知られざる皇室外交 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040820873

作品紹介・あらすじ

1953年、19歳だった明仁皇太子はヨーロッパ各国を訪れた。大戦の遺恨が残るなかで何を感じたのか。そこから続くイギリス、オランダなどとの交流、慰霊の旅を続ける理由など、知られざる姿を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 皇室で行われる晩餐会のワインリスト…超一級品だなあ。と思いながら読み進めると、日本の歴史や外交と切り離せない皇室の外交。国民感情を考え来日を諦めたロイヤルファミリーもいるとか、逆に皇室が批判を買うことを予想しながらの外交とか。それでも、(元)天皇皇后両陛下の人間性に感銘を受けて、日本への反感が和らいだこともあったんだなー。慰霊の旅に出る章が、天皇の真の強さを感じさせる。

  • 皇室は日本及び日本国の象徴と憲法で規定されている。その象徴天皇が外国訪問をしたり、外国の元首を歓迎したりする姿がテレビで報道されているのを見て、今まではその行為が何の意味を持ってるかを全く分かってなかった。むしろ、天皇は必要な存在なのか?とも思ってしまっていた。
    そんな中で、元号が令和となり、時代が変わることを感じて、その機会に皇室のことを知りたいと思った。愛読するちきりんさんのブログでこの本が紹介されていたので読んだ。
    こんなに世界の中でも大きな存在で、今の日本に良い意味で大きな役割を果たしていて、日本だけでなく世界のことも親身になって考えておられる姿に感動した。これからの皇室への見方か変わる一冊。

  • 「平成」という時代が終わろうとしている今、何か思いを巡らせるヒントになるかなぁと思い手に取りました。

    著者は、新聞社の特派員として7年間パリで活動した間、国賓あるいは公式賓客などのさまざまな形で海外元首と交流する皇室メンバー(特にその時代の両陛下と皇太子殿下夫妻)の活動を取材する中で、皇室が外交面で非常に重要な役割を果たしていると認識し、それ以来、皇室外交に着目して取材を続けてきたとのこと。
    一般国民に伝えられている「皇室外交」の姿や意味が十分でない、いや、伝えられていないと、メディアに対して痛烈に指摘しています。

    本書は、国家元首相互のさまざまな接遇のルールを解説するとともに、その背後にある交流・和睦の機運を醸成する暗黙の了解のようなもの、儀礼的に見える歓迎の辞・答辞が実は非常に綿密に練られ、思いの込められたものであること、「国賓」の相互訪問の背景にある国際情勢などを具体的な事例(晩餐会のメニューも!)を並べながら紹介しています。

    特に印象的に思えたのは、オランダとイギリスの王室とのこと。私たちはオランダは鎖国時代に唯一交流していた西洋の国という歴史を教わり、とても親しみある国だ(だから向こうもそうだろうという)印象を持っているだけだけれど、実はオランダ国内では、先の大戦で生じた反日感情(日本軍の、捕虜への過酷な処遇や慰安婦問題によるもの)が根深かったそうです。イギリスも然り。それを緩和するためにそれぞれの王室(日本は皇室)が配慮と工夫を重ねて対応したことや、天皇・皇后両陛下の彼の地での振る舞いや発言が、反日感情を和らげるためにいかに大きな役割を果たしていたのか。

    そのほか、
    「天皇家」は、「万世一系」と呼ばれ、千年を超える長きにわたって続く、伝統と格式に裏打ちされた皇統。それは世界でも稀なことで、政治トップでは決して補えない、国としての一貫性を示すもので、だからこそ外交に非常に重要な役割を果たし得るのだということ。
    国賓の外国訪問には当該国の戦没者慰霊が必ず盛り込まれ、国賓としての行き来の際に相互にそれを行うもことが基本になっていること。それが過去の戦いからの和睦と現在の良好な関係を意味するということ。ところが、我が国を訪問する国賓は日本でそれは行えない、なぜなら戦没者全体を国として慰霊している靖国神社には、戦犯とされた人々が合祀されているから。だから日本から海外を国賓として訪れる皇室メンバーの、彼の国での慰霊だけが行われる一方通行になっている(つまり、私たち日本人は、海外の国賓(大戦で戦った相手国を含めて)が日本の戦没者を慰霊してくれる姿を見ないということ。オバマ大統領の広島訪問は本当に印象的な出来事だったけれど、あくまでもあれは原爆死没者への慰霊に限定されている。)、その歪さ。

    自分の国のことなのに、なんと多くのことを知らずにいることかと愕然とさせられました。

    皇室について自分の考えを語ることはつい慎重になりがちだけれど、いろいろなことを置いておいて、素直に、戦後の皇室が、とりわけ国際社会の中で(日本のために)果たしてきたこととその成果を受けとめたい、これから先は、きちんと事実を知りたいと思いました。

  • 皇室外交とは?今まで考えたことがなかった。天皇陛下が海外に行くという事がどれだけ価値があることなのかを知ることができた。政治利用というより、海外との親善に対する効果という考え方が正しいと思う。

  • 日本人なら必読の本だと思う。皇室が日本国にとってとんでもなく価値のあるアセットであるということ。そして上皇ご夫妻の思慮の深さには感銘を受けた。
    天皇、皇室について語るとき、反射的にウヨクだとかサヨクだとかそんなワードが飛び交うことがある。(し、私も同様の反応をとっていたことがあったように思う)今思えば教養がなく、とても恥ずかしいことだったなぁ。自制の念も込めて。

  • 子供に教えるべき内容。
    サイパンでの、うみゆかばみづくかばねーエピソードが面白かった。

  • いやほんと、知らないことばかりだった。
    そもそも第二次大戦後、イギリスとオランダが”反日”だったとは知らなかった。
    いい勉強になった。

  • 序盤はお料理とワインが美味しそうだなーくらいにしか感じていなかったが、読み進めるに連れて上皇の平和への強いお気持ちと行動をしり感謝しかない。

    オランダやフィリピンとの国交融和へのご尽力、仏ヴァレリーさんとのエピソードから知る美智子様のお人柄、サイパン、パラオ、フィリピンで続けられている慰霊の旅の裏にある上皇の想い…我々が知らないことも多く、この本を読めて良かった。

  • 日本中を感動させた、平成最後の、当時の天皇陛下の誕生日の会見。

    「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに心から安堵しています」というお言葉に、ふと涙ぐんでしまった。あぁそうだよね、憲法で定められているとはいえ、戦争が起きないことって当たり前じゃないんだ、起こさない努力をしていかないといけないんだ、と思った。

    ご自身の父親(=昭和天皇)のために戦え、命を捧げよ、と教育された国民が約300万人亡くなった。そしてそれ以上の数の外国人(兵士、民間人)を死なせた。敗戦後、満身創痍かつ世界中から憎まれていた日本を国際社会に復帰させることの重圧は計り知れない。上皇様は何年もの間、他国の対日感情を和らげるための訪問や慰霊の旅を続けてこられたわけだが、本書を読みながらその心中に思いを馳せた。私ごとき想像もつかないご苦労があったのだと思う。日本に住んでいるなら一度は読んでおきたい本。

  • これを読むと、日本人でよかったという素直な思いと皇室に対して敬虔な気持ちになります。課題は多々あれど、我々が色々な国と良好な関係を維持できるのは、皇室や宮内庁・外務省などの報道されない尽力あればこそと痛感しました。

    外交には歴史がつきもの。オバマ大統領、ミッテラン大統領、イギリス王室との関わりなどが書かれていますが、特にインドネシアでの戦争捕虜の取り扱いから、オランダとの外交修復にこれほど紆余曲折があったということは初めて知りました。「皇室は日本にとって最高の外交資産」というのは全くそのとおりと頷けます。

    一方、宮中晩餐会など「誰に対しても最高のものを」というポリシーを掲げ、国のために力を尽くされている様子はもっと国民に知られても良いと思いました。チコちゃん的で恐縮ですが、今こそ全てのニッポン国民に問いたい一冊です。

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著者プロフィール

毎日新聞社客員編集委員。長崎県出身。1971年毎日新聞社入社。テヘラン、パリ、ローマの各特派員、外信部長を経て専門編集委員。2020年4月までの18年間、国際政治・外交・文化についてのコラムを毎週朝刊に執筆。2014年から現職。公益財団法人日本交通文化協会常任理事。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、1997 年度サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮社)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、『知られざる皇室外交』(角川新書)など。近著に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)。共訳に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店)。仏国家功労勲章シュヴァリエ。

「2021年 『教養として学んでおきたい日本の皇室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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