人もいない春 (角川文庫 に 18-2)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001264

作品紹介・あらすじ

小さいころから執念深く、生来の根がまるで歪み根性にできている北町貫多。中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る貫多は、長い年月を経てても人とうまく付き合うことができない。アルバイト先の上司やそこで出会った大学生、一方的に見初めたウエイトレス、そして唯一同棲をした秋恵…。一時の交情を覆し、自ら関係破壊を繰り返す貫多の孤独。芥川賞受賞作『苦役列車』へと連なる破滅型私小説集、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  •  今回もとても面白い。

     後半の2編は秋恵という女性と同居している様子が描かれる。貫多の身勝手な振る舞いに対して非常に寛容で菩薩のような女性だ。そんな彼女に甘えてますます増長する様子がうかがえて、コラと思う。

     特に土下座して謝った時に、笑って許してくれる場面が素敵だ。

     しかし自分のことを振り返ると、妻には散々ひどい扱いをしていたので、貫多ほどではないにしても他人ごとではない。今こうして離婚せずにいられる幸福をかみしめるばかりだ。

  • 西村賢太による貫多と秋恵モノが好きな人にはオススメ。西村賢太の独特なリアリティ、言い回しが溜まらない。こうした生き様そのものが作家であるタイプは日本には少ない気がするが、それではやはり説得力がないのだ。筆力には、作家の人生分、その重みが増すのだろう。

  • 数か月前に芸人のサスペンダーズ古川さんのnoteで日雇い日記を読んでたことを思い出して、読みたくなった西村さんの私小説。
    貫太の不器用ですぐ怒ったりするだめなところ、そしてそれをすぐ後悔するところ、それでもうまくできないところ、自分じゃないけど自分みたいでちょっと苦しくなった。最後、秋恵、ありがとうってなる。

  • 短編集。私小説で有名な西村賢太だが、中ほどに収録されている「悪夢ー或いは『閉鎖されたレストランの話』」は創作ものである。同氏の多彩な文才を実感させる、秀作である。この一遍のためだけでも本書を手に取る価値はあるだろう。

  • 『だめんずウォーカー』的面白さといえばよいか。仕事仲間に対する卑下する態度、秋恵に対する酷い態度、金銭に対する著しいルーズさなどなど、貫多の屑っぷりを味わう私小説である(脚色はあるだろうが著者の体験を基とすると、、、なかなか恐ろしい)。

    (登場人物の方々には申し訳ないが)貫多の小市民的破天荒さは娯楽作品としては面白いのだが、文学作品として見た場合『どうで死ぬ身の一踊り』と比べると言葉選びの推敲がやや稚拙な印象を受けてしまう。従って、十分に面白いが、少し辛めに4点に近い3点。

  • テレビに出てる作者をみて興味をもったので読んでみた。自分勝手だけど少しの温かさを持ってる主人公がなかなか良かった。彼女がやさしすぎ。
    主人公関係ないけどネズミ目線の短編が激しかった。
    kobo


    親類を捨て、友人もなく、孤独を抱える北町貫多17歳。製本所で短期契約のアルバイトを始めた貫多は、持ち前の自己中心的な短気さと喧嘩っぱやさでまたしても独りになってしまう……。話題の芥川賞作家の渾身作!

    内容(「BOOK」データベースより)
    小さいころから執念深く、生来の根がまるで歪み根性にできている北町貫多。中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る貫多は、長い年月を経てても人とうまく付き合うことができない。アルバイト先の上司やそこで出会った大学生、一方的に見初めたウエイトレス、そして唯一同棲をした秋恵…。一時の交情を覆し、自ら関係破壊を繰り返す貫多の孤独。芥川賞受賞作『苦役列車』へと連なる破滅型私小説集、待望の文庫化。

  • 416

    西村 賢太
    1967年東京都江戸川区生まれ。中卒。2007年『暗渠の宿』で野間文芸新人賞、11年『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『瘡瘢旅行』『人もいない春』『廃疾かかえて』『一私小説書きの日乗』等がある。




    執念深く、生来の根がまるで歪み根性にできている北町貫多。中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る貫多は、長い年月を経てても人とうまく付き合うことができない。アルバイト先の上司、唯一同棲をした秋恵。一時の交情を覆し、自ら関係破壊を繰り返す貫多の孤独。

    自分というものをここまで客観視して、曝け出せるのは中々出来ない。女性は辟易するかもしれませんが、心理は究極なまでに男性的だと思います。

    好きな現代の小説家特に居なかったんだけど(この作家のこの作品に限っては好きはあったし、昔の人は芥川龍之介が好き)、ほんと西村賢太好きなことに気づいた。百合小説で恩田陸好きだったけど、シンプルに恩田陸が好きかどうか他を読んだことないから分からない。



    #読了

    貫太物語にはまった。本を読んでいて久しぶりに笑った。レストランの話は不意打ちだった。なんだかCDアルバムを聴いていて意外な曲調の曲が始まるような感覚でした。あれも貫太の心情を表現しているのかなぁ。
    面白かった!

    『人もいない春』西村 賢太
    #読書メーター


    西村賢太は人もいない春がマイルドでお勧め 他作との温厚さの差で唖然とするが

    西村賢太づいたので(どんな状態だ)、「人もいない春」読んでる。

    痛々しいのに笑える、オンリーワンの魅力。


    睡魔が襲ってくる活動限界時間まであと三時間ほどか?
    西村賢太『人もいない春』収録の『悪夢』を読む。
    驚いた。作品は私小説ばかりだと思っていたのに、本作は食堂に巣食う、ネズミの視点から描かれた残虐描写もある虚構譚。
    本人が勤めていた店で駆除した経験を、逆から描いたのかもしれない。


    #読了 人もいない春
    春になったら読み返そう、と思ってたのに。春は過ぎGWも終わりかけだけど。このどうしようもなさ…やはり面白い。人にはオススメできないけど。身近な人とその面白さを共有できない、というか、むしろしなくていい。そんな読書もまた良し。#西村賢太 #読書 #読書垢

    私的、西村賢太ベスト3
    ①けがれなき酒のへど
    ②瘡瘢旅行
    ③小銭をかぞえる

    裏ベスト3
    ①人もいない春
    ②雨滴は続く
    ③落ちぶれて袖に涙のふりかかる

    人もいない春/西村 賢太

    西村さん節炸裂のクズ男のお話。

    短気、神経質、血の気の多い人の嫌なところを集めたような主人公の北町
    だけど何故か憎めない。

    終盤にかけて同棲相手へ同情や労りの念を抱き始めるところが憎めない理由なのかも。

    西村さんは本当にクズの描写が上手い。

    西村賢太『人もいない春』読了。小説で読んでないのあと3冊。うち2冊は長編。最後のたのしみ。西村賢太が藤澤清造を好きじゃなかったら、読んでなかったかもしれない。けど久世さんが絶賛するだけの作家だなあとしみじみ思います。

    『人もいない春』西村賢太
    #読了

    「苦役列車」に続き読みました。
    相変わらずの貫太。私小説と銘打ってこういった作品を出せる西村さんを尊敬します。
    自分というものをここまで客観視して、曝け出せるのは中々出来ない。
    女性は辟易するかもしれませんが、心理は究極なまでに男性的だと思います。

    【本】西村賢太『人もいない春』。距離が近くなると人間関係が破綻する。いっこうに経験から学ばないように見えてその実人間的に成熟していく軌跡が読み取れる。

    「人もいない春」 著者 西村 賢太
    主人公の北町貫多はプライドが高く、病的に短気な中卒で日雇い労働で日々を過ごす歪んだ青年。そんな貫太がウエイトレスとして働く秋恵と同棲を始め自らのダメさ加減が災いして秋恵を何度も傷つけてしまう。そんなダメ男、貫多の何処か暖かさを感じる日々の物語。

    西村賢太著「人もいない春」読了。主人公の貫多=作者の投影の描き方がとてもいい。そのクズっぷりは胸がすく感じではあるが、ラストの性善説を思わせる人間臭さがほんとうの「人間の業」を誇張やカッコつけすることなく表現できていて、文学を読んだ感じ。

    西村賢太の 人もいない春 を読了。人の心の機微や、普通なら目を背ける感情、その感情の移ろいの描写が凄いな。もっと、もっと貫多物語を読みたい。 人より読書スピードはかなり早いので、敢えて少しずつ読んでいこう。読み漁るのが勿体無く感じる。

    人もいない春(角川文庫)西村 賢太を読了。 平成に現れた私小説のニューウェーブ。女性に対するDVがあられもなく描写され、その内面の葛藤、心理も欠かれ、少しの嘘もない話のようだ。amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E3%8…

    芥川賞作家の西村賢太氏の日記本を読んだ。文章には自信はないけど、タイトルをつけることだけは少しうまいと自負しているなんて意味のことが書かれていた。暗渠の宿、人もいない春、どうで死ぬ身の一踊りとか確かによくわからいけど良いなぁと思う

    『二度はゆけぬ町の地図』『人もいない春』(西村賢太)読了。西村さんの私小説ということだが、いやー、この主人公のクズっぷりは突き抜けててすばらしい(笑)。太宰の人間失格に匹敵するわ…。

    西村賢太の私小説太宰治の人間失格っぽさを感じ取ってる人も居るらしい。私は逆に太宰治嫌いなんだよね

    さて、今日借りた本読み終わったしどうしようか、流石に二日連続図書館は迷惑かけるかな?でも西村賢太の人もいない春読みたい、てか田中慎弥の実験、犬と鴉、共喰い、図書準備室の文庫本かいたい(できれば中古で150円くらい)

    西村賢太『人もいない春』収録の短編「悪夢」が本当に悪夢すぎてしびれた。寓話じみていて、まるで安部公房の作品でも読んでいるかのような感覚になった。

    西村賢太の人もいない春、読了。それにしても西村賢太は外さない。心地悪い作品だが、読み心地はいい。

    西村賢太「人もいない春」読了。
    もはや賢多の僥倖に嫉妬しはじめたw

    西村賢太『人もいない春』読了。まあ、いつもの私小説な話だが、好感が持てる話が多い。南沢奈々が巻末解説を寄稿しているが、西村作品の『男はつらいよ』的なユーモアを解していないのが少々残念。『私小説』だけではない、ファンタジー的な作品も1作あり、面白い。田中慎弥よりは好感が持てる。

    西村賢太「人もいない春」を読み終える。相変わらず、どっぷりハマっている。やはりこういう人の存在は読者に勇気を与えると思うのです。本書には私小説書きの著者には珍しく、寓話風のネズミの兄弟が主人公の物語「悪夢」が収録されている。

    西村賢太『人もいない春』『苦役列車』読了。ある意味全部一緒なので、どれを読んでも面白い。言葉を選ぶセンスが好きだな。芥川賞受賞の苦役列車が他より面白いかって言われたらそーでもない気が。全部面白いもん。いつの日か、この人の著作を時系列順に並べて長編として読んでみたいなぁ、と。

    名張の書店で、西村賢太「人もいない春」(角川文庫)を衝動買い。中上健次以来の巨漢作家で筆圧パワーが凄い!!今の日本に得がたい骨太私小説家だ!!今後、さらに注目したい。

    西村賢太「人もいない春」「苦役列車」読了。この方の作品をすっかり気に入ってしまった。(全部、職場の人に借りて読んだけど。)町田康さんとか好きな人は、きっと西村さんも気に入るはず。

  • 「人もいない春」
    まだ10代の頃(17歳くらい?)の
    職場での失敗談から始まり
    生活を立て直そうとする物語。

    「二十三夜」
    失恋の失敗談の話し。

    「悪夢」
    珍しく、おそらく夢で見たものを書き起こした実験的な物語。

    「乞食の糧途」「赤い脳漿」「昼寝る」
    秋恵シリーズ。


    記憶のメモがわりにそれぞれの話しを記載しましたが、やっぱりこの時期の西村賢太は勢いと無駄の無い表現でとにかく面白い。

    表題作も良いけど、
    秋恵シリーズは自制の効かない自らの暴力性と
    自己反省との繰り返しの中で、常識的な秋恵と、異常な貫多の対比が浮き彫りになって面白い。



  • 『やまいだれの歌』とかに比べるとちょっと弱い感じ。一編だけ寓話みたいな創作小説が収録されてて驚いた。私小説意外もあったんだ。

  • 秋恵もの多め。同棲生活に忿懣を募らせながらも寸前でDVを思い止まる「乞食の糧途」や風邪をひいた秋恵を貫多が意気揚々と看病する「昼寝る」など貫多が時折見せる思いやりにはっとさせられる作品も。もうこの時点で読者も彼の術中にハマっているわけですね笑
    不器用なやり方で彼女を思いやる貫多の姿は微笑ましくもあるが、破局という結末を知っているだけになんとも心苦しい。

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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