しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)

  • 751人登録
  • 3.97評価
    • (61)
    • (75)
    • (40)
    • (12)
    • (1)
  • 86レビュー
著者 : 村田沙耶香
  • 朝日新聞出版 (2015年7月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647849

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
朝井 リョウ
恩田 陸
西 加奈子
又吉 直樹
宮下 奈都
有効な右矢印 無効な右矢印

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 西加奈子さんや朝井リョウさんがおすすめしていたので気になっていたまま、文庫落ちと知ってすぐに買いに走った。
    「思春期の~」とか言ってたような気がする、くらいの知識しかなく、帯もあらすじも読まずに読み始めた。
    前半はどこまでも白く、骨のように伸びていくニュータウンに住む結佳という地味な小学生時代、後半はあれだけ工事の音がやまなかったのにまるで牢獄のように出口をなくして静寂となった街で中学生時代を迎えたという構成になっている。

    スクールカースト中心の話だと思っていなかったので、途中「読めるかな」と思いもしたのだが(昨今のスクールカーストもので食傷気味)、そんなことは杞憂ですぐに村田沙耶香の世界に引きずりこまれた。
    文体という文体がない、癖というものも感じられない。だがそこは確実に村田沙耶香の世界だった。
    スクールカーストものにありがちな、その教室内の歪さや気色悪さや、言動の苛烈さを強調するような書き方、浮かび上がらせ方はまるでない。
    ただひんやりとしていて、ときに溶けたアスファルトに手を突っ込まれたような絡みつく灼熱がからだに、喉に胸に頭に目に、そういう感覚器に入り込んでくる。
    こういう書き方の出来る作家を他に知らないので、もう感動と興奮で震えまくって読んだです。

    結佳の目から見える世界が手に取るように分かるからこそ、この平等で静かな描き方がかえって胸に迫るのである。
    その書き方は結佳もまた自分の胸に巣食う衝動、いや自分そのものがまだ分からないからこそ見える視点であり、うまれる情動なのだということが際立つ感じがした。

    先ほど、この物語は前半と後半、時代の違いで分かれていると書いたが、実際は違う。
    ラスト付近になって「沙耶香覚醒章」というのが生まれるのであって、これをもう涙と慄きなくして読めないのである!
    覚醒章を読みながら、心の隅には「結佳!言え!言いたいことを言ってその醜く幼い、未熟な青い殻を破ってくれ!」と自分の救いを求めてつい叫んでしまうんだが、そういう視点から言うと今現在思春期真っ只中のティーン達よりも思春期の歪みに一度でも居心地の悪さや引き裂かれた傷の記憶を持つおっさんおばさんに読んでほしいと思ってしまう。
    おばさんはね、スクールカースト上位の気持ち悪さや何の罪もない子に向けられた悪気のないふりをしたとても下劣なあの言葉にもあの言葉にも何も返せず、結佳と同じ顔をしてやりすごした時間がまざまざと蘇って生まれた、自分の本当の声や自分のうちにあった本当は美しかった感情に触れることができて、また明日を生きる力を得たよ。

    そして何より伊吹という男の子の素晴らしさ。
    こんなに心に残る思春期男子に出会ったのは初めてです。
    ありがとう村田先生!ありがとう沙耶香!(もう極まりすぎて呼び捨てです

    覚醒章はもうそれこそ星屑みたいに拾って集めて抱えていたい言葉に溢れすぎてて、私の文庫本はすでに線や蛍光ペンでぴかぴかです…!



    「村田沙耶香……!」
    そして読み終えた直後、叫んで倒れた。
    床に転がり、自分の体内でまだかたちにならない様々が蠢いて外に出ようとしたり失われそうになったりするのを押しとどめて早く完全な私の一部になってくれるようにと屍のようになっているしかなかった。

    だが私にとってそれから今「村田沙耶香」という言葉は幸福そのものであり、呟くだけで幸せにも絶望にも陶酔できるそんな存在となった。
    とにかく読み終えてから立ち上がる気力もなく、私も結佳と共に鬱屈し発狂し爆発し星屑にまみれて疲弊した。
    なんと幸福な疲弊か。
    本が好きで良かった!
    この本に出会えるまでなんとか無事に生きて来れて本当に良かった!
    そして巻末西さんの解説でまた泣く(笑

  • スクールカーストの下に位置する少女が、自身の容姿や体型にコンプレックスを抱き、もがき苦しむ姿は、読んでいて息苦しくなる。
    心無い男子の言葉に、どれだけ心を傷つけられ、どれだけ心を殺していくのか・・・・。
    すごくリアルに書かれていた。

    スクールカーストの上に位置する男の子への歪んだ愛情は、正直、理解しがたいが、カーストから外れ、素直になった彼女の未来に希望が持てる終わり方だったので少し救われた。

    村田沙耶香さんの作品を今回初めて読んだが、ものすごい熱量に圧倒された。
    読後、疲れは残ったが、また読んでみたいと思う。

  •  なんということでしょう。これを読んでどう感想を書けばよいのか。舞台は売りも何もない成長途中のベッドタウン。住むには良いがそれは大人の都合。取り柄のない街で育ってしまった私達は何を誇ればいいのか。
     第二次性徴を迎えた少女と街の成長を対比させている。何はなくとも体は自然に成長し、街は大人の都合で成長していく。その中で少女たちは誰かの価値観に晒され自意識が芽生える。「みんなの価値観をバカにしながら、その価値観で裁かれることを恐れている自分。」じゃあどうしたらいいのさ!と叫びたくなる。どうしたらいいのでしょう。

  • スクールカーストの上と下。
    自分だって”上”ではないのに、自分より”下”の子は見下してしまう……。
    いつの時代にもどこの学校にもあるんだろうなぁ。

    もっと軽いノリで読めるかと思っていたら、想像(期待)以上に重くて心揺さぶられました。
    自分の中学時代を思い起こして頭がクラクラしたほどです。
    私から見れば主人公結佳はまだまだ”イケてる”子で、私自身は信子ちゃんや馬堀さんみたいな立場でした。
    信子ちゃんほど強くもなかったけれど。

    誰とでも分け隔てなく接する伊吹君。
    彼のような”幸せさん”は私の周りに居なかったと思います。
    居たとしても毒にも薬にもならず印象に残らないでしょうね。
    結佳がクラスメイトの”上”の男子からあからさまにからかわれていてるのを目撃してもかばうわけでもなく、飄々と彼らを「いい奴だよ」と言い切り結佳を救うどころかむしろ余計に追い詰めてる。
    伊吹君のそういう無邪気すぎるところには好感が持てませんでした。

    私も散々投げつけられた「ブス」「きもい」「死ね」の言葉たちを、結佳がすべて受け入れつつ自分の価値観を持って前向きに進むラストは清々しさを感じました。
    案外、20年後には結佳や信子ちゃんみたいな子は平均的な女性並みに結婚して子供も産んで、平凡ながら幸せに暮らしていたりするんでしょうね。
    そして”上”だった子はブイブイ言わせていた中学時代ほどぱっとした人生を送っていなかったり……。

  • 小、中学生の過酷で残酷な人間関係と、心境の変化を丹念に描いた作品。
    特に、中学生がスクールカーストに支配されて、上下をつけられて、そのランク相応に行動することを強いられる、という状況を鋭く丁寧に描いていて、読んでいて痛く苦しい気持ちになった。
    読みたくない、でも続きが読みたい…という葛藤に追い立てられるように読んだ。

    私は子供の頃主人公よりももっと下のランク(信子ちゃんや馬掘さんに近い)にいたので、正直主人公でさえもキラキラして見えて、うらやましい青春…と思えた。
    小4のときにクラスの中心メンバーだった男子にいじめられた経験もあるので、伊吹くんのような男の子なんているのかな?と思ってしまったりもした。

    でも、最後まで読んだら、霧が晴れたような気持ちになった。
    カーストのどの位置にいたとしても、それぞれの苦しさがあるんだと思ったし、でもそんなカースト内のランクなんて本当はどうでも良いんだ、とも思った。
    それぞれ自分の醜さと美しさを持っていて、それは誰に支配されるものではないから、思い切り表現して良いんだよ、と言われた気がした。

    信子ちゃんを美しい、と言ってくれる主人公が、作者が、本当に嬉しくて、私は救われた気持ちになった。

  • 小学校の頃はいつもつるんでいて、興味本位で真似事のキスをしてみたりもした幼馴染だったのに、中学に入ると同じクラスのはずなのに「身分が違う」相手になってしまう。そうして、ようやく自分が抱いていた恋心に気付く。
    幼馴染のほうは昔と同じように接してくれるけれど私はちっとも自分が好きになれなくて、それでも最後には彼に気持ちを伝えて、想いを遂げることが出来た…。

    という、(ざっくりした)粗筋だけにすれば、よくある青春初恋物語に聞こえなくはない(強引ではあるけれど)。

    幾つかのセリフだけ取り出してみればそれはまるでケータイ小説の中のそれのようだったり、
    幾つかの場面だけ並べてみれば、まるでティーンズラブコミックのようだったりする。
    それなのに、この小説がそれらと決定的に異なるのはどうしてだろう? どこからずれてしまったのだろう?

    この陳腐な結末にたどり着くまでに、少女は随分と遠回りをしてしまった。
    けれど、もう心配しなくていい。
    あなたもどうせ、普通の大人になるだけだから。

  • 言葉にできない思いや歪んだ思いも含めて
    ぶつけたくなる唯一の相手。
    その相手と繋がったときに初めてありのままの自分を受け入れることができる。
    結佳の歪んだ感情も気付いたうえで伊吹は好きだと言いつつも結佳を救えない伊吹は結佳同様に卑怯だったと思う。
    だけど結佳は伊吹を一種の神聖化して見ており、伊吹は束縛や歪んだ愛情なんか持っていないと信じている。
    白い世界の中で結佳は自身を闇と感じていて伊吹を光だと感じている。自意識やプライドで自分を守っていた結佳では決して伊吹と繋がることができなかった。
    そこから一歩踏み出し伝わらない思いを言葉に託すことで少なからず繋がることができた。
    実際に繋がったことで結佳は自意識から解放されて、言葉にできない思いが互いに伝わり合うことで安心感を手に入れた。その安心感の中ではピラミッドや価値観は関係なくなり、ありのままの自分も認めてあげられる気がする。
    その相手は誰でもいいわけではなく、自分を魔法にかけてくれる好きという感情だけではまとめられないあらゆる感情を向けた伊吹である必要があった。
    本当は伊吹もきっと卑怯であり自意識もあったと思う。
    だけど結佳と同化して伊吹を神聖化してみている面もあり、だけど見え隠れする卑怯さや歪んだ正しさが魅力的だった。

  • この本の感想は何を書いても、嘘くさく聞こえてしまわないか陳腐に見えてしまわないか、そんな不安がつきまとう。自分の感情に言葉が追いつかなくて、どう書いたら、このこみ上げてくるものを伝えられるだろうって、何度も何度も考えるんだけど今の私には出来そうにない。

    私がどうしてここまでこの小説に特別な思いを抱くのかというと、私自身が未だに中学時代の苦しさから脱却できていないから。この小説を読んで「思い出した」とか「引き戻された」ではなく、私は未だにあのときのまま立ち止まっている。
    中学生のとき、私は学校で戦うことを放棄した。それは楽なようで非常につらいこと。まだ私を苦しめる。
    信子のように戦っていたら、終盤の結佳のような価値観を見出せていたら、違った人生を歩めていただろうと思う。

    ラストで伊吹と結ばれる場面の結佳はきっと本当に美しい。
    今からだって遅くはないよね。私も自分を美しいと思えるようになりたい。

  • 文庫化のタイミングで。
    本当に、ぐさぐさとつきささった。
    それは、あまりにも自分の小中学生時代を鮮明に思い出されたからだ。
    そして、結佳と同じように読んでいる間、行き場のない感情が頭の中で、胸の中でうずいて、息苦しくて仕方ないのに、ページをめくる手が止まらなかった。
    読者である私も「女」だということを否応なく意識させられた。
    こういう言い方、適切かどうかはわからないけれど、小学生だった、中学生だった、女だからこそわかる描写があまりにも多すぎた。だから余計、きつかった。

    その分、ラストはたまらない。
    西加奈子さんの解説もすごくよくて、そこで記されていたのと同じように、本当に震えた。泣いた。

    その先、は描かれていないけれど、未来を信じずにはいられない。
    だって彼女は、彼は、まだ14歳。
    逃げずに自分と向き合ったことは、何よりも尊い。

  • たまに村田沙耶香氏が分からなくなる。これだけの物語を産み、これだけの言葉を紡ぐために、どれだけ身を切っているのだろう。まれに、作者や監督が心の奥底まで沈み込んで切り刻んで産み出した物語に出会うが、本作はそんなひとつだと感じる。

    思春期、というか中二のスクールカーストの中、抑圧と欲望の狭間でもがく女子中学生。その中で、価値観の再構築を行い、成長していく。こんな言葉でまとめると陳腐に見えるが、丹念に心理を描写し、醜い場面を描写し、ヒトを描写する。途中でこちらが逃げ出したくなるが、最後まで読み切って良かった。

    余談だけど。作中の「ニュータウン」のモデルって、作者が千葉県民出身でもあるし、もしかしたらワシの地元にも近い千葉ニュータウンかなー、とか思った。作者と世代が近いこともあって、なんとなくその街の成長と閉塞に、心覚えがある。とはいえ、ニュータウンって全国どこもこんな感じなのかもだけど。

全86件中 1 - 10件を表示

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)に関連する談話室の質問

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)に関連するまとめ

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)を本棚に登録しているひと

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)の作品紹介

【文学/日本文学小説】2013年に三島由紀夫賞、14年に第1回フラウ文芸大賞受賞作、「王様のブランチ」で西加奈子さんも絶賛の作品。小4と中2時代の結佳を通して描く、女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作。解説・西 加奈子

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)の単行本

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)のKindle版

ツイートする