吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645357

感想・レビュー・書評

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  • 引き込まれるように読んだ。
    読みにくいと感じる箇所もあるが、フィクションでみる花魁よりもとてもリアル。
    金勘定が本当に酷く働けど働けど借金が嵩み、読んでいて辛く感じた。
    突然脱出編に入るので森さんが脱出に至るまでの経緯や具体的にいつから計画していたのか、白蓮さんとのお話なども知りたかった。

  • 吉原の廓に売られ、花魁として生きた女性の記録。作者の森光子は、19歳で1000円と引き換えに吉原の遊郭へと売られる。そして、初見世で見ず知らずの男に処女を奪われ花魁•春駒としての生活を始める。彼女は、そこでの生活を「復讐」として日記に克明に記録する。そうして生まれたのが本書となる。
    吉原に関する文献は多く残されているが、花魁本人の手による記録というのは数が極めて少ない。搾取される側の声はかき消されてしまうのが常であるし、そもそも字を書くことのできない花魁も多くいた。その中で、森光子はおそらくそれなりに高い教養を持ち、そして自らの境遇とその環境を冷静に見る観察眼を持っていた。だから、花魁の世界を今に伝える一級の資料であると同時に、廓の様子がいきいきと描写され読み物としてもとても面白い作品となっている。
    なにより、日記のはしばしから、森光子の意志の強さを感じられるのが最大の読みどころ。たとえ不本意な形で花魁となろうとも、心や誇りまでは決して売ることはない。それはどこまでも自らのものであるという確固とした決意を読み取ることができる。しかしそれは、そのくらいの決意を持たなければ、容易に挫け折れてしまうほどに過酷な状況であることの裏返しでもある。そこには、吉原や花魁といったキーワードから連想させるような華やかさなど微塵もない。ただひたすらに苦しみばかりの毎日があるのみ。その苦しみの毎日の中で女性たちはすり減っていく。吉原という男の快楽の街が、いかに女性の犠牲のもと成り立っていたのか、改めて考えさせられる。
    本書の最後で、彼女は吉原を脱出し晴れて自由の身にとなる。そして、柳原百蓮に保護されるのは、花子とアン」にも描かれている通り(森光子の役は壇蜜が演じている)。彼女のその行動があればこそ、現代の僕たちはこうして本書を手にすることができる。

  • NHK朝のテレビ小説「花子とアン」の中で、白蓮を訪ねて廓から逃げてきたお女郎。それがほんとうにあったことだったと知り、その彼女が書いたこの本を手にしました。貧困を理由に身売りされ、何をするかわからないまま女郎になった春駒の日記は、女性としていろんなことを考えさせられました。

  • ふと目につき、手に取ってみたら、「大正15年、柳原白蓮の序文で刊行され、当時の社会に波紋を呼んだ、告発の書」
    というので気になって読んでみた。

    親の借金のため19歳で吉原へ売られた光子が、花魁・春駒として過ごした日々を綴った壮絶な記録。

    この本の出版の翌年に、もう1冊「春駒日記」を出版し、彼女を自由廃業へと導いた外務省の役人と結婚し、没年や著作権継承者も不明だという著者に興味が引かれる。

  • 廓に売られ書いた日記。
    基本、恨みつらみばかりで、暗いです
    そして、廓の出来事や、人間模様がリアルです。
    吉原の花魁というとドラマでは華やかなイメージですが
    そんな吉原より時代も少し後
    1日に10人以上客を取っても借金が減らない
    壮絶な毎日です。

    個人的には、
    この時代の田舎の貧困な家庭で育った女性が
    ここまで文章を書けるものなのかと、興味を持ちました
    文章も綺麗でしっかりしていますし、
    日記とありますが、
    同僚や客、出来事がでる順番が良く
    構成が出来すぎている気もします
    白蓮に手ほどきを受けたのしょうか
    そういった憶測をしてしまう意味でも
    オススメの本です

    それにしても、男というのは仕様のない生き物なんですかね
    この日記を読んでいると、つくづくそう思いました
    そして、女が強くなった現代にもいます。
    こういう男の人
    ちょっと笑えました。


  • 昭和初期に妓楼に売られてその後脱出した女性の日記。

    2つの側面がある。
    1.人身売買の理不尽、過酷さへの抗議
    2.吉原を取り巻く人々(花魁、楼主他、客)の人間観察。

    両方が背中合わせであり、いずれ筆者が脱出することも分かっているので2を楽しく読む余裕もあり、その2を書くたくましさが1を前向きなものにしている。筆者もマンドリンを置いていかせたり、稼ぎ高が上位に来たり、なかなかのものではある。しかし非業の最期を遂げる人もあり、警察官、客も含めた社会もグルみたいなもので、ウーンとなる。清川さんに対する筆者の気持ちの変化がリアル。

  • 周旋屋に「お酒を注ぐだけの仕事だから」と騙されて吉原に売られた女性が、宮崎白蓮宅に駆け込んで抜け出すまでの2年間の日記。
    売られたと言っても娘を担保に金を借りただけで、花魁の稼ぎから借金を返していくシステム。客の払った金の大半は店にいき、花魁の手元に残るのは1割程度。その中で日々の費えや仕事道具をそろえ、客が金を払わなければ花魁が負担、ものを壊せばそれも花魁が責任を取る。お茶をひいても罰金で、逆に借金が増えていき吉原から抜けられないシステム。壮絶。

  • 朝ドラで話題になってきている柳原白蓮が女性解放運動を行っているときに、彼女をしたって吉原の遊郭を抜け出し自由廃業した花魁「春駒」が吉原花魁の日々を書いた日記。
    彼女にとって、この地獄につきこまれたすべてに対する復讐の日記。
    金のために地獄へ落された女性の日記という読み方ももちろん大切だが、吉原の遊女という今では想像できない世界を知るための一つの証左としてもおもしろい読み物である。
    そして、自由ということを考えてみるによい書物である。

  • こんな哀しみと苦しみの中に、たくさんの女性がいたのだなぁと思う。諦めることを拒むことは、どれだけ苦しかっただろう。書くことはこんなにも人の心を支えるのか。アンネもそうだったな、と。
    彼女がその後、どう生きたのか、疑いを抱いた母とは、再び会うことがあったのか、「春駒日記」にはあるのだろうか。

  • 表紙のデザインはまぁさておき。
    花魁自身による日記で、大変貴重な記録。
    下衆な興味のところは伏字になっていたりで、そういう対象として読むものではありません。
    酒を注ぐだけ、といわれてつれてこられたが、早々に現実を突きつけらる。
    鎖につながれていないだけの牢獄。
    吉原の実際を知る、貴重な文献といえると思います。

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