「新しい人」の方へ (朝日文庫 お 40-4)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644152

感想・レビュー・書評

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  • 恥ずかしながら大江健三郎初読。ノーベル賞作家ということもあり少々身構えていたが、とても読みやすく、あっという間に1章1章を読み進んでしまった。著者の子ども時代をキーにした話が多いが、視点の為か、昔語りという印象はあまりなく、むしろ新鮮に感じられる。是非高校生に読んでもらいたい、そして叶うなら、自分の中の新しい視点に気づいてほしい1冊。もちろん表現力は圧巻。

  • 大江健三郎さんの、思慮深く誠実なお人柄が伝わる随筆でした。奥様の繊細かつ緻密な挿絵も素晴らしく、見入ってしまいました。

    「ウソをつかない力」「人の言葉をつたえる」「生きる練習」「本をゆっくり読む法」「「新しい人」になるほかない」かみしめて読みました。

    先ごろ、亡くなられたことが本当に残念です。素晴らしい言葉を残してくださり感謝しかありません。ノーベル文学賞を受賞されたというだけでなく、人間性そのものに圧倒されました。

  • だいたい高校生を想定して書いた本とのことですから、難しい言葉は使っていません。
    でも、読むのに少し時間がかかりました。

    高校生に向かって語りながら、やはり私たち大人にも伝えたいことがあるはずです。
    高校生に考えろ、行動しろというのなら、私たち大人だって考えたり行動したりしなければいけません。
    そんなことを考えながら、読みました。

    “福沢諭吉は、人間とはどういうものか、ということをよく知っている人でした。そして、人間の素質の中で、ただ悪いだけで、よいところは何もないのが、「怨望」だ、といっています。たとえば、乱暴な素質の人には―福沢は、粗暴と呼んでいますが―、勇敢な、という良い素質がある。軽薄な人には、利口なところがあるといってもいい―福沢の言葉では、怜悧―というのです。
     しかし、怨望という素質だけは、―人をうらやむ、人に嫉妬する、ということですが―良い素質とつながっていない。何か良いものを生みだすところがまったくない、といいます。”

    この、怨望から大人のやることが、子どものやってしまう意地悪に近い。
    人に意地悪を言ったりしたりするのは、非生産的な行為であることを思い、自分はしない、されても気にしない、そういう原則を自分のなかに持とう、と。

    ウソをつかない人になるために、自分に対して「誇り」を持て。
    ウソをついても誰にもわからないかもしれない、そんな時でも、自分は知っているのだから。
    自分に対して恥ずかしくない生き方をすること。
    平気でうそをつくひとには投票しないこと。

    そう、後半はどんどん、日本という国に、地域に、社会に生きる人としてもあり方について述べています。

    “私たちの本当の知恵は、自分の目で見ること―本を読むことも、そこに入れましょう―、自分の耳で聞くことをよく受けとめ、自分のものとして活用することができるようになって、生まれるのです。”

    自分の考えをまとめるためには、文章を書くことが大事。
    よい文章を書くには、句読点の位置をよく考えること。

    第二次世界大戦で原爆が落とされたことは、絶対に間違った行為であった。
    その反省に立って、世界中で核兵器を減らす粘り強い努力があった。
    ところが9.11以降、世界は再び核兵器をいつでも使える武器として準備しはじめている。
    それが「古い人」の世界の現状。

    “敵意を滅ぼし、和解を達成する「新しい人」になってください。「新しい人」をめざしてください。
     「新しい人」になるしかないのです。”

    読んでいて、平和を希求する強い気持ちを感じました。
    2003年に書かれた本。
    今ならどんな言葉で若い人に語りかけるのでしょう。

    夏目漱石、『カラマーゾフの兄弟』『デイヴィッド・コパーフィールド』などを若い人に紹介していますが、私も読みたいと思います。

  • もう十分年齢を重ねて居ますが 改めて 新しい人にならねばと心に誓う
    特に『 生きる練習』の章は響くものがあります

    上手く書けないけれど 自分の内面 心の中 心の変化 動きを注意深く見つめ様と思った

  • 再読予定

  • 賛否両論ありますが
    翁の言う事は信じておこうと思うのです。

  • 読んだ日付は前後するんだけど、どうしても記念すべき100冊をこの本にしたかった気分。分からないところはわからないし、わかるところはわかるんだけれど。それでもなんだか、ものすごくステキな人生の先輩に、こうするのが良いと、人生の助言を頂いた様な気分になる本でした。「新しい人」に私もなれるよう、努力しよう!

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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