配達されたい私たち (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.19
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本棚登録 : 229
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041007884

作品紹介・あらすじ

死ぬことだけ考えて生きている、うつの男。死に場所と決めた廃屋で見つけたのは朽ちる寸前の手紙の束。男は放置された7通を郵便局員に代り配達することにした。すべて届けたら自殺してラクになる、そう決意して……

感想・レビュー・書評

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  • 32歳、ウツ、妻子あり。
    感情は喪失し、毎日を芋虫のように暮らす澤野。
    ある日、死に場所として入った廃墟で、届けられず捨てられた7年前の手紙の束を発見する。
    そうだ、この7通の手紙を届けてから死のう。
    心を亡くした男が届ける、心を繋ぐ7通の手紙の物語。

    知人に勧められて借りました。
    著者がうつ病だったということがあり、鬱の描写がとてもリアル。
    感情の喪失や色のない世界、動けない体に、取り纏う希死観念。
    体験記ではなく小説でこんな風に鬱独特の症状を描いている作品は希少かもしれないですね。

    7年前に届けられるはずだった手紙が時を越えて届くことで様々な物語が生まれますが、共通して思ったのは、タイミングって大きいなということ。
    タイミングが違えば結果は違っていた。そういうことは現実にたくさんあって、むしろそういう些細なタイミングのズレや一致で生まれた結果の積み重ねが人生を創っているように感じます。

    一般的な「良い」「悪い」という物差しとは別のところで物語が紡がれているのもよかったです。
    時を越えて届けられる手紙って、なんだかいいですね。


  • 2023/07/22 読了

    うつ病の主人公が7年前の手紙を届けに行くっていう設定がまた好き。
    「死にたくなったら自殺する」というただの症状で特別なことではないと言っていた。自らの命の無駄しては行けないっと当事者でない自分が気軽に言ってはいけないなと感じた。
    ….最後主人公が植物状態から意識を戻して、伝えたいことを伝えられたらいいなと思う

  • WOWOWドラマが良かった。
    DVD化されていない
    小説は読んでいない

    塚本高史、栗山千明、長谷川京子

  • 思いは届けるためにあり、そうして、人は届けるために思う。それがいつまでも、途切れることなく、くりかえされる。

    7通の手紙を届けてから死ぬって決めて、配ってるうちに鬱の自分の心の変化に気づく。植物状態になってはじめて、生きていないと伝えられないことを知る。心から生きたいと思う。誤解だらけの世の中、人間関係。終わってからじゃ遅い。公開も全部受け止めて前に進むしかない。思いも口にするべきって知らされた。

    教師も誤る。親も間違う。社会に理不尽な差別を受ける者もいる。まっすぐ進めるかは本人次第。

  • 手紙の配達先で7人の人間模様を見て、希望が生まれ、心を入れ替える、そういう結末になるとばかり思っていましたが、そうではありませんでした。

    私にとっては、ショッキングな結末でしたが、このような終わり方の方が現実に近いのかもしれないと思いました。

  • 正しいかどうかは知る由もないのですが
    鬱の方の心理を内側から描く設定に
    とても知的好奇心を刺激されました。

    中途半端な希望的観測など許さない徹底した
    心象の描写には、本当に心揺さぶられました。

    主人公が迎えた結末には絶望と驚きとかすかな希望。
    作品世界に吸い込まれて、そうして吐き出された途端、
    締め付けられるような思いとあたたかい思いの両方を
    胸の中に感じて、それこそが現実なのだと
    思い至りました。

    今は…本当の幸福な結末を心から祈るばかりです。

  • うつの怖さ
    人とを結ぶもの
    最後の描写にドキッとしました。
    え、、、
    最初は、もっと軽く読めるものかと思っていましたが、
    進めれば進めるほど
    7年前の手紙が紡ぐ思いに心を打たれました。
    1人だと孤独を感じている人には読んでいただきたい一作です。

  • 目的を達成する頃には回復するかと思いきやそう来るか!意外な顛末ながらうつ病は深刻だ、本当にそう思う

  • 言葉の選び方が一色さんらしいのと、経験上うつ状態の主人公がとてもリアルでした。各章がマイナスからプラスに増えて行くのもほのかな希望を感じました。しかし、ドラマ版を見られなかったことを悔いています。DVD化されてないようだし。。

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著者プロフィール

一色伸幸(いっしき・のぶゆき)
1960年東京都生まれ。脚本家、小説家。
1980年前半から『宇宙船サジタリウス』『私をスキーに連れてって』をはじめ『七人のおたく』『波の数だけ抱きしめて』などアニメ、映画、ドラマと幅広い分野で次々とヒット作を生み出す。
『僕らはみんな生きている』『病院へ行こう』は日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。
多忙を極める中、うつ病を患い仕事を中断。無気力と自殺願望に苦しむ毎日を送るが、2年間の療養生活を経て復帰する。

2004年の連続ドラマ『彼女が死んじゃった。』(日本テレビ)や、2007年のエッセイ『うつから帰って参りました』(アスコム)、後にドラマ化、舞台化された小説『配達されたい私たち』(小学館、後に角川書店から文庫化)でうつ病患者の心情を表現するなど、復帰後は人の内面に深く入り込んだ作風で高い評価を受ける。

NHK特集ドラマ『ラジオ』は、2013年に文化庁芸術祭大賞、ギャラクシー賞優秀賞、シカゴ国際映画祭テレビ賞金賞、菊島隆三賞など数多くの賞を受賞。2014年には国際エミー賞にもノミネートされた。

「2018年 『感動コミックエッセイ さよなら、うつ。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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