奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書)

  • 57人登録
  • 3.85評価
    • (2)
    • (7)
    • (4)
    • (0)
    • (0)
  • 8レビュー
著者 : 大内裕和
  • 朝日新聞出版 (2017年2月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737045

奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • この秋めでたく結婚しようという若者二人。自分が大学時代に借りていた奨学金が約500万円。夫となる彼氏の奨学金残高が700万円。二人合わせて1200万円。自分の家を持つことはおろか、出産、結婚さえもできない厳しい現実がある。今や大学生に二人は奨学金を借りている。まさにタイトルどおり奨学金の返済が日本の将来を脅かしている。真面目に働けば何とかなる時代はとうの昔に終わっている。自己責任だけでは解決できない日本社会全体が抱える問題であることを今こそ深く自覚しなければならない。

  • 昔のお気楽キャンパスライフを味わっている世代と絞り出すように金を捻出してバイトせざるを得ない世代の差!
    親の格差と自己責任の一言で片付けられない地獄。苦しんだ末に卒業してからも奨学金に悩まされる。私も奨学金を借りた身だからよく分かる。取り立てに全く容赦ないんだよな。

  • まさか日本の高等教育がこんなことになっていようとは。高卒で働くことも就職率の低さや職業資格の点からままならず、高等教育に進学すれば大きな負債を背負ってしまう。そのような事態になっているのに、日本社会でこの問題が認識されていないという深刻さ。

  • 今年2月に、〈「ブラックバイト」と命名した著者が奨学金問題の本質と解決策に初めて迫る〉として紹介。出版された本です。

    多額の奨学金を抱えている多くの学生の存在やそれが返せなくなっている現実、日本学生支援機構の取り立てのすさまじさ(例:北海道釧路市で亡くなった息子さんの奨学金の取りたてを受けた高齢の両親の話し)等々、この間の報道でその一部は知っていましたが問題の大きさや異常さを改めて確認した思いです。

    ちょうど長男(高3)が進路選択の時期、先日学校から説明会資料をもって帰ってきました。我が家も借りてもらわないと進学は難しいです。彼はあまり言いませんが、下に妹がいるのでそのことも意識しながら考えているようです。資料を見ると本にも書いてありましたが、利子なしの方が借りれる上限額が低いのですね。そのことの説明は、支援機構のパンフレットにはありませんでした。安心して勉強ができる環境を整えることは、未来の社会に豊かさをもたらすと思いますが、人間に対する信頼がないのだなと感じます。

    親の所得によって将来が決まるような社会であってはならないと思います。自己責任で、問題を片づけるような社会であってはならないです。〈「生まれながらの差別」に鈍感な日本社会を変えていきたい〉と最後に書かれていますが、奨学金に限らない多くの分野に共通する指摘だと思いました。

    お勧めします。

  • 大学で働くものとして、基礎知識としてこの本は是非読んでおきたいと感じた。

  • 著者:大内裕和
    図表制作:谷口正孝

    【簡単な感想】
    現行の奨学金制度が、現代日本の学生を含む家庭の経済状況に適応していないことを、いくつかの論点を挙げて指摘しています。提言も説得的でした。

    【引用】
    “奨学金問題を理解することの難しさは、その世代間ギャップの大きさにあります。さまざまな事柄について世代間ギャップがありますが、奨学金問題はそのなかでも最もギャップの大きなものの一つだと思います。
     最初に、私がどうして奨学金問題に気がつくことになったのかを説明します。その過程を知っていただくことが、奨学金問題の理解に役立つと考えるからです。
     私は1967年生まれです。大学に入ったのは今から約30年前です。私の奨学金問題への気づきは、30年前の大学生と現在の大学生との違いを認識することから始まりました。
     すでに大学を卒業している皆さんは、自分たちの若い頃と比較しながら本書を読んでいただけるとありがたいです。また現在、高校生や大学生の皆さんは、自分と異なる状況が、かつての日本社会に存在したことを想像しながら本書を読んでいただけると、理解が深まることが多いと思います。” (16頁)


    【目次】
    はじめに [003-005]
    目次 [007-014]

    第1章 この30年で大きく変わった大学生活
    奨学金問題の「発見」 016
    大学で奨学金の講義を行う 019
    新学期の奨学金説明会に長蛇の列 020
    片道3時間以上かけて通学する学生 022
    事例1 通学に6時間以上かかる学生に「大学、楽しいだろ!」と話しかける高校教員 026
    ゼミ合宿の日程調整ができない 030
    仕送り額急減――大学生の貧困化によるブラックバイト 031
    車をめぐる世代間断層――格安バスツアーの悲劇 036

    第2章 なぜ奨学金を借りなければならないか
    事例2 卒業後の返済が600万円を超える不安 043
    大学授業料の値上がり――国立だからといって安くない 044
    国立でも自宅外通学なら、自宅通学の私立と変わらない 047
    無理せずに高卒で働けばいい? 051
    奨学金利用――全大学生の50%を超える 057
    なぜ奨学金に頼るのか?――急速に下がる親の所得 058
    自己責任ではすまされない 062
    奨学金返済を心配し、希望の進路をあきらめる学生たち 063
    事例3 奨学金返済が無理だから大学院進学を断念 063
    事例4 借金1千万円でも弁護士になる夢を追いかけるべきか 063

    第3章 奨学金を返せないとブラックリストに 
    事例5 延滞金が発生し、返しても返しても元金が減らない 074
    事例6 心の病になり奨学金返済は無理……親子で自己破産 076
    極めて厳しくなった奨学金の回収 078
    奨学金返済は将来借りる学生のため?――延滞金というシステム 083
    「返せない」人に返済を強制する奨学金制度 087
     (1) 十分には知られていない返還猶予制度 087
     (2) 返還猶予制度の不備 090
    「使いにくい」救済制度――猶予・減額・免除規定 093
    奨学金の回収強化 096
    事例7 返済のためにブラックな職場で頑張った末に過労自殺 099

    第4章 奨学金返済で「結婚」「出産」「子育て」できない
    奨学金を「返す」ことによって生み出される問題 104
    事例8 結婚相手に多額の返済義務があることが分かり、両親が難色 106
    事例9 2人の返済額合計が1200万円。出産・子育ては無理? 108
    奨学金返済のため「結婚・出産できない」 110
    奨学金返済がのしかかる――若年層雇用の激変 111
    結婚や出産・子育ての困難と親子関係の現在 114
    重くのしかかる子育て費用・教育費負担 119
    アンケートでも明白「結婚できない」「出産できない」「子育てできない」 123

    第5章 学費と奨学金制度の過去から現在
    国立大学の授業料はなぜ安かったのか 132
    授業料値上げへの動き 134
    なぜ学費の上昇が問題とならなかったのか? 137
    大学の学費上昇と日本型雇用 140
    80年代に有利子奨学金の導入 142
    有利子奨学金の拡大 144
    有利子貸与型奨学金はなぜ受け入れられたのか? 147
     (1)  高卒と大卒の就職格差 149
     (2)  1990年代から続いた親の所得減少 151
     (3)  自己責任論の台頭と日本型雇用の「幻想」 152

    第6章 奨学金をめぐる改善の動き
    ゼミでの学生との出会い 160
    「愛知県学費と奨学金を考える会」の活動と反響 162
    「奨学金問題対策全国会議」結成 163
    2014年、早くも行われた奨学金制度改善 165
    奨学金制度改善の運動から見えてきた課題 169
     (1)  高校教員や大学教員の認識不足 169
     (2)  ブラックバイトの発見 171
     (3)  奨学金利用者が当事者意識を持つことの困難 174
    2015年以降の奨学金制度改善運動――中央労福協との出合い 184
    所得連動返還型奨学金制度の問題点 186
    2016年秋からの奨学金制度改善 190

    第7章 奨学金制度――当面の改善策
    当面の対策 194
     (1) 奨学金をめぐる現状を正しく認識する 194
     (2) 高校・大学関係者に求められること 196
     (3) 日本学生支援機構に求められること 198
     (4) 親や保護者に求められること 201
     (5) 奨学金返済に困った場合 203
    貸与型奨学金の改善へ向け 205
     (1) 延滞金を廃止する 206
     (2) 返還猶予期限の撤廃 207
     (3) 日本学生支援機構による運用面での改革 208
     (4) 真の所得連動返還型奨学金制度の導入 209
     (5) 人的保証の廃止と機関保証料の引き下げ 210
     (6) 無利子貸与型奨学金の抜本的拡充 211

    第8章 奨学金制度の抜本的改革が必要
    奨学金と教育費負担をCOED諸国と比較する 216
    私費負担=親負担主義の限界 221
    貸与から給付へ――給付型奨学金の意義 229
    給付型奨学金だけでよいのか――授業料引き下げとセットで 230
    給付型奨学金と授業料引き下げの財源はどこに求めるべきか 233
    財源をどこに求めるか――富裕層と大企業 238
    給付型奨学金と授業料無料のために約4兆円 242
    入への投資の重要性――大学教育への公的支出増額による経済戦略 244
    「自分の子どもさえ良ければ」を乗り越えられるか 247
    「生まれながらの差別」に鈍感な日本社会を変えたい 249

    おわりに(2017年1月 著者) [253-256]
    奨学金返済に困った時の相談先 [258-259]
    参考文献 [260-261]

全8件中 1 - 8件を表示

大内裕和の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リンダ グラット...
有効な右矢印 無効な右矢印

奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書)はこんな本です

奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書)の作品紹介

【文学/日本文学評論随筆その他】いまや大学生の半数以上が奨学金を借りている。多い人は700万円もの借金を抱え、卒業後に返済で困窮する。授業料が高く親世代の収入が減ったため、子世代は奨学金とバイトが頼みの綱。「ブラックバイト」と命名した著者が奨学金問題の本質と解決策に初めて迫る。

奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書)のKindle版

ツイートする