昭和二十年夏、女たちの戦争 (角川文庫)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年7月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041003824
作品紹介・あらすじ
近藤富枝、吉沢久子、赤木春恵、緒方貞子、吉武輝子。太平洋戦争中に青春時代を送った5人の女性たち。それは悲惨な中にも輝く青春の日々だった。あの戦争の証言を聞くシリーズ第2弾。
感想・レビュー・書評
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所謂「銃後」であった女性たちの証言。
取材された当時(もう亡くなられた方ばかりになってしまったが)、それぞれの分野で名を成した方ばかりであるためか、裕福な家庭に生まれた方ばかりのためか、予想より悲惨ではないな、と緒方貞子さんまでは思っていた。
が、最後の吉武輝子さんでガツンときた。
多分、この本を読んだ人はみんなそうなんじゃないか。
想像を絶するほどの経験。奪われたのは肉体ではなく「幸せになろうとする意志」だった、と。この壮絶な体験が吉武さんの人生にどれだけ大きな影響を及ぼしたかと思う。
著者がつらい経験をプラスに転化できたように見えると吉武さんに言ったあとの言葉も忘れ難い。
戦争中に行った教育を悔いる女性教師の姿も。
緒方貞子さんは裕福なだけでなく非常に知的な家庭で育ち、その教養、賢さ、行動力を難民支援などに使った。これを名家のお嬢様で恵まれていたからとやっかむ人もいるが、本来こうあるべきでは。
吉武さんのように生きる気力を失うほどの経験をせず、社会的弱者支援に能力を使う。
これこそ理想的な生き方であるように感じた。
吉武さんの最後の言葉を実践したのが緒方貞子さんであるように思える。
こんな経験は誰もしないほうがいい。
しかし、今も同じ経験をしている女性がいることを忘れずにいたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
わたしが一番きれいだったとき、わたしの国は戦争をしていた。『昭和二十年夏、僕は兵士だった』の著者が描く。10代、20代の女性たちの青春。
目次
・実らないのよ、なにも。好きな男がいても、寝るわけにいかない。それがあのころの世の中。それが、戦争ってものなの。(近藤富枝)
・空襲下の東京で、夜中に『源氏物語』を読んでいました。絹の寝間着を着て、鉄兜をかぶって。本当にあのころは、生活というものがちぐはぐでした。(吉沢久子)
・終戦直後の満洲、ハルビン。ソ連軍の監視の下で、藤山寛美さんと慰問のお芝居をしました。上演前に『インターナショナル』を合唱して。(赤木春恵)
・はじめての就職は昭和二〇年春、疎開先の軽井沢。三笠ホテルにあった外務省の連絡事務所に、毎日、自転車をこいで通いました。(緒方貞子)
・終戦翌年の春、青山墓地で、アメリカ兵から集団暴行を受けました。一四歳でした。母にだけは言ってはいけない。そう思いました。(吉武輝子)
・薔薇のボタン―あとがきにかえて -
「梯久美子」のノンフィクション作品『昭和二十年夏、女たちの戦争』を読みました。
先日、「青島幸男」の『人間万事塞翁が丙午(にんげんばんじさいおうがひのえうま)』を読んで、戦時下を過ごした女性の実際の姿を知りたくなったんですよね。
「梯久美子」作品は昨年の夏に読んだ『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』以来ですね。
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妻でもない、母でもない、女として戦時下を生きた5人の女性の証言!
人生で最も美しい時を戦時下で過ごした5人の女たち。
作家「近藤富枝」、評論家「吉沢久子」、女優「赤木春恵」、元JICA理事長「緒方貞子」、作家、評論家「吉武輝子」。
明日の見えない日々にも、青春の輝きがあった。
妻でもなく、母でもなく、ただの若い女性だった彼女たちは、あの戦争をどのように生き抜いたか。
大宅壮一ノンフィクション賞受賞の作家が綴った、あの戦争の証言を聞く、シリーズ第2弾。
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『人間万事塞翁が丙午』の主人公「ハナ」よりは10歳~20歳くらい若い世代… 10代~20代で終戦を迎えた五人の女性の証言を「梯久美子」がノンフィクション作品としてまとめた作品です。
一人ひとりの女性の体験が、以下の五章構成で描かれています。
■実らないのよ、なにも。
好きな男がいても、寝るわけにいかない。
それがあのころの世の中。
それが、戦争ってものなの。
(近藤富枝)
■空襲下の東京で、夜中に『源氏物語』を読んでいました。
絹の寝間着を着て、鉄兜をかぶって。
本当にあのころは、生活というものがちぐはぐでした。
(吉沢久子)
■終戦直後の満洲、ハルビン。
ソ連軍の監視の下で、藤山寛美さんと慰問のお芝居をしました。
上演前に『インターナショナル』を合唱して。
(赤木春恵)
■はじめての就職は昭和二〇年春、疎開先の軽井沢。
三笠ホテルにあった外務省の連絡事務所に、毎日、自転車をこいで通いました。
(緒方貞子)
■終戦翌年の春、青山墓地で、アメリカ兵から集団暴行を受けました。
一四歳でした。
母にだけは言ってはいけない。
そう思いました。
(吉武輝子)
■薔薇のボタン ― あとがきにかえて
戦中から戦後にかけて、価値観も環境も大きく変化する中、辛い体験を経て生き抜いた証言は、生々しく、そして共感する部分も多かったのですが、、、
女性の証言を女性がまとめた作品ということもあってか、感情移入するというところまでは至りませんでしたね。
でも、戦時下を生きた女性の喜びや不安や悔しさには強く共感できたし、そして戦後を前向きに生きようとする逞しさには学ぶべきものが多いと感じました。
そして、これまで具体的なイメージが湧かなかった、戦時下におけ市井の市民の生活、の銃後の生活が、少し鮮明になりましたね。 -
カテゴリ:図書館企画展示
2019年度第5回図書館企画展示
「追悼展示:緒方貞子氏執筆本等」
展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。
開催期間:2019年11月1日(金) ~ 2019年12月23日(月)
開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース -
P269
戦時中、戦後の激動期を実話からもっと悲惨な情景が読みとれる。 -
[青春の必死]戦時中の女性の遺品の「美しさ」に心奪われた著者は、先の戦争において男性の影に隠れてしまいがちな女性の生活に興味を覚える。その結果、緒方貞子や赤木春恵らに対して行われた、戦時中に青春を送った経験を持つ5名の女性とのインタビューを基にした作品です。著者は、本書の執筆をきっかけとして、女性と戦争というテーマで語ることも多くなったという梯久美子。
例えば「銃後」という言葉に代表されるように、「男性を前面に押し出した上での」戦時下の女性というテーマの作品は過去に多く著されてきたと思うのですが、上記の「」部分をなくした女性の実像に迫ったという点で大変に意義深い作品だと思います。どなたのエピソードも非常に詳細であるが故に当時の生活を追体験することができますし、同時に普遍的なメッセージを携えているように思えます。
戦後かなりの時間が経過してから振り返っているということが一因にあるのかもしれませんが、それでもどなたも戦中・戦後を通して前向きな姿勢を失っていなかったというところに感動を覚えました。前向きにしてくれる要素は希望から怒りまで人によって異なっていたようですが、それでも顔を下げないようにしようと努めたところに、時に郷愁の対称となる戦後を生きた個々人の強さの理由が秘められているように思います。
〜戦時下にも青春の輝きはあった。ただしそれは無条件に与えられたものではない。明日の命も知れない中で、それでも明るく生きようという意志に支えられた輝きであった。〜
著者はご自身で本作を地味と評していますがとんでもない☆5つ -
こういう本を読みたかったんだ、と思いました。
戦争を題材にした本はたくさんあるけど、確かにそのほとんどが女は脇役。
夫や息子を戦争に取られ、戦死してしまって悲しむ役どころが多かった。
確かにそういう女性は当時たくさんいたのだろうけど、普通の若い女子は当時どんなことをして、何を考えていたのかにも興味がありました。
本の構成の良さもあると思いますが、一気読みでした。
みなさん、戦争からもう何十年も経っているからなのでしょうが、「お隣の○○さんが死んで……」みたいなことを淡々と(文字だけだとそう思ってしまう)語っておられるので、それがもう戦争というものの異常さを物語っているなあと思いました。
私、今までの人生振り返って、そんな風に語れる話ないもの。
近藤さんが「戦争はじわじわ来る」と語っているのを読んで、怖くなりました。
今の日本がその「じわじわ、じわじわ」に当たらないとは言えない気がして。
あと私は、家で仕事や編み物なんかをするときに、録画してある「渡る世間は鬼ばかり」を観ながらやることが多いので、赤木春恵さんの話が聞けたことが嬉しかった。
嫌な姑役がうまいこの女性も、そんな大変な経験をしてこられたのかと思うと、見る目が変わります。
みなさん、当時のことをすごくハッキリ覚えているけど、それはあまりに強烈だったからだと思う。
戦争を体験した方、そして被災した方と比べるのはおこがましいけど、私も東日本大震災が起こった日のことは、今でもハッキリ覚えていて、聞かれれば昨日のことのように話すことができる。
戦争って、そういう日が何日も何日も続くってことなんだ。
三浦しをんさんの解説もよかった。 -
(2014年 9/9三読)
(2012年 8/19了、9/14二読)