肚(はら)が据わった公務員になる! 新しい仕事哲学と自分の鍛え方 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.44
  • (2)
  • (11)
  • (11)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 113
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022735584

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会】今や「全体の奉仕者」なんて、本人も市民も考えていない公務員の、身分保障や社会的地位、将来像は? 市町村から霞が関まで、彼らの実態を解明し、働き甲斐の指針となる「仕事哲学」を提議する。著者は市役所からスタートした異色の元キャリア官僚。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 役所や公務員の環境が変わっていく中で、どのように公務員は仕事をしていけばよいのか、提案した一冊。、全体の奉仕者という現実離れしたものでなく、「ソト向き」「ウチ向き」の哲学、「仕事の哲学」をしっかりと持ち、肚の据わった公務員になるよう勧めている。なお、最も中途半端なエリート都道府県職員というのはうまい。逆にその中途半端さを強みに、「地域ブランドの確立」「地域生活の守護神」となることを提案。最終的には、大学教授になることを目標にとのこと。

  • 公務員の世界がわかってよい

  • 著者:中野雅至(1964-)
    図表作成:谷口正孝


    【目次】
    はじめに――非現実的な「全体の奉仕者」は、もうやめよう [003-013]
    目次 [014-022]

    第一章 公務員の環境はなぜ激変したのか? 
    (1)  大臣より偉かった事務次官と、ふんぞり返っていた市役所の課長
    (2)  長期不況と少子高齢化で崩れ去っていった官僚神話
    (3)  「本省の課長」という名称が遠のいた、この加年間の霞が関
    (4)  「官尊民卑」から「民尊官卑」へ――インパクトを与えた民間原理の導入
    (5)  政治主導体制の嵐の中で「専門性は無力か?」と嘆く日々
    (6)  汚職続きの官僚機構と、鳴り止まぬ公務員バッシング
    (7)  ブラック企業化する霞が関

    第二章 公務員は何のために働くのか?
    (1) 公務員の仕事の哲学が暖昧な四つの理由
    (2) 公務員にも必要とされる「ウチ向きの仕事哲学」
    (3) 「ミスター財務省」と「ミスター外務省」は似たような性格か?
    (4) わかりにくい「全体の奉仕者」vs.わかりやすい「天皇の官吏」
    (5) 「無償の奉仕者」が何百万人も存在するという壮大なフィクション
    (6) 「ごり押し権力」への対処から、自覚が生まれる
    (7) 「制約を何とも感じない」という現役公務員のふがいなさ
    (8) 「社会問題の解決」こそが公務員を奮い立たせる!

    第三章 タブー視されてきた疑問、「公務は自分に役立つのか?」 
    (1) ラーメン屋の仕事哲学が、なぜ世間に受け入れられるのか?
    (2) 公務員とプロフェッショナルを分けるもの
    (3) 公務が公務員を成長させることを、自己宣伝すべきだ
    (4) 限界を超えようとする熱血教師と、言い訳ばかりの市役所職員
    (5) 「全体の奉仕者」という理念をやめるなら、公務員にも厳しい処分を

    第四章 キャリア官僚の誇りは、どうすれば保たれるのか 
    (1) 「上から目線」が岐路に立たされているという現代官僚のジレンマ
    (2) 「統治権の一部を担っている」という感覚がなくなる日
    (3) 専門家としての誇りを生み出せるかが、キャリア復権のカギ
    (4) 労働条件よりも仕事の中身で悩むキャリア官僚の憂鯵
    (5) 難攻不落の霞が関が政治に籠絡される日
    (6) 「塩漬け人事」で悩みが深くなる中高年官僚
    (7) 文科系最強の職業であることは変わらない
    (8) 「リボルビングドアー人事」に備えたサバイバル自己啓発
    (9) 著名大学教授には、そう簡単になれない?
    (10) 出向期間をどう過ごすかで老後が激変する

    第五章 ノンキャリア国家公務員の本当の悲哀 119
    (1) 「ノンキャリアの星」が増えない限り、モチベーションは上がらない
    (2) 「バランス重視のキャリア」嗜悪徳権力と戦う正義のノンキャリア」
    (3) 地元の利益と本省の方針の狭間で悩む中で誕生する「道州制公務員」
    (4) 出先のノンキャリアの能力が劣るのは、議会がないからだ!
    (5) 試験の種類と学歴に一生縛り続けられる国家公務員の世界
    (6) 「裏金担当」の見返りがないノンキャリアの闇
    (7) 創意工夫を忘れるノンキャリアと、刺激を求めるノンキャリア
    (8) ノンキャリアの自己啓発は「出世ノウハウ」を学ぶことから
    (9) 関連団体への天下りよりも、地域の中小企業のヒーローを目指す

    第六章 日本で最も中途半端なエリート――都道府県職員の悩み 149
    (1) 都道府県職員は、なぜ白けているのか?
    (2) 「県名」には愛着があっても、「県庁」には愛着を感じない住民たち
    (3) プロデューサーの視点で大仕事――「地域ブランドの確立」
    (4) これからの大きな役割は「地域生活の守護神」!
    (5) 国へのご意見番になれ
    (6) たまたま配属された部署が一生を左右する?
    (7) 「学歴」「教育投資」「本人の努力」から見ても、不満だらけの給料
    (8) 都道府県職員の仕事は、なぜ詰めが甘いのか?
    (9) 野心を持ち、異業種交流会を立ち上げる
    (10) どんどん出向し、世界を広げるくし
    (11) 都道府県職員は大学教授を目標に!

    第七章 高学歴者が殺到する市町村職員の将来性 
    (1) 怖い人もいるからこそ、「住民から逃げない」という覚悟を
    (2) 「地域のタブー」に立ち向かえる職員は、どれだけいるか?
    (3) 「仕事に刺激がない」とスナックでぼやく市町村職員の甘え
    (4) 給料の額まで隣近所に詮索される職員の三つの悩み
    (5) 世間を盛り上げるポピュリストから無造作に扱われる労働条件
    (6) 「生活保護と用地買収を嫌がる職員」と「出世したくない職員」
    (7) 車やカメラより、「住民と向き合う」ための自己啓発を!
    (8) 地域の専門家としての知名度を確立する
    (9) 市町村職員は首長を目指せ!
    (10) 「10年後に出版する」という気持ちで街歩きを!

    第八章 専門職公務員と安保・治安系公務員の悩みと 213
    (1) どうして公立大学教員は辞めるのか?
    (2) 大学教員や医師が地域に帰属意識を持たない四つの理由
    (3) 「地域に役立つ大学・病院」では、視野が狭すぎないか?
    (4) 「地元住民の誇り」と言える大学や病院が地域を救う
    (5) 安全保障・治安系公務員の仕事哲学とは?
    (6) 気分的な右傾化から、外交に重心を移した本格的な右傾化への転換
    (7) プロフェッショナリズムと自己犠牲
    (8) 警察や自衛隊はれっきとした役所である
    (9) 側治安系公務員の台頭で求められるのは、国民の公共哲学である

    第九章 公務員は「おいしい職業」か? 245
    (1) 労働条件は大企業と比較してくれ、という本音
    (2) 公務員の労働条件に対する国民の本音は常に揺れ動く
    (3) ドラマ「水戸黄門」には、国民の官への正直な意識が表れている
    (4) 大企業と公務員なら、あなたはどちらを選びますか?
    (5) 高齢者で満員のバスから見た、大企業との労働比較
    (6) 公務員に向く人と、公務員に全く向かない人

    おわりに――肚を据える覚悟(2014年3月 中野雅至) [267-274]

  • ■民間原理の導入は主に三つの側面で役所や公務員にインパクトを与えた
    ①仕事のやり方
     ・コスト重視
    ②役所の組織そのものの変化
     ・役所本体のスリム化
    ③公共の多様化
     ・公を担うのは役所だけに限らない
    ■公務員の仕事の哲学が曖昧な四つの理由
    ①あまりに多種多様
    ②「全体の奉仕者」という曖昧性
    ③国民側も公務員を見る目が一定していない
    ④ウチ向きの哲学がない
    ■「全体の奉仕」ばかり強調されて公務を通じて公務員自身が能力を伸ばせるかどうかを考えることがタブーとされてきた。働き甲斐を求める公務員が増えている今,この問題を深堀することがなければ,公務員のモチベーションは高まらない。
    ■ウチ向きの哲学とソト向けの哲学が二つそろって「仕事の哲学」になる。
    ・自己実現,成長,やりがいなど内部に向かうもの
    ・社会貢献や他人を助けるなど外部に向かうもの
    ■課長→局長→事務次官→大臣→総理とレベルが上がっていくと,許可を得ること自体が一大仕事になり果てる
    ■内務官僚だった大森鐘一が官僚になろうとした息子のために作成した心得(「長男仕官に就き与えたる訓戒の書」)
    ①高潔で,どんな種類の批判にもさらされるようなことがあってはならない
    ②私情を交えず,公平に任務を遂行する
    ③常識を養い,中道を重んじる
    ④他人の意見に耳を傾け,出しゃばり過ぎてはならない
    ⑤最新の注意を払い,額に汗して働くことを惜しんではならない
    ⑥言動を慎む
    ⑦約束を守る
    ⑧質素な暮らしをする
    ⑨質問することを恥ずかしいと思ってはならず,また,他人には進んで教える
    ⑩上司にへつらわず,同僚には忠実に接する
    ⑪趣味に溺れない
    ⑫滅私奉公を旨とする
    ⑬公務を口外しない
    ⑭公務に満足しなければならず,それ以外の事項を望まない
    ⑮神仏を敬い,孝の精神で年長者を敬う
    ⑯制度にせよ地域にせよ,自己の管轄の歴史を学ぶ
    ⑰平静にものごとに対処する
    ⑱公務について学び,高い学習水準を身に付ける
    ⑲党派的な争いを慎む
    ■国民の多くは公務員以上に苦しい状況で働いている。
    ■ウチ向きの哲学は公務員自身が自らの手で作り出さなければいけない。
    ■民間は積極的で公務員は消極的だと批判されるが,それは官民の構造的な違いも背後にある。
    ・役所は民間企業と比べてはるかに制約が多い
    ・企業のステークホルダーはそんなに多くないが役所のステークホルダーは無限
    ・全体のバランスを常に考える必要がある
    ・個々人に裁量権がない
    ・人事評価がネガティブチェック
    ⇒「できない」「難しい」という発想から入る。
    ■調整仕事を通じて人脈が形成されていくが,人脈こそ官僚の専門知識の神髄だとみなされる時期が来る。
    ・「企画立案能力」と「調整力」の二つが専門知識の中身
    ■労働条件よりも仕事の中身で悩むキャリア官僚
    ①仕事の中身(膨大な作業や非効率的な仕事のやり方)
    ②仕事量(膨大な残業時間)
    ③仕事の成果(専門知識が身につかない,キャリアにならない)
    ④行政システムの不合理性(各省折衝,予算要求,法制局審査など非効率的なシステム)
    ⑤政治との関係で抱える不合理
    ■「部分利益」に立ち向かう勇気
    ■地域活性化や改革には「ワカモノ,バカモノ,ソトモノ」が必要。

  • キャリア・ノンキャリア、県職員、市町村職員、治安系公務員など、各種公務員ごとに、どのようにモチベーションを保つか、どんな自分自身の仕事哲学を持つかという視点を提供。
    ここに挙げられてる公務員の多くで就活したので、その経験だけでもそこで見たそれぞれの公務員の傾向とかと本書で書かれている内容が合っていると思えるところがあって、うんうんって頷きながら読めた。
    社会の変化で、「官僚たちの夏」の官僚たちみたいな天下国家のためというのだけでがむしゃらに無定限・無定量に頑張れるっていうのはもう考えにくい世の中なんだなー。
    公務員バッシングの風潮についても、公務員自身の責任と国民の責任の双方に言及していて良かった。

  • とりあえず腹を据えて仕事をしろということだ、

  • 少し刺激的なタイトルですが、この著者であれば納得というところでしょうか。
    さすがにいろいろな立場の公務員を経験され、今は民間という立場で論じていますので、興味深く読めました。

    気になった部分をメモしてみました。


    「公務員のリアリズム」=現場で働く公務員のための「仕事の指針」、「仕事の哲学」
    公務員共通の問題・悩み①仕事の哲学(=公務員のリアリズム)、②労働条件、③自己啓発

    「社会問題の解決」という概念が最も公務員を奮い立たせる
    日本人:何かと政府や公務員などの他者に依存する一方で、国家のために武器を取るとは考えない。いつの間にかそういう体質の国民になってしまった。だからこそ社会問題が無数に生まれる。

    社会や国民というソトが納得しない限り、公務員はウチ向きの哲学を作れない。これが日本の公務員だった。しかし、ソトが納得しようがしまいがウチ向きの哲学を作らないと公務員は疲れ果ててどうしようもない

    キャリア官僚の仕事の哲学:「自分の専門能力を通じて国(民)に貢献する」
    専門知識=企画立案能力・調整力

    市町村職員が住民から敬意を集めるためのポイントは、「部分最適に立ち向かう勇気」
    「住民と真摯に向き合う」ための自己啓発に力を入れる
    市町村職員の強みは、仕事の対象が間近で見えることに加えて、政策の効果がわかりやすい

    国民の公務員に対する5つの見方
    ①有権者、②納税者、③消費者、④労働者、⑤求職者

    公務はチーム労働
    個人として単独で行動することはないので、個人として認められる機会は少ない
    今後、公務員の仕事へのモチベーションを考えるとき、「チーム承認」という言葉がポイントになる

    「全体の奉仕者」は美しい言葉だが、あまりにも現実離れしすぎている。社会や住民に役立つことだけで満足する人はいない。だからこそウチ向きの仕事哲学が必要
    仕事を通じて自分自身がどう成長するのか、どういう能力が培われるのか、そういうことを積極的に示さないと、公務員になる人はますます少なくなる。人材の質は確実に下がってくる

    公務員の仕事は現実に能力開発につながるのだということを具体的に示すことも重要。
    公務員を辞めた後、公務員時代に培った専門知識や仕事術で活躍する人材を1人でも多く輩出することが、現役公務員のモチベーションにつながる

    肚の据わった公務員→仕事の哲学の有無、仕事に対する考え方が確立されている人。その哲学を支えるのは、自己啓発で培われる「どこでも食っていける」という能力

    <目次>
    第1章 公務員の環境はなぜ激変したのか?
    第2章 公務員は何のために働くのか?
    第3章 タブー視されてきた疑問、「公務は自分に役立つのか?」
    第4章 キャリア官僚の誇りは、どうすれば保たれるのか?
    第5章 ノンキャリア国家公務員の本当の悲哀
    第6章 日本で最も中途半端なエリート―都道府県職員の悩み
    第7章 高学歴者が殺到する市町村職員の将来性は?
    第8章 専門職公務員と安保・治安系公務員の悩みと懸念
    第9章 公務員は「おいしい職業」か?

  • ふむ。おっしゃるとおりだなーと。
    都道府県職員が中途半端というのはその通りだと思う。

    働くことのひとつの指針にはなる。
    というか、戦前の官僚への指針がいちいちもっとも。「自分の仕事について、地域であれ、制度であれその歴史を学べ」とかはまさにその通りだと。
    要再読。

  • 国家公務員のキャリア、ノンキャリアから、都道府県及び市町村職員の働き方、生き方についての提言本。

    著者が見た狭い範囲の知識をもとにした決めつけがどうかとは思ったが、公務員が仕事をする上での内なる哲学を持つことは良いことだと思う。

  • 公務員にこれからの仕事哲学を自分の経験を踏まえて披瀝してくれる。
    「全体の奉仕者」たれという建前論、外への動機付けだけでは公務員のリアリティに合致していないと。そいでキャリア、ノンキャリア、都道府県職員、市町村職員、医者や大学教授等に分けていかに仕事を捉えるか、自分を向上させていくのかと。
    政治主導で偉ぶる政治家に「多数が選んだら専門性よりそれが正しいの?」って苦悩とか、社会の公務員を見る目だとか、そうゆう公務員の現実とかちゃんと大事なとこ抑えてます。
    ただ、キャリア官僚や大学教授の話は本人が経験してるから中身濃いけど、その他のはなんかむりやりひねくり出して書いてるような感じ。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

神戸学院大学現代社会学部教授。1964年、奈良県大和郡山市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業、The School of Public Polich, The University of Michigan 修了(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)。大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省入省(国家公務員Ⅰ種試験行政職)。厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、2004年公募により兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授、その後教授。2014年より現職。2007年官房長官主催の「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員、2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務める。主な著書に、『天下りの研究』『公務員バッシングの研究』(明石書店)、『政治主導はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞社)、『財務省支配の裏側』(朝日選書)など多数。

「2018年 『没落するキャリア官僚 エリート性の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中野雅至の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
佐藤 優
ジャレド・ダイア...
佐々木 圭一
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×