SRサイタマノラッパー (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002308

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  • 「北関東のど田舎で毎日うだつの上がらない生活をループしているオレにとって、ロックの熱さはおやじの説教みたいで重苦しく感じられたし、ポップスの甘さは遠い幻想の国の夢物語だった。ヒップホップは、出口の見えない単調さの中で息をするだけのオレにすっぽりとはまった」

    ヒップホップってまさに空虚であったり単調であったりする生活のリズムにもピッタリ当てはまるなと思う。ただ、別にそれは自堕落な生活を反復させ続けることを肯定してくれるということだけを意味しているのではなくて、その反復するリズムこそが加速度的に何かを生み出してくれそうな気がするというか。

    ロックやポップのメロディーでは流れてしまいそうな”力”が、HIPHOPのループの中に閉じ込められて蓄積されて、それがいつか噴出するんじゃないかというような幻想がHIPHOPにはあるんじゃないかな、と。HIPHOP好きとしてはそういう感覚がある。

  • 北関東、埼玉県越谷、26歳、男、無職、実家暮らし。金も車も、何も持ってない。体重は100kg超。
    だけど彼には夢がある。有名なラッパーになりたい。

    無職でニートのイック! 親友のトム! ブロッコリー農家のマイティ! 魚好きな先輩!

    越谷で結成されたヒップホップグループ”SHO-GUNG”。
    彼らの数か月の空回りし続ける日々と膨らみ続ける理想と何もない現実。好きだった女の子。北関東の中心でライムを刻む青春小説。

    -----------------------------

    結局のところ、イックは何もできなかった。夢と理想は堂々と語るくせに何も行動できなかった。金もなければ自信もない。女の前でカッコつけることもできない。
    ダメ過ぎる男。いなくなっても誰も困らない。誰にも愛されていない。
    彼のことを唯一愛しているひと、それは彼自身。
    だからこそ自分がデブニートだとわかっていてもヒップホップにすがる。そしてそのヒップホップで失敗するのも怖いからライブもできないし、東京にも行けない。
    読みながら思った。これは自分の話だと。
    中途半端な距離にある東京。甘えが許される暮らし。地元の人間関係に縛られる生活。北関東のコンプレックス。こんなはずじゃない。俺はまだ大丈夫だ、大丈夫だと自尊心をなだめる日常。

    つまらない日常で、クソみたいな北関東で、不恰好に自分のヒップホップにしがみつくイックがカッコ良かった。
    何かを成し遂げたわけでもない。頑張っているわけでもない。
    だけど、過去の恋愛感情を引きずったまま、駅に走るイック。街を出ていく女の前でもカッコつけらないイック。
    頑張りたくてもどうやって頑張ればいいかわからない気持ちがわかり過ぎるほどわかる。

    これは北関東100%の青春小説だ。
    夢の終わりが見えても夢を捨てられない男の話だ。

  • 本屋で適当に手にとってみたが、期待以上におもしろかった。解説まで読んでいて面白かった本は久しぶり。冒頭から笑える。映画見てみたいと思った。

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