レ・ミゼラブル (上) (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041005743

作品紹介・あらすじ

貧しいジャン・ヴァルジャンはパンを盗んだ罪で監獄に送りこまれて十数年ものあいだ苦しみ、さらに出所後も差別に悩まされる。しかし、ある司教に出会ったことで生まれ変わった彼は、まったくちがう人生を歩きはじめる。そして、不幸な美女ファンテーヌと出会い、彼女を救おうとするが、執拗に追いまわすジャヴェール警部が行く手に立ちふさがる。フランス文学の金字塔にして娯楽小説の真髄が、コンパクトな新訳で登場。

感想・レビュー・書評

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  •  子供の頃に接した「ジャン・バルジャン物語」やミュージカル「レ・ミゼラブル」で分かったつもりになっていてはいけない。一度は原作を読んでみなければ…と思っていたが、文庫本4冊の完訳はやはり長すぎる。この「抄訳」で妥協したつもりだったが、これが面白い!!
     ユゴーの原作はさぞかしお固くて、重々しい社会派小説だと思っていた。しかし、読んでみると、解説にもあるように、冒険やミステリーなど様々な娯楽小説の要素に溢れ、ドラマチックな世界に入りこんでいく。
     だいたい、十五年間も服役していた男(ジャン・バルジャン)が、社会復帰してから、たった数年で市長になるなんて、いくらメディアで面が割れない19世紀でもあり得ない。そして、突然、ジャベール(ジャン・バルジャンをずっと追っていた警官)に見つかり、再び監獄に入り、半年ぐらいで脱獄してコゼットと何年も身を隠して暮していくなんて。それでも、そんな無茶な展開、実際フランス革命後の無茶苦茶荒れたフランス社会。極端に貧しい者達。王党派、共和派などの思想の対立。法の元の正義と神の御心にかなう正義の対比。ジャン・バルジャンの人生を物語るような風貌。怪力で犯罪者であるが底はかとない心の優しさ。彼らを見守る星の瞬き…。
     細かい所まで描写が丁寧で、舞台を見ているようである。ドラマチックで、頭の中、「民衆の歌」「夢やぶれて」や「One more day」などミュージカル「レ・ミゼラブル」の曲流れまくり。昔観て感動したのだが、原作の世界観と合っている。ユゴー自身も演劇を通じて大衆に対する社会的使命を果たそうとしていたらしいので、あのミュージカルを見ていたら喜んでいたのでは?と思いたくなった。
     ただ、ユゴーの原作は歴史背景や人物の背景を長く説明しすぎたり、物事の細かい説明が長すぎて本筋からそれることが多くて読みにくく、それで読者を遠ざけてきたらしい。そこで、1960年代にハーバード大学のペニシュー先生が、過剰な部分を削ぎ落とし、なおかつ辻褄の合うように調整し、元の半分弱のものに編集し直して抄訳版を英米で発表した。本書はその日本語訳である。こんな面白いのに敷居の高かった小説を皆が読みやすい所に下ろして下さった画期的な訳だと思う。
     この小説は今の私たちから見れば「歴史小説」だが、ユゴーの時代にとっては「現代」の小説だった。古い小説ってそういう面でも面白い。
     下巻に続く。
     

  • 傑作だ。
    完訳版もいつか必ず読む。


    ヴィクトル・ユーゴー(1802~1885)
    10代のときから詩人として名声を得ていた。
    二月革命(1848)以降は、政治活動も始める。
    が、1851年のルイ・ナポレオンのクーデターにより、ベルギーへ亡命を余儀なくされる(ユーゴーは市民ファーストの共和派)
    普仏戦争でルイ・ナポレオンが捕らわれる(1870)までの19年間、フランスに戻れず。
    その間に本作を執筆、1862年に発売された。

    物語は1815~1833年のフランスが舞台。
    上巻は、ナポレオンが失脚(1815)した、王政復古時代。
    七月革命(1830)はサラッと過ぎるが、1832年の六月暴動がクライマックスとして克明に描かれる(下巻)
    フランス大革命以後、10年ごとに革命が起きる乱世のフランスを生きる市井の人々=レ・ミゼラブル。

  • こちらの本は最近でたと思うのだが、
    以前に文庫本4巻を読んだので、こちらの方がコンパクトにまとまっているのかもしれない。
    ミュージカルも観に行った大好きな作品。
    まだ本田美奈子が出ていた頃。

    文庫で読むレミゼは、当時の時代背景の中で、力強くも優しいジャンバルジャンの人柄に涙した。

  • 個人的に初めてのフランス文学。
    悲しみを抱えつつ司教との出会いで生まれ変わったジャン・ヴァルジャンを中心に描かれる登場人物一人一人が個性を持っていて興味深く自然と読み進めてしまう作品でした。
    下巻も早く読みたいと思える作品だと思います。

  • 150年の時を越えて、今この前書きを読む時、果たして人間は何のために文明や科学を発達させてきたのかと思う。比較的豊かである日本でさえ、貧しい男が落ちぶれ、飢えにより女が身をくずし、子どもが肉体的にも精神的にも暗い環境でのびのびと成長できない、という状況が至る所で起こっている。それも、非常に見えにくい形で。見ようとしないかぎり、落ちぶれた男も、身を持ち崩した女も、のびのびと成長できない子どもも、それは本人やその家族のせいにされているように思う。
    ネット情報が溢れかえり、こんなに情報が簡単に手に入るような気がする現代において、実は本当に知りたいこと、知るべきことは、知ろうとしないかぎり何も見えてこない。悲しいことであるが、今の時代もまだ、この作品の価値は失われていない。

  • 初めて本作品を読むのに恐らく丁度良い量かと思います。
    パンを一斤盗んだら…から始まり、司教に出会ったジャン・ヴァルジャンは善も手探りながら心得るようになり、しかし過去の悪を知る彼は悩み、葛藤する。
    善と悪は紙一重であり、心得さえあれば…しかし難しい美徳の道へと一歩一歩進むことが出来る。
    その道は、悪を知る者、だいたい小さな悪というものを人間は持っているけれど、美徳にまっしぐらとは到底困難と思える。
    悪に落ちることは正反対に簡単だけれど、周りにとっても自身にとっても善人であることにの困難さ、司教の優しくも強い信念から始まる上巻は、どんどん読めてしまいました。

  • 厳しい時代のフランスで主人公ジャンバルジャンが前科者から聖人に至るまでの人生の旅路を描いた作品。

    ジャンバルジャンは何度も重要な決断を迫られる中で、ただ神の教えに従って、法に従って決断するのではなく、何が最善か苦しみを伴いながら葛藤する。何かに影響されて決断するのではなく何が善い行いか、自身が責任を負う事の恐怖に打ち勝つ覚悟が何よりも美しかった。

    以下印象に残ったシーン意訳
    他人の為に悪事を行うことについて
    自分の事しか考えてないな、良心の呵責に苦しむことと神に見捨てられ地獄に落ちる事がそんなに怖いのか、それもまた自分可愛さなんじゃないか。

  • 不変のテーマ。

    芝選書で紹介されていた、2冊で完結するレミゼ!
    いつか読みたいなぁ〜と思っていたので、読みやすいというこちらを。

    200年前のフランスが舞台なのに、共感できるところがたくさんあるのが非常に面白い。
    人は更生できるのか?真なる善とは?考えさせられる。

    主人公:ジャン・ヴァルジャンがとっても魅力的で、気になる存在。
    司教に出会って親切にされたことがきっかけで、心を入れ替えて他人のために生きている姿がかっこいい。
    人は、誰と出会うか、誰と出会わないか、が大切なんだね。(©MIU404志摩)
    市長としての地位を確立していたとき、全くの他人がジャン・ヴァルジャンと間違われて処刑されそうになった状況で、どう動くべきか、一人ひたすらに悩んでいるシーンが印象的。
    p.131〜p.148まで悩んでる。

    自分が言い出さなければ、他人がジャン・ヴァルジャンの代わりに処刑されてしまう。一方、言い出せば市長としての地位は無くなり、昔の酷い囚人生活に元通り。そして、気にかけて心配していた女性がひとりぼっちになってしまう。

    わたしだったらどうするかな、と考えながら読んだ。
    懺悔することや告白することは、主に自分のための行為だと思っている。逆に懺悔せず、告白しないことは自分の健康に悪影響を与えると思う。考えすぎて便秘になりそう。
    きっと、表に出すことでストレス発散してるのよね。
    例えば、仕事でミスっちゃったな〜ということを、全く仕事に関係していない家族に話すだけでも気持ちが晴れる。

    自分だけの問題だったら、この考え方で告白するを選択するけど、相手がいて、告白することで相手が不利な状況になる場合は、自分の中で閉じ込めておく、を選択するような気がする。
    ジャン・ヴァルジャンが陥っている状況は、どちらを選択しても相手が不利な状況になってしまうので、どちらの選択をするか結局は自分の中で答えが出ないまま、先が気になって読み進めてしまった。

    偽ジャン・ヴァルジャンの裁判に乗り込んだ時点で、きっとジャン・ヴァルジャンの心は決まっていたんだね。
    目の前で有罪判決を下される自分の身代わりを、黙って見過ごすような人ではないはず。
    偽ジャン・ヴァルジャンが有罪判決を下されそうになる瞬間、ジャン・ヴァルジャンが発言するシーンはとてもかっこよかった。
    下巻でのジャン・ヴァルジャンの活躍も楽しみ。

    宿敵:ジャヴェールの、権力に従い、罪人は許さず更生も信じないという角張った考えは、この物語の中に出てくると、なんでもっと柔軟性を持たないの?と思うけど、果たして普段の自分はジャヴェールになっていないか?と、考えさせられる。

    教会に通うおじいさんマブーフの考えも印象的だった。
    世界にはたくさんの異なるものであふれていて、それが普通であるにも関わらず、主義主張が違うからって憎しみ合うのは理解できない、と。
    言われてみるとたしかに。違うが当たり前なのに、なんでそれを人々は受け入れられないのだろう。
    これまた永遠のテーマ。

  • 百年以上も前に創られたこの物語が、今もなお色褪せることなく読まれている理由がよく理解できる。
    現代のあらゆる物語が出し尽くされた飽和時代においてでさえ、王道な構成、緻密に練られたプロット、丁寧に張られた伏線、回収タイミング、またその手法、すべてが秀逸に感じた。
    正直、下巻の展開は王道らしく、ある程度予想はできてしまうものの、頁を繰るのは楽しみである。

  • すごく読みやすい!
    帝劇でやっている「レ・ミゼラブル」のミュージカルを今度観に行くので予習として読んでいたけど、まず読みやすさに驚いた。レビューでも「読みやすい」という声があったのでこの本を選んだが、すらすらと読める。
    そして、続きもどんどん気になって、読んでないときでも「あの続きが気になる、どうなっちゃうんだろう!」とウズウズしてくる。
    本を読んでウズウズしたのは初めてです。
    レミゼと、この本に出会えてよかった!下巻もこれから読みます。

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著者プロフィール

1802年-1885年。フランス・ロマン主義を代表する詩人・小説家・戯曲家。10代の若さで詩人として国王ルイ18世に認められるなど、早くから頭角をあらわす。すぐに戯曲や小説を発表するようになり、1831年に『ノートル=ダム・ド・パリ』、1862年にフランス文学界の頂点といわれる『レ・ミゼラブル』を発表して、不動の名声を獲得。政界にも進出したが、激動の時代により亡命生活も経験している。

「2022年 『ノートル=ダム・ド・パリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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