怖い絵 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041009123

作品紹介・あらすじ

残酷、非情で甘美……名画の“怖さ”をいかに味わうか、そんな新しい鑑賞法を案内する大ヒットシリーズの第1弾、待望の文庫化。ラ・トゥール『いかさま師』、ドガ『踊り子』など20点の隠れた魅力を堪能!

感想・レビュー・書評

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  • 本書で紹介される絵画は22点。
    『我が子を喰らうサトゥルヌス』のように、見た瞬間に単純に「うわっ…」と思う絵だけでなく、一見特に怖そうに見えないけれど、なんだか不穏な気配が漂う絵も多数紹介されています。
    これらの絵について、歴史的背景や寓意を紐解くことで、1枚1枚ベールがはがれ落ち、表面からは見えなかった"怖さ"が少しずつ見えてくる過程にぞくぞくしました。
    知的好奇心と怖いもの見たさで、ぐいぐい読み進めたのでした。

    個人的に一番印象に残ったのは、ルドンの『キュクロプス』です。
    淡い色彩で描かれたキャンバスで存在感を放つ一つ目の巨人。
    著者の解説を読んだあとに見返してみると、恋する女性を見つめるねっとりとした視線にぞわっとしました。
    偏執的で報われない愛…怖いけど、少し切なくもある。

  • 絵画の話で盛り上がった同僚に借りた本です。

    「怖い」絵と言ってしまうと感じ方は人によるので言い過ぎな気もしますが。

    絵よりもすぐに気に入らない人を死刑にする時代が怖いです。あと、ギリシャ神話。神様が気に入った子をすぐ誘拐。

    一見、写実的で柔らかな絵画もよく考えると不自然という箇所がよく分かりました。

    惜しいのは見開きの絵の綴じられてる箇所が見にくい!コストかかりそうですが、絵の左端を綴じてくれたらなぁと思いました。

  • 目は口ほどにものを言う……をまさに体現したようなこの表紙。芯からぞぞぞっとします。怪奇ものやホラー系が苦手なので、この何とも背筋が凍るような女性の目と「怖い」なんてタイトルがついた本を自ら手に取るとは思ってませんでしたが、ブク友さんのレビューを読んで文庫の方で挑戦してみました。その結果、中野京子さんの語り口が面白く、興味を持って読む、絵を鑑賞する事ができました。ブク友さんは、絵を見返さないように気をつけておられましたが、わたしは一文読むごとに、「え、そうなってたっけ?」と記憶力がなくてあやふやなので、何度も絵を見返さなくっちゃダメでしたが……^_^;
    この表紙のラ・トゥール『いかさま師』のように怪しさと人間の奥底に潜む悪の部分が、絵画鑑賞したことのないわたしでさえも見るからに伺い知れるような絵画から、何故この絵が怖いの?と不思議に思えるものまであります。そちらの方が実は怖かった……
    絵の中にひっそりと植え付けられた悪や狂気の種。「悪」は疎まれ拒絶されるばかりかと言えば実はそんなこともないでしょう。なぜか人々は悪に魅力を感じ、恐怖を楽しみたいという感情もあります。「悪」の種はそんな人々の恐怖への欲求を肥料として魅惑的な花を咲かすのでしょうか。

    ルドン『キュクロプス』なんてストーカー事件のニュースを耳にする度に、これから思い出してしまいそうです。ルドンの描くキュクロプスのひとり、幼児的ポリュペモス。英雄の敵であるはずのの巨人が、なぜこんな悲しげな表情を浮かべているのか、その表情の奥に隠された不気味な怖さは何なのか。その源がルドンの生い立ちを知ることによって見えてきます。そして中野さんのお話はそこで終わることなく、最終的にこの絵を描くことで彼が何を客観視出来るようになり、何を克服したのかまでを教えてくださってます。
    どの絵にも怖さの向こう側に見えてくるものが必ずあることを知りました。

    • nejidonさん
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      丁寧なレビュー、とても楽しく読ませていただきました。
      中野先生のこのシリーズ、語り口が癖になって次の本...
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      丁寧なレビュー、とても楽しく読ませていただきました。
      中野先生のこのシリーズ、語り口が癖になって次の本を読みたくなりますよね。
      そうそう、絵のページを一度見ただけで記憶したわけじゃないんです・笑
      解説を読んで「え?どこに描いてあったの?」の繰り返しでした。
      でもね、戻れなかったの、恐怖の方が強くて。。。
      それで、ただただ『前へ進め!』で読み続けたというわけです。

      それにしても、このように一冊の本になっているから読めるものの、美術館にわざわざ「怖い絵」を観には行きませんよね。
      集めてまとめて、読み手の好奇心を呼び覚ます中野先生の筆力は、脱帽ものです。
      次の本を読まれることがあったら、またぜひご紹介くださいませ♪
      2018/06/26
    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます(^^♪
      nejidonさんの、楽しいレビューのおかげで
      今まで手に取ら...
      nejidonさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます(^^♪
      nejidonさんの、楽しいレビューのおかげで
      今まで手に取らなかったジャンルにデビュー
      出来ました。
      ありがとうございました♪
      怖いながらも最後まで面白く読めましたよ。

      nejidonさんのおっしゃる通り。
      わざわざ「怖い絵」を美術館まで観に行く
      ことは・・・無理っぽいです 笑


      2018/06/27
  • 美術館で絵画を鑑賞することが多くなると、その名画についての
    知識をもっともっととより深く知りたくなります。
    美術展で名画と向かい合うことが出来るのは、ほんの数分にも満たない
    下手すれば、数秒から数十秒でしかないごく僅かな時間なのですから
    なおさらです。

    そんな名画と向かい合った一瞬を、もう少し深く心に刻んでおきたい..。

    「怖い絵」は、とにかくどこの書店でもよく目に付いていました。
    "怖い.."というところには少し躊躇がありましたが
    気楽に向き合えるのかもしれないという思いで手に取りました。

    "怖い.."のは、その見た目から残虐であろうシーンを描いた絵である
    というのは当然ですが、中には見た目にはそれほどの怖さは感じられないのに
    実はその絵の影には暗黒の秘めたストーリーが隠されている...というような
    見た目だけではわかりようのない逸話なども解説されていました。

  • 残念ながら絵心は持ち合わせておらず、普段から美術館に通うタイプでもない。

    絵画と触れ合う機会もなく、人生を過ごしてきましたが、以前から読んでみたいと思っていた一冊を手にしてみました。

    私の解釈が正しいのか、間違えているのかわかりませんが、絵画を通じてその時代や、作品の背景、作者の人生等を知る(楽しむ)というのも絵画の楽しみ方なんですね。

    そう考えれば、本書は単なる解説書ではなく、一つの物語であり、歴史書でもあるような気がします。

    説明
    内容紹介
    残酷、非情で甘美……名画の“怖さ"をいかに味わうか、そんな新しい鑑賞法を案内する大ヒットシリーズの第1弾、待望の文庫化。ラ・トゥール『いかさま師』、ドガ『踊り子』など22点の隠れた魅力を堪能!
    内容(「BOOK」データベースより)
    「特に伝えたかったのは、これまで恐怖と全く無縁と思われていた作品が、思いもよらない怖さを忍ばせているという驚きと知的興奮である」。絵の背景にある歴史を理解してこそ浮き彫りになる暗部。絵画の新しい楽しみ方を提案して大ヒットした「怖い絵」シリーズの原点が、満を持しての文庫化。ドガの『エトワール』、ラ・トゥールの『いかさま師』など全22作の魅力。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    中野/京子
    作家・ドイツ文学者。早稲田大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 絵画に込めた社会的風刺、自分の中の醜い嫉妬や欺瞞、無意識な虚飾、思春期の不安、老いに対する批判的感情、、、
    作者が隠した意味を絵画になぞらえている、それを1つ1つ紐解いていく。
    中には絵そのものが恐ろしく、びくっとなるものも多かったけど、それよりも普段自分が何気なく見ている有名な絵画に、暗く重い恐怖が隠されていたことにゾッとした。
    マリーアントワネット最後の肖像。
    見捨てられた街。
    我が子を食らうサトゥルヌス。
    思春期。
    キュクロプス。
    印象的なのは上の5つかな、、、
    マリーアントワネットの逸話。作者の悪意をすごく感じ取れた。
    見捨てられた街は絵がすごく印象的。思い出に囚われ、滅びていく街、、すごく夢に出てきそう。
    思春期は議論が面白かった。思春期の多感で不安に満ち満ちた時期が伝わるね。
    キュクロプスは怖い。サトゥルヌスも、、

  • 新書の「『怖い絵』で人間を読む」を最初に読んだので、こちらの方が内容が薄い気がした。
    人によって好みが分かれるし、こちらを先に読んでも面白くて満足できるとは思います。
    ボッティチェリの「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」は、興味深く見ました。現代人の視点からすると酷い話だけど。つくづく昔の女性は大変だ・・・。

  • 初めましての作家さん。
    読んでいて怖い絵って何だ?と
    疑問に思うところから始まって、表紙絵は確かに怖い(^◇^;)
    ただ、怖く見える絵の話ではなく、何をもって
    怖いと感じるかを納得させられました。

    有名な絵でも、見逃している部分が多々あって
    目からウロコ状態
    泣きそうになったのは、まさかのフランダースの犬の
    最終回シーンが出てきた。
    「ああ、神さま、もうぼくは死んでもいい」
    それほどの深い満足を与える絵画があった。
    背景を知るとより恐ろしくなる西洋絵画。
    確かに怖い絵でした。

    怖い絵展は見逃しました。
    舞台化もされてるんですねぇ

  • 何気なく綺麗だと思って見ていた絵にこんな裏側があったとは…
    絵の描かれた角度や表情、小物などから自分が思ってもみなかった話が出てくるのが面白い。

  • 知識が絵画鑑賞を面白く、奥深くするんだなというのが体感できる。
    クノップフの「見捨てられた街」には特別な感情がわいた。胸を締め付けられるような静けさと破滅に向かう痛ましさが際立っていて、前に発信する派手さではなく内にこもる主張というのがとても強く、そこに人の心を感じた。
    理屈抜きで恐ろしい絵もいくつかあった。迫力に目が離せない絵もあった。人生と切り離すことができない分、画家自身の表れでもあり、描かずにいられないとでもいうような絵画が胸にグッとくるものがある。
    自分の深いところをグラつかせるような絵画はいくつも存在する。そういうものに出会えることは幸せだ。
    いくらインターネットが発達して、世界のあらゆるものが簡単に見られるようになっても、実際作品を目の前にすることの重要さはいつの時代でも変わらないと思う。この本を読んで知った気になっているけど、本当の意味で知るためには現物を見るしかない。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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