巧い人になると、ずばっと文章にまとめられちゃうんですねえ。しかし小説を読むにしても書くにしても、ここまで色んなことを明晰に意識していたら自分なら何も手がつけられなくなっちゃいそう。そういう意味では、あまり参考になる本ではありませんでした(苦笑)。

  • 熱くも冷たくもないこの聡明さに、この先も時々立ち返りたい。

  • 倉橋流小説論。
    現代版『小説神髄』と言ってもいいでしょう。
    小説を読む・書くにあたっての「あたりまえのこと」が、例にもれず毒舌で書かれています。
    しかし、良薬は口に苦しと言います。
    しっかりと受け止め、浸透させればこれ以上の薬は無いでしょう。

    ただ闇雲に走っていては「あたりまえ」のことすら見えてこない。
    小説家を目指すのであれば必ず読んでおきたい、読んで欲しい一冊です。

  • 解説も書いてる豊崎さんが薦めてたので読みました。
    しっかし、この中で倉橋さんもさんざっぱら書いてはる通り、私と倉橋さんとではジェネレーションとかバックグラウンドとか、何から何まで違い過ぎて共感できず(苦笑)そもそもが、小説に人生捧げてる人とは違って当たり前だよな。
    しかしバッサバッサとあまたの有名作を斬って捨てていく中、なんだかえらい褒められていたのが、トーマス・マンの「魔の山」てとこにはおおっ☆となりました(笑)私も大好き魔の山☆そっかー、ここは趣味が合うんだなあ~。
    ちなみにバッサリ切り捨ての中でも、最もひでえや☆と思ったのが、
    「遠足の作文に、「ぼくは朝起きて顔を洗って・・・・・・」というところから詳しく書くのに似て、いささか子供っぽくてくどいのです。テレビの「今日の街の表情」という数秒の映像のようなものを、これだけの言葉を費やして読者に伝えるのは徒労というものではないかと思います。この調子でいくと、小説は大層長くて退屈なものになります。どうでもいいことを書かないですませるという基本と、書くならほんの一行で書いてかえって意味ありげに見せるという技術がともに欠けているためにそういうことになるのでしょう」
    ここかな☆
    それなりに有名な作家の文章を、小学生の作文扱い・・・(笑)こええwww

  • 「小説は嘘で固まっていなければならない。問題はその固まり具合が完璧かどうかということであるが……ただしそれは読者の精神を宙に支えて飛行させるに足る強力な文章を必要とする。」凡百の小説家がぬかしたら噴飯ものだが、倉橋さんが云うとすごい説得力。

  • 小説についてあらゆる角度からこれがいいとかこういうのはよくないとか論評している。書き手も読み手もあたりまえのように制約を受けながら書物を前にして考える。今やケータイ小説は爆発的な人気を誇るジャンルとなったが面白いか面白くないかは読んだ人が決めるだけのこと。あんなの面白くないという人はその制約に縛られている。それはあたりまえのこと。日記のように書く作家たちはケータイ小説の枠組みのなかで制約をちゃんと受けている。ドライな話ばかりだがあたりまえのことというのはそれくらい冷静な態度と言葉であるような気がする。

  • 本当に「あたりまえのこと」が書いてある。
    思わず目を伏せたくなるけど、本読みとして読んで良かったと思える一冊。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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