ブランケット・キャッツ (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 188
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645951

作品紹介・あらすじ

馴染んだ毛布とともに、2泊3日だけ我が家に「ブランケット・キャット」がやって来る。リストラされた父親が家族のために借りたロシアンブルー、子どものできない夫婦が迎えた三毛、いじめに直面した息子が選んだマンクス、老人ホームに入るおばあちゃんのために探したアメリカンショートヘア--。「明日」が揺らいだ人たちに、猫が贈った温もりと小さな光を描く7編。

感想・レビュー・書評

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  • 2泊3日の猫のレンタルを綴った7つの短編集
    特別に賢い猫だけがなれるブランケット・キャッツは、馴染みの毛布と共に様々な家族のもとを訪れる。

    人懐っこい犬ではなく、気ままでツンデレな猫というのがポイントだ。猫の行動がミステリアスで、解釈が如何様にもとれるのがまた奥深い。

    私は特に
    「嫌われ者のブランケット・キャット」と
    「旅に出たブランケット・キャット」
    が印象的だった。

    中でも「旅に出たブランケット・キャット」は、猫目線でその生態や本能的な部分が描かれていて人間との関係性も含めて色々と考えさせられた。

    全7章の関連性は無いが、各章其々に描かれたブランケット・キャットがレンタルした人の繊細な心の機微に触れていく様子は、切なくも心温かく心に響いた。

    余談だが、ペットショップの傍らで猫レンタル業を営む店長がロボットの様で、塩対応なのがやや気になった。
    きっとこの個性的な店長に纏わる話もあるんだろう・・・と読み進めたが、そこは予想に反して膨らまなかった。

    ところで、現実には「猫レンタル」も「犬レンタル」もビジネスとして存在しているのをご存じだろうか。
    飼いたくても飼えない環境の人
    日常に少しの癒しが欲しい人
    需要は確かにあるだろう・・・

    けれど、そもそも私は「レンタル」という言葉を生き物に使うのに違和感を感じてしまう。そのうちサブスクとか言い出すんじゃないだろうか・・・

    このビジネスは、人間の欲を満たすためのものであって、動物にとっては大きな負担になるのは疑いようが無い。
    作中では、レンタル猫はペットショップで売れ残り、殺処分を逃れる道という一面も垣間見れた。
    例えそうであっても、人間の命の尊さには敏感なのに、動物の命の尊さは何故人間目線でしか考えられないのだろうかと、やるせない気持ちになった。それで救われる命もあるならば、せめて動物の命の尊厳も考えられる感受性は誰しも持っていて欲しいと願ってやまない。

    本作ではペットレンタルというビジネスの側面については、読者に解釈を委ねている。レンタル業の店長を、敢えて能面の様なキャラクターで描いた作者の意図する所が、読後ジワジワと迫って来るようだった。
    重松清さん、恐るべしだ。

  • お気に入りの毛布と一緒に貸し出される猫と、レンタルした人たちとの物語。
    猫を迎えることで様々な事象に向き合い、明日からの未来へ…という短編7篇。読み物としては面白いが、猫の飼い主としては何とも言えない複雑な感情が残る。

  • 普段の生活の中にレンタルの猫ちゃんが紛れ込むことによって巻き起こるドラマの短編集。

    やっぱり重松先生はどこか国語の教科書的な、道徳的な面をお持ちで全体的に上品だなぁという感想。

    我が家の猫好きの高校生の息子にも読ませてあげたい一冊。

    短編集だがその中でも、
    「嫌われ者のブランケットキャット」と「旅に出たブランケットキャット」は良かったかな(*^^*)

    うるうる(T_T)っと温かい気持ちになった。

  • 馴染んだ毛布とともに、2泊3日だけ我が家に「ブランケット・キャット」がやって来る。父親がリストラされた家族、子どものできない夫婦、いじめに直面した息子と両親、25歳のフリーターと派遣社員の彼女…。「明日」が揺らいだ人たちに、猫が贈る温もりと小さな7つの光。

  • ネコを飼ってるから読み始めたけど
    色んな事情でレンタルする人々
    そこにちょっとスパイスを与えるレンタル猫たち

    うーん
    やっぱり普通におうちで飼ってあげたいと
    思ってしまう

    猫への感情移入がハンパない(笑

  • 2014年に飼い猫が死んじゃてから家人から再び猫を飼おうという話は出てこない。みんなミルクのことが大好きだった。実はオイラは猫を飼いたい。ギクシャクしている家族に光がほしい。よく考えてみると家がゴミ屋敷化したのは、家族のそれぞれが自室にこもるようになったのは、ミルクがいなくなってから。
    やんちゃで迷惑や心配をかける猫だけど、それがみんなをやさしい気持ちにさせてくれていたんじゃないかな。
    この7編の物語に登場する猫たちもそれぞれの環境の中で温もりと光を与えてくれる。猫ってホントは人間の言葉を理解してるんじゃないか、って思わせるところがあるけど、理解してるのかも。
    「身代わりのブランケット・キャット」のおばあちゃんが、「優しいねえ、みんな、優しいよねえ……」って言った時、ロンロンの身代わりを含め実はすべてを把握した上での言葉だったんじゃないか、と思うと泣けた。

  • 2泊3日のレンタル猫の話、7篇。
    寒い冬に、とても心温まるストーリーの数々だった。
    何か欠けている人間が、猫を急に迎え入れることにより、変わったり自分なりの答えを見つけていく…というもの。

    「旅に出たブランケット・キャット」は、この中でひとつだけ人間目線でなく猫目線の短編で、それがまた良かった。
    うちにもクリーム色のアメリカンショートヘアがいるので、こんなこと思ってるのかな?と微笑ましく、ますます愛しく感じた。

  • 動物って猫に限らずホントに賢くて優しいと思う

    レンタルって…
    借りる側にしてみれば束の間の癒し、安らぎ、
    いろいろと自分に都合の良いだけの
    最期の時まで見届ける責任の無い人間のエゴ

    ブランケット・キャットに癒され、元気付けられ、前向きになれたり、人間関係を修復できたり…
    お話し自体はどれも素敵なんだけど
    だからこそ、動物に癒してもらうだけじゃなく
    責任をもって最期まで関わっていきたいなと思った

  • 以前テレビドラマになったのを見た。
    小説ではペットショップで猫を貸し出す話だったのか。
    ドラマでは西島秀俊演ずる家具職人が、亡き妻の残した猫の里親を探すという設定になっていたけれど。
    原作のままの設定だと、動物愛護団体から批判を受けるからかなあ?
    それとも西島さんを見せるため?

    まあ、映像作品と小説は別物。
    それぞれで味わえばよい。

    小説は一編一編がほとんど独立した内容。
    貸し出される猫も原則毎回別の猫。
    その猫を借り出した人々の、少し切ない物語が展開される。
    どの人も、どの家族も、何か問題を抱えている。
    子どもを持てない夫婦、末期がんを一人で耐えている女性、いじめの主犯格に祭り上げられてしまった少年、火事で家族を失った老人、リストラされ、家と家族の信頼を失いつつある男性・・・。
    それぞれの境遇を、なんともしみじみと読ませるのだ。

    サトルとエミの兄弟の家出に寄り添う旅猫タビーは、先日読んだ『旅猫レポート』を思い出さずにいられなかった。
    誇り高い猫が視点人物になっている点、そしてサトル。
    どっちかというとこの本の方が、私の好みにはあっているかな。

  • 久しぶりに小説を読んだ。
    どのエピソードもなんとなく物寂しい。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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