降霊会の夜 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 487
感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647474

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】死者と生者が語り合う「降霊会」。男が呼び出してしまったのは、記憶から消したはずの「招かれざる客たち」だった……。至高の恋愛小説であり、一級の戦争文学であり、極めつきの現代怪異譚。浅田文学の真骨頂がここにある!

感想・レビュー・書評

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  • 降霊会に参加した「私」。過去、悔いやわだかまりを残して死んでしまった人物の霊達と再会し、当時のそれぞれの記憶を辿って心の澱を薄めていく。舞台は1960年代、戦後復興期の地下鉄工事現場の喧騒、高度経済成長期、学園紛争の真っ最中のモラトリアムな学生生活など、セピア色の写真を見ているような ノスタルジックな描写が印象に残る。

  • せつなく、胸に来るが
    最後はなんだかいただけない
    と思った

  • 浅田節でぐいぐい読ませられたけど、最終的には?で終わったかな。

    友だちが怖いよー、とおすすめしてくれたけど、怖さは感じず。
    戦後から高度成長期の雰囲気を感じて勉強にはなった。

    導入の夢部分の、恨みをかって生きてきたという前振りにしては、そこまでとてつもない恨みではなかったような。
    反対に、誰にでも心当たりがありそうなことでもあり、我が身と思えば、他人にとっては些細なことも大きな悔恨や隠したい過去として確かにあるな…と思う。

    ごめんもさよならも言わない主人公は冷たく感じるけど、なぜあえてそうしたんだろうか…?

  • 日本はめざましく復興した。いや、あれは復興なんかじゃない。肝腎要のなかみをないがしろにして、外づらだけを書割に仕立て上げ、さあオリンピックを開催しましょうと大ぼらを吹いたんだ

    解説にも書かれていたが、違和感のなさが怖いな、と思う全体に散りばめられた浅田さんの問いが刺さる作品だった

  • 久しぶりの「途中でやめられなくなる小説」でした。

    ひょんな事から生者と死者の魂(霊)を呼ぶ「降霊会」に招かれ、ずっとわだかまっていた人と語り合うというお話しです。

    「イタコ」みたいなものですが、ホストの女性3名と主人公がテーブルで輪になって手を繋いで魂を呼び、4名のうちの誰かに魂が憑依して話をするというスタイル。

    自分が呼びたい魂が来るとは限らず、別の「知っている人」の魂が来ることもあるし、降霊する魂は一度に数名になることも。

    登場人物一人一人の繊細な心の動き、他者との関わりの中で生まれる身勝手さと罪の意識、それを認めたくない自分の心などが丁寧に描写され、読んでいるほうも苦しくなるほど。
    最後まで引き込まれるように読み進めてしまいました。

    人生において誰かと関わる以上、関わった時間の長短にかかわらず必ず互いの人生に何らかの痕跡は残るもので、相手を傷つけてしまったときには同時に自分の心も傷つき、和解するまでその傷は残り続ける。

    自分が「降霊会」に参加できるなら誰を呼びたいだろう。
    ふと考えてしまいました。

  • キヨの部じぶ分を読み終わって、自分とは合わないので半分で読むのやめました。

  • 前半は幼少時代。キヨがひたすら憐れ。流石に今は当たり屋のような事件は聞かなくなったが、親子の関係、周りの認知、介入の難しさ、社会への不満など、ずっと続いている問題と通じている。後半は青春時代。百合子さんのちょっとした演説は小気味良い。結局ゆうちゃんはさよならとは言わなかったし、百合子は生きて幸せだし、すっきりはしないが全部が当人にとって都合よく終わるよりはリアルだな、と。

  • 前半の「キヨ」編がよかった。後半の「百合子」編は、何だか違和感を感じた。後半は、恋愛ではなく、別の友人とか別の話の方がよかったかも、と個人的には思う。

    親友だった真澄のニューヨーク出発の見送りにいかなかったり、真澄のお葬式に火葬場までいかなかったりする「私」は冷たい。

    「百合子」はその後、着々と成功への道を歩んでいった気がする。

    最後は「私」も実はすでに死んでいて、他の霊のように降霊会に呼ばれたのでした、という展開を予想していたが、全く違う結末だった。

  • 不思議な気持ちにさせられる一冊。だが、特に印象深くはなかった。

  • この本はまた読んでみたい。将来読んだ時に自分がどのような思いを抱くのか。
    今は、キヨの父親の、他人から恵んでもらうならば悪事をした方がマシだという日本人の恥に対する価値観。自分の気持ちを押し殺しても相手の気持ちを優先する梶の価値観。かつて日本人がもっていた道徳だが、その道徳は人によって強弱が必要なのかもしれない。百合子のような強く育った人と温室で育った人間には温度差の違う道徳が必要かも。浅田次郎は主人公に、道徳が無なっている現代の日本人を表しているのかも。
    結局、人生に何のドラマもなく、気付いたら孤独に佇んでいる現代人。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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