最後の浮世絵師 月岡芳年 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
3.00
  • (0)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 34
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040822006

作品紹介・あらすじ

第1章 揺籃期の芳年―その原点となる師風継承
第2章 師風展開と月岡芳年の誕生
第3章 文豪が賞賛した残酷絵
第4章 新聞の進展がもたらした時事絵
第5章 古典素材に再注目した英雄絵
第6章 円熟期を迎えた美人絵 ほか

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • まさしく血みどろと狂気の一冊でした。
    幕末から明治の絵師とのことですが、色は鮮やかに深くなっています。

  • なんでだろうね。また買ってしまった。
    血みどろと狂気だよなぁと思ってめくっていたら、目次の初めに「「血みどろ」と「狂気」のイメージを越えて」とあって、だよねーと思った。
    本屋さんでレジに出すときに、この表紙はなかなかいろいろと疑われそうとか思ってしまった。
    中の絵はすべてカラー。血みどろも真っ赤。
    でも、この方の絵、何だかんだ言ってみちゃうんだよね。
    元は妖怪・幽霊の資料だったんだけど、この本は江戸の風俗も見られてつい買ってしまいました。
    「風俗 三十二相」の女性たちの表情が豊かなのがいい。

    r21018
    血みどろの絵を描いていたのは、江戸と明治の以降期。しかも当時の民衆から需要があったから。
    p44坪内逍遥
    「どうして「残忍野蛮を極めた殺傷劇」を「主な最も愉快な観どころのようにして熱狂してみていたのか?」と疑問を呈するほどに、江戸後期には残酷な場面が上演されてきたのである」
    進撃の巨人や鬼滅の刃が大衆化した理由のひとつにもしかしてこれも当てはまったりはしないだろうか、とうっそり思った次第である。

    後半の物怪絵は前半と同じモチーフを用いていても、より進化していて面白い。
    一周回って同じモチーフにまた挑もうと思った気持ちが、何となくわかる。
    恐ろしい絵ではあるけれど、リアリティがあり、そのリアルはまさに瞬間を切り取ったかのように人や物怪に魂や意思があり、そこに至るまでの過去を想像させ、未来を予感させる物語がある。
    そこが、どうしても魅入られてしまうところなのだろう。
    美人画も、女を性欲の対象として描くのではなく、職業や立場を持った生活を営む一人の人間として描かれているのがいい。
    だから、永井荷風が評するように知的に見えるのではないか。

    して、後年精神病か脳梗塞で死亡したとのこと。
    病院も精神の病院に入っている。
    しかし、著者というように、弟子に慕われる伊達な江戸っ子からは到底想像できないことである。
    躁鬱の躁状態の時ならば、親分肌で盛り上げられたかもしれないが、うつ状態であれだけの線や絵の構築は難しいのではないか。それすらも躁の時に描いたというならばわかると言えばわかるが。
    ただ、精神を病んだときに見える鮮やかな赤が如実に後年、締めの色として使われているのは確かだ。他に青と緑の原色を色濃く用いながらも破綻しない色使いと構成。ただ見えるものや投稿から想像したものを描くのではなく、その背景となった物語や自称をしっかりと調べあげているからの、あの絵一枚に込められた恋物語の構築ど。
    恐れ入るしかない。

  • 晩年精神を病んだ芳年はまず巣鴨病院に入院。それから小松川精神病院(小松川狂疾治療所→小松川癲狂院→小松川精神病院→加命堂脳病院→加命堂病院、1944年廃院)に入院するが、回復せず、退院後に亡くなった。東海道四谷怪談に近親姦モチーフなんかあったんだね。

  • <目次>
    総論   芳年、「血みどろ」「狂気」のイメージを越えて
    第1章  怪異の百物語~和漢百物語
    第2章  血みどろの恍惚~無残絵の世界
    第3章  ○○そうな女~風俗三十二相
    第4章  躍動する英雄~武者絵のダイナミズム
    第5章  狂おしき色恋~描かれた情感
    第6章  妖怪たちの宴~新形三十六怪撰

    <内容>
    月岡芳年の作品とその見どころを余すところなく紹介した本。図版も豊富で、解説も当を得ていると思う。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1962年、岡山県生まれ。早大文卒。展覧会の企画・運営やプランニングとともに執筆活動を行い、早稲田大学エクステンションカレッジなどで講師も務める。主な著書に『名画の謎を解き明かす アトリビュート・シンボル図鑑』『ラファエル前派の世界』『バーン・ジョーンズの世界』『名画で見る シェイクスピアの世界』『名画 絶世の美女130人』『名画 絶世の美女 ヌード』『名画 絶世の美女 魔性』『名画 絶世の美男 同性愛』『芸術家たちの臨終図鑑』『名画の読み方 怖い絵の謎を解く』(以上、KADOKAWA)ほか多数。

「2017年 『2018 ウィリアム・モリス カレンダー 英国ヴィクトリア朝の美の革命家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平松洋の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×