もりのおくのおちゃかいへ

  • 偕成社
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本棚登録 : 841
感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784033319100

作品紹介・あらすじ

ひみつのお茶会。わたし、おばあちゃんのいえにケーキをとどけにいくところなんです。おつかいのとちゅうでキッコちゃんがまよいこんだのは-?4歳から。

感想・レビュー・書評

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  • 木炭と鉛筆で細密に描かれた、白黒の世界が印象的だが、それゆえに、どこか幻想的な雰囲気も漂わせており、特に、主人公「キッコちゃん」の家の、内玄関回りの絵などは、ちょっとした迷宮のようにも見えてくるから、不思議である。


    雪かきをする為、おばあちゃんの家に出かけた、おとうさんが忘れていったケーキを、届けようと追いかける、キッコちゃん。雪の森の中で、ようやく、おとうさんの後ろ姿を見つけたと思い、気持ちも逸ったのか、転んだはずみで、ケーキが潰れてしまいました。

    せっかくのおばあちゃんへのケーキがと、ガッカリのキッコちゃんだったが、それでも気を取り直して、足跡を辿っていったら、見知らぬ家に入ろうとするおとうさんを発見。キッコちゃんは不思議に思いつつも、その家の窓からそっと覗いてみたら・・


    物語の内容は、私にはありふれたものに感じられて、少々物足りなさを感じたのですが、それとは別に、いくつか興味深い点を発見しました。

    まずは、動物たちの描写ですが、これが人間の体格に動物を当てはめているような印象で、どこか幻想的で夢を見ているような、非現実的感覚に陥りそうな足元の覚束なさが、私には怖く感じまして。

    子どもの体格なら、まだ可愛くも思えましたが・・これは別に、人間には人間の体型が、動物には動物それぞれの体型が自然なんだよと言っているわけでもないんですよね。しかし、そんなメッセージ性を想像してしまうような思いにさせるのは、白黒の無感情な絵だからだろうか。

    また、それとは対照的に、所々色の付いた部分もあるのが気になってしまい、この鮮やかさは、特にケーキの描写が圧巻で、ここの場面だけが、妙に現実感漂わせているのが、また不思議といえば不思議で。

    しかし、そもそも色の付いた部分は、何もケーキだけではなく、キッコちゃんの髪の色や、ニット帽、手袋、スカートもそうだし、動物たちのいくつかの服、楽器等々・・と割合的には少ないが、どこかポイントもありそうだなと思っていたら、白黒の絵との対比なのではと思いました。

    例えば、キッコちゃんの場合。
    おとうさんの忘れていったケーキに対して、真っ先に、「わたし、とどけにいく!」と志願し、ひとりでいけるかと、おかあさんに心配されても、「うん、いける!」と、明るく前向きな楽しさを感じさせる、この気持ちの高まりが、髪の色や、他の装飾品に表れているのではないかと感じました。

    また、動物たちのそれらについて、服は、それが子どもの場合が多い事から、キッコちゃんに対して仲良くなりたい気持ちの高まりであったり、楽器は、キッコちゃんと共に心から楽しいなと感じられた、それであったりと、元々はキッコちゃんだけが持っていると思われた、気持ちの高まりという色を動物たちが察知して、その思いを共有したかったのかなと考えると、表紙のいくつかの色の付いた部分において、既に、この時点で心の高まりを、キッコちゃんに感じていたんだと思うと、何だか非現実的だった動物たちが、急に愛しくなってくるようで・・・こうして読んだ後に、あれこれ思いを巡らせて印象が変わっていくのも、絵本の良いところですし、味わい深いところだと感じました。

    ちなみに、ケーキの色の付いた部分は、絵本のキャラクター以上に、読んでいる私の気持ちの高まりを表しているようにも思われて、これは食べてみたくなりますね。

  •  雪の晩が明けた次の日。おばあちゃんのうちへ雪かきをしに出かけていったお父さんの忘れ物を届けるために、キッコちゃんはひとりで、真っ白の森の中を通っておばあちゃんの家を目指す。
     子どもが、初めて親の力を借りずに何かを成し遂げる時、「ひとりでできたね」とよく言うのだけど、厳密にはひとりではなくて、親や家族以外のよその人の協力や見守りがあってのことだったりする。それでも、挨拶をして、輪に入り、困りごとを打ち明けて助けを求めることができたのはやはりその子の力でもある。親の知らないところで、実はドキドキの大冒険の中で自分もびっくりするような力を発揮する経験を、しているのかもしれない。
     というようなことを考えた。

  •  タイトルと表紙からハートウォーミングなお話だろうと想像して、本書を読んでみました。
     デッサン力のある絵とあらすじは好きなのですが‥、どことなく漂うホラー感はなぜだろう。動物たちの目が生き生きしてなく、お屋敷の中は薄暗さを感じてしまいました。(私の脳内で、世にも奇妙な物語のテーマ曲が流れた)

  • モノクロの世界でのカラー使いにうっとり…
    不気味?と思わせてからの
    温かいお茶会や賑やかな行進など
    読み進めるほど盛り上がっていく♪

  • みやこしあきこさんの絵本では、三冊目。
    木炭で描いたモノトーンの世界に、さし色としての赤や黄色が美しい。
    そうそう、「おちゃかい」のケーキもとても美味しそうな色が付いている。
    雪の季節にぜひ。
    5,6歳から大人まで楽しめる。約8分。

    子どもの頃、白湯や牛乳しか飲ませてもらえない中で、「おちゃかい」という響きは何だかわくわくした。
    お茶って、美味しいの?お茶だけ?他は何があるの?
    どんなお話するの?どんなひとと一緒なの?
    その答えは、主人公のキッコちゃんが教えてくれる。
    不安感と、わくわくする気持ちと、清々しい達成感を一緒に味わえる。
    ただし、一緒にお茶を飲むお相手は森の動物たち。
    その可愛らしさにはもう、まいってしまう。
    特にこちらをじいっと見つめるうさぎさんのまん丸な目!
    お茶の場面も楽しいけど、雪道を一緒に歩いてくれる場面は、エッツの「もりのなか」さながらで、なんとも幻想的で楽しい。

    気が付いたら「おちゃかい」で、またまた気が付いたら「おばあちゃんの家」。
    魔法のようなキッコちゃんの体験は、ひょっとして自分にも訪れていたのかもしれない。
    悲しいことに、動物たちの言葉が聞こえなかっただけで。
    雪の季節のお話なのに、読むとほかほかあたたかくなる。そしてお茶が飲みたくなる。
    いいですよ、この一冊。

  • 最後まで読み終わってから改めて表紙を見ると動物達の優しさに溢れた表紙だったことに気付いてもう一度読みたくなる。

  • お父さんを追いかけて、転んだ時に、もしかして異界にワープしたのでしょうか? やさしい動物さんの世界の温かいお茶会から、おばあちゃんの家へお土産のケーキ(なんて美味しそう!)付きで送り出してもらえたのは、キッコちゃんが家族思いで何の欲も持ってないからなのだろうなぁ、と思いました。

  • お茶会に入って行った時の、振り返った動物たちの目がこわかった!
    でもみんな優しかった。
    雪の中、キッコちゃんの髪やスカートの黄色と赤が映えてかわいい。

  • おばあちゃんの家にケーキをもっていくとちゅう、キッコちゃんはころんでしまいます。ケーキがつぶれてなきたくなりましたが、なぜかひつじに声をかけられて、どうぶつたちのお茶会に出ることになってしまいました。
    白黒の画面の中で、輝くような赤と黄色がきいています。動物たちがとても魅力的。

  • いっせいにこっちを向いてる動物たちのページ。
    軽くトラウマものですよ・・・

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著者プロフィール

1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。在学中から絵本を描きはじめ、2009年に『たいふうがくる』で「ニッサン童話と絵本のグランプリ」大賞を受賞しデビュー。2012年『もりのおくのおちゃかいへ』で日本絵本賞大賞を受賞。数々の言語に翻訳出版されている『よるのかえりみち』はボローニャ・ラガッツィ賞(2016年フィクション部門Special Mention)受賞後、ニューヨークタイムズ&ニューヨーク公共図書館The Best Illustrated Children’s Books of 2017、ミュンヘン国際児童図書館The White Ravens 2016に選ばれるなど、海外からの評価も高い。その他の作品に『のはらのおへや』『ピアノはっぴょうかい』『これだれの?』『ぼくのたび』『かいちゅうでんとう』などがある。

「2022年 『ちいさなトガリネズミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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