罪火 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002360

作品紹介・あらすじ

レトルト食品工場に勤める若宮は鬱屈を感じていた。花火大会の夜、少女・花歩を殺めてしまう。花歩は母・理絵とともに、被害者が加害者と向き合う修復的司法に携わり、犯罪被害者支援にかかわっていた。13歳の娘を殺された理絵のもとに、犯人逮捕の知らせがもたらされる。しかし容疑者の供述内容を知った理絵は真犯人は別にいると確信。かつて理絵の教え子であった若宮は、殺人を告白しようとするが…。驚愕のラスト、社会派ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 花火大会の夜、ひとりの少女が殺害される。
    殺人犯である若宮と、被害者の母・理絵。
    何故若宮は少女を殺害したのか。
    若宮の心情を丁寧に描いていくことで、物語はより深いものになっているように思う。

    事件の真相はいったいどこにあるのか。
    すべてを知る若宮は、けっしてそのことを明かそうとはしない。
    けれど、徐々に真実へと近づいていく理絵。
    そして、若宮を取り巻く人間関係。

    修復的司法という言葉を初めて知った。
    加害者と被害者が対話をすることで、本当に被害者の痛みが和らぐのかはわからない。
    どの程度有効だと思われているのかも、実際にはわからない。
    けれど、この物語ではこの修復的司法というものが大きな鍵となっている。
    最後に待ち受けていた真相には驚かされた。
    事件当時、たぶん若宮はとても不安定な状態にあったのだろう。
    母親の死、突然の告白、そして裏切られたという思い。
    若宮のしたことはけっして許されることではないけれど、真相を隠し通そうとしたことを思うと切なくなる。
    もう誰にも傷ついてほしくなかったのではないだろうか。
    いつもながら、大門さんの物語は読みごたえがある。

  • デビュー作『雪冤』に続く第2作にあたる本書。
    慟哭の社会派ミステリーです。

    前作は、冤罪と死刑制度への是非と言ったテーマでしたが、本作は、加害者側の『更正』と、被害者側の『許し』がテーマであり、その2つを繋ぐのが『修復的司法』というキーワード。

    冒頭から、犯人が分かっている本作は、倒叙ミステリの1つと言えるかも知れません。

    なぜ彼は、恩師の娘を殺してしまったのか?
    いくつもの伏線が散らばるなか、最後に本当の真実が明らかになる。一番大きな『動機』の謎が...

    しかし、大門氏の作品は、社会的に重いテーマが多いですね。しかし、ミステリーとしての完成度も高く、最後の最後に、それらが融合するのは見事な手腕と思います。

    残された者に、許しと希望があることを...

  • 犯罪加害者の贖罪とは。更正とは。被害者遺族はなにを望むのか。許しはあるのか。というなかなか、考えさせられるお話でした。一度犯罪を犯したものは、一生許されざるべきなのか。日々、生きていかなければならない中で、犯した罪とどう向き合っていかなくてはならないのか。刑務所で罪を償ってきたからと、犯した事実が消えるわけではない。このお話では、加害者と被害者遺族を会わせる、「修復的司法」が どちらにとっても救いになると信じている校長先生とその娘と息子、過去過失で人を殺めてしまった若宮。若宮にとっては先生は大恩人。そんななか 先生の娘が殺される。読み進めるのが心が痛くなるお話でした。反省すること、謝罪をすることは日常的にあることです。そのごめんなさいという気持ちが、ほんとに心からのものなのか、それは誰にもわからないこと。相手に届かなければ、それは自己満足でしかないのかなと。 この話、最期の最期にびっくりでした。驚きの事実が!やられた感満載でしたよ。

  • 罪火というタイトルが良いですね。

    花火大会という大きなキーワードがあるので
    そっちに引っ張られて
    もう一方の「火」の方は語られてるはずなのに
    上手く蓋がされているというか。

    校長が意味ありげに「手紙に書かれた二文字」と
    言った時に「ああっ!」ってなるという。

    でも、それも含めて最後はたくさんある伏線が
    サクサク回収されてて気持ちよかったですね。

  • 最後の最後での展開で、胸を締め付けられました。
    誰も報われないのは悲しいなあ。
    花火を見るとふと思い出しそう。

  • 読むなら絶対に真夏!それも花火の夜に読むのが一番!
    完全に筆者にやられました。
    これはドラマ化されているけど、
    観てなくてよかった。
    原作をじっくり読んで、本当に面白かった。

    犯罪者とその被害者。心理描写と伏線の数々。
    最後の最後で。。。
    「やられた-!」と叫びました。

  • 二転三転するストーリー、最後に明かされる真実、面白かった

  • デビュー作『雪冤』に続く、社会派ミステリーの第二作。

    ミステリーとしての仕掛けも上手いのだが、それ以上に加害者と被害者の断ち切れぬ連鎖というデリケートな問題を前面に出し、強く訴えて来るものがある傑作。

    二転三転する展開からの結末には納得し、安堵するのだが、振り返るとみると、その結末に哀しみを覚えるという不思議な後味の作品。

    『雪冤』でも思ったのだが、本作もまた薬丸岳の一連の作品のような味わいの社会派ミステリーである。

  • 最後の種明かし。若干、強引で唐突感あり。

  • 被害者、加害者の両方からの記述があり考えさせられる
    思っていたトリックとは違った
    終盤のどんでん返し、さらに最後の展開に驚き。
    後半は先が気になり読むのを止められなかった
    贖罪とは。

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著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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