闘う皇族 ある宮家の三代 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041008454

作品紹介・あらすじ

香淳皇后の実家として知られる久邇宮家。初代は明治天皇を手こずらせ、2代目は貞明皇后を激怒させ、3代目は婚約破棄事件を引き起こす。戦後、皇籍離脱したお騒がせ皇族の実態に迫る皇室ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 後の昭和天皇、皇太子裕仁親王のお妃をめぐる「宮中某重大事件」。
    つい最近その事件を耳にして、もっと詳しく知りたいと思っていたところに、本書を発見。事件に関すること以外にも知らなかったことが次々と出てきてとても興味深かった。
    ただ近現代史に弱い私には政治絡みの部分がいささか難しかった。
    西園寺公望や山県有朋まではともかく、登場人物が多くて整理するのが大変だった。
    やはり皇室はタブーも絡んでまだまだ謎が多い。

  •  昭和天皇の妃・久邇宮良子女王(香淳皇后)が色覚異常の遺伝子を持っているとして、婚約解消に動いた山県有朋一派と反対派の攻防である「宮中某重大事件」の顚末と、良子女王の祖父で幕末の有力者だった朝彦親王、その子孫の邦彦王・朝融王の型破りな素行について記す。
     前半は史料の引用が多く読みにくかったが、後半はとても面白かった。著者は色覚異常云々は口実で、山県有朋や貞明皇后が問題行動の多い久邇宮家を天皇の外戚に迎えることを避けたかったのが宮中某重大事件の真相と推測する。つまり、『闘う皇族』というタイトルは痛烈な皮肉だとわかる。
     ちなみに色覚異常の遺伝子は良子女王の母方の旧薩摩藩島津家から入っておりそのこと自体は事実。ただし反対派は長州閥の思惑などわからずに純粋に「一度内定した婚約を取り消すなどもってのほか」との理由で抵抗した模様。だが大正天皇も最初の婚約を解消している前例がある。皇太子妃選定の話は面白い。

  • 昭和天皇・香淳皇后の婚約を巡る宮中某重大事件は山形有朋の問題提起として有名でありながら、悪者・山形による薩長の権力争いのように受け止められ、詳細は知られていない。しかし、山形と久邇宮邦彦王を始めとする皇室との闘争という視点からの問題提起はわかり易い。こう考えると原敬首相、薩摩出身の松方正義、西園寺、そして貞明皇后までもが久邇宮邦彦王への怒りから婚約辞退を望む発言をしていたということは驚きである。そして山形の敗北に終わった直後に久邇宮家・長男朝融王による酒井菊子の婚約破棄事件が表に出るなど、久邇宮家の我が儘に対する驚きは著者の怒りとしても伝わる。そして遡って初代・朝彦親王に遡る。孝明天皇の厚い信頼を得て「今大塔宮」と呼ばれながら失脚し、そして明治天皇の配慮で、この宮家が厚遇を受け続けながら被害者意識を持っていた!興味深い三代の歴史を通して、昭和22年に臣籍降下した旧宮家の皇室復帰論に冷や水をかける好著である。この11家はいずれも伏見宮家の流れであり、名門であるがゆえに、実は天皇とはもっとも遠い血縁関係であったというのは皮肉なことである。

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著者プロフィール

1947年、東京生まれ。70年、慶應義塾大学経済学部卒業。出版社に入り、雑誌・書籍の編集に携わる傍ら、日本近・現代史に興味を抱く。主な著書に『侯爵家の娘 岩倉靖子とある時代』『華族たちの近代』(共に中公文庫)、『華族誕生 名誉と体面の明治』(講談社学術文庫)、『闘う皇族 ある宮家の三代』『皇族誕生』(共に、角川文庫)、『皇室一五〇年史』『皇族と天皇』(共にちくま新書)、『歴史の余白 日本近現代こぼれ話』(文春新書)などがある。

「2018年 『大正天皇婚約解消事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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