炎路を行く者 —守り人作品集— (偕成社ワンダーランド)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 188
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035403807

作品紹介・あらすじ

『蒼路の旅人』でチャグムをさらったタルシュの鷹アラユタン・ヒュウゴ。ヒュウゴはなぜ、自分の祖国を滅ぼした男に仕えることになったのか。そして、バルサは、過酷な日々の中で、思春期をどう乗りこえていったのか。題名のみ知られていた幻の作品「炎路の旅人」と、バルサの少女時代の断片「十五の我には」が収められた、「守り人」読者待望の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • ヒュウゴとバルサ、二つの番外編。

    残念なことに本編でのヒュウゴがどんな人物だったか覚えていなくて、予習が必要だったなぁと、
    読み始めて後悔。

    ヒュウゴもバルサも、十代の若者が普通経験することのないような波瀾万丈な人生を歩んできた。
    だから同年代の子どもたちとは考え方も感じ方も
    全く共通項がなくて浮いてしまってる。
    その閉ざした感じが切なく、
    こんな風にしか生きられない人生って…と
    苦しい気持ちになる。
    でもその分、彼らは他者を思いやり、感謝する気持ちを持ち合わせ、真っ直ぐな気性だ。
    彼らの流す涙は、読む者の心を打つ。

  • ヒュウゴの少年時代。これだけで読ませる。読み終わるのがもったいなかったです。

  • ヒュウゴは帝の盾の息子だったんだね。家族、親戚を殺されて、下町に住むしかなく、憤りを持て余していた。育ってきた環境がまったく違うところで生きていく想像がつかないな。考え方も違うから馴染めないし、馴染みたいとも思わない。でも、そこから抜け出すチャンスがあっても、それは敵に魂を売ることになると思って決断できない。でも本当にそうなのか、もっと高みから全体を見るためには、必要な手段として割り切れるのか。最後に決断できて良かった。そして、最後まで良心や心の支えとなる人たちがいてくれてよかった。少年時代だからこそ悩む葛藤かな。大人になってから考えると、そんなに悩まなかったのかなぁ。ジグロの言ってた、十五の我には、見えざりし、弓のむがみと、矢のゆがみ、二十の我の、この目には、なんとなく見える、ふしぎさよ。人は成長する生き物なんだなと。

  • (2015年2月22日 再読)

    その後タルシュのタークとなるヒュウゴの少年~青年時代のお話。
    国を家族を奪われ、それでも誇りを傷つけられても失わず生きていくのだけど、過酷過ぎだね。
    若くして達観してしまったその後の姿が妙に切なく感じられるのはそういうことかと。

    バルサとジグロのお話もあります。
    こっちも過酷。

    守り人、また外伝出ないかな。
    シュガとかチャグムとか。

  • 「…十五の我には 見えざりし、弓のゆがみと 矢のゆがみ、二十の我の この目には、なんなく見える 不思議さよ…」

    守り人12冊目。ヒュウゴくんが熱くヤンチャしてた少年時代のお話。冷静沈着なタークの時代とは対称的。本来7巻になるべく執筆されていたということで、本編さながらのストーリーが楽しめます。登場時点でヒュウゴのキャラが出来上がってたのは、こういうことでしたか。

  • 久々すぎて、どの人物か判断できなかった。
    それでも、この世界観。やはり良かった。

    ヒュウゴの幼年期の物語は、
    国が征服されるということについて、
    考えさせられる。

    いつも物語だけでなく、
    その背景にも思いを巡らさせられる。
    この世界が、ちゃんと、
    現実味を持ってつくられている証しだ。

  • 蒼路の旅人で登場したヒューゴの物語と、バルサが15歳のころの出来事を綴った掌編の2編を収録した、守り人作品集。

    …と言いつつ、ヒューゴのことをあまりよく覚えていないダメな読者の私なので、また守り人シリーズを全部読まなくちゃ、と思っている。
    とりあえず、ヒューゴがどんな人物で登場したのかを思い出すため、
    イレギュラーではあるけれど、青路の旅人から読むかな。

  • 上橋菜穂子の守り人シリーズの番外編の一つ。
    ヒュウゴの半生と、バルサのまだ幼い時の逸話。

    シリーズ全部読み返したくなってしまった。
    そのくらい守り人シリーズに新たな輝きを添える本だった。

    ヒュウゴが男前すぎる。純粋にかっこいい。
    そしてヒュウゴを救った親娘のその後が気になる…

  • 表題作は守り人シリーズのスピンオフ、というかヒュウゴが主人公のこの話のほうが先に生まれてたんだって。

    世界にホント厚みがあるよなあ。
    上橋さんの物語を読むたびに、同時代にこの作家の新作を読めることが僥倖だと思う。
    亡くなった後でも作品は世界中で読み継がれていくような作家かと。
    好きすぎて新作を読むのが勿体なくて、読み始めると読み終わるのが悔しいくらい。

    それぞれの人生が物語世界の中にきちんと織り込まれていて、さらにそれを支える世界が生活感とリアリティにあふれてる。
    なんでこんなに好きなのか、と思うと、架空の文明なのに、民俗的なものがしっかり見える、というのがたまらんのだろうな。
    さらに、登場人物の人間的な魅力。こういうときにこう振舞うだろう、と想像できるもん。
    それぞれが誇りとか譲れないものをきっちり持ってるのがいい。

    もう一つの短編、「15の我は」は、若き日の悩めるバルサの物語。
    中2病バルサかと思いきや、さすがに命がけで生きてる彼女は充分成熟した考え方なんだよ。
    それでも大人になって振り返ると、当時は見えなかったものに気付いて、歩いてきた道のりの遠さを思う、っていう。

    凛とした生き様があります。

  • 10代の葛藤。
    自分は何をしているのか、自分に何ができるのか。
    そして、自分がこんなに苦しんでいるのに、
    世間はなんと図々しく、不平等に進んでいくのか。
    ファンタジーの世界だけれども、
    現実世界にも通じるテーマなのじゃないかな。

    当時は自分ひとりで生きているような感覚だけれども、
    そこには確実に多くの人々との出会いが関わっている。
    振り返ってみると、それがよく分かる。

    ヒュウゴの中編とバルサの短編。
    どちらもすごく面白かった。
    バルサの短編はアンジェラさんの名曲にも通じるのかな。
    それとも、偶然の重なりなのかしら。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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