街道をゆく 12 十津川街道 (朝日文庫)

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著者 : 司馬遼太郎
  • 朝日新聞出版 (2008年10月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644572

街道をゆく 12 十津川街道 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 奈良県の十津川の街道をゆく。十津川という地名は、「遠つ川」が語源ではないかと著者は推測している。
    この作品を読んで肌で感じることができたのは、十津川が世に置き忘れられていた地であったということ。山々に囲まれ、谷を渡るのに「野猿」という道具を使い、南北を走る道路の完成までに半世紀以上を費やしていることなどから、いかに外部との接触を図ることが難しかった場所であったかが推測できる。
    おもしろかったのは、この「陸の孤島」であった十津川には、あまり否定的な側面が見受けられない点である。米が十分に獲れないということで、徳川時代には免祖地となっている。本来ならば社会に貢献できない立場として後ろめたさを持ちそうだが、著者が分析する十津川からはそれが感じられない。むしろ、免租地であることを誇りに思っていると捉えている。
    なぜ十津川の人たちは「陸の孤島」を誇りに思っていたのか。以下は自分なりの解釈であるが、こうした天嶮に阻まれた土地であるが故、いわば江戸時代に我が国が経験した「鎖国」と同様、良くも悪くも独自の文化や習慣を身に付けてきたと考えられる。本来ならば外界との接触により、差別を生んだり、支配・服従の関係を生んだり、あるいは文化や習慣も淘汰されたりするであろう。そのとき、自己否定や劣等感などの感情をもたらす。しかし、十津川は地政学的にそのような運命を辿ることはなかった。これが十津川の明るさに繋がっているではないだろうか。
    一方で、いまや人やモノ、サービスが世界規模で往来する時代である。これまでとは違い、近隣府県のみならず、世界のあらゆる波が十津川に押し寄せてくる。グローバル時代を迎えた今、十津川はどのように長年培ってきた歴史を守っていくのか、気になるところではある。

  • 桃源郷のようなところだ。いつか行きたい。
    なにか対価をもらわぬ、ただ呼ばれたときにははせ参ず、その清貧な心意気はなんと美しい事か。代わりに、支配を拒む人達。
    美しい場所なんだろうな、と思う。

  • 今年の台風で、大打撃を受けた
    五條市大塔村。
    何度も土砂崩れで、通行止めになっている
    この道について書かれている本。

    筆者の司馬遼太郎が、もしも今の状態を見ていたとしたら
    きっと加筆しただろうと思われる。

    私は、基本的に司馬氏の作品を好まない。
    その思い込みの激しい文章が読みずらいのだ。
    しかし、とにかくよく 調べている。
    司馬氏の家が、現在 資料館として残っているが
    そこに所蔵されている書籍群は、
    個人の所蔵としては、桁外れである。

    ものを調べつるとは、こういうことかと
    気づかされた。

  • 今回の旅は、奈良県南部、紀伊半島中部山塊の只中にある十津川地区を訪ねる。

    山の民がいかにして時の政権と渡り合い、そして幕末には十津川郷という、藩にも似た自治組織として歴史に人を送り込んでいく、その軌跡が実際の旅を通して展開される、著者の思索への旅で描かれる。

    中でも最も印象的なのは、出兵直前、熊野に徒歩旅行に行った時の著者のくだりである。
    著者はこの世の理不尽さに身を浸しながら、この世の名残と十津川を通って熊野に出ようとするが、途中道に迷い、とある禅寺に拾われる。そこは十津川の入り口だったのだが、今回訪ねようとすると、すでに周囲とともにダムに沈んでいた。
    著者は何とも言えない感情とともにその事実に、静かに坦々と呆然とする。

    山間の静寂の中、いかに隔世の感がある里にも、やはり時の世と同じ時間が静かに時が流れている。
    それを感じさせる1コマだった。

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