パンとバラ: ローザとジェイクの物語

  • 偕成社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784030180703

作品紹介・あらすじ

一九一二年冬、アメリカ東部ローレンスの町で、移民労働者たちのストライキがおこった。その混乱のさなか、互いに名も知らなかったイタリア移民の娘ローザと、貧しい少年ジェイクの人生が交差する。現代アメリカ史に残る出来事を背景に、家族の思いやりや助け合う人々の姿をあたたかく描いた長編小説。中学生から。

感想・レビュー・書評

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  • 1912年に実際にマサチューセッツのローレンスという街の織物工場労働者が起こしたストライキのことを子どもの視点から丁寧に描いている。
    労働者といっても、ほとんどが英語も不自由な移民、そして女性や子どもの労働者も(そもそも14歳で正規に働ける時代だし)たくさんいた。
    このころから大不況の辺りまで、劣悪な環境下の労働者のデモやストライキが相次いだことくらいは知ってたけど、それにこの間のルヘインさんの「運命の日」で、労働組合同士がストライキの時に助け合っていたことも知ったけど、まるで戦時中の(これも一種の戦時だけど)疎開のように子供たちを他所で預かって、食べさせて学校へ行かせるというような支援をしていたことは全然知らなかった。
    何となく、現代のようにプライバシーが過剰なまでに発達して自分の小さな生活に忙しい時代には全く考えられないことのような気がする。
    これもまた、あまり語られないけれど古きアメリカの一部なのかも。

  • とても読み応えのある本でした。産業革命時の労働者、それも移民で児童労働、親からの虐待という何重もの枷の中にいるジェイク。現代の私たちには想像もつかない悲惨な状況に、しかし物語はそれこそ美しいバラのように人間の善意と強さを散りばめています。
    形の違う貧困が今の日本の子供たちを損なわないように、しっかりとしたセーフティーネットを構築しなければならないとも考えさせられた一冊でした。
    (じゃすみん)

  • 100年前のアメリカ。イタリア移民労働者のストライキという歴史的事実を背景に、ローザとジェイクがそれぞれの居場所を見つけるまでの物語。

    働かないから食べられないのではなく、搾取ということがあることを知ってほしい。今の日本の中学生には想像もできないほどの、劣悪な労働環境だからこそ、紹介したい本です。

  • 1912年冬、アメリカ東部の都市、ローレンスの町で、移民労働者たちのストライキがおこった。

    そんな中、少女ローザは、ストライキをどうとらえていくか。
    少年ジェイクは、貧しい生活の中、ストライキに巻き込まれて、人生をどう歩みだすか。

    大きな、社会の渦の中でほんろうされる子どもたち。

    現代の、日本の、この生活の中では、到底想像できないこと。

    でも、きっとこの物語の中に、市民として生きている難しさ、戸惑いを乗り越えていく力を発見できると思う。

    よい本だと思った。

    少年少女向けではあるが、むしろ、大人が読むといいと思った。

  • ストライキが人々を取り込んでいくところがつらかったけど、後半からのパンとバラ、石の花の存在が生き生きとしてとても良かった。

  • 1912年アメリカのローレンスという町で、移民労働者たちのストライキがおこった。ローザのマンマもデモ行進に参加するので、ローザは心配でたまらない。一方ジェイクは、飲んだくれの父親の代わりに稼ぐため、年令をごまかして工場で働いていたが、ストライキのためにまったく金が入らず、食べることさえままならない。そんなローザとジェイクが出会って、思いがけない運命の歯車が回り出す…。
    前半のストライキをめぐる出来事は、息苦しくなるような緊張感で、ちょっと読むのがつらいぐらい。でもローザとジェイクに感情移入してしまうので、ドキドキしながら読み進めてしまう。後半、温かい雰囲気の中でも、二人のウソがばれないか、ハラハラしてしまう。でもさすがパターソン。これ以上ないくらいいいハッピーエンドです。

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