お金は「歴史」で儲けなさい

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023313699

作品紹介・あらすじ

【社会科学/経済財政統計】「賢者とお金持ちは、歴史に学ぶ」──10回のバブル、3回の戦争、経済統制、ハイパーインフレ、恐慌……かくも市場は繰り返す。日・米・英直近130年の経済と株式の歴史と統計データから相場観を養う、まったく新しい切り口の投資読み物。

感想・レビュー・書評

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  • この本はいつの時代にも通用する資産運用の考え方を解説しています。その中でも米国の将来の見通しが良く、その恩恵に預かる企業の株はよさそうですね。

    その中で最も大切なのは、今までの歴史に学ぶということです。経済活動は人間が行うものである限り、歴史が繰り返されるもので、今まで人間が何を考えて行動してきたかを考えてみることは大切だと思いました。

    今私が生きているのは21世紀ですが「投資は20世紀に学べ!」というのは印象的なメッセージでした。歴史の好きな私ですが、現代史をこのような形で学ぶのは面白いと、この本を通して感じました。

    この本で初めて見たものに、日本株の明治以降の130年の株価の長期チャート(p23)がありました。戦前のチャートを見たのは初めてでしたので衝撃的でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・時間が経過するとすぐに陳腐化するが、歴史から得られた知見は決して古くなることがない。同じようなことを人は繰り返すから(p5)

    ・投資の世界で勝ち続けるためには、自分の感覚や他人の意見だけに頼っていては危険であり歴史という客観的な英知を利用する必要がある(p6)

    ・大正時代で注目すべきは、日本がいわゆるバブル経済を初めて経験したということ(p29)

    ・日本が壊滅寸前まで追い込まれた太平洋戦争中、日本の株式市場は思いのほか堅調であった(p31)

    ・世界恐慌をリーマンショック(2008)、関東大震災を東日本大震災(2011に、国際直接引き受けを、異次元の量的緩和策に置き換えれば、まさに今の日本そのもの(p34)

    ・終戦から5年の間に、消費者物価は約30倍、卸売物価は約60倍になった。政府は預金封鎖や財産税の徴収という非常手段を実施し、ドッジラインによる金融引き締めの強化によってインフレをなんとか沈静化させた。銀行預金を大量に持っていた資産家の多くが、インフレと政府の預金封鎖によって財産を殆ど失った(p38)

    ・株式投資で失敗する理由は様々だが、その中の一つに自分が経験していない事態に遭遇して、どう行動していいかわからなくなり、今の感覚で取引をしてしまう(p41)

    ・130年チャートで示した長期的なトレンドをみれば、一つの流れは15年から20年継続する。市場の長期トレンドが大きく変わる局面を迎えている可能性が高い(p47、51)

    ・積極的に設備投資が実施されているときには、資本比率が上がるので相場にはプラスである可能性が高い。同じ資本比率が上昇するとしても、設備投資が横ばいで、人件費を削っている場合(p50)

    ・日本がインフレになる理由は、1)米国経済が好調でドル高になる可能性が高い、2)日本の経常赤字化がほぼ確実(p54)

    ・米国はファンダメンタルズにおいて非常に有利、石油の自給を人口の増大(p55)

    ・経済成長を決定する基本要素は3つ、労働・資本、そして技術革新(p58)

    ・経常収支が赤字ということは、付加価値が低いものは日本国内では生産せず、海外から購入しているというこを意味する(p63)

    ・ある程度の基礎体力があり、グローバルに展開している、あるいは需要が減らない商品を扱っている企業の株はスタグフレーションにも強い、トヨタ自動車、ソフトバンク、花王など(p71)

    ・ハイパーインフレまでに、次の順番で価格が上昇する。為替、金、物価、不動産、株価(p85)

    ・第二次世界大戦後、米国は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争という4つの大きな戦争を行っているが、いずれも戦費負担はGDPの15%(第二次世界大戦は3.2倍)(p91)

    ・ロシアも米国もGDP比較4.5%の軍事費だが、9兆円対68兆円である、4.5%が限界であろう(p93)

    ・1938年に国家総動員法を制定し、国内の経済活動のほとんどを国家統制下に置いた、政府の計画のもとに生産活動を行うようになり、下請け元請という企業系列が強制された。同時に終身雇用制度が義務付け、賃金も政府により決定された(p106)

    ・太平洋戦争の延べ動員数は1400万人、当時の人口は7000万人、女性および男性の半分が高齢者と子供と考えると、体力のある成人男性は1700万人程度(p110)

    ・自動車は登場したばかりの頃は電気自動車のほうがメインだったが、米国における特許紛争などをきっかけに、結果的にガソリンエンジンが有利となり状況が大きく変化した(p130)

    ・今後のテクノロジーバブルとなる対象は、人工知能とロボットの分野だろう(p141)

    ・投資をするタイミングは2つ、ブームがやってくる前の黎明期、もうひとつが、ピークが去って皆が悲観的になっている幻滅期(p150)

    ・ロボット技術の革新的な部分は、クラウド上にある人工知能と連動することで、人間の生活や産業基盤を根本的に変えるところにある、プロ棋士を負かしたコンピュータはプログラムではなく、人工知能による機械学習機能によるコンピュータ自身が勝ち方を勉強した(p162)

    ・金価格について、物価を考慮した形でチャートにしてみると、金価格は過去のピークを超えていない(p171)

    ・ジョージソロスは、現在価値ベースの金価格がピークとなった2013.12に大量お金を売却した(p172)

    ・ビットコインは仮想ではなくホンモノの通貨と言ってよい存在、自身のコンピュータを検証作業用に提供することで、全体の信頼性が保たれている(p174)

    ・ビットコインは、米国政府が事実上公認、ネット旅行予約のエクスペディア、デルコンピュータが支払に対応するなど、ビジネスの現場では普及が進んでいる(p175)

    ・日清戦争で清は日本に金の支払いができず、同時の覇権国である英国に対して外債を発行し、金の価格に相当するポンドを借り入れ、それを日本に支払った(p177)

    ・成長力がある期間は配当をせずに新しい投資を資金に回すが、成熟すると配当を本格的に検討する(p201)

    ・金融工学は正規分布という数学的に扱いやすい確率分布を便宜的に用いており、これが実際の市場の動きを反映していない可能性がある(p205)

    ・世の中では、経常赤字=経済危機といった図式で語られることが多いが、必ずしもそうではない。経常赤字を活用することができれば問題ないが、それに逆行する政策を採用した場合には弊害がでる(p216)

    ・日本は震災をきっかけに、貿易赤字を投資収益がカバーするという、第五段階の「成熟した債権国」となった。ここで経常収支も赤字に転落すれば、最終段階の「債権取り崩し国」となる(p221)

    ・日本株に投資するなら、米国市場拡大の恩恵を受ける企業を選択すべき、トヨタ自動車や、航空機の機体材料を供給する、東レ(p239)

    2015年3月1日作成

  • 分かりやすい本である。取り立てて新しい知見はないが、長いスパンでの経済の流れを再確認できる。

    筆者のスタンスの取り方で、投資に必ず勝てるかどうかは分からない。

  • 202205再読

  • 歴史をめぐる投資は、金銭的利益に加えて、知的好奇心を満たしてくれるものでもある
    日本の経常収支、米国経済の動向、インフレ期待、日本の財政問題
    人工知能とロボットによるイノベーションに乗ろう

  • 株取引で利益を出したくて色々な手法や考え方に広く浅く触れて見て自分に合うやり方を探ろうとしていた時に読んだ本。結局、某インスタグラマーさんがやっていた「株価が上がったら売るというルールだけで小銭稼ぎをする」プチデイトレ方式にひとまず落ち着いているのだけど。

    この本は、著者の広く深い世界史の知識に基づき、合わせて豊富な経験・分析知見を持つ株式との相関を紹介したもの。両方の知識が浅い私にとっては真似することは不可能なように感じて、深追いせずに図書館に返却しました。

    戦争が起きると武器を作る国・企業の株は上がるから、戦争が起きたからって株価が下がるわけじゃないんだよ、みたいなことが書かれていたように思います。

    これからの人生、テーマを持って何かを研究したい。いつかこういう本が1冊書けたらいいなと思う。

  • 現在評論家として活動し、日経BP記者やファンド会社の勤務経験もあり、経済に精通する著者が投資における歴史殿相関性について書いた一冊。

    バブルや戦時中の株価の動きなどを様々なデータを用いて経済がどのような動きをしていたかが解説されていてとても勉強になりました。
    また、その解説から様々なタイミングにおいてどのように投資すればよいかも学ぶことができました。
    また、金や石油を歴史からみた値動きは似たような動きになるということは驚きました。

    そんな本書の中で中国のバブル対策やバブルとイノベーションの関係などを知ることができ、あとコンドラチェフサイクルからみる未来は読んでいて非常に興味深いなと感じました

    自分が投資を行っていくうえでも歴史を加味して検討することは大変有用なことであることを感じた一冊でした。

  • 2018/04/12 初観測

  • 要約ダイジェスト版
    1度は読みたい内容

  • テクノロジーベースのバブルにのるには、普及率が10%程度のものを選択するべし。16%を超えたら飛躍的にあがり、50%で一旦落ち着く。自動車、PC、インターネット、仮想通貨…

    短期的には中国、長期的にはインド

    戦争下ということで、軍需銘柄も。→三菱重工、石川製作所、ロッキードマーチン、レイセオン
    →各国の軍事費としてはGDP比1〜5%、戦争ピークでもGDP比10%くらいになるとみるのが妥当なライン。

    ハイパーインフレ時の価格上昇順
    1.為替
    2.金
    3.物価
    4.不動産
    5.株価
    →まず為替でリスクヘッジして、不動産や株価などで割安なものがあればそれを保有する投資方法が良い。

    スタフグレーション下の投資銘柄
    ・基礎体力があり
    ・グローバル展開していて
    ・需要が減らない商品を扱っている
    企業の株を保有すれば資産を守りやすい。

  • 今の何をやりだすか予測のつかないトランプ政権を見たら著者はどう思うだろうかとかそんな事を思いながら読みました。

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著者プロフィール

経済評論家。仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在、「ニューズウィーク(日本版本誌)」「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。著書に『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)、『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)など多数。

「2022年 『スタグフレーションーー生活を直撃する経済危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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