こゝろ (角川文庫 な 1ー11)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001127

感想・レビュー・書評

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  • 高校の国語の授業の課題に出て買いました。
    K君の立場が面白くて、それだけ覚えています。w

  • 子供の夏休み課題で転がっていた本を拾って再読。バランスを欠いていると言えばそれまでだが、「こころ」の中の動きがよく描かれていると思う。

  • 人間とは、どこまでも感情的な生き物ではないか。裏切り裏切られて、その時死を意識しても尚、あの時に帰って人間は再び“こころ”を拾いに行くんだ。「私」は死に抗う父と「先生」の対称的な人生を凝視した。そして、これはやはり“こころ”を受け継いでいく物語ではないか。

  • 教科書以外で初めてまともに夏目漱石の本を読みました。
    難しい話ではあるけれど人の生きていく苦しさ難しさ。色々考えさせられる物語でした。
    何度でも読み返してみたくなります。

  • 自殺はともかく,「先生」のように真剣に自己嫌悪(今ならメタ認知とでも言えるかも)ができる人がどのくらいいるんだろうか。「先生」と「私」や「K」のような思考する学生は今や絶滅危惧種。「精神的に向上心のないものは馬鹿」だとしたら,今の大学生は…。死生教育が必要なのではないかと思います。

    本作は,まさに広告文「自己の心を捕へんと欲する人々に,人間の心をを捕へ得たる此作物を奨む」とあるように,自己の心について懐疑的な人ほど,捕らえて離さない作品なのだと思う。

    *****
    あなたは死という事実をまだ真面目に考えた事がありませんね。

    人間を愛し得る人,愛せずにはいられない人,それでいて自分の懐に入ろうとするものを,手をひろげて抱き締める事のできない人,――これが先生であった。

    私は淋しい人間です。

    私にはあなたのためにその淋しさを根元から引き抜いて上げるだけの力がないんだから。

    しかし……しかし君,恋は罪悪ですよ。解っていますか。

    信用しないって,特にあなたを信用しないんじゃない。人間全体を信用しないんです。

    私は未来の侮辱を受けないために,今の尊敬を斥けたいと思うのです。私は今より一層淋しい未来の私を我慢する代りに,淋しい今の私を我慢したいのです。自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は,その犠牲としてみんあこの淋しみを味わわなくてはならないでしょう。

    平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが,いざという間際に,急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです。

    私は彼らを憎むばかりじゃない,彼らが代表している人間というものを,一般に憎む事を覚えたのだ。私はそれで沢山だと思う。

    「あなたは本当に真面目なんですか」と先生が年を押した。「私は過去の因果で,人を疑りつけている。だから実はあなたも疑っている。しかしどうもあなただけは疑りたくない。あなたは疑るにはあまりに単純すぎるようだ。私は死ぬ前にたった一人で好いから,他を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたははらの底から真面目ですか」

    実を言うと,私はこの自分をどうすれば好いのかと思い煩っていたところなのです。このまま人間の中に取り残されたミイラのように存在して行こうか,それとも……

    私はこういう矛盾な人間なのです。あるいは私の脳髄よりも,私の過去が私を圧迫する結果こんな矛盾な人間に私を変化させるのかも知れません。

    暗いものを凝っと見詰めて,その中からあなたの参考になるものをお攫みなさい。

    私はその時の己れを顧みて,なぜもっと人が悪く生れて来なかったかと思うと,正直過ぎた自分が口惜しくって堪りません。

    彼は大学へはいった以上,自分一人ぐらいどうかできなければ男でないような事をいいました。

    私はただ人間の罪というものを深く感じたのです。その感じが私をKの墓へ毎月行かせます。その感じが私に妻の母の看護をさせます。そうしてその感じが妻に優しくしてやれと私に命じます。私はその感じのために,知らない路傍の人から鞭うたれたいとまで思った事もあります,こうした階段を段々経過して行くうちに,人に鞭うたれるよりも,自分で自分を鞭うつべきだという気になります。自分で自分を鞭うつよりも,自分で自分を殺すべきだという考えが起ります。私は仕方がないから,死んだ気で生きて行こうと決心しました。

    死んだつもりで生きて行こうと決心した私の心は,時々外界の刺戟で躍り上がりました。しかし私がどの方面かへ切って出ようと思い立つや否や,恐ろしい力がどこからか出て来て,私の心をぐいと握り締めて少しも動けないようにするのです。そうしてその力が私にお前は何をする資格もない男だと抑え付けるようにいって聞かせます。

  • 所持/教科書に載っていた高校時代以来に読みました。中学だったかなと曖昧に思っていましたが、「精神的に向上心がないものはばかだ(p234)」と、当時、先生が苦しそうに苦しそうに朗読していたのを、思い出しました。自分の中に、あのときの教室の蒸し暑いような風が吹きました。あの頃はまだわかってなかったんだな。こんなにも、気持ちの持っていきどころのないお話だったなんて。

  • 【上・先生と私】

    【中・両親と私】

    【下・先生と遺書】

  • 名作。夏目漱石はホントに偉大。
    三四郎もそうだけど、人間の恋模様ってのは今も昔も全然変わらないんだなぁと思った。

  • これはすばらしすぎる・・・。高校の教科書にのっていたが、授業では扱わなかった。「エゴ」。もし、高校のときに扱っていたとして、このことについて考えることができただろうか。

  • さすがの夏目作品。日本最大の文学者と言われるだけのことはある。

    ただ、先生の手紙、とても長いような感じがする。ワープロで打っても相当な枚数と時間になると思うのに・・・とか考えちゃうと、こころの良さが半減してしまった。

    私は馬鹿ですw

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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