自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)
- 朝日新聞出版 (2013年2月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022734907
作品紹介・あらすじ
自衛隊のメンタルヘルスの教官が、「心のムリ・ムダ・ムラ」を防ぎ、バランスよく生きていく実践的方法を伝授。組織を率いるリーダーにも役立つ内容が満載。
感想・レビュー・書評
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座右の本の1冊。なんか疲れたな、と思ったときはこの本に立ち返るようにしている。
「目標の7〜3バランス」や「感情疲労」など、覚えやすく活用しやすい概念が豊富で、極めて実践的な内容。しかも、非常に読みやすい。自衛官の文章だからだろうか。戦況等の端的な伝達を求められる仕事をしていると、自ずと文章も磨かれてくるのかもしれない。
今回再読して気付いたが、この本の核心は「疲れをとる技術」そのものよりも、むしろ、疲労が生み出されてくる根本的な原因の分析、もっと言えば「人間とは・日本人とはどのような生き物か」という観点にある。そこを体得することができれば、自分に合った疲労のコントロール方法を自力で工夫していけるだろう。
「感情疲労」について。
現代的な疲労の原因のひとつは、絶えず感情が刺激されてしまう情報過多な環境にある。
感情は「原始人が生死に関わる対応をするためのもの。つまり、命がけ、いちかばちかの反応」(p.129)なので、むやみに刺激するとエネルギーを使いすぎてしまう。そして、「感情疲労によるエネルギーの不足」こそが、現代的なうつ症状の主な原因だと著者は見ている。
情報技術の高度化と心理学的知見の蓄積によって、人間の感情を思うように刺激し、行動をコントロールする手法が洗練されてきている。そんな世の中にあっては、ぼんやりしていると、いつの間にか自分の感情がかき乱されて疲れが溜まっていく一方だ。特にネットニュースの類は、タイトルに工夫をこらし、読者の感情を波立たせようと不必要に煽ってくる。まあ、まさにその「感情を動かされる感じ」が楽しくて、暇つぶしに読んでしまうこともあるが……これも「暇と退屈」の問題につながるのか。
なんだかまとまらないが、とにかく良い本だと思う。
以下は抜粋。
・私は、自信を3種類に分けて考えている。
第1の自信は、できるという自信。英語ができる、逆上がりができる。この概念はわかりやすい。(中略)
第2の自信は、自分の体や頭脳の機能に対する自信。「自分は、機能している」という感覚だ。(中略)
第3の自信は、周囲に受け入れられるという自信だ。日本人は、特にこの自信の有無に行動が左右される。(p.77-79)
・(「対人不安」、「怒り」、「自信のなさ」、「自責」という)この四つの苦しみの背景にあるのは、経験の乏しさによる「価値観の未熟」だ。
例えば、他人や世の中を変えられると思っている。
例えば、自分は周囲から大切に扱われるべきものと思っている。
例えば、努力すれば必ず報われると思っている。
例えば、正義は必ず勝つと思っている。
しかし、理想と現実は違う。(p.146)
(※特に「自分は周囲から大切に扱われるべきものも思っている」は、ぎくりとした。たしかに、そう思っている)
・人間は、自然や環境などを変えながら発展してきた。しかし、自分が動物でしかないという事実を忘れかけている。自分の能力には限界があること、自分は疲労すること、感情によって大きく影響を受けることなどを、受け入れよう。(p.238)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
YouTubeでほっしーさんがお勧めの本で拝読しました。親が短期間の間に入退院をし疲労がとれず焦っていたので休み方や何故疲労が蓄積されるのかが理論的に書かれていたので読みやすく日常でも実践できそうです。
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本書を読んで最も印象に残ったのは、無理をしている人は「子供の心の強さ」を持っている。子供のような成長期には我慢して努力すれば伸びる確率は確かに高い。ただ、大人になり能力に陰りが見え始めた段階で「子供の心の強さ」だけにしがみついていると徐々につらくなる。大人になったらなったで、あるもので対処する能力も身につけねばならないとの記載でした。
成功するのに忍耐は重要とは思いますが、やはり過剰な忍耐は本人のためにもならないことが上記の記載からも確かだなと思えるようになりました。
私自身は頑張りすぎることはない人種になりましたが、世の中は必要以上に頑張る人もいて、そういう人に限って体調を崩して仕事を辞めざる得ないような話もあります。大きな無理はリ-ダ-シップの失敗と心得よと本書でも書かれているように、真面目すぎる人は自分の責任と思わず、休む時は休むことが重要なのだなと改めて感じさせる本でした。 -
•心の疲れをとる技術、人間関係の疲れをとる技術、両方読むことをお勧め。
•個人的には、ムリは3段階で進行する、という箇所がとてもためになった。自分の場合、身体疲れ、感情疲れが2段階以上になると、ちょっとしたことが負担になり、怒りやすくなる。この場合、まずは身体を休める事を優先する。 -
自衛隊の人だからか、疲れた人を少しも責めていないのに、語り口がきびきびしていて力強いのがよい。ところどころそのまとめ方はどうなの、という箇所もあるけれど、経験を通じて手に入れた知恵を分けてもらうような本だった(自衛隊式なら生存率が上がりそうな気がするプラシーボ効果もあるかも...)。疲れているときの物事の感じ方、蓄積するストレス、感情疲労について、疲れ切って別人になる前に読めてよかった。
ふつうの人たちからなるチームをまとめるリーダーに役立つセクションも多々あり。 -
何回か読んでます。
人にもオススメしたい本。
自衛隊と書いてあり、レンジャーのという事を想像したが、全然そんなことなく、極限状態にあることは自衛隊員もサラリーマンも一緒なのかもしれない。
その中で無理には何段階かあって、それぞれの対応の仕方などは頭で分かってるつもりで、言語化されたきがしてる。
また定期的に読みたい1冊
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まさに現在第2段階「ムラ」のリハビリど真ん中、仕事はムラだらけ信用を無くし自信マイナス自責の念がグツグツしております。休んでも休んでも心の疲労の治し方が分からないまま今に至り、ほぼ全ページ「ああ、あの時のアレはこれだったんだ」と嘆息するばかり。やる気なんか湧く訳がなかったのだ。今からでも働けるようになるかなぁ。
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ムリ・ムダ・ムラが自分にとっても集団にとってもいいことではなく、安定したパフォーマンスが落ちる。そうするとシャレにならない自衛隊という組織でどう考えられているかという感じ。客観的に、そういうことがロスであるということ。適切に客観視すること、自他でこういう知識を共有した上で建設的に運営すれば確かに組織としては強いだろう。しかし、今は、無理を強いられがちな時代でありそうしないと結果が出なかったりもする。とはいえ、全体でこういう前提があれば少しは円滑で安定した組織作りが出来るように思う。
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神よ 私たちに
変えられるものを変える勇気と、
変えられないものを受け入れる冷静さと
その2つを見極める知恵を与えたまえ
(神学者 ニーバー)
という最後の言葉に本書の内容は集約される。
メンタル系の本はいろいろと読んできたが、その中でもかなり良い部類に入ると思う。
印象に残ったのは「子供の心の強さ」と「大人の心の強さ」の違いと移行。要するに子供のガンバリズムの精神を大人になっても持ち続けていると、いつか破綻するという事。
さすが極限状態に追い込まれる自衛隊のメンタルマネジメント本とも言えるが、自衛隊は自殺率の高い組織でもある。このやり方が通用しない別の問題があるのか?そもそも本書の内容は机上の空論で運用が難しいのか・・・。