何かのために sengoku38の告白

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023309203

感想・レビュー・書評

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  • 真実を伝えることで、世の中の人に尖閣諸島問題について考えてほしいとの思いから、動画をアップロードしたと説明している。
    愉快犯でもなく、衝動的な行動でもなく、著者なりに判断しての行動であったことが分かります。
    日本の外交が弱腰であること、一般人の防衛、安全保障に対する意識について問題提起をしている。
    勇気のある行動であったと思います。すくなくとも自分にはできない。

  • 2011/03/06~2011/03/06
    星3.4

     ブクログの献本で頂いた。sengoku38という人物が、何をどう考え、なぜ行動したのかということに興味があったから応募した。読みやすく、文章を書くのが上手いと感じた。

     本には、尖閣諸島についての客観的考察にはじまり、"sengoku38"の行動に終わる、一連の騒動の内容が書かれていた。
     とはいっても著者はビデオ流出肯定派なので、もしかすると事実に客観性がないかもしれない。
     だから僕は、この本をビデオ流出肯定派の、1つの意見と考えて読んだ。

     結果としては、予想していた理由の1つが当たっていたことを知れた。
     どういう流れだったのかはネタバレになるのでここには書けないが、僕より年上の人がどう考え、どう行動したか詳細に書いてあったので、簡単に想像できた。

     これは感想になっているのかな……?


     余談だが、この本では"sengoku38"というIDの由来は分からない。著者は"sengoku38"について触れてはいるが、結局最後まで由来を述べていない。

  • 真実というものは事実に複数の角度からアプローチしないと
    なかなか見えてはこないものである。
    世に情報はあふれているが、
    選り分けてみると一次情報は案外少ない。
    憶測、カット&ペースト、
    はたまた限りなく「ねつ造」に近い情報。
    自分の頭で考え、判断するためには生鮮材料が必要になる。

    元海上保安官、
    一色正春『何かのために sengoku38の告白』を読む。
    一色が昨年12月に海上保安庁を退官していたことも
    僕は見逃していた。
    尖閣諸島のビデオがYouTubeに流失した事件で
    あれほどの情報量が巷に流布していたことを考えると
    まるで比較にならない扱いだ。
    一方、一色が国家公務員の職を離れたことで
    こうして著書を通じて自分の考えを
    世間に伝えることもできるようになった。

    一色がなぜ尖閣ビデオを流したか。
    国を憂い、未来を憂い、
    海上保安庁の誰もが閲覧できていた映像が
    あるときを境に国家機密になる不条理を憂いている。
    職務に熱心だった男が自分のクビを賭けて
    映像公開に踏み切った心情がよく理解できた。

    そもそも一色はC社(おそらくCNN)、
    A社(おそらくアルジャジーラ)のどちらかに
    尖閣ビデオを託そうと考え、
    結局C社に素材を送るが公開されなかった。
    また自分が逮捕されたときのことを想定して
    なぜこうした行動に出たかをビデオメッセージにして
    読売テレビ記者に預けていた。
    自分の逮捕と同時に放映してもらう条件である。

    C社ですら公開できないのであれば、
    大手メディアに頼るのは無理だろう。
    一色は意を決して漫画喫茶のPCからYouTubeに投稿する。
    後はみなさん、ご存知の通りだ。
    いったん、YouTubeで公開された後は、
    NHK始めほとんどすべてのマスコミがその映像を再利用した。
    一色はこう疑問を表明する。

      それはテレビ局が自らの手でニュースの情報源を探さないで、
      インターネットからの情報からニュースを作っていることに
      ほかならないからである。本来、あの衝突事件で中国漁船が
      何をしたのかを、自らが取材して正しく国民に伝えるのが
      メディアの役割ではないのか。
                     (同書p.128より引用)

    僕はこの本を読みながら、
    国家と個人とメディアの三角関係について考えていた。
    メディアが国家の側についてしまえば、
    個人にはほぼ勝ち目はなくなる。
    中国に対してどんな外交行動を取るかより、
    海上保安庁の機密扱いの問題と、
    情報漏洩の犯人捜しに論調がすりかえられていったのは
    いつものメディアのやり口のように僕には思えた。
    一色は自分の考え、迷惑をかけた関係者への謝罪、
    応援してくれた人の感謝については率直に書くが、
    ハンドルネーム、sengoku38の意味だけは黙して語らなかった。

    尖閣事件を忘却の彼方に追いやらず、
    もう一度自分でその意味を考え直すために、タイムリーな出版。
    朝日新聞出版の仕事である。

    (文中敬称略)

  • 尖閣ビデオを流出させた著者。
    You Tubeに投稿するきっかけ、投稿前後の行動などについて書いている。
    元々本も出そうと考えていたらしい。

    本書を読んでみると、たんに国防に関することだけではなく、多くの問題が集約されていることが分かる。
    日本政府のリーダーシップの欠如、日本の組織の意思決定の遅さ、公務員という仕事の矛盾、マスメディアの腐敗と衰退。
    そして特に戦後日本を繁栄させてきた55年体制が限界にきていること。
    日本国民がひとりひとり真剣に考えなければいけないだろう。

  • 尖閣でのPRC「漁船」巡視船ブチかまし、超法規的に犯罪者を解放した某法治国家が、ご主人さまに褒めてもらえるどころか、オンドレ舐めた事しくさって土下座して払うもん払わんかい、と恫喝された事件。
    その、現場ビデオを、我が身を顧みずYoutubeで公開し、辺り一面のクズっぷりを天下に曝け出して下さった一海上保安官の著。

    あの頃は正直、どんな理由があれ、公務員が法規に従わないとは、と思った。
    あの頃は正直、尖閣と竹島の区別もあんまりついてなかった。
    流石に、台湾と香港と韓国の区別はついてたかな?

    ただ、当時の民主党政権の足腰立たんくらい大慌てになってたのは覚えてる。

    この人がいなければ、今よりなお、酷いことになっていたであろうことは、想像に難くないと思うのだ。

    ものすごく、ものすごく、言いたいことを抑えて書いておられる。
    日本が守るものはなんなのか。
    日本が日本であるということはどういうことなのか。

    先人に顔向けできるのか。

    公務員とは、政府ではなく、国民の幸せのために働く。

    その一言が重い。
    いわんや、政治家をやな。

    嫌な言い方だが、葉隠。
    方法は間違っていても、正しいを思うことをやって、堂々と腹を切る。
    その覚悟がなければ、公務員ではない。

    ただそれが怖いのは、それが、間違った正義感、檻の中の独善ではないか。

    本件に関して言えば、我々は、感謝すべきであろう。

    一部のマスコミが、恥入ったらしいんだが、あんま覚えない。

    本としては、熱い思いを語る部分、関係者への謝意を語る部分が重畳で損なっていたように思った。誰か、ライターが聞き取ってまとめた方が良かった気がする。

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