新書345 第四の消費 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022734457

作品紹介・あらすじ

高度成長、オイルショック、バブル、そして長引くデフレ……日本人の消費は発展段階に応じて変遷し、消費の単位も「家族」「個人」と変わっていった。次に消費が向かうのはどこか。消費社会マーケティングの第一人者が大胆に描く近未来予想。物から人へ! 日本人の豊かさが変わる。

感想・レビュー・書評

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  •  三浦展の名前で、職場の本屋で購入。

     これは、現在の消費を第四の消費と分析しつつも、都市計画、まちづくりの観点からも非常に参考になる良著。

    (1)辻井喬:財界の大御所たちがコンセンサスを持っている意見の反対をいったら、まず間違いなく時代が読める。(p290)

    (2)西村浩:(佐賀市のまちなかのプロジェクト)僕らが提案したことは、空いている駐車場を全部はらっぱにしたら、まちが変わるのではないか。(p280)

     なるほど、そういうアイディアがあったか。昭和3,40年代はいなかの街中にははらっぱあって、子供が遊んでいたな。どらえもんにもよくでてくるもんな。はらっぱ。

    (3)マンションに20年ほどおくれて、住宅地も管理する時代に入るのである。(p252)

     理由は、空き屋が増えて、放火がされたりして、資産価値が下がるのを防ごうとするため。いやな理由だが、アメリカのHOAのようなものができてくるという話。

    (4)第四消費社会の原則。1ライフスタイル、ビジネス、まちづくりなど、社会全体をシェア型に変えていく、2人々がプライベートなものを少しずつ開いていった結果、パブリックが形成されていくことを促進する、3地方独自の魅力を育て、若い世代が地方を楽しみ、地方で活動できるようにする、4金から人へ、経済原理から生活原理への転換を図る。(p235)

     納得感あるな。ほとんど都市計画の方向ともあっている。

     都市計画、まちづくりにもとても役立つ本です。

  • 著者の消費、差別化、下流といったテーマの本の現在のところの集大成と思われる。消費活動の流れ、分類の仕方も良くわかり、共感できるところが多い。また、第4のシェアという考え方は、まさに時代とマッチしていると感じる。
    本書の構成、後半部分には、対談が多い。これは本の性格上、不要なのではないかと思う。

    ・消費、物を買うという行為は、マスコミによって作られてきた、と感じる。マイホーム、3種の神器を始めとして、ブランド志向へ。まさに家⇒個へ
    ・消費の影で、コピーライター杉山豊志の死は何を物語るのか?夢がないのに夢売れぬ。
    ・Have⇒Beへ
    人と同じものを持つ⇒自分がどうありたいか
    ・分衆 金魂巻
    まる金 まるビ
    ・高度消費社会で自分捜し make up
    ・これから、シンプル⇒日本⇒地方指向へ
    ・文明社会で、古いものが忘れ去られていく⇒死が無意味⇒人生は完成せず⇒生も無意味となる
    (なくなってしまうから貴重なもの、若さ、健康etc)

  • 少数の中流階級が消費を楽しんだ第一の時代、量を増やせの第二の時代、個人化に向かった第三の時代、そして第四の消費時代に入っている。
    「消費」の変遷と、第四の消費の時代の特徴とは?

    著者は「アクロス」の編集長。そういえばアクロス、80年代によく読んでました。前の会社で定期購読してて、出るとかりて読んだりしてて、何とも懐かしいです。

    内容は時代を追って、その時代の消費というものがどんなものだったか、その背景には何があったのか、当時の出来事やキャッチコピーなども取りまぜて説明しています。

    学者さんの書く本でこういう感じのもの結構ありますが、さすがアクロスで長年マーケティングを研究されているからかライブ感があって読んでいてもおもしろかったです。
    家電から個電、消費から創費といった変化を表す言葉も、そういえば当時言われてたな~と新人類(ってもはや旧時代だけど)世代の私としては何だか懐かしい感じ。

    で、タイトルになっている第四の時代、2005年くらいから、と定義していますが、ざっくり言うと資本主義的な消費が来るところまで来てしまって、所有から利用へ。シェア、や、コミュニケーションが中心となってくるという話。
    こちらももう既に色々なところで語られている事だったりしますが、やはりまだ研究しきれていないからか?第三時代の分析と比べるとちょっと迫力がないのが残念。

    この中で印象的だった話が、「うれしさ」と「楽しさ」は微妙に違う、という話。

    この2つは似たような言葉だけれど
    「昨日は友達と○○に行って楽しかった」という言い方と
    「昨日は友達と○○に行って嬉しかった」という言い方。
    後者のほうが「友達と」に力点があるよね・・・・
    そしてシェア型の社会というのは「楽しい」よりも「嬉しい」を消費者は求めているんじゃないか、という話。
    なるほど、これは面白い示唆だと思う。

    あと、コミュニケーションデザインの山崎さんとの対談とか、こちらは今回初めてしったけれど、佐賀のシャッター商店街を原っぱにしてコミュニケーションの場にしたという話は面白かった。
    こういうシャッター商店街、全国にいっぱいあるけれど、こういう再生の仕方というのは今後参考になると思う。

    時代がこう流れていっているというのに異論はないんだけれど、個が尊重されるようになってきたのはやっぱり理由があるわけで、シェア型、コミュニケーション型といってもやっぱり個が尊重された上で、というのが前提になるんじゃないかと思う。

    そういった中で、今までになかったトラブル、コミュニケーションが密になるがゆえに起こる摩擦もあるんじゃないかと思うんだけど、どうなんだろう?
    「つながり」「絆」「シェア」「コミュニケーション」、今後のキーではあるけれど、その影の部分を論じているものってまだ見ないけれど、そういうのってないのかな。それが気になりました。

  • 2012.05.09 この本には、著書である三浦展氏の半生が投影されている気がした。そしてこの辛い現代社会において幸福な生活を見つけるヒントも隠されていた。底が抜けてしまった、厳しい不安定な社会の中で、わずかだが生きる勇気がわいた。小説でもないのに、ところどころ泣けた。そして、若い世代の中には、確実に日本を変えるやつがいることを改めて再確認した。

  • ここでの未来はこれからより現実化してく。将来の選択に、確信を持てた本

  • もっと早く読めばよかったああめちゃくちゃ読みやすくて分かりやすい。読みながら、こんなアイデアもあるんじゃないか?これはこのうよにも考えられるのではないか?と思考を拡張してくれて、ワクワクしながら読めた。具体的にパルコのアクロス作ってた人だから ファッションの話は参考になったし、ファッションヘッズじゃないから、服と消費者を俯瞰して見れていて自分にはない視点が新鮮だった。我々の世代は、環境教育を受けてきたことは稀有なことだと知らなかったが、だから、古着も着るし、もったいないという思考からメルカリが流行る側面もあるのかも。ファッションを多面的に考える際に、エシカルな視点は必須だと思うが、今後は、もっと大事になるのだろうなあと。

    問題解決をしたいときに、目先の自分の小さい視点で問題と向き合ってると、何も変わらないし、堂々巡りで、論理的に俯瞰して物事と向き合えるように頭動かし続けないとな

  • 戦後からこれまでの時代の遍歴と、消費者の消費行動がどのように変化したか、俯瞰して学ぶにはかなりの良書だと思う。マーケティング初心者にも人口動態を用いて分かりやすく解説してくれてる。勉強になりました。

  • "第三消費社会から第四の消費社会への変化の特徴は以下の五点である。
    1 個人志向から社会志向へ、利己主義から利他主義へ
    2 私有主義からシェア志向へ
    3 ブランド志向からシンプル・カジュアル志向へ
    4 欧米志向、都会志向、自分らしさから日本志向、地方志向へ(集中から分散へ)
    5 「物からサービスへ」の本格化、あるいは人の重視へ"

  •  近代から現在までの消費やその社会背景をざっとつかむ分には、とても分かりやすく良書だと思います。当時のコピーも分かりやすく具体例として使われていて、第一から第四の消費の時代に移行しているというのも、突いているなあ、と感じました。

     インタビューも面白いです。無印良品の社長さんへのインタビューや建築家のかたへのインタビューなど、新たな取り組みがいろいろとはじまりつつあることが分かります。

     ただ第四の消費の「つながり」という点はよかったと思うのですが、それがすぐに愛国とか地方への愛着、エコリズムにつながるという点はうなずけなくもないのですが、ちょっと根拠に欠けるかな、という感じがしました。

  •  記者時代、街が過疎化する要因で「若者が魅力に感じる店がない」がよく上がった。「それが理由なわけがない」と地方で生まれて東京でも暮らして、再び地方に戻ってきて思う。ここでいう「若者が魅力に感じる店」は大きなファッションビルやスタバで、そのようなものを必要とする「欲望の満足は、それがまだ成就されていないあいだにだけ成立し、完全に成就された瞬間に消滅するという、きわめて皮肉な構造によって人間を翻弄する」だけだ。
     著者は消費とは何かという問いに、劇作家・山崎正和氏の言説を引用する。いわく「消費とはものの消耗と再生をその仮りの目的としながら、じつは充実した時間の消耗こそを真の目的とする行動だ」
     タイトルの「第四の消費」はまさにこの消費そのものの行動として紹介されている。第三の消費までの「私有志向」から、つながりから充足感を得る「シェア志向」への変遷を歴史的な経過と消費行動の変化を例示しながらわかりやすく示している。後半の地方への回帰に関する論拠は情緒に偏った論説が目立ち、あまり興味はそそがれなかった。だが、歴史を踏まえて、現在の消費動向を考える上では良書だと思う。

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著者プロフィール

三浦展(みうら・あつし)
1958年生まれ。社会デザイン研究者。カルチャースタディーズ研究所代表。家族、若者、消費、都市、郊外などを研究。著書に『 「家族」と「幸福」の戦後史――郊外の夢と現実』 (講談社現代新書) 、 『ファスト風土化する日本――郊外化とその病理』 (洋泉社新書) 、 『東京は郊外から消えていく!』 『首都圏大予測』 (光文社新書) 、 『愛される街』 (而立書房)などがある。

「2022年 『中央線がなかったら 見えてくる東京の古層』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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