こんな街に「家」を買ってはいけない (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040820828

作品紹介・あらすじ

住民の高齢化、崩壊する生活基盤、空き家の増加。今、郊外の住宅街は破綻の危機にある。この現実を前にできることは何か。家を買った人も買う予定の人も知って欲しい、住宅街が抱える問題と対策を明らかにした1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 家を建てるならどんな街がいいかヒントをもらえるかなと手に取ったが、大半は空き家問題について書かれていた。
    70年代、住宅需要が拡大した時代に競うようにして買った郊外の戸建て住宅が、人口減少やライフスタイルの変化に伴って急速に価値を落としてきていることが、辛辣に書かれていた。「家はマンションとは違って財産になる」と信じて購入し、必死にローン返済をしてきたが、車がないと不便なので、子世代は帰って来ず、高齢者は生活の負担が多い。でも売りたくても値崩れして売れない。そんな厳しい事例もあった。
    なんとなく、「いつかは戸建て一家屋」という憧れがあったが、「財産」ではなく「不良債権」になる可能性もあるなら、そのような思い込みに近い憧れは危険だと思った。
    この本が出されたのは、コロナ流行前。今は働き改革も進み、もう少し郊外住宅地や一戸建てに対する考え方は変わってきているかもしれない。
    それでもこれからの時代は「所有」するより、楽しんで生活できるかにこだわっていくべきだと思った。

    ・子世代の負担にならないか
    ・街に歴史があり、住んでいて楽しいか
    ・子どもから高齢者まで3世代にわたって人口がある街は新陳代謝ができている
    ・家の価値より土地の価値
    ・家だけでなく街のサスティナビリティも必要

  • ぼくはあと3年で定年。そのあと研究室を確保するためにアパートを借りようかと思っているが、友人で退職した人がアパートを買ったと聞くと、そういう方法もあるのかと思ってマンションの広告が出れば色気がでてしまう。しかし、妻からは買ったあとどうするのか、売れればいいが、売れなければよけいやっかいだと迫られる。そんなときにふと目にしたのが本書。本書はかつてみんなのあこがれだった一戸建てが今では逆に子どもたちのお荷物になっていること、かつてのニュータウンがオールドタウンになっていることをはじめ、家が決して財産にならず、逆に相続などでお荷物になることを指摘する。合わせて、家を手に入れるには家だけでなく、その住環境、つまり街をも見なくてはいけないと言う。つまり、家を買うにしても、家だけ見ていてはだめなのである。著者の友人には生涯借家という人もいるし、自分は借家でマンションは利殖のために買って貸すという人もいる。家をもてば万歳の時代はもう終わりをつげようとしているのである。

  • ひたすら関東圏の郊外の戸建て住宅を買うことに対する懸念事項や将来の展望について、かなりネガティブな目線で書いている本。この本を読むと、家を持つことが怖くなってくる。だけどそういう視点を持つことも大事だ。
    その中でも、もし家を買うなら気をつけるべきことは3つ。

    ・将来、ゴーストタウンや寂れた地域にすまないように、20年、25年後、その土地や地域がどうなっていくのかを予想すること。
    ・人口が増加している地域、特に転出や転入が盛んで新陳代謝が起きている地域を注目すること。その地域が今後さらに発展していくかどうか。
    ・一時的な状況の利便だけを考えてはいけない。

  • 家ではなく、町をみるという視点が、斬新でした。1番は家だと思っていたのですが、同じような家はどこにでもあるので、現在ではなく20年、40年後もその町が栄えているのか、新陳代謝がいいのかという観点で見ないと、老後不便な町になり、買い手が見つからずそのまま住むということも考えなければならないと思いました。
    日本で空き家が増加している最中、次々にタワーマンションが建つ異様な光景という表記にうなづきます。新興住宅街は子育てにいい環境で選ぼうとしていましたが、先々のことを考えて住む場所を選びたいと思います。

    別の本の「家を買いたくなったら」でも言っていた、家を買うことを目的にせず、どんな生活をしたいのかという観点で家を選ぶ。
    というメッセージが、とても勉強になりました!

  • バブル時代、都内の土地価格の高騰から宅地開発が都内から郊外へ広がり、通勤時間1時間以上が当たり前になる中で、サラリーマンが住宅取得に奮闘するさまを描いた1991年のTBSドラマ「それでも家を買いました」の話が何度も出てくる。1970年代から全国で開発が進んだいわゆるニュータウン=「郊外の新興住宅地」の暗い行く末(というか現状)が何度も強調され、気分も暗くなる。新興住宅地のため歴史も文化もなく街としての魅力にかけ、皆が同世代で移り住んでいるため皆が同じように高齢者となり、立地が不便なため(共働き夫婦も多い)現代の子育て世代は寄り付かず、それらの影響から借り手も買い手も見つからない。今住んでいる人たちにとっても悩みの大きな話であるし、その子供世代(=親が亡くなったあとにどうするか)にも頭の痛いテーマである。
    中身としては概ね一般論が述べられているだけで新しい発見はなかった。今をときめく武蔵小杉のタワーマンションを現代のニュータウンと評していたのは興味深い(元々は大手メーカーの工場の海外移転に伴い生まれた土地が開発された場所なので、歴史も文化もない。狭い土地に縦に伸びた宅地であり、通勤時間帯の混雑は満員電車に揺られたバブル時代の新興住宅地と同じ)。

  • 不動産会社で不動産の買収、開発などを手掛けてきた筆者が現在の日本における住宅事情を分析をまとめたもの。とても分かりやすい説明で、簡潔に主張がまとめられており、納得させられる。未だ誰もが持っていてもおかしくない高度成長期における不動産に幻想に強く警鐘をならしている点は非常に勉強になった。

    心に残ったフレーズ:
    1.家は地域で買いなさいが鉄則。
    2.住宅もコモディティ商品の時代。
    3.ニュータウンとよばれる郊外の住宅地では高齢化と人口の社会減が生じている。
    4.戸建て住宅をバリアフリー化しても家の周りがバリアフリーでないニュータウンもある。
    5.買ってはいけない新興住宅地。東京までの通勤時間が一時間を超える、1970-1980年代に開発された、駅からバス便、丘陵地にあり傾斜がきつい、近隣に観光地など人が集まる場所がない、地域内にめぼしい産業がない。
    6.持続可能性が見えるユーカリが丘。

  • 少子高齢社会の影響が顕著にあらわれる郊外住宅地に広がる問題が取り上げられている。共働きが当たり前の世の中では通勤に時間をかけていられないのは納得。どうすれば都心部に流れていく若者を引き止められるか。若者に魅了ある場所をつくる(働く場所、子育てしやすい場所、娯楽の場所など)のも一手かと。不動産は一生ものではなくそのライフステージ毎に適したものへと移っていく方が賢い選択かもしれないと説かれている。家はその家だけでなく、地域も含めて評価する必要がある。

  • 2018/12/11何となくワンパターンで最後の方は飽きてきた。郊外ニュータウン批判。★3

  • 住宅評論家の牧野氏が、文字通り田舎の一戸建ての家を買うことに異を唱える一冊。

    話が分かりやすくかつ具体的で、とても参考になった。

  • 30年、40年前の郊外分譲地ブームだったところが今はスラム化しており、都心から電車で1時間、さらにバスにのらないと通勤できない分譲地は価値がなくなっている。買うのなら覚悟をもて、ということか。

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著者プロフィール

不動産プロデューサー。1959年生まれ。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストン コンサルティング グループ、三井不動産などを経て、オラガ総研代表取締役兼全国渡り鳥生活倶楽部代表取締役。著書に『空き家問題』『不動産激変』『ここまで変わる!家の買い方 街の選び方』など。

「2022年 『2030年の東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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