本と映画と「70年」を語ろう (朝日新書 110)

  • 朝日新聞出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022732101

感想・レビュー・書評

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  •  新右翼の論客と、心情的にはまぎれもない左翼である川本三郎の対談集。一見「水と油」に見える組み合わせだが、意外にも鈴木は昔から川本のファンなのだという。
     いや、鈴木が書いた本書の「はじめに」を読むと、ファンなどというレベルを超えた強い思い入れを、川本に対して抱いているようだ。
     
    《川本さんは「もう一人の自分だ」と思っている。そうなりたいと思いながら、なれなかった自分だ。川本さんには迷惑だろうが、勝手にそう思っている。年はほとんど同じだし、あの激動の「政治の季節」を体験し、新聞社に入り、政治的事件でクビになった経歴は全く同じだ。そして評論活動をしている。もっとも今は天と地の開きだ。
     川本さんは映画・文芸評論家として第一人者だし、もう、「あの事件」を覚えている人も少ない。僕のほうは昔の〈政治活動〉を引きずったままだ。》

     川本が朝日新聞社をクビ(懲戒免職)になった「あの事件」とは、1971年に自衛隊朝霞駐屯地で自衛官が刺殺された「赤衛隊事件」のこと。
     当時『朝日ジャーナル』の若手記者だった川本は、指名手配中の犯人をひそかに取材。その過程で犯人にシンパシーを抱くに至る。そして、ジャーナリストとしての一線を超え、犯人から事件の証拠品を渡されて焼却するなどし、証拠湮滅の罪に問われ逮捕。懲役10ヶ月、執行猶予2年の有罪判決を受けた。
     その経緯は、川本の著作『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』(1988年/河出書房新社)で詳細に振り返られている。

     『マイ・バック・ページ』は忘れがたい名著である。私は、川本さんの数多い著書の中であの本がいちばん好きだ。それどころか、これまでに読んだすべての本の中で五指に入るくらい、深い感銘を受けた。

     書名のとおり、1970年周辺の出来事がおもに語られる本書は、いわば“対談版の『マイ・バック・ページ』”である。「赤衛隊事件」についても、1章を割いて語られている。
     また、本や映画を手がかりとして語られる70年前後の「政治の季節」についても、右翼と左翼という2つの視点から振り返ることでより立体的な像が結ばれる感じで、なかなか興味深い内容となっている。左翼同士、右翼同士の対談ではこうはいかず、もっとフラットな内容になっただろう。 

     それにしても、“朝日を懲戒免職された経緯”が大きな位置を占める本書が、朝日新書の一冊として刊行されたというのは、考えてみればすごいことだ。鈴木も書いているとおり、「朝日は懐が深い」。

  • 2017/3/18購入
    2017/4/28読了

  • 三沢知廉が怖い。
    マイバックページは原作よりも映画の方が素敵。やっぱり山本義隆はかっこいい。

  • 450.初、並、カバスレ、帯なし
    2012.6/30.伊勢BF

  • [ 内容 ]
    かたや民族派・新右翼の論客「鈴木邦男」、かたや新左翼取材で逮捕経験のある元朝日ジャーナル記者の文芸評論家「川本三郎」。
    同じ時代を駆け抜けてきた両者が、互いの70年代の青春を総括し、テロリスト、革命、戦争など、さまざまなキーワードをもとに、映画や文学を中心に語り合う。
    前代未聞の異色対談集。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 日本人は天皇は神だと信じている。その神のために死ぬ。死ぬことによって永遠に生きる。
    70年代、大学に行くのは全体の30%。つまり結構なエリートだったはず。無駄なことをしていたんだな。
    自民党は、昔は良かった、戻そう、といって、そのためには愛国心をきちっと教えて中学生にも武道を教えて、日本の良さを見直して、憲法を改正し、教育基本法を改正してと、誰も反対できない方向にもっていこうとしている。

  • 《行動派》《新右翼》の鈴木邦男氏と川本三郎氏の対談集。川本三郎さんがそんな略歴の持ち主だとは知らなんだ。(朝日新聞社勤務時代、朝日ジャーナルの記者をしていた時期に赤衛軍事件(自衛隊での左翼による刺殺事件)の犯人にシンパシーを抱き証拠隠滅を計り逮捕、辞職)そして鈴木邦男氏も同じ時期に右翼が起こした事件が元でサンケイ新聞を追われていたという。天皇制・テロ・三島由紀夫・暴力革命・三丁目の夕日……共に政治的な前線からは距離をおいた二人がゆったりと語り合う。

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著者プロフィール

川本 三郎(かわもと・さぶろう):1944年東京生まれ。「週刊朝日」「朝日ジャーナル」記者を経て、評論活動に入る。訳書にカポーティ『夜の樹』『叶えられた祈り』、著書に『映画の木漏れ日』『ひとり遊びぞ我はまされる』などがある。

「2024年 『ザ・ロード アメリカ放浪記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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