ナイトガーデン (フルール文庫 ブルーライン)

著者 :
  • KADOKAWA/メディアファクトリー
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040669052

作品紹介・あらすじ

静かな山の中で祖父と暮らす石蕗柊のもとに、祖父の昔の教え子だという男・藤澤和章が訪ねてくる。このまま一生山を出ずに生きていく、そう思っていた自分はなんて狭い世界しか知らなかったんだろう…生まれてはじめて触れた人の肌の熱さに和章への想いを自覚する柊。だが彼の瞳はいつも柊ではない"誰か"を見ていた…。「ふったらどしゃぶりWhen it rains,it pours」から一年、消えない傷を抱えた和章の愛と再生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • はー、やっぱり一穂さん好きだわ…。
    前作ありきのスピンオフものだけど、前作とはまた違う雰囲気を醸し出しているのはさすがといったところ。
    恋を失って傷ついた和章と、祖父と二人暮らしをする柊が出会い、惹かれあう。野生児のような柊と、人との関わりを嫌い都会で生きていた和章がどうやって恋に落ちていくのか、そして何を知っていくのか。恋物語であると同時に喪失と再生の物語でもある稀有な作品。一穂さんを好きで良かったと実感できます。

  • 読後自分の中で色んな気持ちが駆けめぐって、それをうまく論理立てて説明する自信がない。
    一言でいえば、それはとてつもない安堵かもしれない。自分を許さない和章をちゃんと許してくれる人が現れたことに。
    罪悪感に苛まれながら、それでも手放すこともできなくて、幼なじみの整を囲い込むことでしか愛せなかった和章。愛しているのに受け入れられない矛盾。いびつな関係が破綻してどこかほっとした一方で、すべてを失ってしまった喪失感に絶望する。
    そんな和章の心に整の別れの言葉が抜けない棘のように突き刺さる。大切な中味を失った空っぽの入れ物みたいな自分に。
    そんな和章の前に文字通り降ってきた一条の光。山奥で隠遁生活をしている祖父と共に暮らす柊。あらぬ誤解、父母すらも100%の力で自分を信じてくれなかった事に傷ついて、逃げるように祖父の元にやってきた。
    逃げるのも闘い方のひとつだと鷹揚に見守ってくれる祖父もまた心に深い傷を抱えている。
    それぞれ過去を引きずりながらもひっそりと過ぎていくやさしい時間。それが、ずっと前に進めずにいた和章をやがて再生していく。
    和章はつくづく不器用な人間なのだと思う。でもこんなにもやさしさと情熱を内に秘めていたのか…とも。
    一見とりつく島もないように見える冷静さは、心にない事は言えない誠実さだ。
    整は整でちゃんと幸せになっている。自分も幸せになっていい。そう想える相手に和章が出会えて本当に良かった。
    『ふったらどしゃぶり』と対の作品として、ぜひともセットで読んでもらいたい。

  • 「ふったらどしゃぶり」のフラれた方の和彰のお話。これ単体でも問題なく楽しめますが、前作を読んでいた方がより和彰に感情移入して読めそうです。
    山の、緑の描写が綺麗で素敵な世界観を楽しめました。

  • 「ふったらどしゃぶり」という本のスピンオフ作品です。一年ほど本棚に眠らせていた本でした。あらすじを読んでためらってしまって…。表紙の絵が素敵で、こんな可愛い子が片思いして悲しい思いするのか、と思うと、読めなかった(笑)ハッピーエンドなのは分かってるんだけど、その経過が可哀想なのは嫌だなぁ、と。だって絵が好みだったから(笑)
    で、ある時旅行のお供に持っていくことにしました。何もない時に読むよりも、旅行の合間の移動時に読めばそんなに衝撃を受けないだろうと。…甘かった…。違う意味でめっちゃ衝撃を受けてしまいました!何で今まで読まなかったんだよーーーーって。柊はやっぱり激かわいいな…。って。そしてそもそも前作で出てきた和章も私嫌いじゃないよ、そうだよーって。旅行とかそれどころじゃない(笑)電車の移動時間が待ち遠しい!一穂さんの作品はいつもそうですよね。日常を薔薇色に変えちゃうの。つまらない移動時間が何よりも待ち遠しくなっちゃうの。
    ということで、まんまとはまってしまいました。ちなみに京都植物園にも行きました(笑)聖地巡礼。とりあえず、心が洗われるというか、現実から少し解離させてくれる癒しの作品だった。テーマも作品の舞台も。植物園に行きたくなりますよ。

  • ディアプラス文庫にて再発行。

  • ふったらどしゃぶりのスピンオフ、当て馬元彼(語弊あり)のその後的な…あのあとどうしてるのか気になってたから、読めてよかった。ただ、個人的にはカプがストライクゾーンから外れちゃったので萌えたかというとウーン?かも

  • インテリアデザイナー×植物園職員(バイト)
    とは言え和章は全然デザイナーしてませんが。休職中。
    元大学教授の祖父と暮らす柊。そこへ書架の整理にやってきた元教え子の和章。
    花を美しいとも思わない、和章と感性でのみ突っ走る柊。違いすぎる二人が違うのに惹かれあうのが、不自然じゃないお話になってるなーと思う話でした。
    和章にも柊にも祖父にも過去に暗い経験があるせいか、どこか「ナイトガーデン」というタイトルにふさわしい、パっと明るくはない雰囲気が物語に漂っているのだけど、そういうのをあからさまではなく、上手く表現できる一穂ミチさんの描写力って本当にすごいと思わされる作品。

  • 前作では不憫な役回りでしたが、
    ようやく幸せをつかめたようでよかったです。
    スランプだった仕事もきっと順調にこなすでしょうし
    ちょっと重いくらいの愛情を持っている和章だけれど
    柊ならそれも受け止められる素敵なカップルだと思います。

  • 『ふったらどしゃぶり』のスピン、整の想い人だった・和章✕祖父と暮らし植物園でバイトしている・柊。一年たっても自分を責めトゲが刺さったままの和章が、少しずつ柊に惹かれて恋に落ちていく様子がたまらなかった。前にも後ろにも行けなかった和章をゆっくりと溶かしていく柊… 彼にも色々と過去があるけど本当に素直な良い子で… 和章の相手が柊で本当に良かったと思った。お祖父さんの事はあまりにも不意打ちでちょっと辛かったです…

  • もう毎回一穂さんの作品を読むと同じことを書いている気がするのですが、毎回毎回こうも訴えかけてくるラブストーリー(男同士ですが)を書けるのかなぁと感心と感動させられます。
    ゆっくりとじっくりと世界に入れる文章に、それぞれの人生にもがいて苦しむ柊と和章がほどけるように近づいていく姿に思わず切なくて嬉しくて涙してしまいました。

    これは別作品「ふったらどしゃぶり」に登場していた藤澤和章と中卒で植物園でアルバイトをしている石蕗柊のお話です。
    感情の見えない和章とはつらつとして真っ直ぐな柊。二人はタイプが全く違うんですが、柊の実直さが前作の整とのことで閉じこもっていた和章の殻をそっとめくっていく感じに切なくてときめきました。

    それにしても和章は恋仲になると、あんなに優しくてデレデレになるんですね。思わぬギャップにこっちがどうにかなりそうでした。

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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