しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)

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著者 : 村田沙耶香
  • 朝日新聞出版 (2015年7月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647849

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しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

  • 西加奈子さんや朝井リョウさんがおすすめしていたので気になっていたまま、文庫落ちと知ってすぐに買いに走った。
    「思春期の~」とか言ってたような気がする、くらいの知識しかなく、帯もあらすじも読まずに読み始めた。
    前半はどこまでも白く、骨のように伸びていくニュータウンに住む結佳という地味な小学生時代、後半はあれだけ工事の音がやまなかったのにまるで牢獄のように出口をなくして静寂となった街で中学生時代を迎えたという構成になっている。

    スクールカースト中心の話だと思っていなかったので、途中「読めるかな」と思いもしたのだが(昨今のスクールカーストもので食傷気味)、そんなことは杞憂ですぐに村田沙耶香の世界に引きずりこまれた。
    文体という文体がない、癖というものも感じられない。だがそこは確実に村田沙耶香の世界だった。
    スクールカーストものにありがちな、その教室内の歪さや気色悪さや、言動の苛烈さを強調するような書き方、浮かび上がらせ方はまるでない。
    ただひんやりとしていて、ときに溶けたアスファルトに手を突っ込まれたような絡みつく灼熱がからだに、喉に胸に頭に目に、そういう感覚器に入り込んでくる。
    こういう書き方の出来る作家を他に知らないので、もう感動と興奮で震えまくって読んだです。

    結佳の目から見える世界が手に取るように分かるからこそ、この平等で静かな描き方がかえって胸に迫るのである。
    その書き方は結佳もまた自分の胸に巣食う衝動、いや自分そのものがまだ分からないからこそ見える視点であり、うまれる情動なのだということが際立つ感じがした。

    先ほど、この物語は前半と後半、時代の違いで分かれていると書いたが、実際は違う。
    ラスト付近になって「沙耶香覚醒章」というのが生まれるのであって、これをもう涙と慄きなくして読めないのである!
    覚醒章を読みながら、心の隅には「結佳!言え!言いたいことを言ってその醜く幼い、未熟な青い殻を破ってくれ!」と自分の救いを求めてつい叫んでしまうんだが、そういう視点から言うと今現在思春期真っ只中のティーン達よりも思春期の歪みに一度でも居心地の悪さや引き裂かれた傷の記憶を持つおっさんおばさんに読んでほしいと思ってしまう。
    おばさんはね、スクールカースト上位の気持ち悪さや何の罪もない子に向けられた悪気のないふりをしたとても下劣なあの言葉にもあの言葉にも何も返せず、結佳と同じ顔をしてやりすごした時間がまざまざと蘇って生まれた、自分の本当の声や自分のうちにあった本当は美しかった感情に触れることができて、また明日を生きる力を得たよ。

    そして何より伊吹という男の子の素晴らしさ。
    こんなに心に残る思春期男子に出会ったのは初めてです。
    ありがとう村田先生!ありがとう沙耶香!(もう極まりすぎて呼び捨てです

    覚醒章はもうそれこそ星屑みたいに拾って集めて抱えていたい言葉に溢れすぎてて、私の文庫本はすでに線や蛍光ペンでぴかぴかです…!



    「村田沙耶香……!」
    そして読み終えた直後、叫んで倒れた。
    床に転がり、自分の体内でまだかたちにならない様々が蠢いて外に出ようとしたり失われそうになったりするのを押しとどめて早く完全な私の一部になってくれるようにと屍のようになっているしかなかった。

    だが私にとってそれから今「村田沙耶香」という言葉は幸福そのものであり、呟くだけで幸せにも絶望にも陶酔できるそんな存在となった。
    とにかく読み終えてから立ち上がる気力もなく、私も結佳と共に鬱屈し発狂し爆発し星屑にまみれて疲弊した。
    なんと幸福な疲弊か。
    本が好きで良かった!
    この本に出会えるまでなんとか無事に生きて来れて本当に良かった!
    そして巻末西さんの解説でまた泣く(笑

  • スクールカーストの下に位置する少女が、自身の容姿や体型にコンプレックスを抱き、もがき苦しむ姿は、読んでいて息苦しくなる。
    心無い男子の言葉に、どれだけ心を傷つけられ、どれだけ心を殺していくのか・・・・。
    すごくリアルに書かれていた。

    スクールカーストの上に位置する男の子への歪んだ愛情は、正直、理解しがたいが、カーストから外れ、素直になった彼女の未来に希望が持てる終わり方だったので少し救われた。

    村田沙耶香さんの作品を今回初めて読んだが、ものすごい熱量に圧倒された。
    読後、疲れは残ったが、また読んでみたいと思う。

  •  なんということでしょう。これを読んでどう感想を書けばよいのか。舞台は売りも何もない成長途中のベッドタウン。住むには良いがそれは大人の都合。取り柄のない街で育ってしまった私達は何を誇ればいいのか。
     第二次性徴を迎えた少女と街の成長を対比させている。何はなくとも体は自然に成長し、街は大人の都合で成長していく。その中で少女たちは誰かの価値観に晒され自意識が芽生える。「みんなの価値観をバカにしながら、その価値観で裁かれることを恐れている自分。」じゃあどうしたらいいのさ!と叫びたくなる。どうしたらいいのでしょう。

  • スクールカーストの上と下。
    自分だって”上”ではないのに、自分より”下”の子は見下してしまう……。
    いつの時代にもどこの学校にもあるんだろうなぁ。

    もっと軽いノリで読めるかと思っていたら、想像(期待)以上に重くて心揺さぶられました。
    自分の中学時代を思い起こして頭がクラクラしたほどです。
    私から見れば主人公結佳はまだまだ”イケてる”子で、私自身は信子ちゃんや馬堀さんみたいな立場でした。
    信子ちゃんほど強くもなかったけれど。

    誰とでも分け隔てなく接する伊吹君。
    彼のような”幸せさん”は私の周りに居なかったと思います。
    居たとしても毒にも薬にもならず印象に残らないでしょうね。
    結佳がクラスメイトの”上”の男子からあからさまにからかわれていてるのを目撃してもかばうわけでもなく、飄々と彼らを「いい奴だよ」と言い切り結佳を救うどころかむしろ余計に追い詰めてる。
    伊吹君のそういう無邪気すぎるところには好感が持てませんでした。

    私も散々投げつけられた「ブス」「きもい」「死ね」の言葉たちを、結佳がすべて受け入れつつ自分の価値観を持って前向きに進むラストは清々しさを感じました。
    案外、20年後には結佳や信子ちゃんみたいな子は平均的な女性並みに結婚して子供も産んで、平凡ながら幸せに暮らしていたりするんでしょうね。
    そして”上”だった子はブイブイ言わせていた中学時代ほどぱっとした人生を送っていなかったり……。

  • 小、中学生の過酷で残酷な人間関係と、心境の変化を丹念に描いた作品。
    特に、中学生がスクールカーストに支配されて、上下をつけられて、そのランク相応に行動することを強いられる、という状況を鋭く丁寧に描いていて、読んでいて痛く苦しい気持ちになった。
    読みたくない、でも続きが読みたい…という葛藤に追い立てられるように読んだ。

    私は子供の頃主人公よりももっと下のランク(信子ちゃんや馬掘さんに近い)にいたので、正直主人公でさえもキラキラして見えて、うらやましい青春…と思えた。
    小4のときにクラスの中心メンバーだった男子にいじめられた経験もあるので、伊吹くんのような男の子なんているのかな?と思ってしまったりもした。

    でも、最後まで読んだら、霧が晴れたような気持ちになった。
    カーストのどの位置にいたとしても、それぞれの苦しさがあるんだと思ったし、でもそんなカースト内のランクなんて本当はどうでも良いんだ、とも思った。
    それぞれ自分の醜さと美しさを持っていて、それは誰に支配されるものではないから、思い切り表現して良いんだよ、と言われた気がした。

    信子ちゃんを美しい、と言ってくれる主人公が、作者が、本当に嬉しくて、私は救われた気持ちになった。

  • 小学校の頃はいつもつるんでいて、興味本位で真似事のキスをしてみたりもした幼馴染だったのに、中学に入ると同じクラスのはずなのに「身分が違う」相手になってしまう。そうして、ようやく自分が抱いていた恋心に気付く。
    幼馴染のほうは昔と同じように接してくれるけれど私はちっとも自分が好きになれなくて、それでも最後には彼に気持ちを伝えて、想いを遂げることが出来た…。

    という、(ざっくりした)粗筋だけにすれば、よくある青春初恋物語に聞こえなくはない(強引ではあるけれど)。

    幾つかのセリフだけ取り出してみればそれはまるでケータイ小説の中のそれのようだったり、
    幾つかの場面だけ並べてみれば、まるでティーンズラブコミックのようだったりする。
    それなのに、この小説がそれらと決定的に異なるのはどうしてだろう? どこからずれてしまったのだろう?

    この陳腐な結末にたどり着くまでに、少女は随分と遠回りをしてしまった。
    けれど、もう心配しなくていい。
    あなたもどうせ、普通の大人になるだけだから。

  • 言葉にできない思いや歪んだ思いも含めて
    ぶつけたくなる唯一の相手。
    その相手と繋がったときに初めてありのままの自分を受け入れることができる。
    結佳の歪んだ感情も気付いたうえで伊吹は好きだと言いつつも結佳を救えない伊吹は結佳同様に卑怯だったと思う。
    だけど結佳は伊吹を一種の神聖化して見ており、伊吹は束縛や歪んだ愛情なんか持っていないと信じている。
    白い世界の中で結佳は自身を闇と感じていて伊吹を光だと感じている。自意識やプライドで自分を守っていた結佳では決して伊吹と繋がることができなかった。
    そこから一歩踏み出し伝わらない思いを言葉に託すことで少なからず繋がることができた。
    実際に繋がったことで結佳は自意識から解放されて、言葉にできない思いが互いに伝わり合うことで安心感を手に入れた。その安心感の中ではピラミッドや価値観は関係なくなり、ありのままの自分も認めてあげられる気がする。
    その相手は誰でもいいわけではなく、自分を魔法にかけてくれる好きという感情だけではまとめられないあらゆる感情を向けた伊吹である必要があった。
    本当は伊吹もきっと卑怯であり自意識もあったと思う。
    だけど結佳と同化して伊吹を神聖化してみている面もあり、だけど見え隠れする卑怯さや歪んだ正しさが魅力的だった。

  • この本の感想は何を書いても、嘘くさく聞こえてしまわないか陳腐に見えてしまわないか、そんな不安がつきまとう。自分の感情に言葉が追いつかなくて、どう書いたら、このこみ上げてくるものを伝えられるだろうって、何度も何度も考えるんだけど今の私には出来そうにない。

    私がどうしてここまでこの小説に特別な思いを抱くのかというと、私自身が未だに中学時代の苦しさから脱却できていないから。この小説を読んで「思い出した」とか「引き戻された」ではなく、私は未だにあのときのまま立ち止まっている。
    中学生のとき、私は学校で戦うことを放棄した。それは楽なようで非常につらいこと。まだ私を苦しめる。
    信子のように戦っていたら、終盤の結佳のような価値観を見出せていたら、違った人生を歩めていただろうと思う。

    ラストで伊吹と結ばれる場面の結佳はきっと本当に美しい。
    今からだって遅くはないよね。私も自分を美しいと思えるようになりたい。

  • 文庫化のタイミングで。
    本当に、ぐさぐさとつきささった。
    それは、あまりにも自分の小中学生時代を鮮明に思い出されたからだ。
    そして、結佳と同じように読んでいる間、行き場のない感情が頭の中で、胸の中でうずいて、息苦しくて仕方ないのに、ページをめくる手が止まらなかった。
    読者である私も「女」だということを否応なく意識させられた。
    こういう言い方、適切かどうかはわからないけれど、小学生だった、中学生だった、女だからこそわかる描写があまりにも多すぎた。だから余計、きつかった。

    その分、ラストはたまらない。
    西加奈子さんの解説もすごくよくて、そこで記されていたのと同じように、本当に震えた。泣いた。

    その先、は描かれていないけれど、未来を信じずにはいられない。
    だって彼女は、彼は、まだ14歳。
    逃げずに自分と向き合ったことは、何よりも尊い。

  • たまに村田沙耶香氏が分からなくなる。これだけの物語を産み、これだけの言葉を紡ぐために、どれだけ身を切っているのだろう。まれに、作者や監督が心の奥底まで沈み込んで切り刻んで産み出した物語に出会うが、本作はそんなひとつだと感じる。

    思春期、というか中二のスクールカーストの中、抑圧と欲望の狭間でもがく女子中学生。その中で、価値観の再構築を行い、成長していく。こんな言葉でまとめると陳腐に見えるが、丹念に心理を描写し、醜い場面を描写し、ヒトを描写する。途中でこちらが逃げ出したくなるが、最後まで読み切って良かった。

    余談だけど。作中の「ニュータウン」のモデルって、作者が千葉県民出身でもあるし、もしかしたらワシの地元にも近い千葉ニュータウンかなー、とか思った。作者と世代が近いこともあって、なんとなくその街の成長と閉塞に、心覚えがある。とはいえ、ニュータウンって全国どこもこんな感じなのかもだけど。

  • クラスでは目立たない存在の結佳は小学4年生。女子同士の関係性にずっと違和感を抱えながら、どうにか上手く過ごしていた。
    結佳の住む街は新興住宅街で、日々工事は進み、街は開発されていた。真っ白なその街を、結佳は「骨みたい」だと思い、閉塞感を感じながら日々を過ごしている。
    結佳は習字教室が同じ伊吹と仲良くなり、次第に彼のことを「おもちゃにしたい」という思いが高まり、こっそりキスをする関係になる。
    その関係が薄く続いたまま中学2年生になり、友人もみな同じ中学に進み、そして。

    いわゆるスクールカーストがひとつのテーマになっている。小学生のうちはまだそういう要素は薄いまま友人関係を築いているのだけど、中学生になると残酷なまでにはっきりと階層が分かれる。
    結佳は下から2番目のグループに属していて、自分がそのレベルであることをとても冷めた感覚で客観視していて、そこから逸脱したり下手に目立ったりしないように注意を払いながら生活している。
    小学生時代を描いた序盤から、中学二年生を描いた中盤以降に飛ぶから、その関係性の対比が明白に分かるのだけど、女の子同士の微妙な関係性(人気のある子を取り合いしたり、自分と同じ匂いのクラスメイトをかぎ分けて仲良くなったり)の描き方が秀逸すぎて、読んでいて胸が苦しくなるほどだった。

    結佳と伊吹のやや倒錯した関係とか、結佳の暴発しそうな性欲は、中学生だから少しリアリティに欠けるところもある。そういうのは個人差があるから、何とも言い難いけれど。

    そして終盤、とある出来事から、結佳はカーストを抜け出した位置から自分というものを見つめ始めるのだけど、それは10代に限らず大人にも深く考えさせるエネルギーに満ちていた。
    世間が作り上げた価値観ではなくて、自分自身の価値観で自分を認めて愛してあげることが果たして出来ているのか。
    真っ白で骨みたいで閉塞感しかなかった街に色を与えてくれる存在はすぐ近くにいて、それは自分を愛することが出来たときに初めて気づける。

    よく分からないけれど、著者の村田さんのなかには静かにうごめくエネルギーのようなものがある気がする。
    中盤以降は読むのがやめられなかった。
    西加奈子さんの解説も含めてひとつの作品になっていると感じた。

  • 新興住宅地で暮らす女の子の、小学生から中学生までの成長譚。しかし相変わらず村田沙耶香の描き出す女子同志のスクールカーストは生々しいなあ。私が小中学生の頃はそんな言葉なかったけれど、見えない階級差はみんな無意識に意識していたと思う。当時の感情をリアルに思い出して辛くなったり懐かしくなったり。

    しかし5段階あるカーストの下から二番目に所属していることを自覚し、顔にも体型にも劣等感だらけの主人公が、その自覚にも関わらず、上のカーストに所属する無邪気な伊吹くんに対してああいうふるまいをできることが解せなかったし、なにより彼女の抱くその感情そのものが汚らしくてちょっと受け入れられなかった。私はもうおばちゃんだからキレイごとは言わない。にも関わらず、この主人公を心の底から「きもい」と思ってしまった。あまりにも伊吹くんがピュアで眩しいので、余計に主人公の浅ましさ汚らしさが目に余ったのかもしれない。ただ読者に容赦なくそう思わせるのが村田沙耶香のすごいところだとは思うけれど。

    最後にそれなりに前向きなカタルシスがあるのは良かった。でも主人公を最後までどうしても好きになれないので読み終えるまでが苦痛でした。

  • なんて小説に出会ってしまったんだ。綿矢りさのこじらせと、窪美澄の閉塞感と、「君に届け」の青春のキラキラを足して割ったような話。最後は泣きそうになりながら読んでいた。あと基本小説にはさまれるR18要素いらない派なんですけど今回に限ってはすごく必要だった。

    自分の値段は0点だと思っていて、見た目に自信がないから眼鏡をかけていて、自分の輪郭をつくるような言葉はさりげなく絶対に避けて生きている。なんて、私なんだろうと思った。ちょっと違うかなと思うのは、社会を見下しているところくらい(大人になると、誰かを見下すことがいかにちっぽけかをなんとなく気づくので、そういうことをしなくなるのではないか)
    私にとっての「変わる」って、前向きで決意に満ちて、良い方向に思い切りシフトしていくことだと思っていた。でも、「本当に醜くて、ぶざまで、気持ち悪」くなることも変わることで、私に必要なのはそっちの「変わる」なのかもしれないと思った。もっと、醜く、無様に、気持ち悪くなろう。そう考えると、気分が軽くなるのはどうしてだろう。普通のこじらせ女子をさらに30倍こじらせているような彼女が自分の嫌いな自分と決別していく姿がまぶしかった。

    そして、伊吹君が一貫してかっこよかった…。故障していない鏡を持つ彼だから、社会的な価値がどうだろうと、周りがどう扱おうと関係なかったんだろうな。伊吹くん目線でこの物語を想像するとやばい…。

  • 引き込む力が相変わらず強すぎる。

    読み終えるまで、周りに目もくれず、ただひたすらページを捲っていたように思う。

    ひたすら闇へ闇へ向かっていく主人公が、どうなるんだろうって、ハラハラした。
    女の子同士の、息苦しい空気の読み合いの中で、それでも彼等にとっての社会に対し、自分の居場所や価値観を求めることは切実だと思う。
    そうして、探す価値がないことにもがき続ける主人公と、探さずとも価値のある伊吹くんの対比は確かに苦しみそのものなのだ。

    『君に届け』ダークサイドバージョンだな。

    主人公の身体描写を読んでいると、私も鏡の前に立つことの吐き気を覚えそうになる。
    しかし、彼女は彼女をあきらめない。
    身体の閉塞感と町の未成熟さが本当に上手く描かれていて、タイトルが上手いなーと思った。
    ラストは、パッと晴れてゆくので読後感が良い作品でした(笑)

  • スクールカーストという見えない巨大な力に感性も思考も行動も支配された思春期の少女が、本来の自分と向き合い自我を獲得するまでの姿を描いた物語である。

    読んでいてとにかくしんどかった。スクールカーストに支配された学校社会の理不尽さや、それに迎合しようとする苦々しい努力と浅ましい心理。それらが、解説の言葉を借りれば、偽ることなく『真摯に』描き出されている。それゆえ、カースト上位の人たちの言動には何度も本気の憤りを感じたし、主人公の切実さと浅ましさには自分が重なって何度も苦々しい想いにさせられた。1ページ1ページが私にとって全く他人事でない。それだけに、終盤、主人公が周りの価値観とは違う自分だけの価値観を獲得していく様は美しく、圧巻だった。強烈に心を揺さぶられた。強烈に憧れた。自分の醜さを受け入れるには、ちゃんと戦って傷つかなきゃいけないんだと思った。社会と自分を戦わせて、そのやり取りの中で初めて、醜さを含めた自分を肯定する道を見出せるんだと思った。

    小説の技巧に関しては詳しくないが、開発途上の新興住宅地のモチーフは現代性があり良いと思う。わかりやすく、なにより印象的だった。

    自分の正直な想いがどこにあるのかよく分からない、社会の価値観に押し流されていると感じている今の私にとって、この物語はこれ以上ないものだった。同じような気持ちを抱える人にこの本を強くお薦めしたい。私は多大な勇気をもらった。主人公のように私が社会の中で自分だけの価値観を確立するまで、この本をバイブルにしようと思った。2016/05/30

  • 何箇所か特記したいシーンがあるけれどうまく言語化できる気がしない笑
    まず、再開発都市の進捗に合わせて谷沢が変化していく構成は素直に楽しめた。街の開発が止まったあたりは谷沢がただのひねくれ陰キャラ少女でしかなくなる気がして不安になった。しかしそれを救った人物が2人いた。
    1人目は信子だ。彼女は明らかに外見は醜いうえに嫌われる性格であろう。谷沢は表面上仲良くしながらも見下しが滲み出ていた。それにも関わらず、谷沢が信子を美しいと言ったシーンは頭がおかしいと思った笑でも言いたいことは分かるんよね。ここに向き合えたことで谷沢も街も物語が進んでいく。
    2人目は伊吹。幼少期と中学の対比が見事。幸せさんとは言っても大人なところが増えてくる。最後のセックスシーンはそれこそ美しい。私自身、初めての体験の際に彼女に自分でいいのかと負い目を感じていた部分があった。だから、谷沢が好きな谷沢と結ばれようとした伊吹の美しさが眩しかった。
     白色の世界に色を付けることのできる2人。そしてそれを美しいと思える谷沢。そんな人たちに幸せになってほしい。そして自分の価値観は狭い環境に捉われていないかと考えさせてくれる作品だった。

  • 今の言葉で言えばスクールカーストという、自分がどの立場なのかを把握して動く女子の姿に息苦しさを感じる。小学校の時には上だった子が中学に入ったとたん、必死に上のグループに入ろうと空回りする姿とか、中のグループの子は息を潜めることで、上に目をつけられず、下に落とされないように過ごす姿とか、リアル。

  • 少女の心のドロドロ感にやられた❗ 
    激しく共感。でも大人になったあたしは懐かしさと憧れを感じた。醜いのも青春。

  • 自分の、思い出したくない思春期をえぐられてるみたいでヒリヒリした。

    わたしの価値観だから撤回できない。

    自分だけの「目」を手に入れていた。

    こうした表現にドキッとしながら、わたしは思い出したくない思春期をやり過ごし、それに蓋をしただけで、未だに価値観や「目」を自分のものにしていないんじゃないかと思った。

    思春期は子どもだけのものではないのかもしれない。わたしは今でも発展途上で、こんなところで安堵している場合じゃない気がしてきた。これからも世界に触れ続け、価値観も「目」ももっと自分のものにしていかなきゃいけないんだと思わせてくれる作品だった。

  • 三島由紀夫賞を取ったり、書評を読んだりしていて
    ずっと気になっていた本が文庫化
    帯は西加奈子さん
    読み始めて、後悔
    それは、この本は面白いけれど
    自分としてはあまり思い出したくないし、考えたくない
    そんな世界を見せられる本なんだと直感したから…
    中学生の時の、グループごとの階級のようなもの?
    わたしの時代にもやっぱりあったな
    そんな自分のいる世界を、俯瞰から見ているような主人公
    何もかもわかっているつもりで、でも違う
    人はそれぞれだし、正しいものなんてないし
    あの時代、みんな正しくないのかもしれないよ
    苦しみの中から、どんな形であれ、一歩踏み出した形で
    物語が終わっていることが救い
    グロテスクというかリアルな表現に胸を痛めながらも
    なかなか途中で本を閉じることができず、
    一度閉じたら、開くのに勇気がいる本だった
    読み始めた時の後悔は、読み終わってもモヤモヤしていたけど
    こういう時代のことを、いつになったら冷静に思い出せるのかな
    力強い、いい小説でした

  • 新興住宅地を舞台に、その人工的な白い街に閉塞感を感じている結佳が、幼い自意識を持て余しながら、少女から娘へと変化していく過程を新鮮な言葉で丹念に描いていく物語。

    中学校のスクールカーストの中では、たとえ一番上の階層であってもそこに居続けるために、空気を読み無理をしている。ましてや、下の階層にあっては、自分を殺して目立たないように薄笑いを浮かべ、じっと机の上を見てやり過ごす。
    余りにも、窮屈で、苦しい時間。
    どの頁を開いても、傷口から血がにじみ出ているかのような辛さがつきまとう。
    この作品の密度に息が詰まりそうになりながら、読む手を止めることができない。

    こどもから大人へ体が変化していくことへの違和感。心と体のアンバランスからくる不安定感。そんなものを抱えて、自分を好きになれず、「ブス」として扱われ、自分の受けた傷を痛んであげることもできず、人を見下すことで心の平安を保つ結佳。

    そんな結佳が、やっと自分だけの価値観を見つけるラストがいい。長いトンネルを抜け、光溢れる世界に出たかのような解放感がたまらない。「結佳、よく頑張ったね」って、言ってあげたくなる。

    思春期って、多かれ少なかれ無傷では通りすぎることはできないのかもしれない。だけど、その傷も含めて、自分を愛してあげてほしい。
    悩める中学生にお薦めしたい本でした。

  • 久々、読後に他の本に手出せないくらいの衝撃。
    読んでるときも他ごとで止めるのが惜しいくらいだった。
    初村田作品だけど、すごい人だ。

  • 「コンビニ人間」がすごく面白かたので、他の作品も読んでみようと。
    ぜんぜん好みじゃなかった。
    とにかく主人公の女の子が気持ち悪くて気持ち悪くて、途中読むのがものすごく苦痛だった。

  • この本を読んで思い出す、自分の小中学校(私は、高校も)時代のつらさ、痛みを、この物語は「癒す」というより、「成仏させる」って感じだ。

    結佳は水色をやたら着ている。若葉ちゃんとかぶって隠したワンピース、初潮の日のスカート、夏祭りの浴衣(で飲むラムネも)、伊吹に借りたキャップ。水色が好きね~とか思って読んでましたが、最後、お互いの水の話をしていたので、それですね。つきすぎじゃないのか?
    伊吹がオレンジばっか着てるのはただもうオレンジが好きなんだろう。

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しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)の作品紹介

【文学/日本文学小説】2013年に三島由紀夫賞、14年に第1回フラウ文芸大賞受賞作、「王様のブランチ」で西加奈子さんも絶賛の作品。小4と中2時代の結佳を通して描く、女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作。解説・西 加奈子

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)の単行本

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)のKindle版

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