ヤングアダルト パパ (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041007365

作品紹介・あらすじ

夏休みもあと数日。中学2年生の静男は、生後5ヶ月の赤ん坊を負ぶり保育所を探していた。もうすぐ二学期が始まる。急がなきゃ。途方に暮れながらそれでも、静男は優作を守ろうとするのだが……。

感想・レビュー・書評

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  • この目次を付けて同時進行する書き方は初めて、素晴らしく良いわけではなくて、でも途中で終えても分かるからいい。静男の人生これからなのに、逃げずに1番大事な事を守って生きる事を選んだって事。両親の優作を施設に入れる、仕方ない、静男の為で全て丸く収まるの言い草はなるほど離婚する訳だと激しく納得する。どうして静男の気持ちを考える事をやめたのかやめてるのか謎。それと岸本真壁楠が味方になったのも嬉しい、4年後に花音は帰らないのが最低だけど、あの保育園ももっと見てみたいな、ラスト人違いで崩れ落ちる場面は頂けないかな。

  • 表紙の少年の絵に惹かれて手に取った。
    なんだかこわい顔しているなと思った。
    どうしたんだろう?と。
    読み終えた今では、この表情の意味がわかる気がする。
    というより、この表情を描いた杉田比呂美さんはすごいと思う。

    主人公の静男は14歳。中学二年生の少年。
    義務教育中の彼が優作という名前の赤ちゃんを育てている。
    優作は静男の息子で、優作のお母さんは3週間くらい前から家に帰ってこない。
    静男のお父さん(優作のおじいさん)は劇団の仕事でほとんど帰ってこないし、静男のお母さん(優作のおばあさん)は別の家庭のお母さんになってしまっている。
    よって、優作の世話は夏休み中の静男が一人でしている。

    もうこの設定だけで頭がくらくらする。
    しかも夏休みが終わる前に優作を預かってくれる保育所を探さないとならないのだ。
    一人で。優作を抱えながら。
    静男は必死だ。

    そんな静男に大人達はこう言い放つ。
    その子がいると、人生思い通りにならない。だから施設に預けよう。
    まだ14歳なんだから将来のことを考えなくちゃ。つまらない意地張らないで。

    静男の周りの大人は自分の人生を1番大切にしているみたい。
    彼らにとって赤ちゃんはただのお荷物に見えるのかもしれない。
    夢を持つこと。目標に向けて頑張ること。
    それはもちろん素晴らしいと思う。
    でも、静男が一人で頑張る姿を見ていると、大人達の意見はちっとも素敵に思えない。
    静男が優作を守るように静男を守ってくれない両親も、静男と優作から逃げるようにいなくなってしまった花音さんも、冷たいと思ってしまう。

    じゃあ、子供ができたらその子のためだけに生きなきゃならないの?
    夢を諦めろって言うの?
    と、詰め寄られたら何も言い返せない。
    子供との時間を大切にすることも、自分の時間を大切にすることも、同じ選択肢なのかもしれない。
    どちらでも好きな方を選ぶべきで、それを自分勝手だと責めるのはおかしいのかも。
    でも寂しい。
    一人で頑張る静男を心配して力を貸してくれるのは同じ年齢の友人で、静男の親でも優作の母親でもない。
    そのことが寂しい。

    最後の「カブになれ」で少し救われた。
    優作を守り続ける静男は本当にすごい。
    無理して体を壊さないか。
    心細くてつぶれてしまわないか。
    頑張っているから頑張ってと言えない。
    でも頑張るしかない‥。
    苦しいなぁ。

  • 中学2年の夏休み、生後5ヶ月の赤ちゃん・優作の預け先をさがす静男。

    面白い小説。でも誰にとって面白いのだろう?ということをよく考えなくてはいけない作品。主人公と同年齢だからといって、この面白さが中学生に伝わるだろうか? 主人公の赤ちゃんへの真っ直ぐな愛情や、友だちの真剣さにはうたれるけれど、単にセンセーショナルなストーリーという受け取り方も可能かもしれない。悩む。

    むしろ育児(赤ちゃん)真っ只中な大人? あるいはその時期を通過して中学生の子を持つ親? 自己中心的な大人たちよ、もっとしっかりしなくては!という著者による叱咤激励とも読める。

  • 頑なに優作を施設に預けようとしない静男にジーンときた
    静男の両親は決してすばらしい人々ではなかった
    よく子供時代に虐待をされた人は自分の子供も虐待する、とか聞くけど
    けっこう自由すぎりや両親に育てられたのに、静男はありったけの愛情を優作に注ぐ姿に感動
    読んでいながら、しきりに花音さん最低だな、と思っていたが、
    最後の一行で、考えさせられるものがあった

  • 「笑う招き猫」の著者,山本幸久さんの作品.生後5ヶ月の優作を置いて母親は失踪.父親として子を守る為,必死で奔走する少年静男の物語.
    最初は,夢のある微笑ましい育児物語かと思ってたら,ちょっとヘビーな内容にビックリ.昔「14歳の母」ってドラマがあったけど,あれの父親版って感じ.息の詰まりそうな切ない物語だが,最後まで一気読みでした.文庫書き下ろしの「かぶになれ」がちょっと救い.ガンバレ静男!!

  • ちょっとびっくりな設定です。
    なんとも無責任な大人たちばかりで、腹立たしくなります。
    そんな中で、優作を必死に守る静男と、級友たちが健気です。
    優作がいることで、静男自身も立っていられるのかもしれません。
    優作を守りながらも、愛を求めているように思います。

    優作が4歳になった目から描かれた、スピンオフ「カブになれ」が良かったです。
    ちょっとホットしました。

  • 出てくる人たちがみんないい人でよかった。

  • 中学生が父親に。しかも母親と一緒に暮らしたのは、2週間足らず?
    設定には相当無理があるのだけれど、なぜだかほっこりしたまま、不安な気持ちでやきもきすることもなくエンディングに辿り着いた。
    子どもは可愛い、でも一番遊びたい盛りで、青春を謳歌したい時期に、子育て一辺倒で日々過ごしていけるものか?とは思った。

  • 中学生が突然父親、それもシングルファーザーになったら…、という設定なのだが、どうにも後味が悪い。一応ハッピーエンドなんだけど、なんて後味の悪いハッピーエンド。

    主人公の境遇があまりにも孤独すぎて。いや、悲惨な境遇の主人公ならもっとえげつない設定の小説はなんぼでもあるんだが…。両親や彼女…こういう連中が世の中をダメにしてるんだろうな、と思えるくらいに俺のキラいなタイプ。

    このキラいなタイプが悪役で出てこない(山本小説の特徴なんだが)のが、なんとも不愉快で、結局最後まで入りきれなかった。好みの問題だとは思うが残念。

  • 図書館で。なんていうのかモヤっとするお話。

    頑張って息子を育てようとしているシズオ君はエライ、と一言で言ってしまって良いものか。彼も結局は幼い息子に依存しているだけなのではなかろうか。彼は優作母を世間の人は誤解しているといいますがじゃあ本当の彼女ってどんな人よ?と思わなくもない。ただそう言う関係になった女性だから特別視してるだけじゃない、と。(まあそれも仕方ないか。14歳だし)なんか悲劇の主人公っぽく、健気に乳幼児の面倒をみてますがまあでも彼が撒いた種でもあるんですよね。(ぶっちゃけそのまんまの意味で)世間は冷たいってそりゃそうだ。自分で稼げもしない子どもに子どもの面倒見られるなんて寝言を言われてもハッと鼻で笑っちゃいますよね。でも別に高校いけないからと言って彼の人生がお先真っ暗とかそう言う訳でもないと思うけれども。

    勿論、彼が悪い訳じゃ無く責められるべきはこういう状況を作った大人たちですけどね。つまり育児放棄している彼の両親であり、優作君の母親だけれども。(よく考えなくても彼女は青少年育成保護条例に違反してるよな。合意の上とは言えこれは実質的には女性の未成年に対する性犯罪と言わざるをえない)
    アメリカなんかローティーンまでは夜8時以降に保護者が外出するときはベビーシッター手配しないと捕まるとか言う州もあったはず。まああの優作母がシッター代わりでした、と言われたらそれまでではあるけれども。

    生まれてきた命に罪はない。罪はないけど捨てるぐらいなら、持て余して面倒みないで人に押し付けるならなんで産むのかなぁ?とは思う。ましてや一度失敗している女性なんだし学習しないのか?相手が未成年と知っていて、彼の境遇も知っている大人が。この仕打ちは無いよな、優作母。

    なんかこういうの読むとどんな境遇でも妊娠した以上産むのが当然、とか里親に出すのは間違い、みたいに心のどこかで皆思っていそうな感覚もモヤっとする。勿論実の親に可愛がって育ててもらうよりも子供に取って良い環境なんてないと思うけど勇気を持ってその子のために良い環境を用意するって事も親として当然の義務なんじゃないのかな。こういうぶっ飛んだ設定だからこそ里親制度とかそう言う選択だって悪い訳じゃ無いんだ、みたいな道を示してほしかったな、とも思う。里親制度ならもう2度と会わせてもらえないとかそう言う訳でもないんだし。

    カブの話。これでいいのか?謝ればそれで済むのか?悪いと思って居れば許されるのか?そんな問題じゃないだろう、となんかイラァっとしました。母親は無条件に許されたり子供には受け入れられる、なんてことは無いと思うぞ。彼女が何で子供を産み、放棄し、戻ってきたのかが理解できないのでいきなり良い人っぽく反省してますみたいな描写を入れられてもモヤモヤは増すばかりでしたよ…

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著者プロフィール

山本幸久
一九六六年、東京都生まれ。中央大学文学部卒業。編集プロダクション勤務などを経て、二〇〇三年『笑う招き猫』で第十六回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。ユーモア溢れる筆致と、魅力的な登場人物が読者の共感を呼び、幅広い世代から支持されている。主な著作に『ある日、アヒルバス』『店長がいっぱい』『大江戸あにまる』『花屋さんが言うことには』『人形姫』などがある。

「2023年 『あたしとママのファイトな日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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