f植物園の巣穴 (朝日文庫)

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著者 : 梨木香歩
  • 朝日新聞出版 (2012年6月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646675

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f植物園の巣穴 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

  • 自分の封印していたものとは、いつか向き合わねばならない。穴、亡くした子、乳歯、蛹、カエル、大宜津比売、アイルランドの妖精、全てが滑らかに繋がっていく様、本当に素晴らしいと思う。あえて言えば『裏庭』と同じ系統の作品だが、そんなふうに分類するのもばかばかしくなる。

  • 椋木のうろに落ちた、歯が痛む植物園の園丁が見た不思議な世界。
    豊かな植生となじみが深い動物たちが生きる世界が、心の奥底に閉じ込め凍らせたものを溶解する。

    出てくる植物の名前の半分はわからなかった。改めて調べてみようと思う。そして、深い緑に川と沼、優しい自然に囲まれて、縮こまった心を広げよう。

  • やや古めかしく硬い文体ながら、決して読みにくくはない梨木香歩。日本語の美しさと可笑しみをいつも感じさせられます。

    本作も摩訶不思議な話。主人公は勤務地となった植物園の近くに引っ越す。ところがこの町はどことなくおかしい。通り過ぎる人の頭が鶏のように見えたり、歯痛に悩まされて歯科に行ってみれば、歯医者の「家内」が犬のように見える。自分の気がふれたのかと尋ねてみれば、「家内」の前世は犬で、パニくると犬になってしまうらしい。けれどしっかり日本語を話す。迷い込んだ場所でカエル少年に助けを求め、道中をともに。そこでもナマズ神主やまな板から逃げ出した鯉とも出会う。

    封印してきた過去の記憶と向き合う旅が楽しく切なく心にしみます。何度も読み返したい作品です。

  • 「未生」という言葉の、恐ろしさ、遙かさ、優しさ。水子。

    縁日の飴玉のようにじんわりぬるい温度でねっとりと重たく引き延ばされてはキュッと押し戻される過去と現在、すなわち内面と事実。
    子の死に直面できず(確執)妻ごと死んだと見做してしまった夫が、妻を「蘇生させ」(名前の復活)事実に向きあう。
    そのために水や植物や過去や現在が、彼の内面を攻撃、試練、というかたちで支えていたのだ。

    延々と幻想だか幻覚だかに語り手は浸されている。
    読み手は飽きても投げ出しても仕方ない、この作品は娯楽ではなく、語り手の内面にとことん寄り添っているのだから、退屈でもダレても意味不明でもいいのだ。

    失ったものを求めて。木のうろ。
    心理学というほど数値ではない。精神分析というほど理屈ではない。もっと、論理なく条痕のない軌跡。

    千代といえば川端康成を連想。
    ねえやの思い出といえば太宰治を連想。

    すべては夢。死人と傲慢にも見做していた妻が、現実に立ち返るや、現実に引き戻される。
    すべては流産に端を発した「喪の仕事」だったのだ。向き合えなかった近親者の死に向きあう。
    他人の夢に迷い込んだような。

    不思議の国のアリス、と思えば、時間がぎゅるぎゅる巻き戻されて「夢落ち」となるのにも頷ける。
    兎穴ではなく、自分の虫歯の穴、に落ち込むのは、外界のワンダーランドではなく、内界のワンダーランドに迷い込む、と。
    誰それ版アリスというのはあまりに安易だから言いたくないが、穴に落ちて世界がズレる、という作りはもはやルイス・キャロルの専売特許ではなくなった。
    小山田浩子「穴」もそうだけど。本作では少女でも女でもなく男性だけど。

    恋と家族は迂回する。

    ずーっと夢を見ていた私を、妻は看病していたか、
    死人の妻が私を通じて蘇えったのか。オシリス神のように。

  • ファンタジーと呼んでしまうにはあまりにも独特の不思議な世界だが、生命の根源に立ち返るようなこの不思議さが癖になるのだ。

  • 大人になって読み返してみると、ただのファンタジーじゃなかった。

    穴ぼこだらけのまま生きていても、いつか誰かが埋めてくれる。でもぜんぶ埋まらなくても大丈夫。そう思った。

  • 夢のようなとりとめのない話だな、と思ったら本当に夢の話だった。草木や水辺の風景などが美しく愛を持って書かれている作品。夢の中で一緒に旅した不思議な蛙小僧の出会いと別れ、そして彼の正体が判明し、最後はほっこりした結末。梨木さんらしい世界観の作品です。

  • 不思議な雰囲気の漂うお話。ちょっとした日常のずれ、認識のずれから、これは現実ではないと分かりながら、過去を辿って歩いているような気持ちになる。
    2016/5/19

  • 梨木さんヒット!と思っていたけど、これはどうにもこうにも読み進めにくく苦心。
    家守奇譚とそう変わらないように思うのだけど、異世界に入り込みすぎ、かな。
    ★2と迷って、★3。

  • 椋の木のウロに落ちて気を失い、夢のなかで向き合ってこなかった近しい者の死を見つめなおすというお話。話の構造や夢の表現がありきたりで引き込まれなかった。

  • 過去を思い出し乗り越えるような、内に向けた話。
    変わった登場人物とのやり取りが可笑しい。
    徐々に霧が晴れていくようで、穏やかな最後がよかった。

  • 面白かった!幻想的な雰囲気と、いい具合のところで、これはどうやら現実ではないなとわかったのと、切なく心温まる結末で、よいお話でした。

  • 冒頭から現実と異界の境界線が少しずつぼやけ始め、植物と水に導かれながら語り手の過去が次第に明らかになり、どんどん密度が濃くなっていく展開に流され翻弄されながら、いつの間にか読破。他人の長い夢に迷いこんだ気分になる不思議な一冊でした。

  • 終盤までが難しかった。
    結末は涙ぐんだ。
    最後読めば合点がいくのだけど、そこに行き着くまでに苦労した。
    でも、この不思議な感覚がなんとも癖になる。
    時間を作ってもう一回読みたい。

  • 梨木さんの小説は男性が主人公だとひんやりとした雰囲気寄りになりますね

  • 梨木さんの本は、あちらの世界とこちらの世界を行ったり来たりすることが多いが、この作品は特にそれが際立っていて、正直 途中で挫折しそうになった。が、友人から「最後まで読むと腑に落ちるよ」と言われて読んでみたら、本当にすっきりした。いつかまた読み直してみたい。

  • けっこう悲しい上に難しい話

  • 半年ぐらい放置してたのを初読。読み始めは異界の境界をいつ越えたのか分からなかったけど、そもそも最初から越えた後のスタートだった。あと異界渡りと言うよりも自分の内的世界との往還という感じ。過去と現在。彼岸と此岸。千代と千代。全てが入り交じってよく分からない。カエルの蘇生やオフィーリア、洋食屋の家族なんかが改めて読むと、おぉとなる。個人的には妻の千代の位置付けが何となくもやもや。時間を置いて読んだらまた変わるだろうか。

  • 唐突に は?? と思うような場面に出くわすことの楽しさ。
    でも中断してしまった。雰囲気は好きなんだが、やっぱりすらすら読めるって話ではないというか、そこにいくまでに止まってしまった。いずれまた読み返したい。

  • 梨木香歩ワールドを堪能。面白く、いい話だった。

  • 『家守綺譚』が良かったので、似ていそうな本書を購入。文体は古風だけれど、内容は児童文学のファンタジーを大人が体験するような趣。好みの問題だと思うが、次第に全てのピースが合わさっていく感じが予定調和に感じるし、全体に単調に感じて、あまり気持ちを動かされなかった。著者は『西の魔女が死んだ』から一貫して、生死という重いものをテーマにしながら温かい目線を持っているなとは思う。

  • 暗喩と隠喩、植物と水で作られたモザイク。
    それぞれ形は異なるもののなめらかに繋がり一つの美しい均衡を成す。

    あー、なんだかよくわからないけれど救われた気がする。おだやかにゆるやかに繋がって連なって辿り着く全体像のなんと美しいこと、まやかしもあやかしも渾然一体となって一本の糸に布になる快感。
     読み返せばきっと意味が違ってくる情景を溶けてしまった飴玉みたいに味わっている。
    あー面白かった。

  • 長いこと歯痛に悩む園丁は歯医者に行くことにした。
    そこでは前世が犬だったという歯科医の家内が手伝いをしていた。どうにもあぶなっかしい治療。
    麻酔を打つたび、薬を飲むたびに園丁は不思議な夢に墜ちてゆく。
    懐かしき3人の「千代」。ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、アイルランドの治水神。そして道行を共にする「坊」――。

    昏い“穴”を覗けばそこに、忘れてきた過去が佇む。匂やかに動植物、水辺の風景を描く異界譚。

    「家守奇譚」のような雰囲気と思いがちだったが、開けてみれば「裏庭」の世界観に近かった。
    己が忘れ、またはとるに足らないこととして流し去り、または気づくことすらなかった過去と、そのために残る傷や心残りと向き合い、そうしてまた己の生きる世界に戻ってゆく。読後に漂う不思議な余韻が心地よい。

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f植物園の巣穴 (朝日文庫)の作品紹介

月下香の匂ひ漂ふ一夜。歯が痛む植物園の園丁は、誘われるように椋の木の巣穴に落ちた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、アイルランドの治水神と出会う。動植物と地理を豊かに描き、命の連なりをえがく会心の異界譚。

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