遠足型消費の時代 なぜ妻はコストコに行きたがるのか? (朝日新書)

  • 朝日新聞出版
3.22
  • (3)
  • (28)
  • (44)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 302
感想 : 40
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022733870

作品紹介・あらすじ

IKEAやコストコが家族で出かけたい場所ナンバーワンだと胸をときめかせて語る彼女(妻)たち。ただ「安いから」「高いから」という判断基準を取っ払った価値観は、なぜうまれたのか-。高級ブランド品よりも小さな贅沢。海外旅行よりもショッピングモールでプチ遠足気分を味わう。消費は海外旅行型から身近な遠足型へ。デフレだからモノが売れない?そんなの言い訳です。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • <内容>
    生活に必要なものは一通り揃い、モノが売れない「嫌消費時代」とも言われる現在において、なお売れているものにはどのような共通点があるのか。女性や子ども(若者)を中心にヒットした商品を分析し、近年の消費の在り方を紹介した一冊。

    <感想>
    「不況でモノが売れない」というのは、いい加減聞き飽きたフレーズである。若者の車離れで車が売れない、最近の若者は遊びを知らない、だからますます景気が悪くなる。そういう言説を聞くと辟易するのは自分が若者だからかもしれないが、安易にそういう言葉を口走りがちな「お父さん」たちに向けて(ちょっと挑発的に)「今どきの消費」についてレクチャーしてくれるのが本書である。

    「キラキラ」が必要性と密接に関係していた時代には、車・洗濯機・冷蔵庫などがバンバン売れた。さらにその後、消費がアイコンとなった時代には「キラキラ」はステイタスと結びつき、ヴィトンなどのブランドや海外旅行などが消費の中心となった。このように、モノを消費するにあたって「キラキラ」したものが必要だというのは昔も今も変わらないのではないかと思う。では現代の女こどもはその「キラキラ」を何に求めているのか。

    ハワイで豪遊したり、ヴィトンのバッグを揃えたりするようなバブル期の浮ついた消費を「海外旅行型消費」と呼ぶとすれば、ちょっとした非日常感を味わえる程度の現代の消費志向は「遠足型消費」と名付けられる。日常の延長にちょっとワクワクを見出す消費のあり方について、その最たる例としてコストコやIKEA、さらには郊外型の大型ショッピングモールにときめく主婦たちの姿が示される。

    また、第3章では「デフレ」「経済格差」「マス崩壊」など、モノが売れない言い訳にされがちな言説に対する批判がなされる。全体を通してかなり好みが分かれる文章(なんだこのふざけた文章は、と怒る人もいるかも)ではあるが、個人的にはなかなか小気味良いものだった。

    高度経済成長の時代をとうに終え、「成熟」のステージに立っている日本において、こういう遠足型消費はますます浸透していくのではないか。非常に興味のある話が網羅されていて、個人的にはかなり参考になる一冊だったように思う。

  • 675

  • 不景気だからモノが売れないのではなく、それによって変わった生活スタイルや価値観に対応できていないだけだと気付かされる。語り口調気味の文体は好き嫌いが分かれる。新書らしくて好き。
    ・バブル時代:ギラギラ消費「海外旅行型消費」
    ・ゼロ年代以降:堅実志向なキラキラ消費「遠足型消費」
     ⇒日常の延長として消費やレジャーを体験型で楽しむスタイル。日帰り。
    ・ルクエ:舶来物のキラキラした非日常性と実用性のリアリティ
    ・キッチンペーパーバウンティ
    ・花ふきん、白雪ふきん
    ・若年層ほど進む「コンサマトリー化(=身近な関係や幸せを大切にする価値観)」
     ⇒モノを買う=お金を払ってメンバーシップを得ることに近くなる
    ・総務省「国民生活に関する世論調査」
     ⇒日頃の生活で充実感を感じる(1989⇒2010)
      「家族団らんの時(40.7%⇒49.5%)」
      「友人や知人と会合、雑談をしている時(25.2%⇒41.6%)
    ・信頼される雑誌リー
    ・ルミネ
    ・情報が一瞬で消費されてしまう時代において絶えず変化を表現しつづける「キラキラ」した場所が今後ますます求められる
    ・低賃金労働の最後の担い手=囚人(アメリカ)
     ⇒福利厚生なし、組合なし、勤務態度○
    ・遠足型消費の優等生「埼玉」
    ・繰り返される「男性の女性化」現象
     ⇒1964年サザエさんで「男性の女性化」という台詞が登場している
     ⇒「みゆき族」の服装
    ・データの積み重ねが正解に繋がらない時代
     ⇒知識を持つことよりも知識を調整して統合する力が重要

  • 遠足型消費の時代 なぜ妻はコストコに行きたがるのか? (朝日新書)

  • 言いたいことはわかるが、やや散漫な印象。この表現や書きぶりだとターゲット読者のひとり「お父さん」は分からないだろう。

  • 最近、週刊誌の記事のようなレベルの低い新書が多いだけに、この本もその一つだろうと思って無視していたが、意外にも使える内容だった。今現在、消費財のマーケティングに関わる者にとっては大いに参考になる。

    異色のコンビによる共著で書かれた本書は、女性雑誌ライターがキャッチーで読みやすい文章を担当し、男性の東大大学院生が様々な現象について適格で理論的な背景分析を行うといった分担になっているのであろう。そのため、分かりやすくかつ説得力がある内容でとても参考になった。

    若者が自動車に感心を持たず、CDのミリオンセターが出ないなど、モノが売れない時代と言われている現代の消費市場について、やんわりとそれは売り手の言い訳だという。デフレによって消費者は賢くなり、本当に必要なものだけをを品質を見極めて消費する。だから、そうした安くて比較的品質の良い商品を提供しているユニクロやニトリが勝ち組となっているというよくある論調には意義を唱える。

    コストコやIKEA、H&Mで買い物をし、キッチンにはルクエ、愛読書はMart といった消費者は、決して必要ではないものでも躊躇なく購入し消費するという現象は説明できない。本書では、こうした商品や店には「キラキラ」があるという。それは今現在特有の現象ではなく、80年代のセゾングループや、都会でRV車が売れた90年代、遡れば19世紀のフランスに初めてボン・マルシェという名で初めてデパートが出来たときにパリ市民が熱狂したことなどを引き合いに、それはいつの時代も常にそうしたキラキラを輝く存在があるという。変化する市場に対して、どう向き合うかということが売り手には常に求められているということである。ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドも敏感にそうした変化に対応して自らのポジションを変化させているのである。

  • キラキラ

    消費なる言葉を、古市さんと中沢さんのお二人がつけたらしい。そんな言葉どうでもいいけど。身近な非日常感を感じられる消費。
    イオンなどのショッピングモール、アウトレットモール、コストコ、イケアあたりは、この遠足型消費になるよう。

    質や価格だけでなくて、購入するまでの流れや購入する場所の雰囲気、購入する相手、、、。
    買うものに溢れ、価値あるものも溢れているなかで、この視点はこれからもっともっと重要になると思う。
    ストーリーを買うなんて言葉も出てきているけど、ものの価値は、単純に価格や性能では測れなくなっている。

  • まぁまぁ。

    とはいえ、壊れやすい家具や既にほつれた洋服を進んで買いたいとは思わない。そんな私はお父さんに該当しそう。
    つまるところ、価値観なんて人それぞれ

  • その場所でしか感じることの出来ない感動の価値は逆に高まっている
    値段がそこまで高いわけではなく、非日常と日常の間にあるキラキラしたものを買うスタイルを遠足型消費と定義
    企業が出来ることは、あらゆる人の共感を得ることではなく、感度がいい人にいかに共感してもらえるか

  • 最近メディアでよく見る古市さん著書のひとつでタイトルにコストコと書いてあったので読んでみた。ザクッと内容をまとめると成熟した時代に消費を呼び込むのはキラキラしたもの。要は生活の中にいつもと違う特別な感じをもたらすものが売れる。確かになるほどと思う、事実、自分もコストコに行くとちょっとウキウキするし、購入するものも自分の生活にちょっとスパイスを入れたいものだったりする。

全40件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

中沢 明子(ライター/エディター)

「2023年 『ガールズ・アーバン・スタディーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中沢明子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×