はんなちゃんがめをさましたら

著者 :
  • 偕成社
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本棚登録 : 484
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784032324204

作品紹介・あらすじ

はんなちゃんはねこのチロといっしょにしーんとしずかな夜の家で…ひそやかにみたされる魔法のとき。3歳から。

感想・レビュー・書評

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  • 導入部の、はんなちゃんが目を覚ます、狭い視点から一気に変わる、広々とした空間。

    その広さは、はんなちゃんの一瞬の心細さを表しているようにも感じられたが、様々な青を基調とした、静謐で美しい世界。

    子供の寝室を見て美しいと思ったのは、初めてかもしれず、私の中で早くも、酒井駒子さんの最高傑作かもといった予感に駆られる。

    まだ夜だったことにびっくりして、お姉ちゃんを起こそうとする、はんなちゃんに思わず、「可愛い!」と感じたけれど、よくよく見ると、一緒に付き合うよと言わんばかりに、元来、夜型の動物である猫の、「チロ」が側についてくれる。

    その後、トイレでのはんなちゃんの服の色を見て、本来、寝室は明かりのない真っ暗な状態だったことに気付き(僅かにカーテンのすき間から覗く光だけ)、その真っ暗な室内をあれだけ美しく描写される、酒井さんの凄さを改めて実感し、再度広い寝室の場面を見返しては、ああと、感慨に浸る。

    また、場面場面における、はんなちゃんとチロそれぞれの、本来私に聞こえない言葉や見えない心の中まで感じ取れるような動作や佇まい、ひとつひとつの描写が、活き活きと生命感に溢れており(夜なんだけど)、それがとても愛しく感じられる。

    ああ、この場面は、はんなちゃんがチロにこう語りかけてるんだろうなとか、トイレでのチロに向けた笑顔も素敵だし、文章の無い見開きの、ふと月を見上げているはんなちゃんの横で、洗顔するチロ(眠たそうにも見えるから面白い)の一枚絵であったりと、やっていることは、とてもありふれた事なのに、ページを捲る度にワクワク感が募っていく、この感じは、きっと酒井さんの表現される、子供の内なる思いが、自然と作品上に現れてきて、それが読み手に伝わるからなんだろうな。

    最後のシーンの、はんなちゃんとチロの愛らしい姿を眺めながら、「よるくま」とは作品の趣旨が異なるから何とも言えないが、本書が酒井さんの最高傑作のひとつであるのは、間違いないということを、私の中で確信いたしました。

  • 真夜中に目を覚ました女の子の
    魔法の時を描いた、
    2012年発表の
    待望の書き下ろし新作絵本。




    いやぁ〜
    初めての夜遊び思い出して、
    胸がきゅい〜んってなったなぁ〜(>_<)



    子供にとって夜という存在は
    大きくて得体のしれない
    どこかコワいもの。

    だけども心の奥底では
    得体がしれないからこそ
    夜を知りたいし、

    ちょっと背伸びして大人な夜の世界を
    少し覗いてみたいって
    誰もが思ってるんですよね。




    物語のはんなちゃんは
    夜中にふと目覚めてしまい、
    隣りで眠るお姉ちゃんには内緒で
    猫のチロと共に
    こっそり夜の冒険へと出かけます。



    見慣れたハズの自分の部屋が
    夜の魔法で
    違う景色に映る不思議。



    詩情さえ漂う
    一人と一匹が
    窓から月を眺めるイラストの美しさ。



    ページをめくるたびに伝わってくる
    しんとした静かな空気感と
    濃密な夜の匂い。


    そして一人自由を得た開放感と高揚、
    チロと秘密を共有する
    密やかな喜び。



    一人でおしっこをして
    冷蔵庫を開けてつまみ食いして、
    お姉ちゃんのおもちゃで
    こっそり遊んでるうちに

    いつしか朝の気配が…。


    ドキドキする
    はんなちゃんの鼓動までもが
    伝わってきます。
    (夜の冒険の最大の貢献者は、静かにずっと少女を見守っていた
    ナイト役のチロですよね)



    酒井さんが描く
    相変わらず美し過ぎる
    どこか物悲しくて官能的な
    息を呑むほどの蒼の世界。




    本を閉じた瞬間、

    秘密の冒険を
    得意気に家族に話す
    幼い少女の姿までもが
    かすかに見えた気がしました(^_^)

  • 「はんな」というHNを名乗っていた頃を思い出して読んでみたが、これは可愛い!
    酒井駒子さんはベースに黒を塗るので、幼児向けと言うには美しく神秘的に過ぎるような。
    でもこれは読んでみたかった。そして読んでみて良かった。
    いつものごとく、子どもの描き方がそれはそれは可愛い。
    夜中に目を覚ましてしまって、また寝入るまでの出来事を書いてある。
    それが、「あるある・・こういうこと、ふふふ」という忍び笑いと共に読み進めてしまう。
    隣のベッドでお姉ちゃんが寝ているのをいいことに、色々なものを自分のベッドに運び込んで遊ぶのが、可愛くてクスクス。
    わたしもいまだに、ベッドの周りに色々なものを並べているものねぁ。
    猫好き・鳥好きな酒井さんらしく、どちらも登場する。
    ゆっくりゆっくりページをめくって見せながら読んだら、小さな子でも楽しめそう。幸せな一冊。

  • 『くまとやまねこ』『橋の上で』の絵を描いた酒井駒子さんの温かさに包まれた繊細な筆使いで、真夜中に目が覚めてしまった女の子<はんなちゃん>が、初めてひとりで体験するひそやかな夜の時間を見つめた、愛おしさのあふれる絵本。

  • 酒井駒子が描く夜は、しっとりしている。。。

    偕成社のPR
    「真夜中に目をさました女の子が初めてひとりで体験する夜の時間。しずかな夜の中で、ひそやかに気持ちがみたされる魔法のような時。」

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      季刊みづゑ Vol.16(美術出版社)に「酒井駒子さんとあるくマリー・ホール・エッツのもりのなか。」と言う素敵な特集が載っていますので、図書...
      季刊みづゑ Vol.16(美術出版社)に「酒井駒子さんとあるくマリー・ホール・エッツのもりのなか。」と言う素敵な特集が載っていますので、図書館でご確認ください(2005年の本なのでもう手に入らないと思います)。
      2014/05/22
    • はるかわさん
      わあ、有難うございます!必ず借りて読みます。「みずゑ」という雑誌は初めて知ったのですが、表紙が毎回とても素敵で驚きました。「かいじゅうたちの...
      わあ、有難うございます!必ず借りて読みます。「みずゑ」という雑誌は初めて知ったのですが、表紙が毎回とても素敵で驚きました。「かいじゅうたちのいるところ」が表紙になった号も読もうと思います。素敵な雑誌を教えて下さり、ありがとうございました。
      2014/05/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「かいじゅうたちのいるところ」が表紙になった号」
      今見たら「くらやみの絵本」!!!
      私も読みたくなってきました。。。
      「「かいじゅうたちのいるところ」が表紙になった号」
      今見たら「くらやみの絵本」!!!
      私も読みたくなってきました。。。
      2014/05/26
  • 娘へのクリスマスプレゼントに購入。私は酒井駒子さん大好きで、眺めるだけでうっとりしてしまうのだけど…さすがに5才児にはまだ馴染み難かったかな(・ω・`)娘、きょとんとしてました。
    これは、大人になったかつての少女たちが、静かな夜に昔を思い出しながら密やかに捲るのに向いている絵本なのかもしれない。それは酒井さんの絵本ぜんぶに言える事なんだけど。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「まだ馴染み難かったかな」
      小さい子向けの絵本に、カッチリ色分けされたものが多いのは、判り易いからですよね。
      ですから、情緒に訴えるような細...
      「まだ馴染み難かったかな」
      小さい子向けの絵本に、カッチリ色分けされたものが多いのは、判り易いからですよね。
      ですから、情緒に訴えるような細やかな作品に、心が反応までには少し時間が掛かると思います。でも良い作品は必ず心の底に届くので、色々見せてあげてください。。。
      2013/02/02
  • 売り場で目に入って、手に取って、レジに行くまでも、にこにこしちゃいました。
    家まで待てず、本屋さんの駐車場で…声を出して読みました。
    ゆっくり、ゆっくり。
    はんなちゃんと、ねこのチロと、静かな時間を。

    読んでいくごとに、まるで深呼吸するみたいに、気もちがやわらかくなっていくんです。
    はんなちゃんの、ふっくらほっぺが可愛くって。
    ずっと寄り添ってるチロが、やさしくって。
    なんか、ページひとつひとつを撫でたくなっちゃう。
    わたし、やっぱり、酒井駒子さんの絵、だぁい好きだなぁ……

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「まるで深呼吸するみたいに」
      酒井駒子の描く情景が、そのまま目にも心にも貼りついてしまうのは何故なんだろう、、、
      「まるで深呼吸するみたいに」
      酒井駒子の描く情景が、そのまま目にも心にも貼りついてしまうのは何故なんだろう、、、
      2013/04/01
  • 『ですって』という語りかけるような語尾が、内緒話のようで素敵でした。絵は絵画的でリアルだけど優しく、思わず見入ってしまいました。

  • はんなちゃんはねこのチロといっしょにしーんとしずかな夜の家で…ひそやかにみたされる魔法のとき。

    「GINZA」2014年2月号で紹介されました。
    (カテゴリで雑誌名をクリックすると、そこで紹介された本の一覧が表示されます)

  • うう~これもほしい

    夜中に目をさましたはんなちゃん

    動きというか一瞬の表情とか体勢とかがすごいかわいい

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著者プロフィール

1966年兵庫県生まれ。絵本作家。著書に『よるくま』『ぼく おかあさんのこと…』『ロンパーちゃんとふうせん』『金曜日の砂糖ちゃん』『くまとやまねこ』(文:湯本香樹実)、画文集『森のノート』 など。

「2022年 『橋の上で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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