世界を変えた6つの「気晴らし」の物語【新・人類進化史】

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023316324

作品紹介・あらすじ

【歴史地理/外国歴史】数々の新聞書評などで紹介され話題となった『世界をつくった6つの革命の物語』の第2弾。ショッピング、音楽、ゲームなど人々が新しい「気晴らし」を追求する中で思いがけず生まれた文化や技術の発明、産業の発展の歴史をひもとく。

感想・レビュー・書評

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  • 『世界をつくった6つの革命の物語』がえらく面白かったので、続編として楽しみだったけど、前著程の興奮は得られず。

  • ホイジンガは言った。

    「ずいぶん以前からのことであるが、私の心のなかでは、人間文化は遊びのなかにおいて、遊びとして発生し、展開してきたのだ、という確信がしだいに強まる一方であった」

    人は、遊ぶものなのだ。
    そこからイノベーションが、革命が生まれる。

    第1章では、ティリアン・パープルなるものが登場する。
    この紫色のために人は海に出た。
    驚くべき欲望!
    そして木綿。
    下着のチクチクをなくすために、人は発明を繰り返した。
    マダム達の欲望が、経済を動かしたのだ。
    そんな、ばかな?
    ジョン・ケイの飛び杼、アークライトの紡績機、ホイットニーの綿繰り機、そして蒸気機関!
    世界史の授業でただただ暗記させられるなんてもったいない。
    なぜ、発明したか、そこがわかれば記憶に残る。
    『砂糖の世界史』『茶の世界史』のあの衝撃を私は今でも忘れていない。

    第3章のコショウの話もワクワクする。
    レシピの八割がコショウを主役にしていたローマ帝国の料理本......。
    すっげ、むせそう。
    高級食材を惜しげも無く使って、権力を思い知らせるというのはいまも昔も変わらずだ。
    それだけ強大な力を持っていたということが「食」からはわかる。

    さて、非常に面白い本だが、第三章の香辛料が薬になるはずがない、と言うような記述は東洋人としては承服しかねる。
    もちろん、異論もあるし、研究途上で証拠不十分なこともあるだろうが、ニッキ味の胃薬に日々お世話になる身としては、引っかかる記述だった。

    それ以外は本当に面白く勉強になる、「遊び」の本であった。

  • 僕は早稲田大学で「深圳の産業集積とマスイノベーション」という講義を担当している。物事を経済と功利の側面だけで語りがちだ。ただ、現代のイノベーションの多くは功利とはまた別の側面で発揮されている。InstagramもFacebookも、パッと何か役に立つとはいいづらいユニコーン企業だ。「あったらいいな」「作りたくなった」「コレ好き」はイノベーションの基盤の一つだ。
    この『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』はそれを雄弁に伝える本。

    著者のスティーブン・ジョンソンはアメリカの人気作家で、本書も2017年のベストセラーらしい。
    僕は知らずに、メイカー界の重鎮小林茂先生が、メイカーフェアのプレゼン他で紹介しているので読んだ。

    ■第一章 下着に魅せられた女性たち (衣服)
    ■第二章  ひとりでに鳴る楽器 (音楽)
    ■第三章  コショウ難破船 (味覚)
    ■第四章 幽霊メーカー (視覚)
    ■第五章 地主ゲーム  (ゲーム)
    ■第六章 パブリックスペース (パブやカフェ、レジャーランド)

    の6章からなる本書は、味覚・衣服などのカテゴリごと(カッコ内は筆者)に、不要不急であり最終目的に関係ない遊びが、現在の社会を支えているイノベーションをいくつも生み出したことについて、歴史上の様々な事実を元に書かれている。
    たとえば第2章の楽器は、人間が文字の発明よりも早く石器時代から音楽に親しんでいる(ホネで作った笛が出土する)ことから始まり、その笛の音階から現代まで通じる「音楽」のルーツと、「文化が違っても共通する、気持ちいいと感じる音や音階」を導き出す。そして自動演奏する楽器が、電気が一般的になる前のヨーロッパで人気だったこと、自動演奏楽器の演目からプログラミングが生まれ、さらには現在のコンピュータに繋がったことが説明される。どの章でもそうした「生存に必要というより、好奇心と探究心がイノベーションを起こしてきた」という事例が豊富に出され、目から鱗が落ちるような思いを味わえる。

    そうした幅の広さだけでなく、遊びの価値について深く説明しているのも本書の魅力だ。不要不急の遊びはマイナーなので、メジャーな活動に比べて女性や少数民族、市井の一般市民といったマイナーな人たちがイノベーションを起こしている。生産性向上を狙う活動は王侯貴族や軍人、プロ研究者ばかりが目立つのとは対照的だ。もちろん、研究者の遊び心や王侯貴族の無駄遣いがファッションや食事で大きなイノベーションを起こしたことも本書では語られている。
    また、コーヒーやチェスなどの趣味が、キリスト教やイスラム教といったスーパーパワー宗教をさらに超える範囲に広がったことや、チェスなどのゲームルールがそうした広大な範囲で協調的に発展してきたことを、現在のLinux等オープンソースになぞらえるのも秀逸。

    著者のスティーブン・ジョンソンは、他にも「世界をつくった6つの革命の物語」などのヒット本を書いていてTED Talkも人気で、「ドヤ顔できそうなうまい切り口を提供しておしまい」的なFACTFULNESSっぽさが鼻につく部分は本書にもある。(そういえば、学者やプレイヤーでなくて、プロの作家の本読んだのひさしぶりだ)
    でも、それだけではベストセラーにならない。様々な事実を広く調べ、ストーリーに繋げて遊びの価値を書き表したのはすばらしいことだ。

    今こそ「不要不急」の意味を噛みしめ、やりたくなったことの中で今の環境でできることをぜひやるべきだ。

    読みながら取ったメモ含む、より長文のレビューはこちら。

    https://note.com/takasu/n/n8b7382365181

  • 気晴らしをするために考え出された娯楽の歴史。
    人が楽しみのためにやることの歴史。
    その誕生や追求が、文化・産業・技術革新、はては政治や戦争に
    までも影響してしまうという、歴史を紐解く。
    ちょっとした気晴らし・・・百貨店でのショッピング、楽器を奏でる、
    美味しいものを味わいたい、映像やゲームを楽しみ、
    居酒屋で一杯!コーヒーで寛ぎ、観光し、自然に親しむこと。
    それが数々の技術の発展、初期のコンピューターや都市計画、
    独立戦争、イノベーションへ。
    はたまた、植民地と奴隷、都市の衰退、貿易紛争、ペスト、
    へとたどり着くという道筋は驚きの連続です。
    うん、面白い。
    でも、著者の考察が深すぎて読み進めるが大変でした。

  • 決して安くない&厚い本なのに、タイトルと帯紙でグッときて購入してしまった・・・前作も読みたい。

  • 一見ムダなことにこそ価値があるということを再認識

  • ●ファッションやゲーム、ひとりでに鳴る楽器など、一見とるに足らない趣味嗜好のものが、世界を変えるきっかけになっているのだという。なるほどと思うところもあったが、どうなのだろうか。

  • <目次>
    序章   マーリンの踊り子
    第1章  下着に魅せられた女たち~ファッションとショッピング
    第2章  ひとりでに鳴る楽器~音楽
    第3章  コショウ難破船~味
    第4章  幽霊メーカー~イリュージョン
    第5章  地主ゲーム~ゲーム
    第6章  レジャーランド~パブリックスペース
    終章   驚きを探す本能

    <内容>
    思いもよらぬモノをつなげて、人類の進歩や発展を述べた文化史もの。下着から最後はショッピングモール。骨の笛からソフトウェア。コショウから貿易と植民地化。イリュージョンから映画や動画。チェスからパーソナルコンピュータやソフトウェア。パブから動物園やレジャーランド。その文化史的発展の過程を追うのがとても楽しかった。



    逗子市立図書館

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00543792

  • 遊びや無駄や気晴らしが社会を変える力になった、という話はすごく、面白い。
    が、良くかえることももちろんあるけれど、悪くなった部分が語られていない。副作用はついて、なんとなく考えてしまう。
    本は総じて面白い。未来が明るく思える本。

  • 【由来】
    ・MediaMarkerのトップページで

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】
    ・ 歴史を動かしてきたのは大きくて「真面目な」歴史的プレーヤーとは限らない。例えば産業革命を促進したのは、きれいに染められた木綿の服を競って買い求めた英国の女性達だった、とか、今のコンピューター文明の基本的な構造をつくったのはオルゴールだったとか。

    ・もともとスティーブン・ジョンソンは好きで、本書も無類に面白かった。概して、この人は、一見、ささやかだったり、見過ごされてきた「小さきモノ」や軽視されてきたモノへの視点が持ち味だと思う。そして、「ささやかだけど大事」ということではなくて、「ささやかどころか、とんでもないインパクトがある!」とい展開するのがいつも読んでて楽しい。

    ・最後に「こういう(文明の進化を可能にした)気晴らし=遊びごころを持ち合わせてないAIなんて、騒ぐほどの脅威じゃないよね」とこちらを向いてウィンクして見せてるのも、結構好き。

    ・なお、原題は「How Play Made the Modern World」なのだけど、このタイトルには「Can (present) Play Make the Next World ?」という含意があるのかも

    【目次】

  • レビューはブログにて
    https://ameblo.jp/w92-3/entry-12384064624.html

  • 必要は発明の母であることは間違いないのだけれど、あそびの時間は大切だと思う。
    時間に余裕がないと遊ぶことを考えるこころの余裕は生まれない。
    生きることに精一杯になってしまう。進歩ではなく、飛躍するためにもちょっとした「隙間」が必要なんだと思う。
    それと、目的をもって作られたモノが作った人の思いもよらない使われ方に広がる。
    あるなぁと思う。

  • 20180115読了

  • 面白そうだが、固すぎる。もう少し論点を絞ってしまった方が良かったと思う。着眼点は良し。

  • 必要は発明の母と言うけれども、本書はその対極にある、純粋な好奇心、遊び心、娯楽がいかにイノベーションに寄与してきたか=「遊びのイノベーション力」を説いている。

    骨笛、クローブやコショウ、パノラマ、サラサ、バベッジの踊り子、サイコロゲーム、ボン・マルシェ、居酒屋・コーヒーハウス、ゴムボール、幻灯機、アニメーション…。

    これらが促したイノベーションや歴史的大転換は、「公共博物館、大航海時代、ゴム産業、株式市場、プログラム可能な計算機、産業革命、ロボット、公共圏、世界貿易、確率に基づく保険証券、アメリカ革命、薬の臨床試験、LGBT権利運動、セレブリティー文化」なのだそうだ。

    生存本能とは真逆の遊びへの欲求は、「ノベルティー(目新しさ)・ボーナス」、すなわち神経物質ドーパミンによって調節されている「自分を驚かせるものを探し求める」人間の本能のなせる技なのだという。

    興味深い内容盛りだくさんだった。ただ、翻訳がイマイチなためか、読みにくかったのが残念。

  • 世界をつくった6つの革命の物語続編。面白いんだけど前作より散漫な印象。原著なのか、翻訳なのか、読むのに集中できなかったのか。まあしばらくしたら読み返す。

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著者プロフィール

ライター。7冊のベストセラーがある。訳書は『イノベーションのアイデアを生み出す七つの法則』『ダメなものは、タメになる』『創発』『感染地図』など。

「2014年 『ピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

スティーブン・ジョンソンの作品

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