ごんぎつね (日本の童話名作選)

著者 :
  • 偕成社
4.13
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感想 : 187
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  • Amazon.co.jp ・本 (35ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784039632708

作品紹介・あらすじ

兵十が病気の母親のためにとったうなぎをふとしたいたずら心から奪ってしまったきつねのごん。せめてものつぐないにとごんは、こっそり栗や松茸を届けつづけますが、その善意は兵十に伝わらぬままに思いがけない結末をむかえます。宮沢賢治と並ぶ古典的童話作家、新美南吉、その屈指の傑作短篇「ごんぎつね」を気鋭の画家、黒井健が絵本化。

感想・レビュー・書評

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  • 彼岸花をどこに見に行こうかと考えていたら、この本を思い出し再々再々、、読。
    兵十の母親の葬儀の場面が、殊に好きなのだ。
    今では滅多に見られない、野辺送りの場面だ。
    咲き乱れる彼岸花の向うに、兵十を先頭にした白い裃姿の行列がみえる。
    「ごん」は、手前の六体のお地蔵さんの陰に隠れてそれを見送る。
    そうだ、喪服ってもともとは白一色だったんだなぁと、そんなことを思う。

    国語の教科書では、今も4年生の教材であるらしい。
    当時は、どうして「ごん」を撃ったの?兵十のバカバカ!と泣いたものだった。
    それが今読み返すと、「ごん」の哀れさと健気さばかりが際立って、ただただ泣ける。
    そして、自分を一番励ましてくれていた「ごん」を、それと知らずに死なせてしまった兵十。
    その、言いようのない悔恨と悲しみ。
    決して語られることはない孤独を思うと、いたたまれなくなる。

    作者の新美南吉さんは、17歳の時にこの作品を執筆したという。
    肉親の愛に恵まれなかったという幼年時代を通し、互いに理解しあうことの難しさを心に感じていたのだろうか。
    ひとは、こんなに悲しいことも学ばなければ、大人になれないのか。

    挿絵は黒井健さんで、色鉛筆を細かく削り、それを油絵具を洗う液に溶かしてから指に巻き付けた柔らかい布にとって塗るという手法らしい。
    通常挿絵画家さんと絵本作家さんは、入念に打ち合わせをして完成を目指す。
    だが作者は黒井健さんが生まれるより早く亡くなっている。
    どれほどの思いでこの絵を描き続けたことだろう。

    話では、新美南吉さんの郷里まで出向いて、話の中の風景を丹念に歩いて見て回ったという。
    今年も「ごん」が歩いた川沿いに、300万本の彼岸花が咲くのだろうか。
    愛知県知多半島は、いつの日かゆっくり旅をしてみたいところだ。

    • nejidonさん
      読書猫さん、こんにちは♪コメントありがとうございます。
      誰もが知っている作品だけに、受け止め方も千差万別かもしれませんね。
      それでもやは...
      読書猫さん、こんにちは♪コメントありがとうございます。
      誰もが知っている作品だけに、受け止め方も千差万別かもしれませんね。
      それでもやはり好きな作品なので、載せてみました。お読みいただけて嬉しいです。
      いもとようこさんの可愛らしい挿絵のものもありますね。
      素敵な贈り物で、私も同じものが欲しかったなぁ・(笑)

      実は、読書猫さんの本棚にはつれづれにお邪魔しております。
      読んでいて楽しいものですから「ふむふむ、そうそう!」と納得して、
      不注意にもそのまま閉じてしまいます。
      次回からはしっかりお気に入りをクリックして帰りますね。
      こちらこそ、よろしくお願いします。
      2017/10/02
    • 地球っこさん
      おはようございます。昨夜はコメントありがとうございました!
      『ごんぎつね』は大人になっていくにつれ、ごんから兵十へと視点が変わっていきまし...
      おはようございます。昨夜はコメントありがとうございました!
      『ごんぎつね』は大人になっていくにつれ、ごんから兵十へと視点が変わっていきました。この絵本はちゃんと今も残してあります。久々に読んでみようと思います。
      nejidonさんのレビュー『ひとは、こんなに悲しいことも学ばなければ、大人になれないのか。』この一文がとても印象に残りました。
      2018/02/16
    • nejidonさん
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      先ほど「牧野富太郎さん」の本のレスも拝見しました。
      コメントにお返事...
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      先ほど「牧野富太郎さん」の本のレスも拝見しました。
      コメントにお返事出来るということに気が付かなくて、初コメをいただいた時は
      一年間も放置してしまったワタクシです。(笑)
      すぐに理解された地球っこさんはさすがです!

      この名作は、読む年齢によって感じ方も違いますね。
      親としては、すべての悲しいことや辛いことから子どもを遠ざけてあげたい。
      でも現実には無理な話です。
      時に、悲しいことや辛いことからも学ぶものがたくさんあります。
      本による代体験であっても、子どもたちの心には多くのものが残ると信じます。
      地球っこさんもぜひお読みになってみてくださいね。でも泣かないで下さいね。
      2018/02/16
  • これも久しぶりにひっぱり出してきた絵本。

    古典的童話作家の新美南吉の傑作。
    やはり、何度読んでも心に響く絵本。
    悲しいけれど「つぐない」の心が伝わってくる。
    受け継がれていくすばらしい絵本だと思う。

  • 罪と罰。罪の輪廻。
    そういったことを考えさせる日本童話です。

    ごんぎつねのような常習犯ではないにしても軽い気持ちのイタズラ心を抱いている人は多いと思います。
    しかし、そのイタズラは、した人にとっては些細なものかもしれないが、相手にとっては時として人生を狂わせるものになる危険性を秘めています。

    人を自分の尺度で計ってはいけないように、人の善意に付け込んだ悪いことはしていけないということが学べます。
    ということで、教訓を一句にまとめます。

    イタズラは
    言語道断
    ごんぎつね

  • しんどい。切なくて痛くて仕方ない。
    これを小学生のとき教科書でやるのは胸が痛かったなあ…

    これをどう解釈するか。
    ごんはきつねだが、人間だったらどうだったのか。

    ほんの少しの悪戯が時に大きな罪に繋がり、
    罪の意識はいつまでも自分を苦しめる。
    そこで償いとして何ができるか……

    罪の意識から逃げる人もいると思う、「なんだ、あれぐらい悪戯じゃないか笑」と何も思わない人もいるだろう。

    そんな中、ごんは苦しんだ。
    どうだろう…コトの大きさにもよるが、
    ごんのような人間、あまりいないと思うのだ。

  • 長女が生まれた数十年前、友人がプレゼントしてくれた1冊。大人も充分に鑑賞できる美しい黒井健さんの絵。

  • ごんの優しさを感じられる感動する本です

  • 『ごんぎつね』といえば、”可哀想な話”の代表みたいになっている。「いたずらばかりしているとろくな目に合わないぞ」という教訓話とも受け取られる。でもわたしがこの話を改めて読んで感じたのは、これが作者の南吉にとって、ある種の幸せを描いた作品なのではないか、ということだ。

    子供のころは何気なく見過ごしていたが、冒頭部分、雨上がりの川の描写が美しい。雨降りによって抑圧されていたごんのエネルギーが一気に解放され、その気分が川の氾濫にも表れているかのようだ。

    野生動物であるごんが、兵十の顔を一発で見分けているのも、なんだか気になった。いつもどこかから人間たちの生活を覗き見ているのだろうか。後に「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」というセリフもあるが、きっとごんには、同じきつねの友達が居ないのだろう。

    初登場時、兵十は氾濫する川に入ってうなぎをとっている。「はちまきをした顔の横っちょうに、まるい萩の葉が一まい、大きな黒子《ほくろ》みたいにへばりついていました。」という描写が、絶妙に彼のキャラクターや、そのときの真剣さを物語ってる。

    しかし、彼が”おっ母”を亡くしたときの様子は、ごんの憶測という形で間接的に描かれ、実際の光景の描写は無い。このことが作品を味わい深くしている、重要なポイントである。
     他の南吉作品を読んでみても、どれも気持ちの問題を取り扱っているようだ。わたしには、病弱で体が思うように動かなかった南吉の、空想ばかりしていた経験が反映されているように思えてならない。

    後半、栗やまつたけが届くのを不思議に思った兵十が、「神さまのしわざ」ではないかと友人から示唆される。
    それを聞いたごんの反応はこうだ。

    「へえ、こいつはつまらないな」

    「おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ」

    初めは罪滅ぼしのつもりだったのが、この頃には何か別の意味を持つ行為となっていたことが、ここから伺える。
     ごんが兵十の土間にそっと栗を置いて帰ったときの気持ちは、南吉が自らの作品を世に出すときの気持ちと重なるのでないだろうか。

    『ごんぎつね』はいたずらを戒める話ではない。むしろいたずらをする者のやるせない動機や、いたずらから得られるささやかな喜びを描いているのだと思う。

  • 小学校の国語の教科書に必ずあるごんぎつね。定番中の定番なのは、きっと今も色あせないテーマだから。ごんがどれだけ想いをつくしても兵十には伝わらない。どんなに自分のした事を後悔しても取り返しのつかないことはある。互いの後悔と贖罪と。子供の頃に読んだ時の「かわいそう」以上の物が心に浮かんでくるのです。そして、ストーリーだけでも十分心に響くけど、さらにこの絵が私は大好きです。

  • 両親のいない小狐のごんは、
    村へ出てきては
    イタズラばかりして、村人を困らせていた。

    ある日ごんは、
    兵十が川で魚を捕っているのを見つけ、
    魚やウナギを逃すというイタズラをしてしまう。

    それから10日ほどして、
    兵十の母親の葬列を見たごんは、
    あの時逃がしたウナギは
    兵十が病気の母親のために
    用意していたものだと悟り、後悔する。

    母を失った兵十に同情したごんは、
    ウナギを逃がした償いのつもりで
    毎日イワシや松茸や栗などを
    コッソリと兵十の家に届けに行く。

    しかしその善意は
    兵十には伝わらぬままに、
    思いがけない結末を迎える…。



    確か小学校の教科書に載ってましたよね(^^)

    名作ということで
    様々な人がイラストを書いているけど、

    なんといっても
    黒井健さんが描く
    繊細なタッチの情感豊かな絵が、
    切ない話に一番合っていると思うし、
    個人的にも一番好きです♪


    イタズラ好きのごんが兵十に同情したのは、
    母親を亡くし
    ひとりぼっちになった兵十に、
    ずっと孤独だった自分の姿を重ね合わせたんだと思うな。


    だけど
    毎日届く栗やイワシを
    ずっと神様のイタズラだと思っていた
    兵十の話を聞いて、
    寂しさを感じたごん。

    最後に

    『ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは…』

    の兵十の言葉を聞けて、
    頷きながら
    嬉しかったごん。

    最後の最後で
    一瞬でも心が通じあえたのかな…(>_<)


    もう書いている今も
    あまりにも悲しい結末を思い出しては
    撃沈です(泣)(ToT)


    新美さんの作品は
    『手ぶくろを買いに』同様に、
    美しい日本の風景描写や
    日本語の美しさを改めて教えてくれる。

    そして親子の情愛や
    動物と人間の触れ合い、

    『やさしさ』や
    『愛情』をテーマにした彼独特な作風は、

    殺伐とした今の時代だからこそ
    胸に沁み入るし、
    これからも伝え続けていかなければならない
    日本が誇る童話だと思っています。

    • MOTOさん
      こんにちわ。

      兵十が最後につぶやく言葉、何度思い出してもうるうるしてしまいます…
      相手の真意を汲み取るのって、とても難しい事ですよね。
      で...
      こんにちわ。

      兵十が最後につぶやく言葉、何度思い出してもうるうるしてしまいます…
      相手の真意を汲み取るのって、とても難しい事ですよね。
      でも、ごんの最期を思うと、人を信じずにはいられなくなる。
      自分が傷つくのはイヤだけど、相手が傷つくのはもっとつらいという、そんな当たり前で、大事なことを「ごん」が教えてくれる様な気がして、何度も読み返してしまいます。

      ホント、ずっとずーっと後世の人にも読み継がれていって欲しい!に同感です♪
      2012/05/04
    • 円軌道の外さん

      MOTOさん、
      コメントありがとうございます!

      いやぁ〜めちゃくちゃ共感しました(泣)(T_T)


      自分は引きこもり...

      MOTOさん、
      コメントありがとうございます!

      いやぁ〜めちゃくちゃ共感しました(泣)(T_T)


      自分は引きこもりの子供たち対象の
      ちょっとした教室をやってて、
      この絵本で子供たちに
      読み聞かせしたことがあるんやけど、

      感情込めれば込めるほど、
      自分自身がストーリーに
      入り込んじゃうから、

      兵十やごんの
      お互いの痛みを
      読むほうも感じて
      いつも涙のダムが決壊するんですよね〜(ToT)


      自分も騙すより
      騙されるほうがいいし、
      どんなに傷ついても
      分かり合いたいし、

      人を信じる気持ちだけは
      失くしたくないって思ってます。


      傷つくことを怖れちゃ
      何も手にできないし、
      自分から
      まずは誰かを信じなきゃ、
      自分も誰にも
      信用されないですもんね(笑)

      2012/05/07
  •          「カミサマが綴った物語だと、本気で思った」

    新美 南吉さんは童話の神様だと思う。さらに黒井さんのイラストとのコラボは、天界の域だと思う。ほんとに。

    私が生まれたとき母の知人がプレゼントしてくれた本です。何回も何回も、とにかく繰り返し読みました。自分がもし子どもを産んだらこの本を引き継ぎたいくらいすき。

    ラストのシーンは、何回読んでも涙腺決壊、ボロボロ。周りに人がいると気味悪がられます(汗)

    新美さんの童話は、ストーリーは勿論(子どもに読みきかせるには悲しいものもあるけど)、景色や色の表現がありえないくらいキレイ。情緒を養うのにもいいかもです。何冊も本は出ているみたいですが、やっぱりこのイラストが一番好き。ほんわかしていて、あったかい。

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著者プロフィール

1913年、愛知県知多郡半田町(現・半田市)に生まれる。中学時代から童話を書き始め、『赤い鳥』『チチノキ』などに投稿。東京外国語学校在学中に病を得、20代後半の5年間は安城高等女学校(現・県立安城高等学校)で教師をしながら創作活動を続けた。1943年、29歳の生涯を終える。代表作に「ごんぎつね」「おじいさんのランプ」「手袋を買いに」「でんでんむしの悲しみ」を始めとして、多くの童話・小説・詩などの作品を残す。

「2019年 『子どものすきな神さま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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