吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645357

感想・レビュー・書評

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  • 1924年、実際に群馬の田舎から吉原に売られた女性の日記。
    1924年といえば大正13年、谷崎の痴人の愛や、宮沢賢治の春と修羅が世に出た年だ。
    そう考えると、案外最近までこういった文化が残っていたんだなと思う。

    今までいろんな文献や資料を見るに、廓の女性は大変だと思っていたが、実際に存在が確認できる人の手記は重みが違う。
    本当の吉原の実態が廓の内で生きた者の言葉で語られる。

    森光子さんは、歌人の柳原白蓮を頼って、吉原から脱走する。
    柳原白蓮について以前調べたことがあって、妙なところで繋がるもんだと思った。
    白蓮は華族出身で、縁戚や炭鉱王と政略結婚させられたが、青年記者と駆け落ちした当時スキャンダラスな女性だった。この人もなかなか波瀾万丈で興味深い人生である。

    文章も上手だし、言葉も現代と全く変わらないので、とても読みやすかった。(編集してるのかな?)

    廓の話を見るにつけ、女性たちへの同情心とともに、不謹慎な好奇心が湧く。吉原の文化や人間関係も面白い。
    今までの吉原に関する知識・印象に実際の声が加わり、当時を窺い知るとても貴重な資料だと思った。

    続編の『春駒日記』も読もうと思う。

    それにしてもこの装丁はどうなの。

  •  大正末期に吉原の遊郭にかぞえ19歳で売られた女性の手記。高崎の人で、父親が死んで家庭が経済的に苦しくなっての事らしい。兄、妹がいる様。のちに、一人で遊郭を脱走し、自由廃業をした(当時も法律的には売春を強要することは借金のカタでも違法だったので、自由廃業は可能だったが、物理的には難しかった(見つかれば連れ戻されてしまう)みたい)。
     昔の日本は夜這いとかあって結構開放的な性風俗があったようにも思っているんだけれど、この人は売られた際には経験がなくて、しかも、斡旋屋の人に「言い寄られてもうまくかわせばよい」みたいに言われて、そういうものかと思って「それなら行ってもいいかしら」てな感じで売られてきて実際にはそうは行かなくてガーンみたいな展開で、こっちがビックリ。日記をつけたり本を読む習慣があったり、「学校の友達」を思い出したりしてるのでそれなりの学歴があるのか、実は結構なお嬢様だったのかしら。
     同じ遊郭にいる遊女たちは、借金を返すために、また、虚栄心のために(誰だって人気があって成績がいい方が気持ちいいだろう)、少しでも多くの客を取ろうとし、病気などで仕事ができないのを残念に思っている。ところが、この人は一貫して客なんか取りたくない、少しでも客が来なければ良いと言う態度を貫くし、人にも公言してはばからない(営業用の甘言を弄したり電話やら手紙やらをやったりもしないにもかかわらず、決して成績は悪くなかったらしいのもおもしろい)。そして、自分一人だけがこう思っているのを不思議に感じている。店の主人などは人気のある遊女をほめるわけだし、遊郭というところはたくさんの客を持っている遊女の方が当然に上位の序列になるわけだけれど、この人はそういう社会的な評価に惑わされない。自分の感じるように感じ、やりたいようにやる。いくら客を取っても諸々の経費と称するものを差し引かれて借金はちっとも減らない仕組みになっていることも、自分で勘定して気づいている。
     斡旋屋の言ったのは嘘だったことを知り、遊郭でしばらく暮らしたのち、当然に出てくるだろう疑問にも思い至っている。つまり、親は知っていて自分を売ったのではないか、という疑問。これについては一度しか言及されないし、真偽は不明のままなのだけれど、やっぱりそう思うよなぁ。つらい話。
     状況に流されず、自分の価値を知り、それを守ることができる。そういう人。すごいかっこいいと思う。どうすれば、こういう人になれるんだろう。

  • これは再販を企画した出版社がえらい。
    と思ったら朝ドラにでてたのか。

    日記文学として最高の部類と思うんですが。
    奥付に著作権継承者捜索中とあって趣深い。

    つくづく墨塗り検閲が惜しいがそれはそれで時代感。

  • 朝ドラで話題になってきている柳原白蓮が女性解放運動を行っているときに、彼女をしたって吉原の遊郭を抜け出し自由廃業した花魁「春駒」が吉原花魁の日々を書いた日記。
    彼女にとって、この地獄につきこまれたすべてに対する復讐の日記。
    金のために地獄へ落された女性の日記という読み方ももちろん大切だが、吉原の遊女という今では想像できない世界を知るための一つの証左としてもおもしろい読み物である。
    そして、自由ということを考えてみるによい書物である。

  • 吉原ものが 好きですが、この本は、実録物だった!(ToT)

    いままで読んだ 花魁の話とは違い、ひどい扱いを受けていることや、借金をちゃんと計算してくれないことや 病気になっても 病院もひどく 人としての扱いではなかったりと、読んでいて苦しくなりました。
    続きもあるそうですが 読めそうもありません(×_×)

  • 今のNHKの連ドラで出てくる仲間由紀恵演じる蓮さまが序文を書いているんだけど。

    春駒さんの書く文章が、感覚がほとんど今のあたしとあんま変わらない、そんな最近な感じの世界に公娼制度があったということがほんとに信じられない。

    それってやっぱりどうなのっていうことでそれはおかしいことなのだ。

    そしてそのおかしな感覚は現在進行形で今も在るというのはまぎれもないほんとのことだなと。

  • こんな哀しみと苦しみの中に、たくさんの女性がいたのだなぁと思う。諦めることを拒むことは、どれだけ苦しかっただろう。書くことはこんなにも人の心を支えるのか。アンネもそうだったな、と。
    彼女がその後、どう生きたのか、疑いを抱いた母とは、再び会うことがあったのか、「春駒日記」にはあるのだろうか。

  • 表紙のデザインはまぁさておき。
    花魁自身による日記で、大変貴重な記録。
    下衆な興味のところは伏字になっていたりで、そういう対象として読むものではありません。
    酒を注ぐだけ、といわれてつれてこられたが、早々に現実を突きつけらる。
    鎖につながれていないだけの牢獄。
    吉原の実際を知る、貴重な文献といえると思います。

  • 世にこのような本が出ていたなんて。復刻するのが遅すぎやしまいか!とも思うけれど、自分が生きているうちに読めて良かった。
    江戸時代のような「格」が失われた吉原、ずさんな・悲惨な環境で春駒は自分を見失っていない。遊女の生活が手に取るようにわかるのがいい。数々の作家さんや映画監督などが、この本を資料として読んできたんだろうね。遊女にも色んなんが居るけれど、遊客も千差万別。素敵な殿方もチラホラ出てくる。それにしても楼主のタヌキめ!どうかロクな死に方してませんように!!
    巻末に「著作権継承者探しています・・・」の一文が。
    旦那共々、怖い方々に追われていた為、身元を隠しながら生きたのもあるんだろうけれど、もし子供を持っていたとしても自分の過去については一切話さず隠し通したのかな・・とも思う。光子、最期には幸せだと思って死んでいけたかしら・・・。

  • 吉原に花魁として売られた少女が日常を書き残した記録。困難な中でも投げやりにならず、自分の尊厳を守ろうとする強い意志を感じる日記だった。

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