人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

著者 :
  • KADOKAWA/中経出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040800202

感想・レビュー・書評

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  • 【無限の知】
    個人的には人工知能でも、生物を超えることは不可能と思っています。

    人工知能がそれなりにできるようになると、なくなる仕事(職を失う)が出てくるといわれますが、わたしはそれでいいと思います。

    わたし自身、仕事は機械にしてもらうことをつねづね考えています。
    「仕事なんかは人のすることではない!」
    人はもっと創造、芸術、美術、探求に時間をさくべきです。

    日々の小金稼ぎに時間を取られて、いかに効率よく時間を使い、いかに仕事をこなしていくかを必死に考えている場合ではありません。
    また、仕事で疲れた体を、趣味やスポーツでリフレッシュしている場合ではないのです。
    リフレッシュなんか必要ないのです。

    ギリシア時代の奴隷制度ではないですが、奴隷の部分を機械が担うのです。
    仕事→奴隷✕
    仕事→機械○

  • グーグルのα碁がイ・セドルに完勝した衝撃から1週間、もはやα碁が世界トップクラスの実力を持ちさらに強くなっていることは疑いようも無い。相手の能力を吸収する人造人間セルに対する人間界の英雄ミスター・サタンになぞらえられたイ・セドル(元々囲碁界の魔王と呼ばれている)が一矢報いた4局目ではα碁はまるでバグを起こしたようにミスを連発した。今日行われたコンピューター囲碁大会では日本のZENが優勝したが、ここでもディープラーニングを用いてレベルが上がったようだ。

    本書の発行は2015/3/10、そしてちょうど1年後の今年3/9のα碁の勝利でディープラーニングの有効性は証明されたと言って良い。1,2局はイ・セドルにもチャンスがあるように見えた。4局目ではα碁がバグを起こしたように見えた。しかし、3局目や5局目はほぼ完勝に見える。どうやったらこんなに強くなるのか本書にディープラーニングがどういうことをやってるのか解説されている。

    チェスや将棋では駒得を点数化したり最近の将棋ソフトでは3つの駒の位置関係を点数化したりしてどの手を選ぶかを判断している、この場合点数の重み付けをするのはプログラマーだ。そしてモンテカルロ法という手法で手を選ぶ。将棋の場合先手の勝率が52%程度でこれがベイズ確率で言う事前確率だろう。モンテカルロ法ではランダムに次の手を選び何通りもの対局をさせてみる。点数の重み付けは勝率に跳ね返るので、例えば次の手が10通りなら一番平均点数の高い手を選べば良い。

    しかし囲碁ではこれまでは良い重み付けができなかった。またオセロが10の60乗、チェスが120乗、将棋が220乗に対し囲碁は360乗の変化がある。ちなみに100乗はgoogolと言う単位だ。1年前までは人工知能学者以外は囲碁はAIは人間の敵では無いと考えられていたし、α碁がヨーロッパチャンピオンに5連勝した昨年10月でもイ・セドルに勝てるようにはとても見えなかった。ではどうやったらこんなに強くなるのか。

    コンピューターに黒白どちらが優勢かを教えるのは難しい、そこで取られた方法がディープラーニングで簡単に言うと画像処理装置を持ったα碁は過去のプロの対局を学習し、どうなれば優勢かの特徴を自分が集めた画像データーを元に解析した。α碁は過去の対局から独自に特徴を見つけだし、自分で重み付けを作り出す。残念ながらそのアルゴリズムを言語化する事ができないのでα碁が何を考えているのかはわからない。手だけを見てると、過去の常識が通じない、新しい常識が生まれるというような感想が出てくるわけだ。「特徴表現をコンピューター自らが獲得する」ことができれば後はひたすら学習を繰り返しセルのように成長していく。

    何がディープかと言うと人間の神経系を模式化したニューラルネットワークの階層が深い層になっている。特徴表現は何種類もあるので例えば10通りの特徴の程度を入力し、さらにその影響度に重みをつけて次の階層に送る。人間の場合は刺激によって神経同士をつなぐシナプスが強化されて重み付けをしている。そこに色だとか形だとかの情報が取り込まれ統合されて一つの認識を作る。コンピューターも多層化するとAからJの10通りのうち次の層ではABC、BDIなど複数の組み合わせでデーターを処理しさらに次の層に送る。そうして高次の特徴を積み上げていくとそこに概念が生まれる。

    ここで面白いブレークスルーが入力と出力を同じにするようにした事だ。多層にすると浅い層までフィードバックがうまく働かなかった。平社員の情報を統合して社長まで伝え、それに対する答えを平社員に伝えるといつの間にか前提が変わっていたと言うようなものだ。そこで、出力を同じにして答え合わせをし処理がうまくいっている事を確認する。他にもある特徴はまとめて集団化したりわざとノイズを与えて頑健性を強めたりという事もする。

    2012年グーグルは「ネコ」を認識するのに1000万枚の画像をニューロン同士のつながりが100億個という巨大なニューラルネットワークを使い、1000台のコンピューターを3日間走らせている。金額にして1億円相当だ。α碁の場合はCPU1202、GPU176からなりグーグルのHPで見積もるとお値段は60億を超えるらしい。

    α碁が負けた第4局ではイ・セドルの歴史に残る1手がα碁が見積もる勝率を狂わせたのかもしれない。コンピューターは不利な状況になるとモンテカルロ法により変な手を繰り出す傾向があり、粘って逆転というのは苦手らしい。スカウターが故障したようなものか?これも本当のところはα碁に聞いてみないとわからない。

    「目の誕生」によるとカンブリア大爆発は視覚の獲得によって起こったとされる。コンピューターはすでにイメージセンサーという視覚とGPUという視神経を手に入れ自ら学習するようになった。コンピューターが自分より賢いコンピューターを設計できるようになる日は思ったよりも近いかも。

  • 著者は国内トップクラスの研究者で、人工知能学会の編集長も務められた方。学会誌を研究者だけでなく多くの人に興味を持ってほしいと尽力された方とのことです。
    そういった経緯の方だけあって、興味を抱きやすい導入部、わかりやすい説明、もう少し詳しい内容を記した書籍への誘導など、「人工知能とはなんぞや?」な素人にこそおすすめしたい本です。私自身がその素人ですが、とてもわかり易かったです。

    15年以上前にとある漫画がきっかけで人工知能に興味を持っていた時期があり、ロボットや心に関する新書を何冊か読んだ程度の知識でこの本を手に取りましたが、当時得た知識がページを捲るごとに塗り替えられていくのに興奮しました。技術の進歩のスピード感と、最先端の技術が日々の生活に密接に関わって実現していることに驚かされます。
    また、終章のあたりではこの国の現状、そして将来の展望についても語られていて、著者の方が抱かれている危機感――この本を執筆された動機――にも触れられます。
    このあたりは門外漢の素人には考えるのが重いテーマに感じられましたが、10年くらい経った後に読み返したらまた違った感想を抱くのかもしれません。

    人工知能の現在・過去・未来について今の視点から語られた本です。今のうちに広く読まれて欲しい。

  • 分かりやすい言葉で終始書かれており、知識が少ない私でも読み易くて面白いと感じた。

    ディープラーニング、という言葉は知っていたが、何が凄いのか、どんな技術なのかは知らなかった。ディープラーニングは情報の特徴量を機械学習で発見出来る技術であり、過去50年打ち破れなかった壁を越えた技術である。
    chatgptのようなAIが登場した背景を少し学ぶことが出来た。

  • AIに何が出来て、何が出来ないのか。

    人工知能について手っ取り早く基本的なことを知りたい時はこの本!と言われるほどベーシックな一冊。

    7年前の本ですが入門用には、良書かと思います。

  • ザクッと人工知能への挑戦の歴史と現在その中核となる、ディープラーニング、機械学習とその基盤となっているベイズ統計の位置付けについて理解できる。

  • 人工知能について、ディープラーニングについて、素人にも概念が掴めるように丁寧に解説していて非常に良かった。
    2014年時点で人工知能学者の目指している人工知能はまだ出来ていないが、人工知能が出来ないわけがない。その理由も述べられているが、これには首肯する他ない。

    また、あとがきの筆者の純粋な人工知能に対する思いになんだか笑ってしまった。
    今読んでも学びになる、とても良い本だと思う。

  • 2022.08.05

    以前に新井紀子氏の「AIvs教科書の読めない子供たち」を読んでいたので、ある程度の前提知識を持って読むことができた。
    悪くいうと既に知っていることも多く書いていたということになるけれども・・・(私みたいな素人が知ったかぶりをするのは恐れ多いが)

    今はいわゆる「3度目の人工知能ブーム」と言われる。人工知能ブームは過去に2度あったが、ブームが過ぎたあとは「人工知能の学者はいつも間違ったことを言う」と言われるような冬の時代が到達したという。
    世の中が人工知能に期待しすぎるのだ。
    まだまだ研究余地のある分野だからこそ、世間は人工知能の限界を見誤るらしい。

    人工知能が自身よりも知能の高い存在を作り上げる(シンギュラリティ)がくることはないだろうというのが著者の考え。SFの世界のようなことは起こらない。けれども、現代社会に確実に大きな変異をもたらすことは間違い無いだろう。
    なぜなら人間=知能+生命であるからだ。
    知能は作り出せても生命を作り出すことは難しい。

    人間の脳は電気信号によって思考している。これは紛れもない事実である。
    ならば人工知能は理論上作ることが出来と言われているが、まだ完成していない。

    第二次AIブームで分かったのは「知識をコンピューターに入れれば賢くなる」ということ。
    (エキスパートシステム)
    この世の中に溢れる膨大な知識をコンピューターに入れていこうというプロジェクトもあり、なんと1984年から現在まで続いている。
    それだけ人間の知識は膨大なのだ。

    機械学習とは、人工知能のプログラム自身が学習する仕組み。
    第三次AIブームの鍵となる。
    機械学習において必須なのは「特徴量を設計すること」
    特徴量とは平たくいうと「何を持ってある物事をそれだと判断するか」である。
    人間は深く考えることなく「あれは猫」「あれは馬」などと見分けることができるが、コンピューターにとってはそれが難しい。
    何を持って猫、何を持って馬と判断するのかは人間が教えてあげないといけなかった。
    しかしそこに「ディープラーニング」が登場する。
    ディープラーニングとはコンピューターが自ら特徴量を作り出す技術。
    技術の詳細は本書で説明されていたが、あまりきちんと理解できなかったので(笑)ここでは割愛する。
    とりあえずディープラーニングができてからコンピューターは自分で猫とか馬とかを見分ける方法を見つけることができるようになった。

    日本企業では残念ながら「機械学習の精度が上がると売り上げが伸びる」という考えが浸透していない。そのため日本企業がなかなかAI分野に投資をしない。海外企業に出遅れる可能性がある。
    しかし日本は人工知能研究者の層が厚いというのは筆者の考え。
    今後の人工知能の発展と活用に期待がかかる。

  • 人工知能とはなにか、どういう変遷を経て今に至るのか、という話を、なるべく細かく難しい部分を抜いて説明されているように感じた。
    全くの初学者の状態で読みましたが、読みやすく理解しやすかったです。

  • 人工知能研究分野における権威の1人、松尾豊先生により人工知能研究の経緯から今後の発展にいたるまで、わかりやすく説明された本。いかに人工知能研究において、「人間とは何か」という本質的な部分にフォーカスが当てられてきたかがよく分かり、面白い分野だなと改めて感じた。

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著者プロフィール

1953 年、新潟県五泉市生まれ。1978 年東京教育大学教育学部芸術学科(彫塑専攻)卒。1989 年、毎日新聞社主催・毎日郷土提言賞富山県優秀賞受賞。
著書に『新潟街角の芸術̶̶野外彫刻の散歩道』(新潟日報事業社,1987)、『富山の野外彫刻』(桂書房,1991)

「2015年 『パブリックアートの展開と到達点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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