悲歌 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 342
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041006535

作品紹介・あらすじ

先生、あなたはなんという呪いをかけられたのですか?あなたの大切な者すべてを三角形の綴じ糸でほどけぬように縫い付けて、それぞれの愛を禁じるおそろしい呪いをかけたのは、一体何のためですか?-音楽家の忘れ形見と愛弟子の報われぬ恋「蝉丸」。隅田川心中した少女とその父の後日譚「隅田川」。変死した作家の凄絶な愛の姿「定家」。能に材を採り、狂おしく痛切な愛のかたちを浮かび上がらせる、中山可穂版・現代能楽集。

感想・レビュー・書評

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  • やっぱりこの人の話は好きだ。文章のリズムが好き。精神性が高いのかと思ったら、急にプリクラとかipodとか出てきちゃったり、そういうさりげなさもいい。

    ちなみに「蝉丸」で、栗本薫の「真夜中の天使」のシリーズを思い出した。これから続けばまんまあのとおりになるような。題材やキャラの立ち位置は同じでもリアルさが違うのは、作者が同性愛者か、同性愛に憧れるヘテロかの違いなのかも。

  • 隅田川、定家、どっちもよかったけど、なんといっても蝉丸です。本人たちの口から言葉にされない感情が行間から、字間から、印刷のない余白からも伝わってくるようで読み終えるまで本をおけませんでした。
    蝉丸くんがあんまりに高潔で純真で、蝉丸から目を逸らした博雅をぶん殴りたくなりました。今すぐ結婚なんか破談しろボケー!って憤りました。できないからこそ、憤りました。やるせなさをあふれるくらいに詰め込んだ小説です。
    ラストは「天使の骨」を彷彿とさせる馴染み深いもので、ああきっと会えるんだろうな、とほっとしました。どうか再会できますように。
    中山さんの小説、呼吸にも、また紙の本の上で再会したい。あとがきを、何度も読み返してしまう本になりました。

  • 祝!文庫化
    中山可穂は、とっても濃いです。

    角川書店のPR
    「わずかでも欠けた愛なら欲しくない――結晶度200%の、焔たつ恋愛小説!
    能楽にインスパイアされた、幻想と幽玄のなかに濃密な愛の姿を描き出した完成度の高い作品集。日常を突き破り、ちぎれそうに痛む心を鷲掴みにするこの力、半端じゃないい!」

  • 悲歌と題されている通り、人の死や悲しみが大きく影響した物語を三部収めた本です。
    中でも「蝉丸」が印象的です。
    実際に能で演じられる「蝉丸」は、天皇家に生まれながらも不運な人生を送る姉弟の悲しくも美しい物語との事。
    本書でも能と同名の逆髪と蝉丸の姉弟が登場しますが、話はとても複雑です。主人公とその音楽の師匠、師匠の娘の逆髪、師匠と愛人の間に産まれた息子の蝉丸の四人が、それぞれどうにもならない想いに悩み、苦しみます。
    中山可穂らしい物語でした。

    追記>
    「文庫本あとがき」についてだが、作者は重度のスランプに陥っているらしい。
    『書店から中山可穂の本が消えたら...』と言っているが、私は紙の本が読みたい。

  • 途中で息苦しくなる物語。

    優しくて、痛くて、
    どの物語も
    すごく好きだなあと思った。

    能の勉強しようかなあ。

  • 綺麗な物語だった。
    それぞれの愛の形は、世間一般でいう普通ではないけれど、何か残るといいね‥‥

  • 短い話なのに、とても長い小説を読んだような感じがする。
    どれも良かったけど、定家が良かった

  • 「隅田川」美しい百合に薔薇を捧げ続ける父親、世間では変態扱いも儚げで切ない。
    「定家」事故物件(?)に住みたい人って相当図太いと思う
    「蟬丸」親子二代に愛されそして愛した音楽家の話。愛って重いな。結婚相手の待つ愛も相当に大きなものだったのに、それ以上の父と姉弟による家族ごとの愛が、大きすぎてもはや遺伝。よかった。

  • 鈍感な私でも作品として纏まりに欠けるように感じたが、スランプと聞けば頷ける。
    とはいえ、作品全体、あとがきに至るまで狂気のようなものがちょくちょく顔を出し、それが凄みとなって突き刺さってくる。多少のアラもその勢いに搔き消える。

    あ、表紙には騙されないように。

  • 初読み作家さん。Kindleフェアの時にたまたま購入。うーーん、まあ、可もなく不可もなくだったかなあ。タイトルの通り、もの悲しさのあるお話3編の短編集。3つ目の蝉丸は少し長かったですが。
    目次を見て、はて変わった目次だなと思っていたら、あとがきを読んで能楽をベースにしたお話だそうで。元の能楽がわからないから、なんとも言い難いところ。

    愛ゆえにままならない。しかもそれは表立って言えない愛。自分を騙さなければいけないほどの愛。性別を超えた愛、人倫を超えた愛というのかなあ。どうにも想像しがたく。文章もけっこうキツイというか角があるような、硬いような印象でした。なんとなくその辺りが感情移入できなかったのかなあ。
    隅田川はとあるカメラマン(女性)の体験談的お話。カメラに涙のフィルターとかは良かったですが、隅田川から薔薇の花びらが舞いあがるというのはねえ、どうなんでしょうか。定家は、結局愛憎のもつれというところか。蝉丸はもう三角関係?四角関係?もつれてこじれて結局誰も救われることなく・・・じゃあどうすれば良かったのか、なんて答えもなく。最後の終わり方は唐突過ぎた感じがするけど、こういう終り方しかないか、という気もする。
    元となる能楽がどのようなお話だったのか気になるところ。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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