消失グラデーション (角川文庫)

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著者 : 長沢樹
制作 : 青山 裕企 
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年2月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041012284

消失グラデーション (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~、ずっと気になってた本やったけど、
    自分の好きなテイストで
    予想通り面白かった!

    驚愕の結末に
    間髪入れずに二度読みしてしまいましたよ(笑)(^^;)


    いきなり冒頭、
    学校の中に有りながら
    女の子との逢瀬を楽しむための秘密の場所、
    『背徳の死角』でのエロティックなシーンで
    読者を掴むあざとさは(笑)
    新人とは思えない確信犯ぶりやし。


    本作の語り手であり、主人公の
    椎名康は
    バスケ部に所属する高校二年生。

    イジメに遭った過去を持ち、
    人と上手くコミュニケートすることができずにいる。

    その反動からあらゆる女子と深い仲となり、
    なんと、教師ともできてるという高校生にあるまじきダーティーっぷり(笑)

    そんな椎名が遭遇した
    校舎の屋上から女子バスケ部のエースが転落するという痛ましい事故。

    その後血だらけのまま
    現場から忽然と消えた被害者の謎を解くために椎名は、
    別件で学校への不法侵入事件を追っていた
    同じクラスの放送部員、樋口真由と
    孤独な戦いに挑んでいく…


    常に学校では
    読書とヘッドホンで武装し、
    絶対零度の視線を持つ、
    クールというよりフローズンな美貌の
    高校二年生の放送部員、樋口真由。

    この可愛すぎる探偵役の
    樋口真由のキャラが抜群にいいんですよ(笑)

    熱くなりすぎず、はしゃぎ過ぎない
    メインキャラであるこの二人の
    距離感やクールな佇まいが
    ミステリアスな推理劇にピタリと合ってるし。

    それはまさしく、米沢穂信の古典部シリーズや
    乙一の傑作『GOTH』に代表される
    冷めた主人公たちの系譜。

    自分が一番近いと感じたのは『GOTH』の質感かな。


    その消失トリックや
    この作品の売りでもある大ドンデン返しのオチに
    読者の間では賛否両論あるみたいだけど、

    では、ミステリーに必要なものって
    いったいなんなんやろ?

    魅力的な探偵役、
    緻密なプロット、張り巡らされた伏線とその回収の鮮やかさ、
    読者の裏の裏をかくトリックの妙、
    驚愕のドンデン返し、
    まぁ、いろいろあるけど、

    様々なヴァリエーションのトリックが出尽くした今、
    オチだけをとって批判するのはフェアじゃないし、

    個人的には謎解きミステリーだからこそ、
    『ちゃんと人が書けてるかどうか』、
    ここが大事なんだと思うのです。

    オチがどんなにスゴくても
    共感できないキャラや物語性が弱いと
    謎への興味も
    それを解きたい気持ちも薄れるし(笑)、

    松本清張の『点と線』や『砂の器』、
    宮部みゆきの『火車』や『理由』や
    東野圭吾の『白夜行』、『 容疑者Xの献身』、
    伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』、
    レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』など
    名作と呼ばれるミステリーはみな、トリックや結末の妙だけではなく
    犯罪の裏に隠された人間の愚かさや哀切さに心が動かされるんですよね。

    そういう意味でも
    今作は華やかで溌剌と見える高校生たちの
    隠された痛みをリアルに暴き出し、
    登場人物たちそれぞれが持つ苦悩が胸に迫る
    新人のデビュー作としては申し分ない出来だし、
    ミステリーというより
    優れた青春小説と呼べる作品だと思います。

    もちろん、事件が起こるまでが長すぎるとか(笑)、
    漫画的御都合主義だとか、
    デビュー作なだけに粗も荒さもあるけど、

    バスケシーンの迫力は特筆すべきものだし、
    細部までディテールにこだわり
    リアルさを出す手法は
    有川浩にも通じる上手さだし、
    樋口真由を主人公にした第二弾も近日中に文庫化されるとのことなので
    是非とも次も読んでみた
    いなぁ~♪

  • 非常に微妙な気持ちにさっせられる読後感、青春とミステリの見事な融合と紹介されされてるし、31回横溝正史賞を受賞している。また選考委員の書評でも絶賛といっていい褒め称えようである。一番的確に作風を評してるいると思えたのは北村薫氏の言葉だった。「要するに、これはーーすでに読んだ人となら、あれこれ語りたくなる作なのだ。この種のトリックは珍しくない。だがそれが、物語と密接に結び付いている。」

    と、ある通り誰かと色々語り合いたいのだが、ひとまずここで自分なりの考察を細かくしてみようと思う。以下完全なるネタバレになります、未読の方はこの先立ち入ることをご注意くださいますように。

































    まず目次裏の登場人物紹介ページ

    椎名康…藤野学院高校2年C組の生徒。男子バスケ部員。
    樋口真由…放送部員。康とはクラスメート。
    網川緑…2年F組。女子バスケ部のエース。雑誌モデル。
    関戸アケミ…女子バスケ部の主将。ポイントガード。
    柴田佐紀…女子バスケ部員。フォワード。
    鳥越裕一…男子バスケ部の主将。
    田丸瑞季…女子バスケ部のマネージャー。
    矢野祥子…男女バスケ部のチーフマネージャー。
    伊達絢子…女子バスケ部の前主将。
    坪谷菜穂…女子バスケ部監督。
    藤崎咲羅…生徒会運営委員。康の彼女。

    ここは非常に大切な部分、上下関係とか所属などの確認でページをめくることが多かったのだが、ラストでここに戻ると隠されたこと、ぼかされたこと、これってアリなの?と思うことが多いのである。

    物語は私立高校の名門バスケ部を舞台としており、語り手は椎名康の一人称である。部活はそれほど真面目に取り組んでおらず、冒頭から後輩の一年生美少女と「背徳の死角」なる場所で(ここは後で発生する事件の現場にもなる)イチャついている。それを咎めるように登場するのが樋口真由、椎名の同級生で彼女自身も人と馴れ合わず一人闇を抱えてるような人物として、その匂いを読者に提示している。

    さらに女子バスケ部内の人間関係、エースである網川緑を巡る様々な確執、問題、そして網川自身の精神の乱れが提示されて事件発生となる。3階から落花した後、椎名が駆けつけるのだが、椎名は何者かに昏倒させられ網川は何処ともわからずその姿を消してしまうのである。

    この消失事件を、樋口=ホームズ、椎名=ワトソンとなって追いかけるのが本筋である。二人とも人と上手く付き合えず距離を置いた青春を送っているが、心根優しくよいコンビであった、二人の会話パートはラノベ的であり笑いどころも用意されている。

    実際の事件が起こるまでは、入り組んだ人間関係を紹介する意味もあったのだろうが、消費するページも多い。主人公椎名は冒頭からイチャついてるし、他の女子ともとっかえひっかえらしい、さらに女子の監督とも関係しており、密かに恋焦がれてるのは女子部のエース網川なのである。どんなイケメンなんだよ!とつっ込みたくなるのだが、同時にそこに疑問を持った。

    消失のトリックについては椎名が昏倒させられ上半身裸だったという記述から見当がついたし、椎名=男という図式も、実は=女という叙述トリックなのでは?という疑惑も確信的になったのだが、椎名が女子バスケ部から距離を置いた真実、伊達先輩に及んだ凶行で迷いは残ったままである。
    「ベッドに倒れた伊達さん。
    抵抗。制圧。
    拳の感触。指の感触。
    肌と肌が擦れ合う音と、僕の嗚咽。
    無表情に僕を見つめる瞳。
    白い部屋と白い裸。白いシーツに付いた、赤い染み。」
    本文P121~122

    この記述で想像されることは一つしかないはずなのだが…


    この作品は消失の謎を解くのが本筋ながら、同時に性別誤認の叙述トリックが仕掛けられている。消失の方は、ミステリを読みなれた読者なら大筋で検討がつくと思う、しかし性別誤認のほうは椎名のほうは最後まで迷うし、樋口真由までが女にあらず男だったとは、今までの光景が反転するアクロバティックな仕掛けであり、こっちは気付けなかった。それぞれが自己のアイデンティティに悩み、そこを乗り越えていく青春を描く物語として爽やかなエンディングであったといえる。しかしやはりモヤっとした気持ちは押さえられない、それはミステリとして物語を成立させる為に配された人物構成としか思えないからだろう。その途端に人物それぞれの苦悩も、それを乗り越える為の戦いも薄っぺらく感じてしまうのだ。最終的に明らかになった人物像を留めておく。


    椎名康=遺伝学的:女 性嗜好:女 レズビアン 男子バスケ部マネージャー
    樋口真由=遺伝学的:男 性同一性障害 転入時にカミングアウトしてるものの周囲からは特別な存在
    網川緑=遺伝学的:男 アンドロゲン不応症 消失数ヶ月前に症例に気付き、男性化が始まる。彼女と部内の軋轢は、女子バスケ部を辞めるために、親友である柴田佐紀と共謀し仕組んだもの。失踪は偶然を上手く利用し自ら姿を消した。
    さらに監督坪谷菜穂、一年生藤崎咲羅にもレズビアン傾向が見られる。


    こんなに性的にマイノリティな人達がいっぺんに同じ場所に出現できるのだろうか?無理やり感は否めないのだ。最初の人物紹介ページにおいても、椎名は男子バスケ部員なのに対し、田丸瑞季は男子バスケ部マネージャーである。また藤崎咲羅は椎名の「彼女」とある。彼女ってアリ?さらにさらに伊達先輩への凶行記述だが「白いシーツに付いた、赤い染み」って女同士でそのような密事があったとして、どんなことすれば赤い染み状態になるんだ?ここはつっ込まざると得ない。アンフェア感も否めないのである。唯一まともな青少年だったのが、椎名に言い寄っても振られ続け変体呼ばわりされてた鳥越裕一だ。めちゃくちゃいい男じゃないか!椎名はすぐに鳥越に心を許すべきだと思った。


    読後こんなくだらないレビューを書きながらも、ちょこちょこ読み返してみると、あぁ~なるほど、ここはこんなふうにぼかしてたんだ?こっちはこういう意味か?と思える記述も改めて発見した。なるほど上手い描き方をする作家さんだと思う。


    樋口真由を主人公に据えたシリーズとして次作も発表されているようだ。もう性別誤認は使えないけどどうするの?ちょっと追いかけてみようかな?とも思う。

  • 一見、青春系なのだが突然生々しい話に。
    キャラクターが魅力的な小説だった。

    表現がうまく出来ないが、途中で感じた違和感の正体がわかり、話の全貌が見えてきた時、今まで積み上げてきたストーリーがガラッと変わるのではなく、実はそれぞれのキャラクターがもっと悩み傷つきながら行きていたということが分かる、一個上のステージに行く感じが凄い。
    血が出ます、オールハッピーではないです、でも最後まで読むとやっぱり青春小説でした。

  • このミステリーがすごい2012年版6位。前半は最高。自分はスポコン青春小説がもっとも好きなジャンルではまった。スラムダンクを彷彿させるバスケットシーンの臨場感と少しワイルドな男女のやりとりを描写する筆力がハンパないし、全く真相が見えない謎と相まってほんと一気にページが進む。ただし、後半の謎ときになって、本格ミステリー色の比重が高まり現実味がなくなってしまう。そっち系のトリックが複数からみあって複雑すぎ。登場人物の魅力が変質してしまいなんだかもったいない。ミステリーとしても良く練られてレベル高いんだけど、前半と後半の連続性がなくなってしまっており、ミステリーはもっと少ないめにして青春小説色をもっと前面に出して欲しかった。サクリファイスもそんな感じだったけど、こっちは、さらにトリックが凝ってる分、小説としての焦点がぼけてしまってる気がする。とても惜しい。

  • ちょっと期待しすぎたかな…その手のトリックを使った本を最近読んだのがいけなかったのかな(笑)一冊に、一つの学校に、詰め込みすぎな感じがしました。でもグラデーションというタイトルにはセンスがいいなと思ったし青春小説特有の読みやすさと微妙な感情表現と、伏線を探す楽しさはありました。ただ、ヒカル君の存在とかちょっとよくわからなかったです(笑)

  • 読んでいると妙につきまとう違和感は強引な伏線のせいだったのか。
    ミステリーとしては星2つレベルながら、高校生達の日常生活や不安定な関係性の描写に光るものがあり星4つレベル、総合すると3つかな。
    こんな構成にしなくても面白い作品が書けそうなポテンシャルを感じるので、むしろネタバレした後の次回作の方が期待できるかも。

  • トリック自体には驚いたが、その類のトリックを望んでた訳ではなかったので、残念。個人的には好きになれなかった。青春小説としてもミステリーとしても中途半端な印象。

  •  高校のバスケ部に所属する椎名康はある日、校舎から転落した同じバスケ部の女子に遭遇する。しかしその瞬間椎名は何者かに襲われ意識を失ってしまい目を覚ますと少女は消えていた。この謎に椎名と同級生の樋口真由が挑む。

     事件が起こるまでは結構長いのですが、主人公のどこか憂いの感じられる語り口、それぞれの人間関係が語られる部分は青春ものとして十分読ませます。なので、退屈に感じるどころか、好意をもって読み進めていけました。真由と椎名のやり取りもコミカルさを残しつつも、話のシリアスさを崩さない絶妙な描き方だったと思います。

     ミステリとしては何とも評価が難しい……。ミステリとしての技巧へのこだわりはとても感じられたのですが、それが小説の完成度としては逆にマイナスになってしまっていたように自分には思えてしまいました。読んできた読者を置いてけぼりにしてしまう作品だったように感じてしまいましたし、同じような仕掛けを何度も使ったあたりも正直うーん、と思ってしまいました(仕掛けと言っていいのか分かりませんが)。

     青春小説とミステリの有機的な融合と解説にはあります。それはある意味では当たっているとは思うのですが、ミステリの部分が青春小説を悪い意味で喰ってしまったと個人的には思います。

     この作品はシリーズ化されているみたいなのですが、次作以降を読むとしたらどのような感情を持って読むべきなのか、読み終えてしばらく経ってからでも整理がつきません。作品の人物の描き方や雰囲気はとても好みだっただけに何とも惜しい気持ちです。

    第31回横溝正史ミステリ大賞
    2012年版このミステリーがすごい!6位

  • 2011年度、第31回横溝正史ミステリ大賞受賞。最後に性別で驚かすって不要な気がするが・・・樋口真由はシリーズ化されていて、人気の理由はその不思議なキャラクターにあるのだからしょうがないかなよね

  • 読了後、慌ててもう一度最初から読み直したくなるようなトリックが印象的でした。様々な悩みを抱えながらも、負けずに立ち向かっていく高校生たちが格好良かったです。

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