昭和天皇伝説: たった一人のたたかい (朝日文庫 ま 25-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643841

作品紹介・あらすじ

「神」から「ひと」へと変貌を遂げた昭和天皇とはいかなる存在だったのか。二・二六事件や秩父宮との不和、三島由紀夫や北一輝との関係、マッカーサーと並んだ歴史的写真の真相など、伝説と真実の狭間に浮かび上がる真の姿とは?従来の昭和天皇観を一変させる瞠目の書。

感想・レビュー・書評

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  • 天皇という存在が、日本国民の中で「伝説」として受け入れられたことと、昭和天皇がその「伝説」を自覚的に生きてきたことを、いくつものエピソードを引きつつ、論じた本です。

    戦前においては「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」とされ、戦後には「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」とされました。しかし著者は、天皇が戦前・戦後を通じて、「日本人がかつぐままにかつがれようとしていた」と主張し、そこに昭和天皇の「たった一人のたたかい」があったと論じています。

    本書は、「天皇とは何か」という問いに、正面から答えを出した本ではありません。むしろ、「天皇とは何か」と問うことが、天皇を「伝説」の中に封じ込めてしまうような所作にほかならないということを、浮き彫りにしているように思います。

  • 専制君主でなく立憲君主を志向する人間・昭和天皇を取り巻いた過酷な環境下での苦悩を分析している。
    もし自分が昭和天皇であったなら、と読むうちに考えてしまう。
    いかに過酷なものであったか想像に難くない。
    『幻の人ー終わりの章』は終わりの章にふさわしい内容であり、
    副題の『たった一人のたたかい』は、主題であってもおかしくない。
    平成も25年が過ぎようとしているが、まわりをみるに昭和は厳然とある。
    時代小説ばかり読んでいる場合ではないかもしれない。
    良著。

  • 戦争期に唯一の正気の指導者が昭和天皇だけとは。昭和天皇を語れば昭和が語れてしまう。昭和期全国に発生した「〜天皇」「カリスマ」を天皇の虚像の影身としてとらえれば。和製ファンタジーの皇帝像に昭和天皇の投影はないのかな?面白い本でした。今年は昭和82年。まだ昭和は終わりません。明治140年といったほうが実感持てる人がいるように。

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著者プロフィール

松本健一(まつもと・けんいち)
1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。
現在、麗澤大学教授。評論・評伝・小説など多方面で活躍中。
2011年3月11日におきた東日本大震災のときの内閣官房参与として、
『復興ビジョン(案)』を菅直人首相(当時)に提出。
著書に『白旗伝説』『北一輝論』(以上、講談社学術文庫)、
『近代アジア精神史の試み』(岩波現代文庫、アジア太平洋賞受賞)、
『開国・維新』(中央公論新社)、『砂の文明・石の文明・泥の文明』(PHP新書)、
『評伝 北一輝』(全五巻、岩波書店、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞)、
『畏るべき昭和天皇』(新潮文庫)、『天国はいらない ふるさとがほしい』(人間と歴史社)、
『海岸線の歴史』(ミシマ社)など多数ある。

「2012年 『海岸線は語る 東日本大震災のあとで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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