内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022735867

作品紹介・あらすじ

かつては誰もが夢中になったテレビ。しかし今、我々の不信は頂点に達している。なぜ、事実をねじ曲げるのか?なぜ、平気で人を傷つけるのか?内幕を明らかにし、真のジャーナリズムを問う、希望と再生の提言書。

感想・レビュー・書評

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  • なぜテレビ制作において捏造やミスを犯してしまうのかという問題を、日テレのディレクターを務めた著者が現場の視点から論じた本。

    結論から言うと、捏造やミスの原因はテレビ局の「人間の劣化」にあるとしている。これは「自分事」で考えない演出が常套化していることを述べている。また、テレビが面白くないと言われるのは視聴者を怒らせないためのマニュアル化した制作による既視感が原因であるとしている。そのため、改善方法は個人の判断力を「育てる」ことであり、個々の問題意識によってしか優れたジャーナリズムは成立しないといった指摘だった。
    著者は本書で視聴率優先主義に対して疑義を持っているが、これはテレビの仕組み上仕方ないのではないかと思った。確かにメディアには権力の監視や揺らぎないジャーナリズムが必要だという思いはもっともであるしそうあるべきだとは思うが、実際に個々の考えだけで変えられるのだろうか?極端なことを言うと、テレビ局が利益団体である以上どれだけ正しい報道番組を制作したとしても視聴者が0では広告主がつかず、ビジネスにならないのではないか?と思ってしまった。それこそ問題を根本から変えるためには広告主に頼らない利益の生み方を模索するところから始まるのではないだろうか。
    その点、Youtubeなどのメディアでは広告主と制作者が完全に分離しているため、忖度なしの自由な制作ができる強みがあると感じた。テレビは費用をかけて長時間の取材ができるという強みをいかにうまく生かせるかがカギになるのかなと思う

  • 著者は映像ドキュメンタリー制作に携わり、海外特派員、ディレクター、
    解説キャスター等を務めた元テレビマンである。テレビ報道の現場を
    知る著者が、何故、やらせや捏造などの不祥事が起きるのかを解き
    明かしている。

    似たようなメディア論は以前にも読んだ。その時も、今回も感じた。
    業界にいたからこそ厳しい批判眼があるのは当然だが、結論と
    しては現場擁護に収れんしてしまうのは何故か。

    それはテレビと言う表現方法に対する愛着でもあるんだろうが、
    「テレビの内側を知らずに批判するな」という言い分はどうなんだ
    ろうか。

    メディア関係を専攻している大学生ならいざ知らず、一般の視聴者
    がどうやってテレビの内側を知れと?

    極度に細分化された作業、求められる速報性と独自性、限られた
    予算と人員。そのなかで起きる単純なチェック・ミスから、過剰演出
    による捏造。

    原因は複合的なものなのだろう。だが、作り手の側のモラルの欠如
    や、想像力の低下、感受性の鈍麻はありはしないか。

    例えば本書では紛争地での取材について書かれている。外務省から
    退避勧告が出れば大手メディアの人間は現場を引き上げる。残るのは
    フリーランスのジャーナリストたちだ。

    著者はこの点を問題視してるのだが、では自身が大手メディアの内側
    にいた時にそれを変えようと努力したのだろうか。

    同じことは福島第一原子力発電所の事故についても言える。事故の
    「後」しか報じないメディア。事故「前」に原発について報道するべき
    だったのではないか…と。

    ならば、著者はやろうとしたのか。多分、出来なかったろう。本書では
    ほとんど触れられていないが「スポンサー・タブー」の存在を無視して
    は語れないし、あえて大スポンサーであった電力会社を批判する
    報道は出来なかったろう。

    著者自身の体験を綴っている部分が読みようによっては自画自賛と
    も受け止められる。メディアが「報じないこと」と綴るのであれば、
    自身がメディア側にいて「出来なかったこと」もつまびらかにして
    欲しかった。

    「テレビを見もせずに批判するな」と著者は言う。ならば問いたい。
    「見るべき価値のある番組が一体どれほどあるのでしょうか」と。

    ドキュメンタリー制作をしたことを誇りにしているような著者だが、
    ドキュメンタリーでさえ「取材者側の視点」という加工が施されて
    いるとは思わないのかな。

    ニュースも報道も、どんどんバラエティ化されて行く。どのチャンネル
    も、どの時間帯も同じような番組ばかりを垂れ流すテレビに未来が
    あるとは思えない。

    但し、一部ではあるが優れた報道番組があるのも確かだ。だから、
    批判しながらも一定時間はテレビを見る。そんな視聴者もいること
    を著者は失念していやしないか。

  • 恐らく今年の読み納めとなる一冊はカミさんから読んでみろと薦められたこの本でした。元テレビマンである作者がテレビの内側というか?制作者のあり方やテレビ特にジャーナリズムのあるべき姿にフォーカスをあてた内容でした。確かにジャーナリズムの本質は事実をしっかり掴んで伝えるということに凝縮されると思いますが、ついつい視聴率を意識したエンターテイメント性の高い薄っぺらい内容をテレビ局側も視聴者側も求めがちになってしまうのでしょうね!ただ、国民が気づきにくい影響力の高い社会的事実や社会的弱者側に焦点をあてたドキュメンタリー番組をしっかり報道するというのもテレビのあるべき1つの姿であることは間違いないと思い知らされました。

  • 水島せんせにお世話になっているので
    就活前にもう一回よみたい

  • テレビ業界のことを知りたい人に

  • 文字通り、テレビ業界にいる人が、テレビのやらせやついて語った一冊。

    テレビの使命がわかりやすく伝えることである以上、今後もやらせはなくならないだろうが、彼らが真摯に番組を作っていることはよくわかった。

  • 秀作。
    NHKも民放化してきており、 ニュース9は信用出来ないようになってきているらしい。
    正しい事は何か、自分で見極めることが必要。
    録画は、信用出来ない可能性がある。
    違和感を持った番組、良いと思った番組は、視聴者センターにメールしよう。ツイッターで発信しよう。

  • バランスよく書かれていると思うが、一般的には左寄りとされるのだろう。版元が中公新書などであれば、そういういらぬ詮索もなかったと思う。

  • テレビがかつてのように「メディアの王様」、「権力の監視者」であるためにするべきこと(作り手の意識)の提言。
    また、視聴者へもテレビを疑ってみることを勧めている。

    確かに昔に比べて、今のテレビ、特にバラエティーは面白くなくなった。また、東日本大震災以降、テレビの報道が持っていたプライオリティーは下がった。

    しかし、なんだかんだ言われながら、私たちはまだテレビを見ている。

    以下、引用省略。

  • とても面白い

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著者プロフィール

上智大学文学部新聞学科教授。
1957年生まれ。東京大学法学部卒。
札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー「母さんが死んだ」や准看護婦制度の問題点を問う「天使の矛盾」を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。
日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。「ネットカフェ難民」の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。
2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。

単著に『母さんが死んだ〜しあわせ幻想の時代に〜』(ひとなる書房)、『ネットカフェ難民と貧困ニッポン』(日本テレビ)、『内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造』(朝日新書)、共著に『テレビはなぜおかしくなったのか』(高文研)、『想像力欠如社会』(弘文堂)など。

「2023年 『メディアは「貧困」をどう伝えたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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