財務省支配の裏側 政官20年戦争と消費増税 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022734440

作品紹介・あらすじ

政権交代で「財務省の敵」自民党の族議員が退場し、民主党は政治主導に、あえなく失敗。そのスキを突いて凋落の一途をたどっていた財務省が、再び「盟主」の座に-。しかし、本当はこれほど単純な図式ではない。政治と官僚組織との「20年戦争」の帰結なのだ。元キャリア官僚が、最強官庁の実態を実例を挙げて徹底解説。大阪維新の会など、今後の政治・行政の行方も予測する。

感想・レビュー・書評

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  • 財務省が支配している
    とマスコミが煽っているだけで、
    それだけとは限らないということがわかった。
    そうとは言い切れない複雑な、政官の関係。
    (財源について言うならば)財務省はやれる限りのことをやっているとは言い切れない面があると筆者は言っているが、そこは自分も同感だった。
    やるべきこと、できることをやったらモノ言って欲しいものだ。

  • 政と官の関係の歴史・変遷は興味深い。ただそれ以上のことは余りにも散漫で「だからなんなの」としか思えない。筆者は財務省陰謀論を唱える人に読んで欲しかったんだろう、そんな単純なもんじゃないよという思いは伝わる。

  • 4〜5

  • 浮薄な財務省陰謀論では決してない。著者官僚時代の体験や現財務官僚の生の言葉などを基にした極めて実証的なものである。分析は冷静であり偏りもない。頗る信頼できる。バブル以前と以降の財務省、官僚支配の真実など、内容は興味深いものが多い。出色は民主党政権の体たらく。民主党が財務省に傾斜しなければならなかった背景。統治能力をなくし没落していく経緯。そして財務省復権への道程。財務省批判というよりは民主党批判の色合いの方が濃かったように感じた。

  • 第6章「政官共倒れの後にくる政治カオスと国家破産」が面白かった。財務省うんぬんよりも閉塞した社会の情勢が「大政翼賛」的な「空気」を「醸成」しているという分析。
    216ページの「日本全体で『漠然とした神風頼み』という意識が年々強くなっている」というのは僕自身も「宝くじくらいしか生活改善を頼るところがない」みたいな感覚に近いものを感じる。

  • 本書の著者の中野さんは就職浪人を経て故郷の市役所で公務員になり、その後、厚生労働省のキャリアになったと言う一風変わった経歴の持ち主です。
    現在は兵庫県立大学大学院教授としてメディアなどに登場する機会もあり、著者の事をご存じの方も居られるかと思います。

    本書は、この中野さんが以下の政治家と財務官僚の関係の変化の歴史に触れつつ、両者の関係性や財務官僚の強みと弱み、限界等、彼らの実態を解説しながら財務省支配論、陰謀論とは具体的にどの様な物であるかを解明している一冊です。

    ¨拒否権¨を握った政治家が、政策や予算案の立案などを行う官僚を最終的にコントロールしてきた自民党政権絶頂期から、バブル崩壊後には、官僚とWin-Winの関係を築く余裕が無くなった彼らが官僚を攻撃して自らの利益をはかったWin-Loseの時代へと変化した。

    その後の民主党政権の成立に伴い、子供手当て等の予算案成立、財源確保、事業仕訳への協力を行った財務省は他の官庁とは違い組織保全に成功。

    そして、自失を重ねた民主党政権が自民党政権崩壊に伴なって発生した力の真空地帯の穴埋めに失敗した事により、代わりに財務省が影響力を強め、彼らを中心としたかつての¨霞ヶ関¨の再建を目指している



    そして、巻末ではそれまでの解説内容に基づき、日本の将来予測を行っています。

    著者は巻末において、

    この現状に対して閉塞感を強めている民意は、政治家はもとより彼らを支える官僚、その他のエスタブリッシュメント層をまとめて排除する方向へと動くのではないか。

    しかし、彼らを排除して出来た真空地帯を埋める存在はなく、その為、社会が不安定化し、これにうんざりした民意は再び安定を求めて過去回帰へと向かうのではないか。


    と予想し、大切なのは政治の質により如何様にも姿を変える財務省を使いこなす事であり、その様な政治の基礎は国民であると結んでいます。



    アメリカの大学や大学院でインテリジェンスの教科書として使われている「インテリジェンス―機密から政策へ」と言う本によれば、

    政策担当者がインテリジェンス提供側に対して、優先順位(テロ対策が最優先なのか、核拡散防止が最優先なのか等)を的確に伝えないと、インテリジェンス提供側は政策担当者の領域へと踏み込み、独自に優先度を設定する様になる。

    との事。

    また、本書によれば、現在、財務省はその予算策定の歴史に伴なって各省に張りめぐらされた情報入手路から得た情報を分析・加工し、政権運営に役立つインフォメーションパッケージ、つまり政権運営の為のインテリジェンスとして民主党政権に提供しており、
    民主党の「政治家自身が決める事なのに何も決められない」と言う現状も考慮に入れると、財務官僚の影響力の拡大は必然的と言えるのかも知れません。

    加えてロシアを例としてあげると、

    旧ソ連では共産党がKGBをコントロール化においていたが、ソ連崩壊後の共産党政権の崩壊、そしてその後のエリツィン政権の混乱により生じた権力の真空地帯を、プーチン大統領を始めとするFSB(KGBの後継機関)出身者が埋めている。
    これは、共産党と言う重石がなくなり、またそれに代わる物も誕生しなかった事により、それまで頭を押さえつけられていたKGBが自らの力を拡張させたと言う側面がある。

    との事で、自民党政権崩壊により、族議員と言うこれまで財務省の頭を抑えてきた存在が消滅した事により、財務省の影響力が拡大されたと言う側面もあるのではないかと思います。
    とは言え、財務官僚が法制度を自らの拠り所としている以上、同時に同じ制度により彼らの限界も定められており、政治家の力が回復すれば必然的に財務官僚の影響力も減少していきます。

    しかし、政治家側の統治能力が強化される兆しはありません。
    更に、規制改革を押し進めた小泉政権への反動として誕生した民主党政権は、規制改革の長所と保護政策の長所の良い所取りを希求しており、その為、小泉政権よりも複雑な事を実施する必要が有ります。
    つまり、かつて盛んに言われていた「脱官僚」に反して、元々官僚を必要としたと言う事になります。

    加えて、最近読んだ「中国化する日本」と言う本によると、(私の記憶違いでなければ)

    日本では、強力な自由化が進められた明治時代への反動として大正時代以降、保護政策が進められ、この流れを引き継いだ戦前の東條内閣は両者の良い所取りをしようとした結果、何も出来なくなった

    との事で、規制改革と保護政策の良い所取りは失敗の可能性が高いと言えるのではないでしょうか。


    この様に考えると本書の結言通り、現状の問題を解決するには政治の復活しか方法が無い様に見えます。


    いずれにせよ上記考えの妥当性に関わらず、余り目にする機会が無い官僚と政治の関係性について率直に解説している本書は中々貴重な存在ではないでしょうか。

    一読をお薦めします。

  • 厚と労とでは、厚のほうが根回しテクニックが研ぎ澄まされているとのこと。

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著者プロフィール

神戸学院大学現代社会学部教授。1964年、奈良県大和郡山市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業、The School of Public Polich, The University of Michigan 修了(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)。大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省入省(国家公務員Ⅰ種試験行政職)。厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、2004年公募により兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授、その後教授。2014年より現職。2007年官房長官主催の「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員、2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務める。主な著書に、『天下りの研究』『公務員バッシングの研究』(明石書店)、『政治主導はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞社)、『財務省支配の裏側』(朝日選書)など多数。

「2018年 『没落するキャリア官僚 エリート性の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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