ゆきのひ: キ-ツの絵本 (新訳えほん)

  • 偕成社
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感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784033281209

感想・レビュー・書評

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  •  雪って真っ白だけど、真っ白じゃないんだね。
    日本画だったら、塗らずに白のまま残しておくだろう。でも水彩画なら「白だからと言って白の絵の具を塗ればいいというのではありません。」と学校の先生に言われたことを思いだした。
     表紙をめくって見た雪の白さ。淡いピンクや淡いブルーが混ざっているのが、かえってキラキラの眩しい雪を思わせる。
     黒人の男の子、ピーターが朝起きた時、窓の外を見て雪が降り積もっていた時のトキメキ。
     どこもかも雪が積もっている中へ真っ赤なマントを着て元気に飛び出すピーターと雪景色のコントラストが素晴らしい。
     ピーターは雪の上にペタペタと足跡を付けてみたり、足を引きずって2本の線を付けてみたり、雪だるまを作ってみたり、雪の塊に体を押し付けて天使の形を作ってみたり…雪というキャンバスに思いっきりお絵描きをしているみたい。
     大きな子の雪合戦に入れなかったことと、ポケットに入れていた雪が温かい家の中で無くなってしまったことは悲しかったけれど、次の日、また、新しい雪の結晶がキラキラ光る中に友達と遊びに行った。
     貼り絵の技法を取り入れた素晴らしいデザインの絵本。

  •  本書は、アメリカの絵本作家、エズラ・ジャック・キーツの、雪に対する子どもの新鮮な驚きと喜びを、落ち着いた文体でありながら、じんわりと瑞々しく描いた、1963年のコルデコット賞受賞作。

     そのひと目見たら忘れられない絵柄は、切り絵のコラージュで、雪や家の壁には版画のような跡も見受けられて、キーツの細やかな工夫が窺える中、最も印象的なのが、やはり雪に彩られた様々な色たちであり、その上からバシャッとかけたような自然に織り成された模様とも取れる感じが、私にはまるでかき氷のシロップのようにも思えて、それはキンとした氷に近い硬質感や独特な立体感を形成しており、夏の暑い日に読んだら、とても涼しげでまた違った感慨を抱けそう。

     また、もう一つ印象的だったのが、子どもの頃に近所の駄菓子屋さんで買った、「ようかいけむり」のような煙で雲を表した描写であり、それは、まるで子どもには積もった雪が壮大な山に感じられる、そんな標高の高い空気の希薄感を表したようにも思えてくる、ちょっとミステリアスな雰囲気も面白い。

     そして、子どもも大人も思わず共感してしまいそうなのが、主人公「ピーター」の、繊細で細やかな描写の数々であり、その歩く度にキュッ、キュッ、キュッと小気味良い音を立てながら、自分の靴跡のまま凹んでいく様や、雪の感触を味わうために爪先を外に向けたり中に向けたり、両足を引き摺って筋を作っていく歩き方には、「そうそう、私も全部やったことある」と、あまり雪の降らない地域に住んでいたことから、その降った日がとても貴重な瞬間に思えて、小学校の休み時間はテンションが上がり、思い切り遊んだ記憶があるが、本書には天使の形なんて雪型もあるんだと、もし知っていたら、その頃にやってみたかったな、なんて気持ちも抱かせるような、懐かしさと新鮮さとが交差する展開に、また雪への印象が様変わりするようで、印象深い。

     それから印象深いといえば、物語もそうであり、ピーターの、その頭に雪が落ちてくることにすら楽しさを感じられる雰囲気から一転し、子どもならではの無垢な思いが生み出した悲しみには、思わず教えたくなる気持ちが込み上げる中、それでも再び喜びが舞い戻ってくる様には、まるでそれだけ喜んでくれるピーターに対して、雪が起こしてくれた奇跡のようにも思われて、それは、見返しや物語の終盤で見られる、様々な形をした色取り取りの雪の結晶の美しさからも感じられた、ピーターへのささやかな贈り物であると共に、何代もの昔の先祖をアフリカにもつ、ピーターならではの雪に対する新鮮な気持ちに寄り添ってあげたい、雪自身の温情とも感じられた、誰にでも等しく与えられる平等性の素晴らしさも唱えているようで、そこには、いつまでも凛と心に響くものが、まるでピーターの瑞々しい感性のように、確かに息づいているのであった。

    • Macomi55さん
      たださん
      おお!ヨーカイけむり!
      あれがヨーカイけむりという名前だったとは知りませんでしたが、ありましたね!
      指で擦り合わせると煙みたいなの...
      たださん
      おお!ヨーカイけむり!
      あれがヨーカイけむりという名前だったとは知りませんでしたが、ありましたね!
      指で擦り合わせると煙みたいなのが出てくるやつですよね。懐かしーい!
      「ブーブークッション」とかも駄菓子屋さんで売ってましたね。

      (o^^o)ゴールド賞おめでとうございまーす♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
      2024/01/30
    • たださん
      まこみさん
      コメントありがとうございます(^^)

      そうです、そうです!
      ピーターが山に見立てた雪を滑ってる場面の背景の雲が、何かに似てるな...
      まこみさん
      コメントありがとうございます(^^)

      そうです、そうです!
      ピーターが山に見立てた雪を滑ってる場面の背景の雲が、何かに似てるなと記憶を手繰っていたら、あれだと思い出した、まさに指で擦ると出てくる煙みたいなやつで、ヨーカイけむりという名前は私も覚えていなかったので、ネットで調べました。
      ブーブークッションが駄菓子屋さんに売ってたかは思い出せませんが、それも遊んでましたよ。
      確かに懐かしいですよね!
      あと、お菓子ですと、ヨーグルト味ではないヨーグルトや、プラスチックの楊枝で刺して食べる、小さな正方形のピンク色のお餅みたいなやつを、よく学校帰りに立ち寄って食べてました。

      嬉しいお言葉をありがとうございます(*'▽'*)
      正直、まだ実感は持てなくて、ふわふわした感じですが、私がブクログでやりたいことは、今まで通り、これからも変わりませんし、その内、ゲルギエフのシェエラザードのレビューも書きますよ(^^ゞ
      2024/01/30
  • こどものころ
    ゆきがふると わくわくした
    みなれたせかいが
    まっしろになり
    すべてをおおいかくしてくれる
    ノートのさいしょのページ
    ゆきやまのてっぺん
    だれもふんでいないゆきみちを
    てくてくあるくとき
    ゆきとあしがまじりあう
    ざくざく きゅっきゅっ
    だれもいない
    ただひとり

    雪っていいな!
    キーツの「ゆきのひ」をみると、そんなこどものころがよみがえってくるから好き。
    2022年クリスマスに、アメリカ大統領夫人ジルさんが キーツの「ゆきのひ」をこどもたちの前で読んでいる場面が、ニュース報道され、「同じ絵本読んでる!国はちがっても気持ちは同じなんだなぁ…( ^ω^ )」と、なんだか嬉しかったので、本棚に登録しました。

    • さり子さん
      workmaさん
      はじめまして。
      話題が出たこともあり、今年の冬はいっそう、この本のページをめくる機会が増えそうですね。
      workmaさん
      はじめまして。
      話題が出たこともあり、今年の冬はいっそう、この本のページをめくる機会が増えそうですね。
      2022/12/28
    • workmaさん
      さり子さんへ

      コメントありがとうございますm(。-ω-。)m
      雪国は雪降ろしなどご苦労が多い…!ことは察していますが(^o^;)…雪...
      さり子さんへ

      コメントありがとうございますm(。-ω-。)m
      雪国は雪降ろしなどご苦労が多い…!ことは察していますが(^o^;)…雪が珍しい地域の住民としては、なんだかわくわくするのです。キーツの絵本は、メリハリのある色彩感覚とシンプルな構成、こどもの気持ちが肌感覚で表現されている…。そういうところが好きです。さり子さんと、キーツの絵本のお話ができて嬉しかったです。また、さり子さんの本棚に遊びに行きますね(*^^*)
      2022/12/29
  • 英語版タイトル The snow day (Ezra Jack Keats)

  • まごうことなき幼児向け絵本の傑作のひとつ。
    始めはとにかく挿絵の美しさに心を奪われる。
    切り絵や貼り絵を駆使して、夢のように鮮やかな世界を作っている。
    真っ白な雪、赤いマントを着た黒人の少年。
    たぶん、誰も描かなかった美しさだ。
    次に読むと、雪に触れた主人公ピーターの弾む気持ちに、こちらまで引き込まれてしまう。
    ああ、自分もこんな風だったなぁと、つい笑みがもれてしまうのだ。
    最後は雪の結晶がたくさん描かれたページで、「ゆきのなかへかけていった」で終わり、それがまた豊かで長い余韻を残す。
    表紙から、裏表紙、すべて丁寧に開いて見せたい作品。
    63年のコールデコット賞受賞作品。さもありなん。

  • 雪あるあるを楽しむ男の子ピーターが可愛い
    やることから洋服から何もかもが可愛い♪

  • 目を覚ましたら町中が雪いっぱいだった。
    ピーターは外へ飛びだした!

    雪のなかで、今この時しかできない“遊び方”をたのしむピーターの様子を描いた1冊。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    オトナにとってはうんざりする大雪かもしれませんが、子どものピーターにとっては雪の降り積もった町は遊びのワンダーランドです。
    ただ歩くだけでも、いつもと違う音、違う靴跡がつき、いつも見ていた木も、白い雪帽子をかぶっていて、なんだか違う木のようです。

    子どもの頃は、雪のなかに足跡をつけるだけでわくわくしたのに、いつから雪を見ると顔をしかめてしまうオトナになってしまったのだろう…。
    ピーターの雪遊びを見ていると、自分の子どもの頃が懐かしくなるとともに、オトナになってしまった自分に、どこか哀しい気持ちも覚えました。

    訳者による本書の紹介ページによると、この本は切り絵や貼り絵で作られたそうです。
    特に後半ページでは、紙面いっぱいのピンクの背景とその中で光る雪の結晶がとてもきれいでした。
    白ではなくピンクの雪山なことで、ピンクのもつ気持ちを明るくわくわくさせてくれる力も活かされており、その気持ちのまま絵本を読み終えることができました。

    雪深い今の時期だからこそ、雪を眺めながら読み聞かせしたい1冊です。

  • 中古購入
    アメリカの絵本
    3〜7才向き
    シリーズもの

    切り絵と雪の結晶ははんこでしょうか?
    昔の絵本の素朴な色合いもあってか
    ピーターのやること全てが愛おしい
    ゆったりと読める
    いや 幼少期に想いを馳せて
    自然とのんびりとしてしまうのかも
    私の実家も今の住まいも
    大雪にはあまりならないので
    こんなことしたかったなぁって
    ちょっとうらやましかったりする
    これを子どもに読ませたら
    絶対同じことをやりたがって
    私を困らせるのだろう
    心が狭いのでついあれダメこれダメと
    こんな楽しいことをやらせてあげない
    つまんない親なのだ
    今はそう思ってるの
    だけどその場になると
    体を冷やして風邪ひくから!
    なんて言っちゃう
    ダメだね
    本当は大変だから嫌だけど
    大雪降らないかな
    いっぱい写真を撮ってあげたくなる絵本

  • 子供が生まれる前から持っていた絵本。そろそろ読み聞かせできるころかと思って、実際に雪がちらついた日に読んでみた。
    デフォルメされたシルエットでも、色遣いがとても美しいので、娘(3歳)の目をひく様子。
    雪が落ちてくるページでは大笑い、雪の結晶が窓の外を舞うページでは「キレイ!」と大喜び。ポケットにしまった雪の玉がなくなっていることに気づくシーシーンは一緒に残念そうな顔。
    最後まで飽きることなく聞いていた。
    やっぱり、名作は名作だな、と実感。
    自分の好きな本を子供が受け入れてくれるとは限らないけれど、これは気にいってくれたようだった。

  • とっても綺麗なお話だった

    絵も、
    仕草も
    文章も。。。

    こどもの様子が目に浮かぶ
    素敵な絵本でした

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