しんがりの思想 ―反リーダーシップ論― (角川新書)

制作 : 鷲田 清一 
  • KADOKAWA/角川マガジンズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040820071

作品紹介・あらすじ

縮小社会・日本に必要なのは強いリーダーではない。求められているのは、つねに人びとを後ろから支えていける人であり、いつでもその役割を担えるよう誰もが準備しておくことである。新しい市民のかたちを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 縮小社会・日本に必要なのは強いリーダーではない。求められているのは、つねに人びとを後ろから支えていける人であり、いつでもその役割を担えるよう誰もが準備しておくことである。新しい市民のかたちを考える。
    「BOOKデータベース」より

    リーダーになりたいなんて思ってないし、リーダーになれ、と言われても断るような自分には半分不要な本.働くときに傍(はた)を楽(らく)にしながら仕事をしようと思っている人にも半分不要な本.リーダーになれと無責任に言う側の人間が読むべき本.
    自分に必要と思う半分は、頭ではわかってるんだけどね.という感じ.これほどまでに冠婚葬祭のみならず生きるに必要なことの大半がお任せになる以前の生きることに対する姿勢と実践.
    東南アジアの山の中に行けばあるけど、これはグローバル化とかインフラの整備とかいう名のもとになくなっていく現象がある.
    社会は前に進んでいるのか後ろに進んでいるのかと思う.

  • 社会は変わり人も変わり生き方も時代も変わった。かつて戦後復興から奇跡的に世界のトップにまで上り詰めた高度成長。何をするにも働き手が不足し「24時間働けますか?」の掛け声の元、土日返上寝るのも惜しんで人は働き続けた。実際私の父も土曜日は当たり前の様に働き、日曜に仕事に行く事も何度もあった。今考えたら一体いつ休んでいたのだろう。家にはテレビ、冷蔵庫、エアコンは当たり前、何不自由なく生活できた上に、小学生の時には家も建て替えられ、自分の部屋を持って自分専用の本棚、一人で占有するベッド。何もかもがあった。パソコンだって今では考えられないハードディスク装置(今はFlash、SSDが当たり前だが)すら無い、ペラペラの5インチフロッピーディスクに全てが詰まっていた時代だ。家に50万円以上するパソコンで遊ぶ(勉強ではない)ために、学校から友達が集まってきた。
    そんな時代は人口も増え経済は確実に拡大していた。だから今日より明日、明日より明後日と毎日便利に裕福になっていたようだ。
    今はどうだろう。平成20年(2008年)からはいよいよ日本も人口減少時代に入った。人口が減るということは、当たり前だが、二人の親が二人以上の子供をもうけない社会だ。当たり前ではあるが、年月が過ぎれば人は確実に死に向かうから、現在の様な出生率1.2%程度では確実に減少に向かう。
    かつての人口増加、経済拡大の時代は何をやっても明るい未来しか想像できなかったが、バブルが弾け、経済が急激に萎み、更には人口減少と続く社会に於いては、これ迄とは違った戦略とものの考え方が必要になる。
    本書はそんな縮小傾向に向かう日本においてはどの様な考えで生きていく必要があるかを説いている。タイトルにある「しんがり」とは、軍隊で言えば撤退する際に、味方を逃し最後尾で戦う部隊だ。山登りの一番最後尾は最も山を知り尽くし、隊の誰かに大事があれば真っ先に手を差し伸べる役割を担っている(よって隊を先導する先頭には実力2番目の隊員が立つ)。今、人口減少、経済縮小に向かう日本を「撤退戦」と見たてて、そこに必要な人材に迫る。それはグイグイみんなを引っ張るリーダーシップではなく、後ろから支えるフォロワーシップになる。
    本書は最初にそうしたリーダーシップ本が多いことに苦言を呈しているが、確かに会社にリーダーシップばかりの人材が溢れたら、それは単なる我の強い個人戦になりかねない。誰かが倒れても誰かが代わりになれるのは良いが、果たしてその様なチームに纏まりはあるだろうか。寧ろ静かに黙々と仕事をこなすメンバーがいてこそチームは成り立つ。全員が我よ我よと我を全面に押し出していたら纏まりはないだろう。メンバーの個を生かしチームとして後ろから支える様な力が必要だ。
    またメンバーが自分くらい良いやと無責任になれば、物事は成し遂げられない。一人一人が自分の領域に責任感をもって熱心に取り組む必要がある。本書はそうした状態を、選挙で選ばれた政治家と民衆の関係に例える。選んだ方は、無責任に政治家に「押し付け」るし、選んだんだからやってくれと「おまかせ」してしまう。これはかつての日本が子供を地域で育てた時代とは明らかに違う。昭和の子供は近所中にお母さんがいた。どこに行っても可愛がられたし、その逆に怒られもした。社会全体が子供を育てることに対して責任を持っていた。
    本書はこうした例を次々と挙げて、各自が責任を持つことの重要性と、縮小に向かう日本における戦い方を示す。
    経済は中国語の「経世済民」からきた言葉だ。政治が世の人々を勝手に救い続ける時代では無い。そのうち医療や教育に携わる人間も減っていく。その一方で何もかも頼りきりの人間だけが増え続ければ何は破綻するのは目に見えている。私は自分を自分で責任もって生かしていけるだろうか。少なくとも、食べて暮らしていけるだけの元気な体と体力を責任もって維持していきたい。

  • 某所読書会課題図書: 数多くの引用が効果的に散りばめられ、それをベースに著者がさらに考察を加える.何とも奥の深い著作だと感じた.気になった語句をリストしてみる.押しつけとおまかせ、社会的共通資本、住民が相互的な連帯の中でみずからそれを担う能力が劣化、市民の無能化・受動化、理性の公的使用(カント),
    可塑性のある社会、ボランティアは自分をvulnerable(攻撃を受けやすく)する行為、ゆるい紐帯、出入り自由、<外>という異質なものとの対話が求められている.liberalの第一語義は気前が良いこと、血縁・地縁の放散、縁を紡いでいく、統合の過剰、分断の深化、孤立貧・共同防貧.最も心に残るのはp138の「わたしたちがこれから紡いでいかなければならないのは、思いをきちんと口にするということ(あるいは、安心して思いを口にできるような場を開くこと)であり、また言葉にならない思いにきちんと耳を傾けることのできる、そんな関係であろう.」何度も読み返そう!

  • しんがりの思想
    2023年1月28日読了

    本書では一貫して、誰かに責任を「押し付け」るこの国のリーダーたちと、政治や行政に対しクレームという形でした参画できず、「消費」する存在として「おまかせ」している市民のあり方を「これで本当に社会はよくなるのだろうか?」と批判している。

    2015年に初版が発行され、すでに8年の月日が流れているワケだが、社会はあまり変わっていないように思う。むしろ、コロナ禍となったことで益々分断が加速し、人々はどんどん孤立していっているのではないだろうか。一番手近な社会参画のあり方である選挙においても、その投票率の低さに変化はなく、一種の諦めさえ感じられる。
    また作夏、安倍前首相が射殺されるという大変遺憾な事件が起こり、その余波として加害者を持ち上げるような声もある。

    わたしたちはいまだに「強いリーダー」を切望し、自分たちで変革を起こそうとはしない。あくまで受け身でしかないのだ。だからこそ、人を殺めるという形でしか変化を生み出せなかった加害者に対してでさえも、変革を生み出すリーダーとして崇める動きが生まれてしまうのだろう。「押しつけ」と「おまかせ」は現在でも幅を利かせているのだ。

    しかし、かく言うわたしもそんな社会の「顧客」「観客」の一員であり、「当事者」としてどうしていいかがわからないのだ。

    そんな路頭に迷う子羊たちに筆者は「押し返し」という提案をする。
    それは買い物として「選ぶ」ことであり、他者に対して“Can I help you?”と声掛けができるということである。そんな日常の小さなことから始めてみようという、ささやかな提案。暮らしこそ基本であり、最初はそれでいいのだと救われた気がした。

  • 私たちは『いのちの世話の能力を失っている』という言葉にとても納得した。
     指一本で何でも動かせて便利になって幸せ〜って思ってたけど、実はそうではない。
     自分で自分の世話ができてない。お風呂も洗濯もお皿洗いも買い物も全部人間がやらなくなってきている。

     時代の流れもあるし、人に頼ることは必要だけど、いい意味のものではなく、悪い意味で頼りすぎているのかも。


  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1404493

  • 色々と重要な示唆があった。

  • 大学の推薦図書で読みました。題名と内容が一致する部分は少ないが、現代社会の問題、といってももっと根本的な考え方の問題に触れている。なるほどなと思った。しんがりという言葉が好きになったし石工みたいになりたいと思った。

  • フォローワーシップの意味は深い

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 「成長」とは別の途(「右肩上がり」を知らない世代の登場/「右肩上がり」の世代ー意識から抜け落ちた未来世代のゆくえ ほか)/第2章 サービス社会と市民性の衰弱(「顧客」という物言い/いのちの世話とその「委託」 ほか)/第3章 専門性と市民性のあいだの壁(専門家主義と市民の受動化/トランスサイエンスの時代 ほか)/第4章 「しんがり」という務めーフォロワーシップの時代(「観客」からの脱却/全員に開かれているということ ほか)/第5章 「押し返し」というアクションー新しい公共性の像(「無縁社会」/ひとを選ぶ社会 ほか)

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