沈黙の町で (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.87
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本棚登録 : 1182
感想 : 135
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648051

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】北関東のある県で中学2年生の男子生徒が転落死した。事故か? 自殺か? それとも──。その背景には陰湿ないじめがあった。町にひろがる波紋を描くことで、地方都市の精神風土に迫る。朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ大問題作の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭からぐいぐい引き込まれて、一気読み。
    重たいテーマだし、登場人物も多いのだけれど、心理描写や表現力が
    ずば抜けているので、本を繰る手が止まらなかった。
    いつもながら、奥田英朗作品は、本当にリーダビリティが高いんだよなぁ。

    結末は予想の範囲内ではあったけれど、むしろ、その結末以降、登場人物たちが
    いったいどういう展開を迎えるのかが気になった。
    深い余韻を残す名作。

  • 色んな問題提起の物語やと思う。どこにでもある小さな田舎町の多感な中学生の友情ごっこ、ほのかな恋、親のマウントの取り合い、学校のことなかれ主義、未成年相手の犯罪捜査の難しさ。何よりもいじめる・られる双方にある歪んだ、それでいてわかるよーな気持ち。面白かった!

  • 正直、中学生のような子供が名倉を虐めたくなる気持ちはわかる。話が通じないし、訳も分からないから。けれど、これが高校生になったら名倉は遠巻きに周りから見られているだけだと思う。たまたま、運が悪かった、それだけ。

  • 2023.7/22〜8/1
    夢中で読んだ。小さな町で起こった中学生の転落死。遺族や加害者生徒、その親や警察、教師など様々な人の視点で描く群像劇だが、各人物の心情がとてもリアルで、何が正義で悪なのか分からなくなってくる。

  •  とある地方都市の中学校で、一人の中学生が転落死した。事故か事件かを調べていくうちに、亡くなった生徒は金持ちのお坊ちゃんで、仲間たちから日常的にいじめを受けていたことが判明する。
     警察の捜査と過去の回想シーンから、いじめに加担したと思われる四人の少年たちの横顔が少しずつわかっていき、肉親や遺族、教師や刑事といった大人たちからは窺い知れない複雑な関係が徐々に浮かび上がってくる。
     最初のうちは、いじめが原因で起きたことだろうと思われていたが、少年たちの過去のシーンを追っていくと、白か黒か単純に割り切れる構図ではないことがわかってきて、何が本当の原因だったのか混沌としてくる。
     全体的に、ごく普通の中学生ならではの不安定な感情の起伏や仲間内の葛藤などが丹念に描かれており、当事者の少年たちとは別に大人同士の争いも月並みではあるがリアル感があった。見る者の視点や思い込みによってまったく違う光景が広がり、見方がじわじわと転換されていくところは醍醐味だった。
     そして真相らしきものがラストシーンで書かれているが、なぜ中学生は転落死することになったのか、最終的な判断は読者にゆだねられている。このあたりは、似たような設定の宮部みゆき著『ソロモンの偽証』とは異なる。中途半端な印象も受けたが、安易にひとつの見方を示さない形は、この小説らしい終わり方だと思った。

  • 結局、事故だっのか。

    名倉君は二重人格?

    続編で、名倉君の視点での話を書いて欲しいかも。

  • 北関東のねぎが産地のある町。そこの公立中学の2年生男子が部活の部屋の前で倒れていた。頭には挫傷があり、部活の屋根からそばの大銀杏に飛び移りそこねて落下し下の側溝の角に頭がぶつかったと思われた。自殺なのか事件なのか。華奢なその少年はいじめられていた、という証言もあるが・・ 

    息子が帰ってこないという電話を受け校内を見に行った教師が死体を見つける。冒頭から心がざわざわする。体調不良の時は読めない感じ。中学2年、あるいは残酷な年代。死んだ少年、一緒にいたテニス部の同級生、同級生の女子、校長、教頭、学年主任、担任、そして警察、検事、弁護士、新聞記者、被害者の親、加害者?とされた少年たちの親。そうだ、自分にもあった中学2年の時。そして少年の親の時。

    警察の聞き取りの間に挟まれる、過去の学校生活の描写。そして最後に明かされるその瞬間。・・なにげない言葉、行動がとりかえしのつかない結果になってしまう・・  なにか死んだ者、生き残った者、もちろん読者にもどよーんと苦い思いが残る。

    朝日新聞2011.5.7-2012.7.12連載

    2013.2.28第1刷(単行本) 図書館

    朝日新聞書評2013.3.3 評者逢坂剛
    https://book.asahi.com/article/11645332

  • 中学生のいじめの話。いじめはいけないと思うけど、いじめられる子にもいじめる方向に導く何かがあると思ってる。奥田さんはその書き方がとてもうまいなと思った。でも親、特に坂井の母親がうざくて仕方なかった。こう思うように奥田さんは書いているのなら、ほんとうまい。うざ過ぎて途中とばして読んだ。弁護士が親たちからはうざがられているけど、私は真っ当なこと言ってると思った。

  • 一つのことを明らかにするのって簡単ではない、、
    それにしても自分の精神年齢が中学生から変化してないのではと心配になる。
    心情を描くのがうますぎる。

  • 中学生ってこんなに幼かったっけ?
    中学生ってこんなに残酷だったっけ?
    と思いながらも、昔からイジメはあったけど、ここまで深刻化してなかったのは何故だろうとも思う。
    世界の狭い地方都市ならではの悩みや、居心地の悪いコミュニティが手に取るようにわかる。
    最後の最後までわくわくしながら読み進めたが、エンディングの物足りなさは消化不良すぎる。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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